情報・コミュニケーション法(仮称)の骨格に関する提言を発表
当連盟が構成団体となっている聴覚障害者制度改革推進中央本部が、「情報・コミュニケーション法(仮称)」の骨格をまとめ、発表いたしました。
これは、私たちが取り組んできた「We Love コミュニケーション!」署名&パンフレット普及運動で116万筆を超える賛同を得た、情報アクセスとコミュニケーションの権利保障に関する法整備について、障害当事者が政策立案作業に自ら積極的に関わっていく必要があると考え、まとめたものです。
この「骨格提言」については、今後皆様からお寄せいただくご意見をもとに、さらによいものに作りあげていく予定です。皆様からの積極的なご意見をお寄せくださいますようお願いいたします。
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- 「情報・コミュニケーション法(仮称)」の実現をめざして法の骨格に関する提言に意見をお寄せ下さい。
- 「情報・コミュニケーション法(仮称)」の骨格に関する提言
「情報・コミュニケーション法(仮称)」の実現をめざして
法の骨格に関する提言に意見をお寄せ下さい。
私たちは、ろうあ者、難聴・中途失聴者の聴覚障害当事者2団体と盲ろう当事者団体、そして手話通訳者や手話サークル会員、手話通訳士、要約筆記者の支援者3団体により結成され、2010年9月から政府の障がい者制度改革推進会議における障害者に関わる制度の抜本的な見直しにおいて、すべての聴覚障害者、盲ろう者に情報アクセス・コミュニケーションの権利を保障する法制度の実現を求め、全国署名運動と「We Love コミュニケーション」パンフレットの普及に取り組んでいます。署名は2011年9月27日に、「We Love コミュニケーション 情報・コミュニケーションの法律を求める全国集会」を開催し、集まった1,163,876筆の署名を内閣府、衆議院、参議院に提出しました。
現在の日本には、参政権、裁判を受ける権利、教育を受ける権利、労働の権利等、日本国憲法で保障された権利の履行に必要な情報アクセスやコミュニケーションの権利を保障する法制度が確立されていません。このため、聴覚に障害のある私たち障害者は、自己選択と自己決定ができず社会参加が十分に進まない状況があります。
2006年12月に国連総会で「障害者の権利に関する条約」(以下、障害者権利条約)が採択されました。障害者権利条約の第21条には次のような規定があります。
障害者権利条約が日本において批准されるにあたり、情報アクセス及びコミュニケーションの権利を実現する国内の法整備が必要です。
もう一つは、2011年7月に改正され、8月4日に公布された障害者基本法があります。基本原則の一つとして「言語(手話を含む。)その他の意思疎通の手段を選択する機会の確保」と「情報を取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大」(第3条の3)が規定され、「国及び地方公共団体は、障害者が円滑に情報を取得し及び利用し、その意思を表示し、並びに他人との意思疎通を図ることができるようにするため」、「障害者の意思疎通を仲介する者の養成及び派遣」(第22条)などの具体的な施策を今後、どのように推進していくかが問われています。また、国会にて「障害者基本法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」が採択されています。その中に「国は、この法律による改正後の障害者基本法の施行の状況等を勘案し、・・・・障害者に係る情報・コミュニケーションに関する制度・・・・について検討を加え、その結果に基づいて法制の整備その他の必要な措置を講ずること」が記載されています。
私たちは、障害者権利条約と改正障害者基本法の二つを前提とする情報アクセスとコミュニケーションの権利保障に関する法制の整備について、障害者権利条約の基本精神である「私たち抜きに私たちのことを決めないで」を踏まえ,障害当事者が政策立案作業に自ら積極的に関わっていく必要があると考え、ここに聴覚障害者制度改革推進中央本部として情報・コミュニケーション法(仮称)の骨格に関する提言をまとめました。
しかしながら、私たちの提言は、聴覚に障害のある人の範囲にはとどまっていません。視覚障害者や知的障害者など、たくさんの人びとが情報アクセスとコミュニケーションにバリアを抱え支援を必要としています。同時に、情報アクセスとコミュニケーションの権利保障は、その双方向性から、障害者の社会参加の拡大を図るだけでなく、障害者と係わる人々にとってもプラスであり、社会全体にとってプラスとなることを確信しています。
この提言がきっかけとなって、情報・コミュニケーション法(仮称)が実現される日をめざし、聴覚障害者制度改革推進中央本部の構成6団体とそれぞれの都道府県地域本部はもとより、日本障害フォーラムをはじめとする中央・地方の障害者団体、各政党、国と地方公共団体、事業者、国民一人ひとりの広い論議をお願いしたいと思います。ご意見は下記の聴覚障害者制度改革推進本部事務局にお寄せ頂けますよう、よろしくお願いします。
2012年1月10日
聴覚障害者制度改革推進中央本部
本部長 石野 富志三郎
構成団体 財団法人全日本ろうあ連盟
社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
社会福祉法人全国盲ろう者協会
一般社団法人全国手話通訳問題研究会
一般社団法人日本手話通訳士協会
特定非営利活動法人全国要約筆記問題研究会
聴覚障害者制度改革推進中央本部事務局
〒162-0801 東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
(財)全日本ろうあ連盟本部事務所内
電話03-3268-8847 FAX03-3267-3445
公式ブログURL http://blog.goo.ne.jp/houantaisaku/
「情報・コミュニケーション法(仮称)」の骨格に関する提言
この法律は、情報アクセス、及びコミュニケーションに困難のある障害者が障害の有無によって分け隔てられることがない共生社会を実現するため、情報アクセス及びコミュニケーションが保障されるための必要な施策となる事項を定め、障害者の権利擁護と社会参加を促進することを目的とする。
[説明]
この情報・コミュニケーション法は、障害者権利条約、障害者基本法を踏まえ、情報アクセスとコミュニケーションにバリアを抱える障害者が、障害のない人たちの情報アクセスとコミュニケーションと同様の保障を実現するための法律として実現をめざしているものです。いわば、情報・コミュニケーションによって隔離される状態にならないよう、情報・コミュニケーションの観点からインクルーシブ社会(共生社会)の実現を促進するものです。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第21条 表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会 ○障害者基本法第3条第3項 地域社会における共生等
コミュニケーションを保障するために必要な手段には、言語及び言語を起点とする音声、筆談、点字、文字表示、わかりやすい言葉、拡大文字、指文字、また実物や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達があり、また手話、要約筆記、指点字、手書き文字、朗読等の通訳者や説明者等の人的支援、さらに補聴援助システムその他の情報支援技術を利用した補助代換的手段を含む。
[説明]
- 障害の定義については、障害者基本法の定義を踏襲していますが、「盲ろう」を明記し、かつ重複障害は身体機能の重複だけでなく聴覚障害と知的障害等の重複もあることを踏まえた表記にしています。
- 「コミュニケーション」の定義は、障害者権利条約の定義を用いています。この定義だけではコミュニケーション支援の方法が分かりにくいので、「コミュニケーションを保障するために必要な手段」を追加しています。
- 「言語」の定義については、障害者権利条約の定義を用いています。現在の社会は音声言語中心の社会になっています。手話その他の非音声言語は、言語として位置づけての扱いが確立されていません。その意味で大切な定義であると考えます。
- 「コミュニケーション支援等従事者」の表記については、「コミュニケーション支援等に関わる人々」のことを便宜上、まとめて表記するものです。
「コミュニケーション支援等従事者」の範囲がこれで良いかどうか、聴覚障害者団体以外の障害者団体からの意見と論議をお願いしたいと思います。①手話通訳士・者厚生労働大臣認可の手話通訳技能認定試験の合格者が手話通訳士、全国手話研修センターによる全国統一試験の合格者が地域の登録手話通訳者となっています。養成、研修事業があります。②要約筆記者手書き、パソコンの二つを含み要約筆記者の名称としてあります。養成・研修事業があります。2011年3月に厚生労働省通知の新カリキュラムへの移行と認定試験が広がる見込みです。③盲ろう者向け通訳・介助者都道府県で実施する盲ろう者向け通訳・介助者養成事業があります。④点訳者、朗読者、代読者視覚障害者、及び言語障害者を支援する者。点訳者は、「音訳者」という場合もあります。養成については奉仕員等養成事業があります。⑤知的障害者への解説等の支援等全身性障害者も含めて「コミュニケーション支援員」派遣事業をしている相模原市の例があります。知的障害者に対して筆談支援が有効とのレポートもあります。我孫子市は「失語症会話パートナー」派遣事業を実施しています。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第1条 目的 ○障害者権利条約第2条 定義 ○障害者基本法第2条定義 ○障害者自立支援法(市町村が行う地域生活支援事業)・コミュニケーション支援事業(手話通訳・要約筆記者の派遣・設置)・情報支援事業(手話通訳者の設置、盲ろう者向け通訳・介助員の派遣、点字・声の広報等の発行など)
[説明]
- 基本理念は、言語とコミュニケーション手段の使用を権利として規定するものですが、「選択する」だけでなく、「日常利用している」言語・コミュニケーション手段が権利して保障されることを明記しました。
- 差別禁止の理念については、政府の障がい者制度改革推進会議に差別禁止部会が設置され、平成25年度通常国会に障害者差別禁止法(仮称)の提出が予定されており、その動向を踏まえたものにする必要がありますが、ここでは、簡潔に「保障されない場合は差別とする」という表記にしました。
- コミュニケーションは双方向性であり、障害者と障害のない人双方にプラスとなります。したがって、その費用を障害者のみに負担させられることはあってはならないことであり、独立した条項として障害者に負担を求められないこととする規定を明記しました。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第21条 表現および意見の自由並びに情報の利用の機会 ○障害者基本法第3条 地域社会における共生等 ○障害者基本法第4条 差別の禁止
[説明]
(1)は国及び地方公共団体すべての義務について、
(2)は国の責務について、
(3)は都道府県の責務について、
(4)は市町村の責務について
と役割分担を明確に整理してみました。
(2)の2で、「国は、都道府県・市町村が実施する・・・」と、地方公共団体の表記を使っていないのは、「(3)都道府県は」「(4)市町村は」に対応する表記にしたためです。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第8条 意識の向上 ○障害者権利条約第33条 国内における実施及び監視 ○障害者基本法第6条 国及び地方公共団体の責務
[説明]
- 町内などの地域社会において、聞こえない・聞こえにくい人、目の見えない人など、情報アクセスとコミュニケーションから疎外される障害者がいること、疎外しないように努める義務があることを国民の努力義務としました。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第8条 意識の向上 ○障害者基本法第8条 国民の責務
[説明]
- 情報アクセスとコミュニケーションは、ようやく施策の一つとして認識が深まりつつありますが、これまでの障害者基本計画では、放送や災害時等の情報やコミュニケーション支援事業の狭い範囲にとどまっており、基本施策の一つという位置づけにはなっていません。そこで、障害者基本法において策定することとされている障害者基本計画において、情報アクセスとコミュニケーションが、独立した分野として位置づけ施策を策定することを規定するものです。
- 国にあっては障害者政策委員会が発足する予定であり、地方公共団体では障害者施策推進会議等が設けられていますが、その会議は音声日本語による論議であり、手話通訳や要約筆記等の通訳を介して、あるいは点字資料が用意されない場合の会議参加は、やはり大きなハンディがあります。論議についていき、なおかつ意見を出すことは並大抵なことではありません。盲ろう者からは「過酷な」論議という指摘も見られます。そのため、情報アクセス・コミュニケーションに困難のある障害者を中心とした論議の場を設けることにより、情報アクセス・コミュニケーションに困難のある障害当事者参画を保障するものです。
- 同様な理由から、この委員会において情報アクセス・コミュニケーションの権利保障の施策が推進しているのかどうか、モニタリングの役割を担うものとします。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第33条 国内における実施及び監視 ○障害者基本法第11条 障害者基本計画等
[説明]
- 以下、「医療、介護等」「教育及び療育」「職業及び労働」「施設」「相談」「文化、スポーツ及びレクリエーション」「有線及び無線による通信サービス」「有線及び無線による放送サービス」「映像及び活字による文化」「情報アクセス・コミュニケーション支援機器の開発及び整備」「防災及び防犯」「政治参加」「司法参加」の14分野、及びそのすべてに渉るものとして「移動と事業者の責務」についての施策を具体的に進めていくための事項を定めます。
[説明]
医療、リハビリテーション、介護及び保健等に関する分野は、命にも関わることであり、手話通訳派遣のニーズが一番多くなっています。しかし、コミュニケーション支援事業を利用する方法がほとんどであり、医療機関の責任による、病院の選択や医薬品について等の情報提供体制や、治療におけるインフォームド・コンセントのためのコミュニケーション保障体制がありません。このため、医療機関による情報提供、手話通訳者等のコミュニケーション支援等従事者の配置の義務づけ等の法整備が必要です。
なお、医療、リハビリテーション、介護及び保健等に関する分野の範囲に、福祉関係の施設・事業者も入れる必要があるのではないかとの意見も寄せられており、検討課題です。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第25条 健康 ○障害者権利条約第26条 リハビリテーション ○障害者基本法第14条 医療・介護等
[説明]
教育及び療育においては、特別支援学校・特別支援学級による教育の場合と普通学校で学ぶ場合、それぞれに分けて考える必要があります。
特別支援学校や特別支援学級においては、障害の特性を十分に踏まえた専門的な教育体制、情報アクセスとコミュニケーションが自由にできる環境の整備が必要です。
普通学級で学ぶ場合は、障害のない子どもたちと同じように教育を受けられるよう合理的配慮の実現の観点から必要な情報アクセス環境の整備やコミュニケーション支援等従事者の配置を用意する必要があります。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第7条 障害のある児童 ○障害者権利条約第23条 家庭及び家族の尊重 ○障害者権利条約第24条 教育 ○障害者基本法第16条 教育 ○障害者基本法第17条 療育 ○障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律 ○養護学校・特別支援学校における教育(学習指導要領)
[説明]
現在、ハローワークに設置されている手話協力員は、月7時間の稼働時間しかなく、ジョブコーチ制度と同様に、コミュニケーション支援等を中心にした職場定着への制度が必要です。
事業者の責務については、7の(14)②にすべての分野において必要なこととしてまとめていますが、障害者が生き生きと働くための職場における差別禁止、合理的配慮の実現は雇用者としての事業主の責務であり、いわゆる福祉就労、一般就労を問わず必要なこととして特に入れています。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第27条 労働及び雇用 ○障害者基本法第18条 職業相談等 ○障害者基本法第19条 雇用の促進等 ○障害者の雇用の促進に関する法律 ○手話協力員制度
[説明]
障害者が利用する施設、交通施設(移動中の情報保障を含む)すべてにおいて、音声による情報やコミュニケーションに加え、文字表示、手話、手話通訳、筆談、光、振動、さらには宿泊施設のテレビには必ず字幕機能をつけること、事業者への連絡にファクス番号案内を義務づける等、音声に頼らない情報・コミュニケーションの保障が社会的バリアフリーとして当たり前になる社会をつくる必要があります。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第9条 施設及びサービスの利用可能性 ○障害者基本法第20条 住宅の確保 ○障害者基本法第21条 公共施設のバリアフリー化等 ○高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 ○交通基本法
[説明]
障害者が相談支援を受けるためには、障害特性、使用する言語、選択したコミュニケーション手段に通じ、十分に理解している相談員の配置が必要です。障害者と直接コミュニケーションできない相談員は、その障害特性、生活実態、社会的背景等の理解に限界があり十分に対応できず、かつ、障害当事者が直接相談に行きにくいという現状があります。安心して相談をし、相談支援を受け、相談事業を利用できる環境を整備する必要があります。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第4条 一般的義務 ○障害者権利条約第28条 相当な生活水準及び社会的な保障 ○障害者基本法第23条 相談等 ○身体障害者福祉法・身体障害者生活訓練等事業・視聴覚障害者情報提供施設 ○障害者自立支援法(市町村が行う地域生活支援事業、都道府県が行う地域生活支援事業)・専門性の高い相談支援事業・サービス・相談支援者・指導事業・情報支援事業 ○地域生活支援事業実施要綱
[説明]
現状では、文化芸術活動、スポーツ・レクリエーション活動に、障害特性の理解を踏まえた言語の使用とコミュニケーション手段の選択が十分にできる環境がないため、個々の障害者が文化芸術活動、スポーツ、レクリエーションに参加できないことが多く、環境整備を行うことが必要です。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第30条 文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツの参加 ○障害者基本法第25条 文化的諸条件の整備等 ○著作権法 ○スポーツ基本法
[説明]
テレビ電話が音声での電話と同等に使えること、電話案内には必ずファクス案内も表示すること、音声電話を利用できない人の電話利用をオペレーターが即時双方向に音声言語と手話・文字等で中継支援する電話リレーサービス、インターネットを音声、拡大文字、字幕、手話等によりバリアフリーにすることなどが必要です。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第9条 施設及びサービスの利用の容易さ ○障害者権利条約第21条 表現及び意見の自由並びに情報の利用 ○障害者基本法第22条 情報の利用におけるバリアフリー化等 ○身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律 ○電子政府構築計画 ○新電子自治体推進計画 ○障害者等電気通信アクセシビリティガイドライン ○インターネットにおけるアクセシブルなコンテンツの作成方法に関する指針
[説明]
視聴覚障害者向け放送普及行政の指針に字幕、解説放送の普及目標が設定されていますが、対象時間と番組枠が決められている中での普及目標です。国会中継や災害時の臨時放送には付加されず、そして地方放送局はほとんど対応していません。また手話放送は普及目標そのものが決められていません。
聴覚障害当事者団体が中心になって設立したCS障害者放送統一機構による「目で聴くテレビ」が手話と字幕の放送を行い、既存の放送を補完する役割を果たしていますが、民間のみで運営するには限度があります。
そのため、字幕、解説放送については対象時間と番組枠をはずして100%の普及を行うこと、手話放送の付加可能な番組への普及目標を定めて普及を推進すること、補完放送の制度的確立が必要です。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第9条 施設及びサービスの利用の容易さ ○障害者権利条約第21条 表現及び意見の自由並びに情報の利用 ○障害者基本法第22条 情報の利用におけるバリアフリー化等 ○放送法 ○身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律 ○電子政府構築計画 ○新電子自治体推進計画
[説明]
DVD等の映像媒体は音声のみのため、聴覚に障害がある人は映像文化が享受できません。映画も日本映画については近年字幕スーパー版の上映も増えていますが、限られた上映館に2~3日程度のみとなっていて、ほとんど見られない状態です。映画やDVD等の映像媒体には、手話、字幕、音声解説の付加を義務づける必要があります。
視覚に障害がある人は新聞、雑誌、書籍を享受することができません。視覚障害者、ディスレクシア、学習障害者、知的障害者、精神障害者に必要なデイジー図書(Digital Accessible Information System:DAISY)の発刊・提供体制の確立が求められています。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第9条 施設及びサービスの利用の容易さ ○障害者権利条約第21条 表現及び意見の自由並びに情報の利用 ○障害者基本法第22条 情報の利用におけるバリアフリー化等 ○障害者基本法第25条 文化的諸条件の整備等 ○放送法 ○身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律 ○字幕放送普及行政の指針 ○著作権法
[説明]
情報アクセス・コミュニケーション支援機器は、利用者が少数のため、採算が取れないことから、なかなか開発が進まないか、高額になり普及が困難な現状があります。そのため、国及び地方公共団体の支援施策が必要です。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第9条 施設及びサービスの利用の容易さ ○障害者基本法第22条 情報の利用におけるバリアフリー化等
[説明]
東日本大震災の発生により、改めて、障害者に対する防災緊急連絡の体制がないことが大きな課題となっています。障害のない人に比べると障害者は2倍の死亡率というデータがあり、防災そして防犯の緊急連絡を確実に伝達し、かつ受信を確認、支援へ繋げていく施策を進めなければなりません。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第11条 危険な状況及び人道上の緊急事態 ○障害者基本法第26条 防災及び防犯 ○災害対策基本法 ○津波対策の推進に関する法律 ○水防法 ○災害時要援護者の避難支援ガイドライン
[説明]
政見放送に手話通訳付加が実現しつつありますが、字幕が認められていません。すべての政見放送に国・地方公共団体の責任で手話通訳と字幕の付加が義務化される必要があります。また、議会の傍聴に手話通訳者派遣制度が整備されつつありますが、まだ一部にとどまっています。これも要約筆記派遣は入っていません。また、岐阜県内で発声障害の議員の発言に代読者を認められなかったという問題がありました。国会中継に字幕・手話通訳が付加されていないことも含め、選挙権、被選挙権、議会活動、政治活動における情報アクセスとコミュニケーション保障が必要です。
[関連する法律]
○障害者権利条約第29条 政治的及び公的活動への参加 ○障害者基本法第28条 選挙等における配慮 ○公職選挙法 ○政見放送及び経歴放送実施規程
[説明]
刑事裁判に関しては手話通訳者配置の保障がありますが、民事裁判はその費用が本人の負担にされること、警察の取り調べ等に手話通訳者派遣の依頼を拒否され筆談での対応を強要される例が続発していること等、司法における情報アクセス、コミュニケーション保障は不充分です。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第13条 司法手続の利用 ○障害者権利条約第14条 身体の自由及び安全 ○障害者基本法第29条 司法手続における配慮等 ○裁判所法 ○民事訴訟法 ○民事訴訟費用等に関する法律 ○刑事訴訟法 ○刑事訴訟費用等に関する法律 ○刑事訴訟規則 ○犯罪捜査規範
[説明]
盲ろう者は、すべての分野において、移動の保障が必要ですが、単に移動支援だけではなく、移動の際の情報・コミュニケーション保障が一体として必要です。
事業者の責務についても、すべての分野において必要です。特に、連絡先に電話、ファクス、メールいずれの方法でも対応できること、施設や交通利用、通信と放送、映像・活字文化等にて、情報アクセスを積極的に提示していくことが求められます。その上で、情報アクセス・コミュニケーションにバリアを抱える障害者からの求めに対応する責務があります。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第9条 施設及びサービス等の利用の容易さ ○障害者基本法第21条 公共施設のバリアフリー化 ○障害者基本法第22条 情報の利用におけるバリアフリー化
○高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 ○交通基本法
国及び地方公共団体は、コミュニケーション支援等従事者の養成と認定、研修を行う。
[説明]
コミュニケーション支援等従事者は、ボランティア依存から脱却する必要があります。情報アクセスとコミュニケーションにバリアを抱える障害者の障害特性、そのバリアがもたらす生活実態や社会的背景を理解し、障害当事者の立場にたってコミュニケーション支援を行うための専門性を持つ人材として養成カリキュラムを整備し、養成と認定、さらに認定後の現任研修を行う法整備が必要です。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第4条 一般的義務 ○障害者権利条約第20条 個人的な移動を容易にすること ○障害者基本法第21条 情報の利用におけるバリアフリー化 ○身体障害者福祉法・手話通訳事業・視聴覚障害者情報提供施設(点字刊行物等の製作、点訳、手話通訳者等の養成・派遣等を行う施設) ○障害者自立支援法(市町村が行う地域生活支援事業)・サービス・相談支援者・指導者育成事業(手話通訳者・要約筆記者の養成研修、盲ろう者向け通訳・介助員養成研修等)
[説明]
コミュニケーション支援等は、国、都道府県、市町村それぞれの役割を担って全国共通の仕組みで雇用、配置する法制度の整備が必要です。
現在の手話通訳者設置・派遣事業を実施している機関・事業所については、設置・運営についての基準がなく、必要なときに派遣できなかったり、利用手続きが煩雑であったりなど利用しにくい現状があります。専門性を持つコミュニケーション支援等従事者を必要な時に必要なだけ利用できるよう、事業を実施する事業者の設置・運営基準を政令で定めることが必要です。
7の(14)②で述べた事業者の責務を果たすため、事業者はコミュニケーション支援等従事者を雇用・配置する義務があり、国・地方公共団体が助成措置を行うことが必要です。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第4条 一般的義務 ○障害者権利条約第20条 個人的な移動を容易にすること ○障害者基本法第21条 情報の利用におけるバリアフリー化 ○身体障害者福祉法・手話通訳事業・視聴覚障害者情報提供施設(点字刊行物等の製作、点訳、手話通訳者等の養成・派遣等を行う施設) ○障害者自立支援法(市町村が行う地域生活支援事業)・コミュニケーション支援事業(手話通訳者・要約筆記者の派遣・設置等)・情報支援事業(手話通訳者の設置、盲ろう者向け通訳・介助員の派遣)
[説明]
情報アクセス、コミュニケーションの保障がされないときは、6の(2)で設置する情報アクセスとコミュニケーションに困難のある障害当事者を中心とする委員会において差別であるかどうか協議し、差別であると認定した場合の救済措置を図ること、そのため、損害及び名誉を回復することを権利として明記することが必要です。
[関連する法令等]
○障害者権利条約第33条 国内における実施及び監視