10月16日に法務省と最高裁判所へ「裁判員制度に関する要望」を提出



10月16日に法務省と最高裁判所へ「裁判員制度に関する要望」を提出
10月16日(木)に、安藤理事長と西滝手話通訳対策部長が、法務省と最高裁判所に対し、聴覚障害者が裁判員に選任された場合の対応について、全国手話通訳問題研究会及び日本手話通訳士協会と共に検討した要望書を提出しました。(写真左)法務省刑事局総務課裁判員制度啓発推進室 室長 川原隆司 氏。要望書本文は以下から。

連本第080436号
2008年10月16日

法 務 大 臣
 森 英介 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話 03-3268-8847・FAX 03-3267-3445
財団法人 全日本聾唖連盟
理事長 安 藤 豊 喜

裁判員制度に関する要望

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、2009年5月より裁判員制度がスタートするにあたり、障害者が裁判員に選任された場合、国としての配慮については鋭意その対応についてご検討いただいていることと存じますが、聴覚障害者が選任された場合の情報保障等について、下記のとおり要望いたします。

  1. 手話・文字表記などの情報保障について
     聴覚障害者が裁判員の候補者として呼び出しを受け、面接の時から情報保障は必要となります。事前質問票に手話通訳・パソコンによる文字通訳などの希望を記入する欄を設け、本人が選択できるようにしてください。
    (説明)
     聴覚障害者のコミュニケーション手段については、手話、口話(発音発語・読話)、残存聴力活用(補聴器利用)、要約筆記などがあり、個々の状況によってコミュニケーション手段は異なっています。本人が希望する情報保障の手段を選択できるようにすることが必要です。
  2. 手話通訳の依頼方法について
     手話通訳者の派遣については、手話通訳士を基本として、聴覚障害者情報提供施設等、都道府県における手話通訳等の派遣事業を行っている機関が派遣するシステムにしてください。
    (説明)
     現在、手話通訳者の派遣は、聴覚障害者情報提供施設や都道府県の聴覚障害者協会、聴覚障害者が関わる派遣センターなどが担っています。これらの機関では、手話通訳者の養成や登録試験も行っており、手話通訳者の派遣に関して十分な知識とノウハウを持っています。これら、現存のルートに乗って手話通訳者を派遣することが妥当であり、スムーズな派遣ができるものと考えます。
     手話通訳士は平成元年に制定された厚生労働大臣公認の資格です。裁判員制度では正確な情報保障を確保するため、(手話通訳技能の程度により情報が歪んで伝わったり不正確であったりすることがないよう)公的評価を得た有資格者の配置が必要です。
  3. 継続した期間同じ手話通訳者の確保のための配慮について
     一つの案件を担当する手話通訳者は、より良い情報保障のために同じ手話通訳者が担当できるよう特段の配慮をお願いします。
     また、公務員が裁判員制度に関する手話通訳を担うことができるよう配慮をお願いします。
    (説明)
     現在、手話通訳者や手話通訳士の中に手話通訳を専門の職業としている人は少ない状況です。これは、日本の手話通訳者が奉仕員的活動からスタートしていることもあり、その身分保障が十分ではないからです。そのため、別の職を持ちながら、土日や夜間の時間に手話通訳活動をしている方が多くいます。これらの方々が、仕事を休んで裁判員に関わる手話通訳を行うことに対しては、社会的な理解が必要です。裁判員として会社を休むことへの理解が得られることと同様に、手話通訳士が手話通訳を行うために会社を休むことなどへの、特段の配慮をお願いします。
     また、手話通訳士の中には、公務員の方も多くあります。手話通訳士の確保のためには、行政で働く手話通訳士も裁判員制度に関する手話通訳を担うことができるよう、関係行政機関に対して国からの通知を出していただけるようお願いします。
  4. 手話通訳者(士)の謝金について
     一定の技術を有する手話通訳者(士)への謝礼金については、全国統一の謝金を準備するよう、地方裁判所への通知を出してください。
    (説明)
     手話通訳士は厚生労働大臣が認定した全国統一の資格です。地域によって手話通訳謝金が異なることがないよう、全国統一の謝金を準備するよう要望します。
     その金額については、1時間当たり2万円以上が妥当と考えます。
  5. 手話通訳等についての研修の保障について
     裁判員候補の聴覚障害者及び裁判員制度に従事する手話通訳者等が職務の適切な執行のために、裁判所の責任において研修の場を保障することが重要です。必要な予算措置をおこなうとともに、研修プログラム等につきましては手話通訳等派遣機関及び全国手話研修センターと十分協議してください。
    (説明)
     聴覚障害者のコミュニケーション方法は様々であり、聴覚障害者が裁判員候補に選ばれたときから手話通訳者等とともに裁判員制度の基本的な知識や手話通訳技能等の研修の場を設け意思疎通等が滞りなくおこなわれるようにしなければなりません。
  6. 障害者対応部門の設置について
     本年8月から全国の地方裁判所に裁判員担当の部署が設けられていますが、その中に障害者裁判員候補者へのサポート対応などをコーディネートする部門を設け、障害者が安心して裁判員の責務を果たせるようにしてください。
    (説明)
     障害者への対応は専門的な知識や技能が必要です。コーディネート的役割を果たす職員は手話通訳技術に長けている人を配置してください。

連本第080437号
2008年10月16日

最 高 裁 判 所
 長官 島田 仁郎 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話 03-3268-8847・FAX 03-3267-3445
財団法人 全日本聾唖連盟
理事長 安 藤 豊 喜

裁判員制度に関する要望

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、2009年5月より裁判員制度がスタートするにあたり、障害者が裁判員に選任された場合、国としての配慮については鋭意その対応についてご検討いただいていることと存じますが、聴覚障害者が選任された場合の情報保障等について、下記のとおり要望いたします。

  1. 手話・文字表記などの情報保障について
     聴覚障害者が裁判員の候補者として呼び出しを受け、面接の時から情報保障は必要となります。事前質問票に手話通訳・パソコンによる文字通訳などの希望を記入する欄を設け、本人が選択できるようにしてください。
    (説明)
     聴覚障害者のコミュニケーション手段については、手話、口話(発音発語・読話)、残存聴力活用(補聴器利用)、要約筆記などがあり、個々の状況によってコミュニケーション手段は異なっています。本人が希望する情報保障の手段を選択できるようにすることが必要です。
  2. 手話通訳の依頼方法について
     手話通訳者の派遣については、手話通訳士を基本として、聴覚障害者情報提供施設等、都道府県における手話通訳等の派遣事業を行っている機関が派遣するシステムにしてください。
    (説明)
     現在、手話通訳者の派遣は、聴覚障害者情報提供施設や都道府県の聴覚障害者協会、聴覚障害者が関わる派遣センターなどが担っています。これらの機関では、手話通訳者の養成や登録試験も行っており、手話通訳者の派遣に関して十分な知識とノウハウを持っています。これら、現存のルートに乗って手話通訳者を派遣することが妥当であり、スムーズな派遣ができるものと考えます。
     手話通訳士は平成元年に制定された厚生労働大臣公認の資格です。裁判員制度では正確な情報保障を確保するため、(手話通訳技能の程度により情報が歪んで伝わったり不正確であったりすることがないよう)公的評価を得た有資格者の配置が必要です。
  3. 継続した期間同じ手話通訳者の確保のための配慮について
     一つの案件を担当する手話通訳者は、より良い情報保障のために同じ手話通訳者が担当できるよう特段の配慮をお願いします。
     また、公務員が裁判員制度に関する手話通訳を担うことができるよう配慮をお願いします。
    (説明)
     現在、手話通訳者や手話通訳士の中に手話通訳を専門の職業としている人は少ない状況です。これは、日本の手話通訳者が奉仕員的活動からスタートしていることもあり、その身分保障が十分ではないからです。そのため、別の職を持ちながら、土日や夜間の時間に手話通訳活動をしている方が多くいます。これらの方々が、仕事を休んで裁判員に関わる手話通訳を行うことに対しては、社会的な理解が必要です。裁判員として会社を休むことへの理解が得られることと同様に、手話通訳士が手話通訳を行うために会社を休むことなどへの、特段の配慮をお願いします。
     また、手話通訳士の中には、公務員の方も多くあります。手話通訳士の確保のためには、行政で働く手話通訳士も裁判員制度に関する手話通訳を担うことができるよう、関係行政機関に対して国からの通知を出していただけるようお願いします。
  4. 手話通訳者(士)の謝金について
     一定の技術を有する手話通訳者(士)への謝礼金については、全国統一の謝金を準備するよう、地方裁判所への通知を出してください。
    (説明)
     手話通訳士は厚生労働大臣が認定した全国統一の資格です。地域によって手話通訳謝金が異なることがないよう、全国統一の謝金を準備するよう要望します。
     その金額については、1時間当たり2万円以上が妥当と考えます。
  5. 手話通訳等についての研修の保障について
     裁判員候補の聴覚障害者及び裁判員制度に従事する手話通訳者等が職務の適切な執行のために、裁判所の責任において研修の場を保障することが重要です。必要な予算措置をおこなうとともに、研修プログラム等につきましては手話通訳等派遣機関及び全国手話研修センターと十分協議してください。
    (説明)
     聴覚障害者のコミュニケーション方法は様々であり、聴覚障害者が裁判員候補に選ばれたときから手話通訳者等とともに裁判員制度の基本的な知識や手話通訳技能等の研修の場を設け意思疎通等が滞りなくおこなわれるようにしなければなりません。
  6. 障害者対応部門の設置について
     本年8月から全国の地方裁判所に裁判員担当の部署が設けられていますが、その中に障害者裁判員候補者へのサポート対応などをコーディネートする部門を設け、障害者が安心して裁判員の責務を果たせるようにしてください。
    (説明)
     障害者への対応は専門的な知識や技能が必要です。コーディネート的役割を果たす職員は手話通訳技術に長けている人を配置してください。