※全日本聾唖連盟による和訳 (2010/01/13 掲載)
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WFDニュースレター | |||
2009年12月号 記事中の写真を含む原文の英語版はこちら |
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目次 ・WFD加盟国や協調国からのお知らせ ・カナダ:バンクーバー 2010:参加と協調の新時代へ - 1880年ミラノ宣言の影響からの前進 ・北朝鮮:「よき友の交わり:国際ろう者交流会」於北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国・DPRK)平壌 |
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WFD加盟国や協調国からのお知らせ | |||
ろう教育の専門家が決議した1880年のミラノ宣言は、暗黒の歴史的事件でした。国際ろうあ教育会議の代議員164名がイタリアのこの都市に集まってろう者の教育について議論し、ろう学校で手話を使うことを禁止し口話のみを奨励する宣言が可決されたのです。この決議に反対した代議員は数名のみでした。この決議は、ただちに聾学校からろうの先生や管理職を一掃することになり、ろう者自身が設立した学校にもこの影響は及びました。ろう児の教育の言語として手話を復活させる試みが進行中ですが、世界の多くの国家は、ろう者の優先言語の重要性を認めていません。何年にも及ぶ努力と忍耐を経て、ろうの先生と管理職が学校に戻り、ろう児教育における立場を取り戻すようになりました。こうしたろう児教育の進展があるにもかかわらず、手話を使うことを選択したろう者に対する一般社会の「見方」は固定化しています。その原因としてミラノ宣言を指摘する声があります。この一般社会の「見方」によると、手話を使う人たちは障害者とみなされ、多くの社会で多数派グループに「救済」されるべきものとされています。 カナダにあるバンクーバーは、2010年7月の国際聴覚障害教育会議(ICED)の開催地です。この会議は5年毎に開催され、ろう者の教育に関する研究や構想を共有しています。ICEDは組織や内規を有する団体ではなく、研究者や教育専門家が情報を共有しネットワークを形成する単なるイベントです。カナダにあるブリティッシュ・コロンビア州のろうコミュニティのメンバーWayne Sinclair氏は、コミュニティのタウン・ホールの会合で、1880年のミラノ宣言が世界中のろう者に対して有害な影響を与えたことを認める構想について提起しました。草の根からも賛同する強力な支持を得ました。Wayne氏と4名のろうコミュニティ・メンバーは、会議の公式見解を検討するために会合をもつことを要求する文書をICEDバンクーバー2010計画委員会へ書き送りました。ICED計画委員会からの返事は前向きなもので、私たちに会いたいと言ってきました。計画委員会の交渉チームと会うために3人が追加されて、交渉チームを結成しました。 当委員会の目標は、世界中のろう者の歴史に新しい道標を打ち込むことです。当委員会のメンバーは、新しい基準点を確立して、もはやミラノ宣言を振り返ることがないようにしたいと考えています。新しい基準点となる「バンクーバー2010:参加と協調の新時代へ」が、すべての人の平等を保障する新しい試みになることを望んでいます。当委員会は、1880年ミラノ宣言(文末のWebページを参照)の拒否に合意し、ミラノ宣言がそれ以降の世界中のろう者にとって有害な試みであったことを認め、国連障害者人権条約を支持し、WFD2007宣言を支持し、世界諸国のあらゆる政策や政府の決定にろう者が平等に参加することを、研究者や教育専門家が積極的に支持することを期待しています。大勢のろう者は、これらの、特に1880年のミラノ宣言が有害な試みであったと認めることが、重要な課題であると指摘しています。 ろうコミュニティ・メンバーの中心グループは、この問題が単なる地域や国内の問題点ではなく、むしろ国際的な問題点であることをカナダろう協会(CAD)と世界ろう連盟(WFD)の両者が認識する必要があるという点で意見が一致しました。CADとWFDの両者とのコミュニケーションが確立されて、情報を交換しながら計画委員会との交渉や議論に関する助言や見解を仰ぐことができました。草の根委員会のメンバーには、Wayne Sinclair、Monte Hardy、Hester Hussey、Doug Lambert、Janice Lyons、Kristen Pranzl、Nigel Howard、John Fraserらがいます。 ブリティッシュ・コロンビア州ろうコミュニティの草の根メンバーが始めたこの作業は、ろう者を彼らの社会や世界中の政府にインクルードさせる真の参加と協調への一歩となるものです。多くの国々での進展がその可能性を証明しており、完全参加と協調の成功に至る例が多数存在しています。しかしながら、ろう市民が低く評価され排除されている地域や国々は依然として多く存在しています。 ろう者はどうすれば、このイニシアチブを支えることができるでしょうか? そのためには、次のことを支持する手紙や電子メールをICED2010計画委員会へ送ってください。 a) 1880年ミラノ宣言を拒否すること b) 1880年ミラノ宣言の有害な影響を認めること c) 国連障害者の権利条約の支持を要求すること d) WFD2007宣言の支持を要求すること e) 各国の教育政策や政策にろう市民が参加すること 個人や団体のどちらの手紙も推奨されます。同じ内容を書き送るよう以下の団体・機関に呼びかけることもできます。 a) 全国単位、州または県単位、地域単位の協会 b) 全国単位、州または県単位、地域単位の先生や教育専門家の団体 c) 大学・専門学校の研究者 d) 全国単位、州または県単位、地域単位の政府. 個人や団体からの手紙が増えれば増えるほど、この行動を進展させるよう、2010年ICED計画委員会を励ますことになります。 宛先は次の通りです。 Dr. Claire Anderson, Conference Chair 21st International Congress on Education of the Deaf Suite 101 - 1444 Alberni Street, Vancouver, British Columbia V6G 2Z7 Canada または e-mail: iced2010@advanced-group.com 写しを次の箇所にも送ってください。 Wayne Sinclair or Monte Hardy #106-2844-273rd Street Aldergrove, British Columbia V4W 3S6 Canada または Email: hardy63@live.com or deafwanderer@hotmail.com この問題に関するビデオブログは、以下のサイトで見ることができます。 Why do we demand a letter of apology from the ICED?(ASL 版・英語字幕有) http://www.youtube.com/watch?v=ZygSp18jA7I Why do we demand a letter of apology from the ICED (国際手話版) Part 1: http://www.youtube.com/watch?v=2hTNxx5iZBs Part 2: http://www.youtube.com/watch?v=ICv6_8Ha9mM 出所:カナダろう協会 2009年9月1日から8日にかけて、ドイツの交流団体TOGETHER - Hamhungは、世界ろう連盟(WFD)との協力により、ろう者のためのDPRK研修旅行を企画しました。4ヶ国から16名のろう者と(ドイツ、スイス、イラン、米国)、フィリピンからの聴者1名が参加し、ドイツ手話通訳者1名が同行しました。 9月2日、18名の参加者は、朝鮮障害者保護同盟(KFPD)副会長、Kim, Mun Chol氏と10名のろうの若者たちに、新しく建設されたばかりのKFPDハウスで、温かく迎えられました。在平壌ドイツ大使館参事官、Irja Berg氏も、このイベントに参加しました。 KFPDを代表して、Kim氏は、ドイツ、スイス、イラン、米国からのろう者、そしてフィリピンからの聴者の参加者に対して、KFPDの文化・訓練センター訪問の感謝の言葉を述べました。彼はKFPDの活動と、ろう教育と訓練の分野での成果を紹介し、同盟がろう者への教育に高い関心を持っていること、WFDのような国際団体や国内のろう者団体との関係を築いていく意思があることを表明しました。 すべての参加者とKFPDのスタッフは、KFPD文化・訓練センターでの学びを楽しんでいる、北朝鮮のろうの生徒たちによるダンスの練習、卓球、絵画を楽しく鑑賞しました。中でも、6人のろうの少年少女たちが、教師の太鼓のリズムに合わせて、いきいきと、そして優雅に踊る姿に感銘を受けました。 われわれはまた、ろうの生徒たちによる風景画や肖像画に、非常に感心しました。そして、DPRKにおける、ろうの生徒たちへの教育と訓練が、大変重要視されていて、ろうの子どもの特別なニーズに見合うものであることを知りました。 在北朝鮮ドイツ大使のIrja Berg氏は、KFPDの活動を評価し、協力していく意思を表明しました。Together - Hamhungの会長、ロバート・R・グルンド(Robert R. Grund)氏は、マルク・ヨキネンWFD会長からの、KFPDスタッフと平壌のすべてのろうの友人たちへの挨拶を送り、2008年5月から、KFPD・WFDとの間で、よいコミュニケーションが行われていることに言及しました。これによって、KFPDとWFDの間には、明るい未来があると見込んでいます。 われわれは感動を胸に、ロバートとすべての訪問者は、北朝鮮のすべてのろうの子どもたちのために、1250個のマジックボードを、Kim Mun Chol氏に手渡しました。ロバートは、Together - Hamhungが実施した、第1回となる今回の「1250個のマジックボード」プロジェクトへの、ドイツ大使館からの財政支援に対する感謝の言葉を述べました。 続くパーティは、KFPDのろうの生徒たちとわれわれ全員とが、自由に直接話す機会となりました。会話は非常に楽しいものでした。 9月7日には、平壌にある、ろう者のための特別な訓練施設、普通江障害者職業施設(Botonggang Disabled Job Convenience)を訪問しました。KFPDは、パイロットプロジェクトとして、散髪、美容院、洋服の仕立て、写真の現像、時計や靴の修理などを通して、障害者の職業の機会平等を実施してきました。そうすることで、彼らは収入を得、地域の社会生活に参加することが出来るのです。ここでも、ろうの理髪師と仕立屋と、直接自由に話すことが出来たのは素晴らしい経験でした。米国からの参加者、Gabe Leungとロバート、その兄弟で手話通訳者のトーマスは、その場で髪を切ってもらい、朝鮮のろう者と肌で触れ合いました。 Together-HamhungとWFDが共同で開催し、KFPDがホストをした今回の団体訪問は、朝鮮と世界のろう者の友情を築く出発点として、非常に重要なものとなりました。また、今日、KFPDとWFDとの協力関係の強固な基礎作りに貢献できたものと思います。 KFPD・Together-Hamhung Together-Hamhungは、WFDとの共催で、ろう者のためのDPRK旅行を、2010年の予定で計画しています。日程は8月10日から14日の予定です。DPRKは、すべてのろう者を温かく歓迎します。 この旅行に関心のある方は、どうぞお気軽に、ロバート・R・グルンド(info@tschollima-reisen.de)までご連絡ください。 |
WFDニュースレター 2009年12月号