情報・コミュニケーション法ができたら編(手話動画)
- 掲載日:2016/06/03
- 分類: 事務局からのお知らせ
このたび、聴覚障害者制度改革推進中央本部( http://blog.goo.ne.jp/houantaisaku )は、「情報・コミュニケーション法(仮称)」が制定されたとき、どんなことができるようになるかを身近に感じてもらうために、手話動画をアップしました。
全日本ろうあ連盟青年部中央委員の協力を得て、「医療・介護等」や「療育および教育」等、14分野ごとに分けています【全体で約46分、1分野・約3分】。
・『情報・コミュニケーション法(仮称)制定をめざして』リーフレット
・「情報・コミュニケーション法【第三次版】(2015年1月29日版)」Word版/PDF版
1 はじめに
吉田:ろう者や盲ろう者など、話す・聞く・見る・読む・認知するなどに困難がある人がいっぱいいるね。
青山:そうだね。社会では障害者に対する理解がまだまだ普及していない。でも、2011年8月に改正された障害者基本法には、第3条の3に、「言語(手話を含む。)その他の意思疎通の手段を選択する機会の確保」と「情報を取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大」が規定されたよ。だから、私たちは、障害者権利条約と障害者基本法、障害者総合支援法、これら三つに基づいて、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの権利保障に関する施策を障害当事者自ら施策提言して、その実現に取り組んでいく必要があるのよ。
吉田:そうだね。でもそれだけじゃない。困っている人たちがいっぱいいる。その人たちためにも、認めてもらえたらいいよね。
青山:そうよ。必要だと思う。
3つの法を基にして、私たちがコミュニケーション・情報アクセシビリティの権利をきちんと行使できるよう、総合的に施策を進め、この法律は必要であると政府に要求し、ひとりひとりが動いていくことが大事だよね。
吉田:情報へのアクセスなどが行き詰まっている人たちだけじゃなく、国民すべてが自由にコミュニケーションまた情報アクセシビリティを使うことができる環境が、将来社会にとってプラスになるんだよ。
青山:そうね。
2 医療、介護等
青山:今日、病院へ行ったの。でも、医者から「体調はどう?」と言われたことがない。あなたも同じ?
吉田:昨年、インフルエンザにかかった時、病院へ行ったんだ。
病院の受付へ行って、「私はインフルエンザにかかりました」と筆談をしたら、受付担当から「インフルエンザの場合、裏から入ってください」と言われた。裏へ行ったら、インフルエンザ感染防止のため、インターホンで呼び出し、確認してから、病院へ入る手順になっている。インターホンから話し声があったみたいだけど、聞こえないためわからなかったよ。ゴホンゴホンと咳をしながら、インターホンを10分ぐらい鳴らしたんだ。
青山:大変だね〜
吉田:大変だったよ…
青山:介護の話もいろいろあるけど何か知ってる?
吉田:地元のろうの高齢者と話していて、驚いたことがあるよ。昔のろう者は、文章が苦手な人がたくさんいたんだ。病院の受診では、医者が書いたものを見ても内容が難しい。薬は夜飲むとか、1日3回どう飲むかとか、細かい説明は意味がつかめず、難しい。だから面倒臭くて病院に行くのをやめてしまった。30年間受診しなかったと話していたよ。手話サークルの人から「病院へ行ったほうがいい」と言われても、聞く耳を持たなかった。ならば、みんなで一緒に行こうということで病院へ行ったんだ。その結果、8割ぐらいの高齢者はすぐ入院が必要と診断されたんだよ。
青山:そういうひどい例があったとは知らなかったわ。介護の場面では、ろう者より聞こえる人のほうが、会話がスムーズだよね。痛い、こうしてほしいなど、声を聞きながら、介護することができるわ。でも、ろう者の場合は手話が必要。話しかけられても何を言っているのかわからないでしょ。どうしても時間がかかってしまう。時間がかかるからヘルパーはろう者を嫌がるといったようなことがあるの。そうじゃなくて、情報・コミュニケーション法をきちんと整備し、ろう者について細かな情報を(ヘルパーに)示し、理解した上で介護をしたほうがよりよい環境になるわよね?
吉田:絶対そうなる!
3 療育及び教育
吉田:あっ、そうだ!僕、以前、地域の学校へ通っていたとき、先生が何を話しているかわからなくて困ったんだ。あなたも同じ経験あった?
青山:そういうこと、あったわ。最初は聾学校に入って、しばらくして地域の学校に転校したの。インテグレーションの経験があるわ。聾学校内では、もちろん情報が保障されている。でも疑問がひとつあったの。それは何かというと…同学年にろうの親がいた。PTA、先生との懇談など参加が必要な場面があるでしょ。ろうの親と聞こえる親たちと先生と話し合う時、最初は手話通訳がいなかった。手話通訳が必要かどうかという話も全くでなかった。その時、ろうの親が、これはおかしいのでは?手話は必要なのではないか?と考えて、手話通訳は絶対必要!と交渉し続けた結果、手話通訳をおくことができたの。それ以来、コミュニケーションがスムーズになったという例があるわ。聾学校だから十分保障されているとは限らない。本当は足りない部分があったんだと初めてわかったのよ。
吉田:情報・コミュニケーション法ができたら、授業は手話で教える。生徒たちは手話で学ぶ。手話を習得できるという環境に変えることができるんだ。
青山:そうよね。変えられるよね?
吉田:そう!よし!
4 職業及び労働
吉田:今働いてる?
青山:そうそう、働いてるよ。
吉田:会議にも参加してる?
青山:参加しているよ。ときどき。
吉田:どうやって情報を得ているの?会議に参加すると、聞こえる人みんな口話で話しているだろ。話している内容わかる?
青山:私の所属しているチームの人数は少ないから、パソコンテイクを見ながら会議しているわ。
吉田:会議中に意見は出せるの?パソコンテイクが遅れて、先に話が進んでしまい、自分の意見を出せないときがあると思うけど大丈夫?
青山:たまたまだけど、ろう者は私だけではなくもう1人いるわ。ちゃんと聞かれて、自分の意見も言えているわ。
吉田:少人数なら大丈夫だけど、多人数の場合は難しいよね?
青山:そうそう。難しい。本当に大事な内容の時は手話通訳を付けてほしいと申請するの。認められなかった場合は、パソコンテイクまたはノートテイクでフォローしてくれることになるわ。
吉田:そうなんだ。
青山:そちらはどう?
吉田:俺の場合は多人数なんだ。君と同じくパソコンテイクになる。2時間の会議で、報告が多く、意見交換もある。自分はパソコンテイクをずっと見ているだけでしんどい。それで、上司と相談して、この方法では会議に参加しても意味がないから、会議の結果をまとめた書類がほしいと要望したら認めてくれたんだ。
青山:多人数での会議で、出てくる意見を把握したい気持ちはある?
吉田:会議の内容を全部パソコンテイクするのは今の状況では難しい。決まった内容とか一部のみパソコンテイクされるんだ。会議で話している間はパソコンテイクも止まっているから、その場にいても経過はわからない。ただ決まった内容だけパソコンテイクされる。それなら、ほかの仕事をしていて、決まった内容をまとめた書類をもらう方法のほうが、精神的にもいいね。
青山:わかるけど、やっぱりきちんと経過を把握したうえで、どのように仕事を進めていくかということが大切だと思うわ。だから知る権利が大切よね?
吉田:確かに考えてみれば、経過を知らないと将来、昇進が難しいのでは?と悩むことあるよ。2時間の会議が1日に1~2回あってそれが毎日続く。昇進するためには、それに耐えられるかどうか迷いがあるな。
青山:ろう者と聞こえる人との差は大きいよね。
会議とは別に、研修を受けるときに何か差別を受けた?
吉田:会社に入ったとき、研修をいくつか受ける必要があると言われた。1回目の研修を受けたとき、仕事に関する講義だったけど、さっぱりわからなかった。手話通訳依頼を会社にお願いしたけど、社内機密などの関係で外部の人を呼ぶのは難しいと言われた。しかたなく通訳なしで参加して集中して口話をみたけど、やっぱり専門用語ばっかり話されて口話はわからなかった。そのあとテストがあり、研修内容を聞かれたけど書けなかったよ。研修はそれだけではなく、ほかも受ける必要がある。でももう、研修を受ける気はなく、受けてもまた無駄な時間を過ごしてしまうから研修は断ってるよ。ただその研修を全部受けないと昇進はできないんだ。聞こえる同期はどんどん昇進しているのに俺だけそのままで、給料も差が出てくる。つらいよ。
青山:ねぇねぇ、職場に若い人っていっぱいいるよね。
吉田:うん、いるけど、つまんないんだよ。
青山:つまんない?どうして?
吉田:昼休みに職場のメンバーで食べに行くんだけど、聞こえる人の会話が分からなくて、結局1人で黙って食べているんだ。
青山:そうそう、分からなくて、離れるよね。
吉田:1人で食べたほうが気が楽なんだけど、一緒に行くか迷うんだよね。
青山:分かる、分かる。
吉田:それだけじゃない。飲み会もしんどい。
青山:あるある、私も経験あるよ。都合が悪いのですみませんって断ることが多いの。
吉田:そうそう、俺も同じ。会社に入ったときの歓迎会は断れなかったな。上司が退職するときは、凄くお世話になったから、礼儀として参加したんだ。盛り上がってたみたいだけど、全然わからなかったな。だからといって、スマホをいじるわけにもいかないしね。
青山:二時間だよね。
吉田:二次会、三次会まであるんだよ。
青山:飲んで食べるだけね。食べることに集中するよね。
吉田:お酌もするよ。
青山:そっか。男性は大変ね。女性だけで飲むのとは違うわね。
吉田:それで二時間は長い!
青山:きついね。
吉田:まあね。
青山:本当にそうだよね。同じような悩みを持ったろう者は全国各地にたくさんいると思うの。もし情報・コミュニケーション法ができたら、もっと良くなるよね。
吉田:うん。飲み会じゃ難しいかもしれないけど、職場の会議の時は、内容が分からなくて。書いてはもらうんだけど、なかなか意見を言えないよね。
青山:しかも簡単に、かなり要約されているわ。
吉田:そう。だから、もし情報・コミュニケーション法ができて、職場に手話通訳者が設置される様になれば、いつでも仕事中に手話通訳してもらえて助かるんじゃないかなと思うんだ。
青山:うん、いいわね。手話通訳が付いたらすごく嬉しいし、仕事が楽しくなると思うわ。それだけでなく、勉強とか研修とかもっとやろうって気持ちになるわね。
吉田:そうだね。
5 施設
青山:ねぇねぇ、私、会議とかで全国各地に行くことがあるんだけど、不満に思っていることがあるの。
吉田:何?
青山:たとえば、泊まるホテルでテレビをつけるの。部屋に入って、部屋の中をひと通り見渡して、次にテレビをつける。なぜか、テレビの字幕が表示されている、されていないというのがまちまちなの。本当はリモコンに字幕ボタンがあるんだけど、ホテル内の設定が統一されていて、自由に変えられない様なところがあるのね。仕方なく、字幕なしで何を言っているのかわかんないまま観ているんだけど、退屈するってことが多いわ。
吉田:へぇ。
青山:不満なの。
吉田:恥ずかしい話だけど、僕も同じように全国各地に行くことがある。地方に行くとき、6両の電車に乗ったんだ。途中の駅で、前の3両は先に行って、後ろの3両は戻る。前方部分は進んで、後方部分は戻る、という電車で、僕は後ろの車両に乗っていた。電光掲示板がなかったんだよ。大丈夫と思って乗っていたら、後ろに動き始めて、おかしいと思って、慌てて次の駅で降りたけど、次の列車まで時間がある。1時間ずっと待つことになった。そういう経験がある。
青山:大変だったね。
吉田:ちゃんと、情報として電光掲示板をつけてほしいね。
青山:そうよね。日本では、東京、大阪、京都など、大都市には、だいたい電光掲示板があるわ。地方にもろう者はいるでしょ。そこでも、きちんと制度があれば、もっと住みやすくなるよね。
吉田:案内がちゃんと表示されていれば安心だよ。
青山:そうだね。
6 相談
吉田:聴覚障害者協会、聴覚障害者情報提供施設に相談員がいること、知っている?
青山:うん。知ってるよ。でも私の家からは遠いの。だから困ったことがあって相談に行きたくても行きにくいんだよね。
吉田:相談員だけではなく相談できるところも、もっといろんなところに必要だね。
青山:そうそう。施設が近くにできたらすごく助かる。
吉田:実際、相談する内容が幅広くて、年金、税金、近所付き合い方法、結婚、葬式、遺産相続などの相談があるね。
青山:実は、前に詐欺に遭ったことがあるの。金額は小さかったけど、経験があるのよ。だまされたとわかったら、警察署に行って相談が必要でしょ。被害届を出さなければならない。どういう状況だったかを簡単に話して、最終的に犯人が分かったとき、警察から電話がかかってくるのよね。でも、ろう者は電話を受け取れないでしょ。メールかFAXでお願いしますと伝えたら、無理といわれて断られたの。結局、仕方なく、両親が聞こえる人だから、両親の電話番号を書いて、電話してもらったわ。ろう者もいろいろトラブルにあっているのよ。
吉田:そうそう。それだけじゃない。例えば、子どもがろうだった場合、聞こえる人に囲まれていじめにあっていても、相談員のことを知らないから、親も含めて相談できないことが各地で起きている。見えない部分もきちんと変えていく必要があるね。
青山:そうね。全国各地のろうあ協会に相談員がいることを知っていればいいけど、知らない場合は、相談できないケースとなる。相談員の数はまだまだ少なくて、みんな専門知識が深いというわけでもないし。
吉田:情報・コミュニケーション法ができたら、たくさん相談員が増えることになるね。
青山:相談しやすい環境に変わるよね。
7 文化、スポーツ及びレクリエーション
青山:バスケやってるよね。
吉田:うんバスケやっているよ。プロの試合を見に行ったとき、例えば会場に入るときすごく並んでいて、ずっと待っていたら、並んでいた客が別のところに移動したので、入口が2つできたのかなと思って、その列についていったら違ったんだ。サイン会だった。せっかく並んだのに。スポーツだけではないけど、並んでいるとアナウンスあるよね。情報が入らないからわからないんだよ。あなたもある?
青山:あるある。スポーツはあまりしないし、得意ではないけど、芸術とか読書が好き。
吉田:見た目通りだね。
青山:そうそう。よくわかったね。コンサートとかもよく行くわ。
吉田:コンサート行くんだ。
青山:前に経験したことといえば、歌はろう者にとってはわからないことだけど好きなろう者もいるわ。カラオケとか(もそうだけど)。曲には色々ジャンルがあるよね。見てるとなんとなく雰囲気でわかる。今はこんな曲かなと、想像しながら見るの。でも1人で見に行くとやっぱりわからない。それと、幕間(休憩)でトークとかしているよね。とてもおもしろい時があるけど、手話通訳ないし、スクリーンには字幕もない。みんなは盛り上がってて私だけ仲間はずれって感じたわ。きこえる人と一緒に行って少しだけ内容を教えてもらったりしているけど、いつでもだれでも行けるような環境ならいいなと思うときがある。
吉田:もし情報・コミュニケーション法ができたら良くなるかな?
青山:うん。良くなると思うわ。字幕の技術が上がるし、わかりやすい表示を工夫するなど、すごく変わると思う。
吉田:なるほど。期待したいね。
青山:スポーツも変わると思うわよ。もっともっと。
吉田:そうだね。実際は何を言っているかわからない時がある。スポーツ観戦の時、もししっかりと情報保障があれば、今どんな状況なのか、その時その時の話がわかればもっとスポーツが面白くなると思うな。
青山:そうだね。
8 情報通信アクセシビリティ
吉田:情報アクセシビリティの部分で困ったことある?
青山:んー。いろいろあるけど1つある。パンフとかチラシに電話番号だけ記載されていることが多いの。それは困るわ。
吉田:そうそう。あるよなー
青山:例えば、ピザとかうどんとかの宅配チラシがポストに入っていることが多いよね。気になって読んでみたけど、電話番号しか記載されていないの。だから、いつもおいしそうと思いながら読んで捨てているのよ。
吉田:だから俺はいつも店に行って買い、持ち帰ってるよ。
青山:わざわざ店へ?
吉田:面倒くさいけどね。でも食べたいし。電話できないので仕方ない…
青山:そうなんだ。他になんかある?
吉田:うーん。そうそう、マクドナルドにはドライブスルーがあるよね。マイクに向かって注文するでしょ。俺の場合は車を駐車場に停めて買いに行ってるんだ。または、空いていたら、マイクで注文をせず直接会計窓口まで車を進める。マイクでの注文を無視してね。会計窓口に行くと店員がびっくりするけど、ろう者であることを説明したら店員が納得して、窓を開けてくれた。やっぱりそういうところが不便。
青山:そうなんだ。普段車を使わないから話を聞くとなるほどねと思うわ。
吉田:でも車が後ろに並んでるのにそれを無視して直接会計窓口に行くのは無理。後ろの人が注文したものが出てきちゃうからね。
青山:あら。それはやめたほうがいいわね。もう大人でしょ。
吉田:自分で注文できる環境が必要なんだ。
青山:そうね。小さいことでも足りないところがたくさんあるよね。
吉田:確かにあるね。
青山:最近いいサービスが始まったの、知ってる?
吉田:ん?知らないよ。何?
青山:1〜2年前から試用が始まった、電話リレーサービスって聞いたことある?
吉田:名前だけ聞いたことあるな。
青山:ろう者があるところに連絡とりたい場合、スマホを使って、聞きたい内容、相手の電話番号を(電話リレーサービスを行っているところに)メールすると、オペレーターが代わりに相手に電話するサービスよ。でもまだ試用中なので時間に制限はあるの。けど使ってみてよかったという声が多かったら、いつかは本格的に運用されるかもね。
吉田:今はまだ試用中なんだ。
青山:そうそう。
吉田:だから、いろんな人がたくさん使って、必要性をPRしていけばいいんだね。
青山:そうそう。
吉田:なるほど。今度使ってみよう。
青山:他に何かあったら教えるね。
吉田:電話リレーサービスの話を聞くと確かに便利だけど…
青山:そうそう。便利だと思うよ。
吉田:例えば、高齢者の場合は文章が苦手だったり、若い人でも機械が苦手だったりする人がいるだろ。その場合はどうするんだ?
青山:大丈夫。高齢者の場合はテレビ電話というものがあるのよ。メールで連絡して、アプリを使ってテレビ電話で、オペレーターが通訳しながら電話するという方法よ。
吉田:テレビ電話使ってリレーサービスできるんだ。へー。便利だね。
青山:情報・コミュニケーション法ができたら、そのサービスだけでなく、チラシにも電話番号の他にFAX番号やメールアドレスの記載が義務的になるわ。
吉田:なるほど。なるほど。便利だね。俺の家でもガスや電気のお知らせは、ほとんど電話番号だけだしね。メールアドレスやFAX番号が載っていたら自分でも連絡できるし。なるほどね。期待したいね。
青山:そうそう。期待できるよ。
吉田:頑張ろう。
青山:そうそう。頑張らなきゃね。
9 放送アクセシビリティ
青山:最近、東京周辺は地震が多くて不安だわ。
吉田:東日本大震災の時、ろう者は情報がなく大変だったな。きこえる人は、防災放送などで避難情報を得られたけど、ろう者は全くわからず、きこえる人についていくまま。避難所でも、配給の時間など多くの情報が分からず大変な思いをしたと聞いているよ。
青山:私も同じような話を聞いたわ。テレビの字幕をリアルタイムで準備してほしいけど、今はまだ難しいわね。東日本大震災前はテレビに手話通訳もなかったけど、震災がきっかけで少しずつ配慮されるようになってきたわ。もっと前から、情報アクセシビリティの配慮をしてほしいと思っていたけどね。
吉田:もし、情報アクセシビリティが確保された場合は、どんなことが期待ができるかな?
青山:今はまだテレビ字幕が100%確保されていないわね。特に地方局の場合はあまり付いてない。もし情報・コミュニケーション法が出来たら、全てのテレビ字幕が義務付けられるわ。
吉田:避難所の場合は、停電だとテレビが使えない。きこえる人の場合は、ラジオで情報を得られるけど、ろう者の場合は避難所に手話通訳を設置したり、事前に避難マニュアルを準備しておく等が必要になる。
青山:そうすれば、迅速な対応、そして被害も最小限に抑えられるだろうしね。変えていって欲しいね。
吉田:そのとおり!
10 映像及び活字による文化
吉田:最近の映画は、字幕がほとんど準備されているね。日本映画は字幕が無いのもあるけど、外国映画はほとんど字幕があって良いね。満足!
青山:満足しているの?私はまだ足りないわ。確かに外国映画は字幕付きが多いけど、日本映画は足りない。本当はたくさんの良い日本映画があるのに。DVD借りようと思っても字幕がないのが残念。
吉田:ええ?俺借りたやつには字幕あったよ。
青山:それたまたま!まぐれよ!
吉田:本当?
青山:うん。日本映画もテレビも、もっともっと字幕を増やして欲しいわ。テレビは前に比べたら字幕が増えたけど、ニュースとか生放送はまだまだ字幕付きが少ない。あっても、間違いとか遅れもあるしね。音声と字幕がリアルタイムで、つまり同時配信できこえる人と同じように情報を得て、笑いたいよね。
吉田:そうだね。情報・コミュニケーション法ができたら、字幕の義務化も進んで、技術も向上すると思う?
青山:向上するわ!東京や大阪のような大都市のテレビ局は予算も多いから、テレビ局内で字幕をつけることが出来るらしいの。
吉田:へえ、そうなんだ!
青山:でも、地方局番組は字幕が無いのが多い。字幕付きが義務化されることで、今よりも確実に字幕番組が増えることが予想されるわね。
吉田:100%!!
青山:目標100%!!字幕だけでなく、手話も必要!今は、手話通訳の画面が小さい。もっと大きくして欲しいわ。IT技術の向上などで、年齢関係なく全ての人が満足出来るようになると思うの。
吉田:元画面より手話通訳の画面の方を大きくできたらいいな。
青山:画面設定の切換等で、画面の大きさを選べるようになるといいね。
吉田:ろう者字幕等があるけど、盲者の場合はどうする?
青山:音声が大切だよね。点字もあるけどわかる人も勉強中の人もいるし。本を読みたくても読めない。音声解説とか音声情報も必要。
吉田:字幕も音声解説も100%を目指していこう!
青山:最近、知った障害があるの。見る、聞く、学ぶことができて、身体の不自由もなく見た目は障害者とは分からないんだけど、、
吉田:それ、健常者じゃん!
青山:と思うでしょ。でも、文が読めなくて、書くのが苦手なの。
吉田:それ、障害っていうの?
青山:ちゃんと名前もある障害だよ。ディスレクシアといって、最近の研究で判明した障害。たとえば、ある人は小学生の時、漢字やひらがなの覚えが悪いと言って怒られたりいじめられたりしてた。でも会話やスポーツは何も問題がないの。夜遅くまで勉強して努力しても、覚えられない。その人が大人になった時、ディスレクシアという障害があるんだということを知って、号泣したらしいわ。彼らのためにも情報・コミュニケーション法は必要と思うの。
吉田:なるほど。
11 情報アクセス・意思疎通支援機器の開発及び整備
吉田:手話通訳、要約筆記をすぐ依頼したいときあるよね。それができないときがある。例えば急に来訪者があったときや、交通事故で警察がきたとき。すぐ話しかけられるけどきちんと情報が必要だから、手話通訳等を派遣依頼する。だけど派遣調整に時間がかかり、やむを得ず、聞こえる人同士で話しを進められてしまい、情報を知りたいのに放置されるときがあるよね。
青山:あるある。学校の先生が子どもについて相談したいからと、いきなり家庭訪問でやってきてしまい、手話通訳依頼ができなくて焦ってしまうこともあるわ。例えば、相手の声を文章や手話に変えてもらえるスマホのアプリやソフト、機器などがあるとすごく便利だと思うの。
吉田:そのために法律が実現できれば、きちんとした情報を得るための環境整備ができるはず。
青山:そうそう。すぐ情報を得ることができるよね。
吉田:うんうん。
青山:ねぇ、最近企業で研究中のメガネ型端末、知ってる?
吉田:なにそれ?どんなもの?
青山:かけてみると、周囲が見えるだけでなく、メガネのレンズに文章とか出てくるの。
吉田:なるほど~
青山:もし将来、聞こえる人にも使いやすくなれば、演劇とかでは今は字幕を付けるのは費用が掛かるので大変だからやらないところが多いけど、メガネ型端末があれば、気軽に買えて、字幕表示で内容を把握できるよね。
吉田:ほうほう、なるほど。
青山:そうなの。良いよね。
吉田:重い病気で寝たきりのまま10年ぐらい入院していて、コミュニケーションができないという人を最近テレビで見たんだ。それでわかったのは、目の動きに合わせて文章作成できる機械を作る研究があるそうで、将来それが広まっていけばいいなと思った。
青山:支援者は確かに必要よね。でも、機械を使うことも、将来のため、技術研究しなければならないわね。
吉田:そうだね、2つ同時に進めばいいね。
青山:必要ね。
12 防災及び防犯
青山:最近、日本のあちこちで地震が起きて心配だわ…怖いんだけど。
吉田:東日本で地震が起きたよね。
青山:そうね、あの時は怖かったね。
吉田:いつ地震が起きるかも分からない。
青山:そうよね。
吉田:地震だけでなく、火事や殺人事件などが起きた時も。今、俺はアパートに住んでいるけど、隣や上下の階はきこえる人が住んでいるんだ。
青山:私もそう。
吉田:だからコミュニケーションが出来ない。もし、火事が起きたら、きこえる人たちは一斉に避難するけど、自分はそのまま居続けることになる。
青山:ずっと居るわね。
吉田:自分だけ気づかなくて、そのままだったら死んでしまう…、たまらんね。
青山:死んじゃうよね。さよなら…
吉田:いやいや、生きたいよ。
青山:そうそう、助けてもらうのは必要よね。
吉田:情報・コミュニケーション法ができたら、私は生き続けられるかな?
青山:大丈夫、大丈夫。
吉田:どうなるの?
青山:手話通訳はもちろん、マニュアルを作れば、災害対策として誰がどこに住んでいるか整理できるし、また情報アクセシビリティに関する知識を広めれば、みんなの意識が変わっていくと思うわ。
吉田:もし広まっていけば、隣にいるきこえる人もろう者がいることを知らせることができて、何か起きたときに助けてくれる、というように、環境も変わっていくよね。
青山:変わっていくと思う。期待したいわ。
吉田:よかった。ボク、生き続けられるよ。
青山:うん、生き続けられる。
吉田:ホッ、ありがとう。今後を期待して生きていくよ。
青山:うん、そうだね。
13 政治参加
吉田:最近、国会とかで議員がいろいろ発言しているね。政治関係の情報、持ってる?
青山:見ているよ。でも、う〜ん…(字幕なくて)分からないから他の番組に変えているわ。
吉田:確かに面白くないね。話分からないし。俺の地元では、月1回議員と手話通訳を呼んで、ろう者と意見交換を行う機会があるんだ。
青山:すごい。
吉田:国会議員が、私はこういうことをやります!と意思表示していても、ろう者は情報をもっていないので、その人に投票して良いかどうか…情報をきちんと把握する必要があるよな。情報・コミュニケーション法ができたら、議員の情報だけでなく、難しい言葉もろう者も分かる言葉で話されたら、選挙にも参加できるのでは?
青山:そうだね。意見交換する場だけでなく、テレビの演説も。手話通訳のワイプ、昔はついていなかったから見ていても分からなかったな。手話通訳をつけてもらえれば分かるのよ。
吉田:そうそう。地元で意見交換をできる議員といっても1人、1つの党だけ。もし、複数の議員がいたら、また(手話通訳を)呼ぶことになり、面倒だな。きこえる人と同じように、議員の演説の中身など、全ての情報が分かるような環境になって欲しいよ。
青山:そうなれば、いつか政治に無関心にはならず、日本人として政治に関わっていくことにも繋がるね。
吉田:最終的には、議員になる障害者も増えていってほしい。ボクもなりたいけど、頭悪いから難しいな。
青山:もっと勉強したら?教えてあげる!
吉田:いやームリムリ…
14 司法参加
青山:ねえねえ、捕まったことあるの?ヤダー
吉田:いやいや。警察での取り調べなどや司法関係について、先輩と話したことがあるんだよ。もし、罪を犯したろう者が刑務所に入ってしまったら、そこでの生活についてもちゃんと情報保障されるのか…。地元で、罪を犯したろう者が、例えば家族や友達などとの面会の際、手話が使えず筆談しかできないことで、追い出されたという話があったんだ。
青山:なんで?!手話は必要よ!
青山:刑務所だけでなく、裁判所での弁護についてもそうだよね。日本にはろうの弁護士が何人かいるけど、身近にいて相談できるわけではない、まだまだ足りないと思うわ。また、裁判員制度が始まって、裁判員に選ばれたろう者もいたのよ。
吉田:いたの?
青山:うん、いたいた。でも、裁判で話を進めている間、手話通訳に(専門的な)知識がないとついていけなくて大変。さらに、裁判員だけで審議する場があるんだけど、意見を交換する際、進行が早すぎたために手話通訳がついていけなくて、自分の意見がなかなか言えずに終わってしまったという例もあったの。専門性の必要な場においても情報保障は必要だと思うわ。
吉田:事故に遭ったとき、自分(ろう者)は悪くなく、相手(きこえる人)が悪い(状況)としても、警察が来たとき、相手と警察だけで、自分が悪いみたいに話を進めて、自分の罪が重くなって、相手に弁償してしまうという話を先輩から聞いたんだ。情報・コミュニケーション法ができて、情報を入手しやすくなることで、きこえる人と対等でいたいと思うね。
青山:そのために情報・コミュニケーション法の制定が必要になってくるね。一緒に頑張ろう!
吉田:よし!頑張ろう!
15 まとめ
吉田:先ほどまで私と青山さんで話していましたが、いかがでしたか?また、現在の法律制定への進捗についてお話しいただけませんか?
小中さん:たくさんお話しされていてすごく良かったよ。
吉田・青山:ありがとうございます!
小中さん:情報・コミュニケーション法のパンフレットを配ったのを知っているかな?
吉田、青山:知っています。
小中さん:パンフレットの名前は何かな?
吉田:何だったっけ…
小中さん:「We loveコミュニケーション!」パンフレットだよね。
吉田、青山:そうです。
小中さん:私(ろう者)、また盲、知的障害、みんな、きこえる人と同じように一緒にコミュニケーションをとる、情報提供する、アクセスする、交渉することが大事ですよね。不備、不便がたくさんあり、読む、見ることにいろいろな限界があって、支援が必要な人もたくさんいます。そのことを社会はまだまだ分かっていません。本当に理解した上で、基本的な考え方や理念、アクセスできる社会、環境をつくることから、支援するために必要な機械、また、人、手話通訳者や要約筆記者など、そういったいろんな分野について、きちんと法整備していく、それを少しずつ進めていく、まだバラバラだけどまとめて明確に1つにした法律にしていく必要がありますよね。まず、みなさんには内容を知って欲しい。何が不便かを知って欲しいですね。そして、解決方法を一緒に考えていく、一緒に運動していくことが必要だね。
吉田、青山:そうですね。
小中さん、吉田、青山:頑張っていこう!