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※全日本聾唖連盟による和訳 (2009/06/04 掲載)



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WORLD FEDERATION OF THE DEAF
WFDニュースレター
2009年2月号

原文の英語版はこちら

目次

WFD情報
  ・ろう者は人権を享受していない
  ・平等に向けて−ネパール
  ・南アフリカWFDろう者世界大会2011
  ・WFDメキシコ国際会議2009中止
  ・会員情報
国際ニュースと国連ニュース
  ・CRPD委員会が活動開始
  ・アフリカの人権要求のための新ウェブサイト
  ・障害者は発展への重要な役割を果たさないとならない、とバン氏
  ・障害者権利基金は、3カ国をターゲットとする
  ・特別報告者在任機関が延長
WFDメンバーからのニュース
  ・ブルガリアろう連合75周年を祝う
  ・疎外、貧困、そして虐待の中に生きるブルンジ共和国のろう者
  ・手話に関する法律が進行中
  ・フィンランド・ユーロヴィジョン・ソング・コンテストでサインマークが第二位受賞
  ・インドネシアとチベットのろう者
  ・マダガスカルでの通訳トレーニング
  ・ガザのろう学校が著しく破壊
  ・フィリピンろう文化ドキュメンタリー
  ・サウジアラビア王国、詳細障害者デイ"全ての人への尊厳と正義を"を祝う
  ・サウジアラビア−手話を承認
  ・ウガンダでのろう教育、遅れを取り戻す
今後のイベント
書籍及び出版物
WFD 販売品

世界ろう連盟 (WFD)は、1951年ローマ(イタリア)で第1回世界ろう者会議開催中に各国のろう協会の中央組織の役割を果たす国際NOGOとして設立されました。WFDは国連組織の中ではBカテゴリーの諮問資格を有し、国連経済社会理事会 (ECOSOC)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国際労働機関(ILO)、世界保健機構 (WHO)への代表権を有します。また欧州評議会 (CoE)にも参加資格があります。現在、WFDは130の正会員(各国のろう協会)を擁し、正会員およびパートナーの間で協力や情報交換の基盤を提供しています。WFDは国際組織として各国のろう協会を通し、ろう者の人権や各国の手話の地位向上、よりよいろう教育と情報やテクノロジー、サービスへのアクセス向上に力を入れています。

編集者へのあらゆるニュース、記事、手紙の投稿をお待ちしています。投稿物の受領もしくは受領拒否の権利、そして全ての出版物を編集する権利はWFDが所有します。

郵送先はこちらにお願いします:

World Federation of the Deaf
PO Box 65
00401 Helsinki
Finland
Fax: + 358 9 5803 572

 WFD情報

ろう者は人権を享受することが出来ない
Byヒルデ

このたび発表されたレポート「ろう者と人権」は、基本的人権ですらも、本当の意味で享受できているろう者は少ないことを示しています。ろうであるという事実のみを理由に、教育や国のサービス、平等な市民権を否定する国は比較的少ないが、手話が承認されない、バイリンガル教育が行われていない、手話通訳サービスの欠如、そしてろう者に関する認識不足とろう者の置かれている状況に関する知識不足により、社会の大部分へのろう者のアクセスが妨げられています。

ろう者と人権レポート
多くが発展途上国である93カ国のろう者の生活が、「ろう者と人権」レポートで取り上げられています。レポート中の分析は、「ろう者の人権に関するグローバル教育事前計画プロジェクト」を通して集められたデータに基づいています。これは、ヨーロッパ、北米そしてカナダ以外の国や地域のろう者に関する最大のデータベースです。コリン・アレン氏が、7つの地域調査のプロジェクト・コーディネーターであり、ヒルデ・ハウアランド氏は、最終レポートの研究者として任命されました。このレポートは、回答者(そのほとんどが各国のろう協会)の国において、法制度における手話承認、教育、アクセシビリティーと通訳、そして生涯学習などの状況に関するデータとその分析を提示しています。123カ国にアンケートが送られ、そのうちの76%である93カ国から回答を回収しました。

障害者権利条約
国連障害者の権利条約(CRPD)は、障害者は人権を完全に享受する権利があると明確に示しています。CRPDにおける、手話に関する条項は次の通りです:2条では定義、9条ではアクセシビリティ、21条では表現及び意見の自由並びに情報へのアクセス、24条では教育、そして30条では文化的な生活、レクリエーション、余暇そしてスポーツへの参加について述べています。
CRPDは、障害者の人権促進のための力強いツールであり、特に上記の条項はろう者の人権擁護に必要な、以下の基本的要件を明確に示しています。
  • 手話の認知とその使用(ろう文化とろうアイデンティティーの認知と尊重を含む)
  • 手話と自国語のバイリンガル教育
  • 全ての人への平等な市民権保障そして差別防止のための法制度を含む、全ての社会と生活におけるアクセシビリティー
  • 手話通訳
ろう者による人権の完全なる享受のためには、手話(ろう文化とアイデンティティーの認知と尊重を含む)を中心的因子としたこのモデルに沿う以外の方法はありえません。「ろう者と人権」レポートの中では、CRPDの原則に沿った分析が提示されています。ろう者の権利侵害もしくは権利支援に影響を与える因子は何かと言うことが、アンケート中の様々なトピックに対する回答や地域レポートと結び付けられ示されています。

市民権と手話承認
19カ国の回答者は、自国の政府がろう者を同等な市民としてみなしていないと答えており、たった44カ国が、主に教育とソーシャル・サービスの分野で、手話を言語として承認していると答えています。31カ国では、ろう者の運転免許取得が許されていません。ほんの少数の例外を除いては、ろう者の選挙権と家族を持つ権利は正式に否定されてはいませんが、メディアや情報へのアクセスの制限、高い非識字率と社会的偏見によって、ろう者の人権が侵害され、同等の市民としての地位を傷つけられています。

ろう児教育制度の失敗
ろう者の教育への権利を完全に否定する国はないようですが、全ての回答国において、ろう児の教育制度と(または)識字率は満足行くものではありません。いくつかの学校で手話と自国語のバイリンガル教育が行なわれているのは23カ国に過ぎません。その他の全ての学校と国では、ろう児の教育へのアクセスは制限されています。ろう者に対する教育の質は悪く、識字率は低いと回答者のほとんどが答えており、これは、ろう教育における手話の重要性に関する教育制度内の無知の表れです。

政府サービスと通訳へのアクセス制限
80カ国において通訳サービスが行われていますが、政府が通訳者の月収の支払いの責任を担っているのは32カ国だけです。43カ国では、様々なレベルでの手話通訳養成が行われていますが、通訳者のいる状況でもろう者の自主性(自己統治権)を保障する倫理要綱が存在するのは30カ国に過ぎません。手話通訳制度、専門的通訳養成、手話通訳要綱の全てがそろっている国は、たった18カ国です。
ろう者の政府サービスへのアクセスがないと答えた国はわずか11カ国でした。しかし、手話通訳サービスが大きく制限されていることを考えると、本当の意味でろう者が政府サービスを利用できている国はほとんどないと言ってもよいでしょう。

HIV/エイズに関する無知と情報欠如
回答者のうち52カ国は、HIV/エイズの自国ろう者への影響に関して無知であるか、この件に関して全く情報がないかのどちらかに当てはまります。アフリカ地域の回答者が、HIV/エイズの状況に関し最も認知していましたが、その反面、公共サービスへのアクセスのほとんどない地域も存在します。このような現状は危険であり、ほとんどの回答国では、ろう団体やろう者個人に向けてのHIV/エイズ認識キャンペーンと(もしくは)HIV/エイズ情報提供が必要です。

スウェーデンろう協会(SDR)と世界ろう連盟(WFD)は、スウェーデン国際開発庁(SIDA)とスウェーデン障害者国際支援協会(SHIA)の財源を活用し、調査を開始しました。英語でのレポートと国際手話でのレポートプレゼンテーションは、どちらもWFDウェブサイトでご覧になれます。(www.wfdeaf.org/projects.html).



平等に向けて−ネパール
第20回WFDアジア太平洋地域事務局会議
2008年12月7−10日
ネパール、ポカラ

ネパール学校でのバイリンガル教育
2008年12月、ポカラでの第20回WFDアジア太平洋地域事務局会議の折に、マルク・ヨキネン理事長はネパールを訪問しました。ネパール訪問中、ヨキネン理事長は、ネパールろうコミュニティーのメンバーに会う機会がありました。ネパールろう者は、比較的短時間の間で、社会への平等参加と完全なる人権に向けて、大躍進しました。その中でも、最大の功績は、ろう教育におけるネパール手話(NSL)使用です。学校内で、「バイリンガル教育」が行われていることは素晴らしいことだとヨキネン理事長は述べていました。マルク・ヨキネン理事長は、健聴、ろう関係なく、質の高いネパール手話を使用する教師陣が生徒と流暢に会話を行っているカトマンズとポカラにあるろう学校を訪ねました。カトマンズの学校では、盲ろう学生のクラスもあり、このことはとても重要であり勇気付けられるものです。しかしながら、これらの前向きな発展にもかかわらず、特に山脈地域には、教育制度から取り残された生徒がまだ沢山います。ネパールろう者難聴者連盟(NFDH)とそのメンバー団体は、何とかしてこのような若いろう者へ学校通学の道を開こうと模索しています。もう一つの大きな問題は、政府の財源不足であり、このことが、主に国際団体や国際開発協力庁などの外部からの支援に依存する結果を招いています。

誇り高き自国の起源と言語
ろう者の社会的行事、活動、集まりは、高齢者、女性そして若者にとって良い機会を提供しているように思われます。ネパールろう者も、彼らの言語に誇りを持っています。「ネパールろう者は、自国の力強い起源からなる彼らの言語に誇りを持っており、他国の手話を自国の手話に取り入れないよう努力してきました。ネパール手話が、いかに統計的な手話作業により発展したかを見られたことは、とても喜ばしいことでした。この素晴らしい発展は、SHIAを通してのスウェーデンろう協会、そしてイギリスのデフ・ウェイやドイツの団体等の国際非政府団体に支えられた長期にわたる過程の結果です。」しかしながら、ろうの子どもたちの手話を使用できる環境への権利を主張するコミュニティーの願いに反し、普通教育へのインクルージョンを強く支持しているいくつかの国際団体との協力は、一筋縄ではいきません。この件に関して、世界ろう連盟は、ネパールろう者の考え方を尊重するよう働きかけています。

ネパールでは、様々な前向きな発展が起きています。ネパール国会は、まもなく障害者権利条約を批准しますし、ろうの国会議員のRaghav Bir Joshi氏は、この件に関し、とても意欲的に活動し続けています。彼は、ろう者の運転免許取得やネパール手話のための法律に関しても提唱し続けています。話し合われたように、政府のNFDHに対する支援が今後増大することを願っています。

WFDアジア太平洋地域事務局代表者会議
マルク・ヨキネン理事長は、WFDアジア太平洋地域事務局の代表者会議の開会式に参加しました。WFDのアジア太平洋地域事務局に関する今後の発展についての継続的話し合いが行われました。それに加え、条約の推移や批准についてもこの会議で話し合われました。「協力体制を築き、共に歩んでいくことで、ろう者の人権と生活の改善に多大な影響を与えることが出来ると言うことが、はっきりと分かりました。」とマルク・ヨキネン理事長は説明しました。


新WFD専門家ネットワーク
WFD専門家ネットワークが最近設立され、その専門領域は、人権/障害者権利条約(CRPD)、教育、発展途上国、手話、ろう女性、ろう高齢者、レズビアン、ゲイ、トランス・ジェンダー、バイセクシャル(LGTB)、ユニバーサル・デザイン、生命倫理と精神保健です。専門家集団は、2011年の世界ろう者会議まで任務を担います。また各専門領域ごとに専門家コーディネーターも任命され、同領域内のその他の専門家との協力体制の責任を担います。

以前は、推薦者を募るため、WFDがOMへ手紙を送り、その結果選ばれた候補者名が専門領域ごとに理事に提案されていました。しかしながら、コミュニケーション力の弱さから、承認された専門家からなるこのネットワークは、効率的に活用されていませんでした。そこで、理事会は、より柔軟性を持たせるため、OMを通してではなく、理事会から直接専門家を推薦することで決議しました。

もしこの件に関して、質問や専門領域に関する情報提供がありましたら、WFD秘書のフィリッパ・サンドホルム氏に連絡をしていただければ、メッセージを関連コーディネーターへ転送します。



南アフリカWFD世界大会2011

ろう者世界大会の新ウェブサイトをご参照ください。 www.wfd2011.com. 登録とプログラムに関する詳細は、後ほど掲載予定です。



WFDメキシコ国際会議2009中止

2009年5月14−16日までメキシコで開催が予定されていました国際会議は、財政難のため中止となりました。



会員情報

会費
先日、WFD総事務局から、OM、準会員、個人会員へ2009年会費の請求書が送られました。会員は出来るだけ早めに会費の支払いをお願いいたします。

WFD事務局は、事務所運営費の一部を会費で賄っています。皆様のご支援なしでは、活動を続けることは出来ません。

会費の減額や支払いの延期の必要なOMは、文書にて申し出ていただければ、理事会活動の議題に追加します。

正会員連絡先
連絡先の詳細に変更があった場合、WFD事務所へご連絡ください。古い連絡先のままであったため、WFD情報を得られない場合があります。また、運営組織や活動への全ての変更をお知らせください。例えば、新会長が任命された等も、連絡してください!正しい連絡担当者、情報と住所が必要です。

WFD正会員の最新の住所が必要です。以下の方への郵送が戻ってきました。

カザフスタンろう社会(Kazakhstan Society of the Deaf)

もし、上記団体の新住所をご存知の方がいましたら、WFD総事務局までご連絡ください。

 国際ニュースと国連ニュース

CRPD委員会 が活動開始
障害者権利条約(CRPD)委員会の活動が開始しました。障害者権利条約(以下、条約)35条の元で各国関係者より提出されたレポートを検討する義務があります。それに加え、条約選択議定書(選択議定書1条、5条)に関する個人から国に対する不満を受け付け調査すること、そして、条約の中で明記されている権利に関する選択議定書(選択議定書6条と7条)に対する国の深刻又は意図的な違反があることを示す信頼性のある情報に基づき、審問を行うことも義務付けられています。

CRPDメンバー

委員会は、独立専門家として個人の範囲で活動をする12人のメンバーからなります。16カ国目の条約批准国が誕生した後は、委員会メンバーを6人増加します。委員会のメンバーに関する詳細は、事務局ウェブサイトをご覧ください。http://www2.ohchr.english/bodies/crpd/membership.htm

NGOの CRPDへの関与

国内、国際NGO代表者は今後、権利条約委員会の動きを追い、貢献することが出来ます。この件に関して、国際NGO、国連の各機関、基金、プログラム等には、各国のNGO団体の代表者などの条約委員会への出席を支援するよう促しています。 最初の委員会会議は、2009年2月26日にスイスのジュネーブで開催予定です。

委員会事務局

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の人権条約部門は、この委員会を支援する役割を担っています。委員会の今後の議会の詳細は、 http://www2.ohchr.org/english/bodies/crpd/index.htmの議会関連ページの中にある"NGOのための情報"をご覧ください。.


障害者権利条約

現在まで:
137 カ国が条約に署名
81 カ国が選択議定書に署名
48 カ国が条約を批准
28 カ国が選択議定書を批准

最新情報:
ウルグアイが2009年2月11日に条約批准
アゼルバイジャンが2009年1月28日に条約批准
アゼルバイジャンが2009年1月28日に選択議定書を受容
オマーンが2009年1月6日に条約を批准

批准した48カ国: アルゼンチン, オーストラリア, オーストリア, アゼルバイジャン, バングラデシュ, ブラジル, チリ, 中国, コスタリカ, クロアチア, キューバ, エクアドル, エジプト, エル・サルバドル, ガボン, ギニア, ホンジュラス, ハンガリー, インド, ジャマイカ, ヨルダン, ケニア, レソト, マリ, メキシコ, ナミビア, ニュージーランド, ニカラグア, ニジェール, オマーン, パナマ,パラグアイ, ペルー, フィリピン, カタール, 韓国, ルワンダ, サンマリノ共和国, サウジアラビア, スロベニア, 南アフリカ, スペイン, スウェーデン, タイ, チュニジア, トルクメニスタン, ウガンダ, ウルグアイ

詳細: http://www.un.org/disabilities


IDA CRPD フォーラムがCRPSD委員会へ提案を伝える

国際障害同盟(IDA)によって国際障害コーカスの作業を引き継ぐために立ち上げられたIDA CRPDフォーラムは、第一回CRPD委員会会議前にIDA CRPDフォーラムからの提案を行うため、障害者権利条約委員会の12人のメンバーへ政策方針書が送られました。これらの提案は、手続き規則、作業方針、委員長の選任、委員会のその他ポジションに関する勧告が主に含まれています。

IDA(国際障害同盟)が、2月11-12日にフィリピン、マニラでセミナーを開催

マニラで開催されたIDAアジア太平洋セミナーには、アジア太平洋地域の14カ国から代表者が参加し、CRPDやアジア太平洋行動計画草案を含む地域構想などの様々な項目について話し合われました。代表者は、アジア太平洋地域の各国政府に、条約と選択議定書の署名、条件なしの批准、実施とモニタリングの働きかけを行うという内容のマニラ宣言と呼ばれる共同宣言に同意しました。それに加え、代表者は、法律と政策制定、全ての教育と訓練プログラム、そしてアジア太平洋障害者の10年(2003-2012)のような地域構想における障害者の完全参加を目指しています。

WFDからは、フィジーのイライザ・ブレカシ氏とフィリピンのラファエル・ドミンゴ氏の2人が、このセミナーに参加しました。



アフリカでの人権要求のための新ウェブサイト

アフリカの人々のための国際法全手続きを紹介している新しいウェブサイトが立ち上げられました。ウェブサイト上の情報は、英語とフランス語で掲載されており、アフリカの人権擁護者、弁護士、NGO、そして、人権侵害の被害者へ提供されています。このウェブサイトは、国連、アフリカ連合、ヨーロッパ連合の法律文書、OECDと国際刑事裁判所の人権保護のシステムの一般化を目的としています。

このウェブサイト www.claiminghumanrights.org によって、複雑な国際法システムへのアクセスの道がわずかながら広がります。ウェブサイトでは、人権要求に必要な全工程が説明されており、人権のテーマ別にまとめられています。それに加え、批准の状況や各国レポートに関して一目で分かるよう、データベースも掲載されています。


このウェブサイトは、人権宣言の60周年を記念して行われた、ユネスコ・フランス委員会とドイツ委員会の共同プロジェクトとして立ち上げられました。このプロジェクトは、ユネスコ・ドイツ委員会の常任理事であるクラウス・ハフナー(Klaus Hufner)の出版物に基づいて、前フランス人権担当大使のミシェル・ドーシンによって始められました。このウェブサイトの要約版は、まもなく出版される予定です。このプロジェクトは、ドイツ外交機関とフランス外務省の支援により行われています。   

ウェブサイト: www.claiminghumanrights.org



障害者は、発展への重要な役割を果たさなければならないとバン氏は述べる

パン・ギムン国連事務総長は、国際障害者の日の式典の際に、「障害者権利条約:全ての人への尊厳と正義を」と題したセミナー演説を行いました。

パン・ギムン国連事務総長は、そのほとんどが貧しい国に住んでいる障害者が、発達過程において重要な役割を担っていることを、国際障害者の日の記念講演で強調しました。国際障害者の日は、世界人権宣言60周年記念の一週間前にあたり、両日とも「全ての人への尊厳と正義を」というテーマで祝われました。

さらにパン事務総長は、ミレニアム開発目標(MDGs)の8つの貧困軽減目標を2015年の期限までに達成するためには、その取り組みに障害当事者を含めて行くことの重要性を国連総会が指摘しているとを説明しました。 「全障害者の80%を占める約4億人以上の障害者が貧困国に住んでいます。貧困と障害の悪循環を解消するためより一層の努力が必要である」とパン氏は述べました。

「Nothing about us without us」という国際障害者コミュニティーのスローガンに言及し、パン事務総長は、政府等に、全開発過程において障害当事者が重要な役割を担うことを保障するよう要望しました。「そうすることにより、インテグレーションの促進と、社会における全ての人にとっての輝かしい未来への道を切り開くことになる」と事務総長は述べました。

パン氏は、障害者の権利条約が5月に発効したことで、2008年は祝うことの多い年となったことを強調しました。

条約に関する第一回締約国会議が10月に開催され、そこでの進展は、「障害者の積極的参加とリーダーシップによってもたらされたものであり、全ての作業へのアクセスと、障害者のインクルージョンが保障されていることによるものである」とパン事務総長は述べました。本日のニューヨークでの記念式典で、事務総長は、様々な形でコミュニケーション・テクノロジーや政治過程などにおけるアクセシビリティーを促進することを、国際機関が約束することの重要性を強調しました。

事務総長は、国連本部内における、障害者のアクセシビリティー向上も必要であると述べました。「私もフラストレーションを感じています。ここニューヨークにある我々の建物内を動き回ることの困難さを考えると、恥ずかしくなることが多々あります」と述べ、部屋の改築、スロープの設置等をにより、現在、国連本部の建物のアクセシビリティ向上のため努力をしていることを付け加えました。

ニューヨークでの障害者の日を記念するイベントの一つとして、「国連地雷対策サービス」(UN Mine Action Service)による障害者の権利に関するマルチメディア・プレゼンテーションも行われました。生後まもなく視力を失ったハンガリー人ピアニストのタマス・エルディと、ほとんどのメンバーが身体もしくは知的障害のあるオーストラリアのロックバンド、ルードリー・インタラプティッド(Rudely Interrupted)による演奏も行われました。

ここ数年で、10億人がインターネットアクセスを得られると推定される現状の中、障害者もきちんと考慮されることを確認することが肝要であると、本日、国連上級役員はインドのハイデラバードで述べました。

「アクセスを考える際、世界の人々の多様性を考慮する必要がある。言語の多様性だけでなく、人々の能力の多様性も考慮される必要がある。」と経済社会に関する事務総長補佐のジョモ・クワメ・サンダラム(Jomo Kwame Sundaram)は、インターネット管理フォーラム集会開会式で述べました。

4日間の会議では、政府、民間部門、市民社会、インターネットコミュニティー、国際団体、そしてマスメディアからの代表者が集まり、サイバースペースを安に保ち、世界の人々の多様性を反映しつつも、いかに大多数の人がウェブへアクセスできるようにするかについて話し合われました。

資料:国連報道発表



ろう者が日々直面している問題への注目を広め、各国手話の重要性を強調するために、9月の最終日曜日に開催される国際ろう者/手話デイを正式に承認するよう、WFDは国連に要請しました。世界各地のろう者コミュニティーは、9月最後の1週間を国際ろう者ウィークとして祝い、その週の最後の日曜日にクライマックスを迎えます。

国連は、新たな国際デイを設立することには消極的だが、12月3日の国際障害者の日には、手話の重要性への注目が集まるよう、より一層協力していきたいと返答しました。WFDと国連経済社会局(DESA)は、今後も協力していける部分を確認していく予定です。しかしながら、このことは、9月の国際ろう者ウィークになんら影響を与えるものではなく、WFDはメンバー国へ、2009年9月にいつも通りイベントやキャンペーンの企画をおこなうよう呼びかけています。



障害者権利基金は、3カ国をターゲットとする

マサチューセッツ州ボストン−障害者の権利の協力的擁護のための革新的助成金提供団体の「障害者権利基金(Disability Rights Fund)」は、インド、メキシコ、ウクライナの3カ国の障害者団体(DPOs)をターゲットとした2009年度の第一回助成計画、 「声を大にして(Raising Our Voice)」を本日発表しました。

2008年に正式に設立されたこの基金の広い目的は、発展途上国の障害者団体へのエンパワーメントと、東ヨーロッパ/旧ソビエト連合の障害者権利条約の批准、実施、モニタリングへの参画です。

2008年、この基金から、7カ国(エクアドル、ニカラグア、ペルー、ガーナ、ナミビア、ウガンダ、バングラデシュ)33団体へ一年間、合計US$800.000の助成金が提供されました。助成金は、US$5.000からUS$50.000にわたり、CRPDの認知度の向上、協力体制とネットワークの強化、権利擁護の支援に活用されました。
2009年の最初の助成計画では、希望団体は、a)単独団体もしくは複数団体のパートナーシップ、b)国内障害者団体の連合体、のどちらかのカテゴリーで申し込みが出来ます。単独団体への助成金はUS$5.000から30.000であり、障害者の発言力と社会における可視性を強化し、権利に基づいたCRPDの擁護とモニタリングの発展の支援に使われます。国内障害者団体の連合体への助成金はUS$30.000から70.000で、CRPDの批准へ向けての運動の支援、CRPDに則った法整備、あるいは政府レポートとは違った、障害団体からのシャドー・レポートの作成の支援に使われます。
興味のある団体は、全適格基準と障害者権利基金のウェブサイトに載っている申し込みに関する詳細を早急に見直してください。 http://www.disabilityrightsfund.org/grant.html. 提案過程に関する質問は、こちらのアドレスへ3月16日までにお願いします。 info@disabilityrightsfund.org  申し込みの締切りは、2009年4月16日です。

DRF運営委員会の支援代表者が述べたように、「DRFの2009年助成金提供プロセスは、新たな3カ国の障害者団体への助成金支援と、社会から取り残された障害者コミュニティーと障害者の権利を促進する国内同盟の両者への支援を拡大する素晴らしい機会です。」DRFの資金源は、アメリカン・ユダヤ世界サービス、匿名支援者、開かれた社会財団(Open Society Institute)、Sigrid Rausing Trust、イギリス国際開発部門などである。



特別報告者(rapporteur)在任期間が延長

国連の障害問題特別報告者であるシェイカ・へッサ・アルターニ氏(Sheikha Hessa Al-Thani)は、2009年2月6日に開催された国連社会開発委員会について短い報告をしました。彼女の在任期間が6ヶ月延長されたことを報告し、これまで6年間の在任中の取り組みをまとめて説明しました。

アルターニ氏は、「国連障害者の機会均等化に関する基準規則」の政府の実施状況をモニタリングするため、主に政府からのレポートと障害者のための団体からの証言に基づいた調査と研究に頼るところが多かったが、これらに加え、国や現地の視察も行ったと述べた。「基準規則の実施のための各国政府の行動に関する世界的調査」は、「対話と発達のための南北センター」との協力で行われました。特別報告者は、世界的調査のフェーズ3において、調査を担当した専門家集団が、3種の主要領域に目を向けたと言っています。それら3領域とは、(1)支出のレベルと回答を得た障害者団体間の助成金の金額差、(2)地域に関わらず、資金の有用性が各国での実施状況をいかに影響するか、(3)そして視覚、聴覚、身体、発達、心理社会的障害のように、障害別の各障害者団体が、基準規則の実施をいかに評価しているかでした。ほとんどの場合、政府は、障害者団体が認識している以上の方策を実施していると答えているとのことです。医療ケアに関しては、基準規則以前は11%の国がいかなる方策も実施していませんでした。

スーダンへの訪問で、カーツームにおける障害者の権利と、障害者がアクセスできる適切、適当なサービスの必要性に対する認識の高さが明らかになったと述べました。しかしながら、その他のスーダン地域では、障害者に対するかなりの認識の低さやプログラムの欠如という現状が見え、ダルフールの難民施設では、サービスがほとんどなく、障害者のニーズに対する認識が全くなかったとのことでした。アフリカ連合/国際連合ダルフール合同平和維持活動(UNAMID)の人権職員は、障害者に対する特別なプログラムは存在せず、不十分ではあるが障害者に対する支援を行っている 「希望の町」(City of Hope)という団体が、理学療法ユニット、人工装具部門、職業訓練、そして心理社会支援ユニットに加え、病院でのリハビリ・サービスが提供されていることを報告したとのこと。

アルターニ氏は、障害者の権利条約の認知度を上げることなど、特別報告者の任務を拡大することに関する委員会の決議を果たすため、民間社会グループと関連政府部門への教育のためドーハでのワークショップなどの活動を紹介した。また、まだ条約に署名もしくは批准していない国の政府に、署名・批准を促す手紙を送るというキャンペーンが開始されたそうです。

彼女は、戦争時には多くの人が障害者となり、自立した、創造的な、尊厳のある生活を送るための支援を受けられずに暮らしていると述べました。最近のガザでの戦争でも、数え切れないほどの人がありとあらゆる障害を負いました。
彼女は、22日間の戦いの間に、怪我を負った人の苦境と、障害のためにシェルターや安全な避難所にたどり着けないことから命の危機に直面している障害者の状況へ注意を促しました。紛争が終息したのち、彼女は、イスラエル軍の爆弾で破壊されたガザのリハビリセンターの再建と小児病院の建て直し、市域の人への心理社会的リハビリテーション、そして戦争により障害を負った人への補助金の割り当て等の確保・実現のためロビー活動とキャンペーン活動を続けてきました。


 WFD メンバーからのニュース

ブルガリア

ブルガリアろう連合、75周年を祝う

2009年7月16日、ブルガリアろう連合は、75周年を華々しく祝いました。ブルガリアのろう者たちは、社会と調和を保ち75年間共に生きてきましたが、この背景には、ブルガリアろう連合が、ろう者の平等のための権利擁護活動において中心的な役割を果たしてきたということがあります。ブルガリアろう連合は、その歴史において多大な英知を得て、現在では模範とすべき存在となっています。イベントや活動は、国内から国際的なものまで数え切れないほどで、その例としては、アマチュア芸術家の育成、分野ごとのサークル活動、アマチュア芸術作品作成、女性イニシアティブ、お祭り、フェアーやツアーリスト競技等が挙げられます。1979年には、世界ろう連盟の主要イベントである、際8回ろう者世界会議を開催しました。

ブルガリアろう連合は、1993年の27回夏季世界ろう者競技大会の開催国且つ運営国でした。ヨーロッパ障害者年の宣言がなされた2003年には、ブルガリアろう連合は、他の障害団体とともに、全国障害問題審議会(National Council on Disability)を設立しました。この審議会は、そのメンバー団体及び欧州障害者フォーラムの権利のために戦う団体である。ブルガリアの成功は、ろう者、さまざまな団体の連合体、活動家や支援者の何世代にもわたる努力と苦労によるものである。

ブルガリアは、WFDが設立された3年後の1954年以来、その正会員です。ブルガリアろう連合会長のバシル・パネブ氏は、長年WFDの副理事長も務めました。彼は、WFD評議員会より、その最高名誉である「世界ろう連盟名誉会員」を授与されました。

詳細は、ブルガリアろう連合のウェブサイトをご覧ください。
www.sgbbg.com

情報: ブルガリアろう連合



ブルンジ共和国

疎外、貧困そして虐待の中に生きるブルンジ共和国のろう者
Byクリス・クブウィマナ(Chris Kubwimana)


ブルンジ共和国のような発展途上に住むろう者は、ここイギリスで見られるような発言権はなく、教育、健康、住宅、社会等のサービスへのアクセスの機会もなく、ろう文化/コミュニティーや手話サービスも存在しない場合が多いです。

2008年の7月、8月の間、ブルンジ共和国とルワンダのろう(D/deaf)コミュニティーを訪問する目的で、アフリカを訪ねました。しかしながら、金銭的問題で、ブルンジ共和国のみの訪問となりました。私自身ろう者であり、イギリスに住んでいますが、もともとはアフリカ出身です。内戦のため国と国民全体は大きく変わってしまっていましたが、私は、そこで出会ったろう者、健聴者とたくさんの関わりを持つことが出来ました。

メディアからの情報がほとんどないため、イギリスではブルンジ共和国についてはほとんど知られていません。ブルンジは、中央アフリカの赤道の南側に位置しており、比較的小さいですが、山に囲まれた美しい国です。コンゴ民主共和国(DRC)、タンザニア、ルワンダの国々と国境を接しています。ブルンジ共和国は、世界の中でも最も貧しい国の一つです。国連によると、68%の人が一日1ドル以下の貧困レベルの生活をおくっています。今ブルンジ共和国は、国の基盤を壊滅させた12年にわたる内戦から抜け出そうとしています。この内戦では、約30万人が命を落としたと推測されます。このうち命を落としたろう者の数や、戦争の結果ろうとなった人の数は誰も分かりません。

生き残ったろう者は、ほとんどの健聴者と同じく、貧困の中で生活し続けています。しかし、ろう者の直面している貧困は、より厳しいものです。私の出会ったろう者の一日の生活費は、イギリスでお茶一杯を買うお金以下でした。社会からの周縁化、また人々の態度や制度的なバリアーに直面しているため、貧困から抜け出したり発展活動に参加するチャンスを持てずにいます。

それに加え、ブルンジ共和国では、ろう者(D/deaf)に対する間違った言い伝えや考えも存在し、その結果、ろうの子どもを「恥」だと考える家族もあり、そのような場合、ろうの子どもを世間から隠そうとします。ブルンジろう協会は、国内に約1万5000人ほどのろう児又はろう青年がいると推計するが、宗教系の学校などの善意により通学が出来ているろう児は200人以下であるといいます。その他のろう児は連絡も取れず、行方がわからない状態です。政府は、ろう者への教育提供、プログラムの設立やろう者のニーズを満たすための行動は行っていません。ほとんどのろう児は学校に通っておらず、受けるクラスさえありません。ほとんどのろう成人は読み書きが出来ず、職業技術も持っていません。幸運にキリスト教学校に通うことが出来たろう者も、結局、職を得る能力がなく、それどころか、きちんと読み書きも出来ないまま学校を卒業することになります。

ブルンジ訪問中に、2つのろう学校のうちの1つでボランティアとして働き、良い経験をしました。しかし、これらの学校は適切な人的資源を持っておらず、能力やトレーニング不足、教材や資格のある教員を雇うための資金不足、ろうに関する認識不足により、適切な教育が行なえない状況でした。ろう者が、読み書きが出来ないまま学校を終え、仕事に必要な技能も持っていないことも不思議ではありません。適切な支援があれば、これらの学校の改善も可能だと思います。

ブルンジのろう者が直面しているもう一つの大きな問題は、健康問題です。ろう者は、内戦と生活上の困難のトラウマから、精神保健の問題を発症するケースがとても多く見られます。それに加え、この国ではHIV/エイズが蔓延しています。HIV/エイズ感染者への健康面と心理面のサービスはありません。ろう者は危険な状態にさらされており、HIV/エイズに関する情報とサービスの欠如は心配な問題です。それに加え、育児や子どもの健康面へのサポートもなく、ろう家族と健康・医療専門家との間のコミュニケーションに障害があるということは言うまでもありません。

教育、経済的エンパワーメント、CBRサービスにおけるインクルージョンが進めば、ろう者の生活改善に期待が持てるでしょう。教育プロジェクトを実施し、特殊学校または一般校へのろう者入学を推進し、ろう者の小学校教育へのアクセスを拡大すれば、現状に大きな変化をもたらすことになります。経済的エンパワーメントは、障害者のための職業技術訓練プログラムの提供、ろうや障害のある子どもを持つ両親の小規模事業へのリボルビング・ローンなどもプラスの効果をあげるでしょう。

ブルンジのろう者が貧しい理由は、教育、収入、そして自尊心という人間としての発展へのアクセスと機会を否定されているからです。しかし、ろう者は、建設的な市民となり、国の発展に貢献する力を持っています。現状の問題は、ろうコミュニティーにおけるやる気や能力のなさではなく、機会がないことなのです。


筆者は、イギリスのロンドンに住むろう者です。この記事は、筆者のアフリカ訪問中の観察に基づいたものです。



クロアチア

手話に関する法律が進行中

クロアチア議会委員会は、手話使用に関する法律草案を提案しました。草案は、当事者に知らされることなく作成されたため、当初は、ろう者、難聴者、及び盲ろう者コミュニティーから不安の声が上がりました。しかしながら、キャンペーンとアドボカシー運動が功を奏し、ついに、この法律の改善のための特別タスクフォースが設立され、そこにはクロアチアの聴覚障害の当事者団体が参加できることになりました。
クロアチアでは、手話は受け入れられていますが、法的に承認はまだされていません。手話をすでに法的に承認しているいくつかのヨーロッパの国に習い、クロアチアのろう者は以下のことを主張しています:情報への最大限のアクセスを可能にするため、コミュニケーション方法(モード)を自ら選択する権利、クロアチア手話の正式、そして法的承認、手話通訳者と手話指導者の養成と研修、ろう教育における手話使用及び、口話教育とバイリンガル教育の教育方法の自由選択の権利です。

世界ろう連盟は、クロアチア手話の法的承認に向けての前向きな発展を支援します。



フィンランド

フィンランド・ユーロビジョン・ソング・コンテストで サインマークが第二位を受賞

手話コミュニティーでは既に広く知られている、ろうのラッパーのサインマークは、フィンランド・ユーロビジョン・ソング・コンテストに参加したことで、ここ数ヶ月の間にフィンランドで、さらに広く知られることとなりました。サインマークのスピーカーボックスは、決勝戦で41.2%の票を得て、45.1%の票を獲得しモスクワ・ユーロビジョン・ソング・コンテストにフィンランド代表として参加する優勝者ワルドズ・ピープルに次ぐ第二位となりました。

サインマークの音楽界における新たな成功は、手話が正当な地位を与えられた場合に達成しうる可能性をはっきりと示したといえるでしょう。フィンランドでは、長年にわたり、手話コミュニティーと政策決定者の間で、フィンランド手話及び手話使用者の地位向上のため、有益な協力体制が取られてきました。自分の言語の地位が法的に確立すれば、自分の可能性を最大限に伸ばし、社会の一員として、社会活動に活発に参加することができます。サインマークは、この具体例です。

スピーカーボックスのビデオ:www.signmark.biz/speakerbox.html
サインマーク公式ウェブサイトhttp://www.signmark.biz/



インドネシアとチベット

インドネシアとチベットのろう者
Byイエーカー・アンダーソン記

概略

2008年8月5日、私は、インドネシアとチベットからの2人のろう活動家と、5時間にわたる会議を行いました。彼らの経験と功績に感銘を受けたため、ここで皆さんにお話したいと思います。インドネシアのエカワチ・リウとは、過去に何度か会い、国際問題に関して話し合ったことがあります。彼女は、ジャマイカのろう学校とグアムのろうプログラムで働いた経験を持ち、さらにチベットのろう青少年と成人とも働いたことがあります。ニカラグアでも、短期間のボランティア活動を行い、ネパールのポカラろう学校では、教師とスタッフに向けバイリンガル・バイカルチャー教育について、ワークショップを開催しました。彼女は、アジアの国々でのろう者の状況を、私に報告してくれています。チベットのラモ・ツェリング (ラッツェとして知られている)は、私が出会った初めてのチベット人ろう者です。彼女は、素晴らしい活動家であり、ラサにあるチベットろう協会のプロジェクト・マネージャーになりました。チベット手話に加え、チベット語、中国語、英語の3カ国を学びました。チベットろう協会によって集められた手話に関するデータを活用して作られた、チベット手話を解説した本を何冊か見せてくれました。ベルギーに拠点を置くハンディキャップ・インターナショナルからの支援だけで行われたことを考えると、チベット手話プロジェクトは尊敬に値する功績です。

エカワチ・リウとラモ・ツェリングと働いた経験のあるラン・キンは、快くこの記事にいくつかのコメントを加えてくれました。ラン・キンは、チベットろう者の活動にも参加しています。

私からの10つの質問に対する回答は以下のようになりました:

インドネシア
正式もしくは公的な政府によるろう者に関する調査が行われたことがないため、ろう児とろう成人の人数は、必ずしも正確なものではありません。WHOのデータによれば、2000万人の障害者のうち、12%はろう・難聴者であるとのことです。しかし、多くのろう者は著しい貧困にあり、したがって、地域、国内、国際的な当局者の管理が行き届かないため、この数字はもっと高くなるかもしれません。予想したとおり、ろう者はいまだに家庭や社会での根深い文化的スティグマに苦しんでいます。

スマトラ ウタラ島のメダンにある2つのろう学校は、政府の教育省とカトリック教会によってそれぞれ運営されています。両学校の教育のレベルは低く、就職の機会も極めて限られています。裕福な家庭のろうの子どは、いつかはどこかで仕事をすることができるようになるか、または、無職のままでいる場合もあります。他の発展途上国の政府と同様に、インドネシア政府も、ろうの子どもたちへの適切な教育を提供することに失敗し続けています。その他の学校では口話教育が行なわれている中で、ランガスビトゥンル(Rangkasbitung)にあるセコラ・トゥナルングは、唯一の手話を使用している学校であり、学校を運営しているパデサン財団法人は、できる限りの方法で教師たちにバイリンガル・バイカルシュラル教育方法を提供しています。

職を持っているろう者のほとんどは、裁縫師、美容師、パン職人、そして事務職です。きちんと技術を習得したろうの歯医者が個人の歯科医院を開業しようとしたところ、インドネシア医療協会は、ろうであることを理由に、彼女に開業許可を与えなかったことは、ろう者の間では有名な話です。

インドネシアの主要都市に住んでいるろう者は、デフ・クラブでの活動に積極的に参加しており、アメリカや日本を含む近隣の東南アジアの国々のろう者がどのような生活をしているかをよく理解しています。

インドネシアへの海外からのろう観光者の数は、明らかに少ないです。

世界の他の国々と同様に、インドネシアの健聴者もいまだにろう者を抑圧しています。インドネシアの健聴者は、ろう者の助言や委員会への参加を認めないまま、勝手に「バハサ・イスラヤット・インドネシア(インドネシア手話)」を作り本の編集までしました。政府やNGO役員との会議では、能力のあるろう者リーダーではなく、難聴者がろう者の代表として選任されることも多々あります。

インドネシアのろう者は、様々な理由から、地域レベルのろう団体を発展させることが出来ていません。その他の発展途上国や工業国のように、地方レベルのろう協会が連携・協力し、全国レベルの組織を築く取り組みは、インドネシアでは見られず、ろう者は政府やNGOからの金銭援助を待つだけです。実際、海外の専門家たちが、適性のあるろう者リーダーや活動家をトレーニングし後押ししましたが、どれも短期間のみでした。

エカワチは、もし、他の人権擁護団体の成功した活動の例などから学べば、「ろう者と共に活動することに情熱を持って、真剣に向き合っているろう者や健聴者は、アジアの国々で退けられているろう者にとって、より力強い協力者となりえる」と言っています。通訳サービス、政府助成金、そして人権の欠如のため、その他の発展途上国と同様、インドネシアのろう者は、アメリカやヨーロッパのろう者と比べ、一層の困難に直面しています。

エカワチが指摘したように、国の常識、制限、要望は、それぞれの国の文化によって様々です。数多くのろう者、健聴者ボランティアと、彼らの発展途上国における活動を観察してきて思うことは、その国・地域の文化を敬う気持ち、様々な性格と背景を持つ人々と共感できる力、多義性への寛容、そして期限を守ることがボランティアに必要な要素であるということです。つまり、ボランティアは、発展途上国の地域NGOとろう団体に支えられるのではなく、支えるていくべきであると、エカは述べました。

チベット
コメント:インドネシアとチベットの文化は全く異なるため、区別して理解する必要があります。ラッツェは、チベットにいる第3者との通信を通して得た更なる考察を付け加え、私の質問に答えてくれました。
チベット自治政府によると、チベットには、4万6000人のろう者を含む19万4000人の障害者がおり、これはチベットの総人口の7%に値します。現在、ろうの子どもを受け入れている学校は、1999年に設立された一校のみです。寄宿学校はラサにあります。現在、この学校に通っている生徒数は5歳から18歳までの200人であり、そのうち20人は盲ろう者であり、別に授業が行われています。チベットでの2つ目のろう学校設立のため、別の敷地を確保する予定でいます。

この学校は、中国政府機関であるチベット教育省により支援されており、ラサの地域政府が運営しています。ろうの子どもを持つ両親は、ろう学校外での教育費を賄う余裕がありません。ろう学校の卒業試験の後、他校でさらに勉強を続けることが出来る生徒はわずかです。ほとんどの生徒は、厳しい就職状況に直面します。数は少ないが、障害者のためのトレーニングセンターで職業訓練を継続したり、ベルギーのハンディキャップ・インターナショナルのような海外開発団体による職業訓練を受けられるろう者もいる。

ラッツェは、2001年にチベット手話(TSL)の記録が行われたと言っています。当時、中心グループとして選ばれた、たった4人のろう者によって、自然言語のTSLのデータが集められました。この中心グループは、チベット手話辞典作成のための知識を得るため、タイとネパールを2度訪問しました。約1000のチベット手話が集められました。現在のチベットろう協会にとって、チベット手話の基本文法研究のための資金的そして実践的な支援獲得が急がなければならない課題です。

最近まで、TSLでの授業は、ラサ特殊学校のカリキュラムにおいて、1週間に10分間の授業が2回と、主要言語(チベット語)による週に二回の授業の後に行われる土曜日の集団授業だけでした。ラサ特殊学校の授業は、チベット全域に適用されている中国政府の必修カリキュラムの元で、中国ピジン手話、中国語の口話と読み書きで行われています。ラッツェ自身の説得及びチベットへ短期派遣された質の高いろう開発の専門家、ハンディキャップ・インターナショナル等からの助言のお陰で、現在、チベット自治教育省は、学校での一般教育カリキュラムにTSLとチベット語(チベットろう者のバイリンガル言語)を取り入れるという考えに変わりました。ベルギーのハンディキャップ・インターナショナルとユニセフからの支援を受け、バイリンガル・バイカルチャー方法論発展を開始するための法案も採択されました。しかしながら、TSLの文法構造が確認されないままでは、バイリンガル・バイカルチャー・アプローチのための質の高い教材を開発することは、かなりの困難となるでしょう。

全ての国での共通の問題ですが、ラッツェは、チベットでも健聴者がろう者への抑圧を続けていることを確認しました。健聴者がろう者と出会うと、失礼な態度を取るか、親切にするかどちらかです。健聴者の中には、ろう者と結婚した人もいますが、他の国での状況と同様に、コミュニケーション手段として手話を受け入れる人ばかりではありません。ラッツェは、地元文化内での宗教経典の解釈が、ろう者への偏見と差別を引き起こしているらしいことに気づきました。

様々な理由で、多くのボランティアや専門家たちがチベットで仕事をしてきましたが、いずれも短期間です。彼らのチベット手話の習得は、とても限られています。チベットのろう者と3ヶ月以上にわたり共に活動できる開発作業者としての条件をクリアしているのは、最近まで、エカワチ一人だけでした。その他の人は、チベットへやって来て、3ヶ月以内で去っていきました。エカワチのろう者との活動は、ベルギーのハンディキャップ・インターナショナルにより支援されています。ベルギーが運営するチベットでのハンディキャップ・インターナショナルのプログラムは、1−2ヶ月間の手話開発など、様々な分野においてチベットろう協会と共同で活動したり、組織運営技術に関する2ヶ月間のトレーニングの手助けをするなどといった専門家たちの活動を支援しています。質の高いろう開発作業者の供給のおかげで、ハンディキャップ・インターナショナルは、チベット障害者連盟(中国障害者連盟の地域支部)から、1−2年の長期にわたるろう者専門家をチベットろう協会へ派遣するための資金提供を行う許可を得ました。チベットろう協会は、さらなる指導と支援のための条件を満たすろう者ボランティアを探し続けるつもりです。

エカ・リウが手配した2008年8月の旅行で、ラッツェは、ろう者全般に関するより多くの情報を得るため、ギャローデット大学へ訪問する機会を得ました。彼女は、「私も、一般社会の一員だと感じる」と述べています。ラッツェは、中途失聴者であり、彼女の中国語とチベット語の読み書きの能力を買われ、チベットろう協会での役目を与えられたことに、ご留意ください(*1)。ラッツェは、自己のアイデンティティーに関する心中の苦しみと、その苦しみの結果、チベットのろうの仲間の地位向上のために自分の能力を活用できるようになったことを、エカ・リウとその他の人にも話しています。最近、ラッツェは、現地のろう者に招待され、ニュージーランドも訪問しました。世界中のろう者とラサへ来るろう専門家との交流を通して、ラッツェは、自分自身を世界のろうコミュニティーの輝かしい一員であると認識し、そしてチベットろうコミュニティーのリーダーとしても、その力を著しく上げました。

言語学的研究に加え、チベットろう協会の新しい計画は、(a)独立したチベット手話通訳者協会の設立の支援および、ラサ特殊学校と共同でチベット語とTSLのバイリンガル・バイカルチュラル・カリキュラムの作成、(b)チベットろう者同士の活動を増やし、交流を促進することで、TSLの自然な発達を助長する、(c)地域で訓練を受けたろう者と協力して、ろう児への早期介入の支援、そして(d)チベットの地方都市にもチベットろう協会支部を立ち上げることです。現在行われているプロジェクトは、裁縫ワークショップ、チベット語と中国語の読み書きクラス、手話収集、政策提案への啓発、ろう者と健聴者両方の子どもと成人へのTSL教育です。現在の世界金融恐慌のため、これらのプロジェクトは、存続の危機に陥っています。

チベットろうコミュニティーの詳細に関しては、チベットろう協会へ連絡してください。tibet.stata@handicap-int.org.cn (英語、中国語、チベット語、スペイン語)

(*)コメント:私自身も観察したことであり、また現場経験を多く重ねているろうの開発支援者も気付いていることであるが、国際開発団体は、しばしば現地のろう社会の中から開発計画のろうのリーダーを選ぶ際に、口話能力を基準に選ぶ傾向がある。これは、国際開発団体の運営チームと、現地のろう者との間のコミュニケーションを容易にしたいということからであろう。しかし、これは判断ミスとなり得る。これはろう協会内に、非民主的なあしき前例を作るだけでなく、もっとも強くろう者の文化的アイデンティティを有し、最も優れた手話話者であるろう者を排除してしまう結果となる。(チベットのラン・キン氏のコメント)



マダガスカル

マダガスカルでの通訳トレーニング

マダガスカルろう連盟(FMM)は、保健・家族計画・社会保護省との共同運営の通訳養成プログラムを開始しました。10人が、病院、スポーツ、社交、コミュニケーションなどのための手話通訳訓練を受けました。アンタナナビホの大きな病院の経営者は、マダガスカルの全ての大きな病院は、マダガスカル手話講習会に職員の参加を促すべきであると認識しました。生徒は、2008年12月11日に、認定書を受け取りました。FMMは、現在マダガスカル内に28人の手話通訳者を保有していますが、次回は、もっと多くの手話通訳者の訓練を希望しています。



パレスチナ

ガザのろう学校が著しく破壊

20日以上に及ぶイスラエル軍の侵略により、ガザ地区は、災害激甚地と化しました。1300人以上が命を落とし、少なくとも5000人以上が負傷しました。地域のインフラは著しく破壊され、その結果150万のパレスチナ人が電気も水もない状況下で暮らしています。2万1000もの建物が一部倒壊もしくは全壊し、多くの住民が住む場所のない状態でいます。

著しく危険な状態のため、イスラエル侵攻の開始以来、ろう児のためのアトファルナ・ソサイエティは、活動を停止しています。2009年1月3日に、近隣建物への爆弾攻撃により、アトファルナビルは、ひどい被害を受けました。爆破の威力で、アトファルナの窓ガラスは全て砕け散ってしまいました。被害額は、20,000ドルに相当すると思われます。幸運にも、火事はなく死傷者はいませんでした。現在、アトファルナ職員は職場に復帰しており、アトファルナ学校は2009年2月1日に復帰予定です。

ろう児のためのアトファルナ・ソサイエティ(ASFC)は、被害を受けた家族へ緊急な必要品を供給することで、ろうコミュニティーを支援の手を差し伸べています。またアトファルナは緊急カウンセリングチームも設置し、現地調査を行い、短期又は長期の緊急支援を必要としているろう者のニーズ把握に努めています。アトファルナの学生とその両親への精神的なサポートの提供も目的としています。冷静な判断と平和そして安全という感覚を子どもたちに取り戻してもらうことが、このプログラムの狙いとなります。センターは、地域へ出向いての聴覚テスト(スクリーニング)と、爆撃によるひどい被害を受けた地域への認識プログラムも目的としています。

アトファルナ・ソサイエティは、ガザでの戦争で全を失ったろうの子どもと大人に、最低限必要なものを提供することに最善を尽くしています。戦争によって苦しんでいるガザ地区のろう者に手を差し伸べたい方は、以下のものを寄付していただけると助かります。
  • 毛布
  • 服と靴
  • 衛生用品
  • 補聴器と電池
  • 学校制服のための生地
  • 学校の鞄と筆記用具
寄付に関する詳細は、こちらへご連絡ください。support@atfaluna.net
ろう児のたえのアトファルナ・ソサイエティ: www.atfaluna.net

情報:アトファルナ機関紙2009年2月号



フィリピン

フィリピンろう文化ドキュメンタリー

ドキュメンタリー映画、「サイレント・オデッセイ−ろうの世界への旅」は、フィリピン大学フィルムセンター劇場で9月に上映されました。ミラナ・メディナの監督によるこの映画は、フィリピンろう文化を描き、手話、特に現在でも政府に承認されていないフィリピン手話の重要性を訴えています。ミラナ・メディナは、この映画を通して、見出しにあるように、フィリピンろう者が自分たちの文化的アイデンティティの重要性と言語的権利に気付き、それに向かって共に闘っていってくれることを願っています。この映画は高い尊敬と評価を得ており、マニラ以外でも上映される予定です。

ろうの世界への旅(110分、英語字幕)は、文化と芸術委員会(NCCA)とリンギャップ‐パンギャラップ財団法人(Lingap-Pangarap Foundation)とミヤド・ビジョン(Miryad Visyon)との共同作品です。



サウジアラビア

サウジアラビア王国、国際障害者デイ"全ての人への尊厳と正義"を祝う
By ヘンド・アル‐ショワイアー

サウジアラビアのアルジョハラ・ビント・ファイサル・ビン・トゥルキ・アル=サウード王妃からの支援により、サウジアラビア王国は、リヤドのアルタルビア・アリスマリア学校の芸術劇場にて、2009年1月21日水曜日に、国際障害者デイ「全ての人への尊厳と正義を」を祝いました。このイベントは、ろう者に関係したことに焦点が置かれ、プリンス・サルマン障害者研究センター(PSCDR) www.pscdr.org.sa 、アルタルビア・アリスマリア学校 http://www.altarbiaalislamiaschools.net/en/default_en.aspx 、サウジろう協会、そしてろう女性のための文化センターの支援により開催されました。

特殊教育総局‐教育省、女性部、特殊教育部−からの代表のキング・サウード大学、プリンス・サルマン障害者研究センター、サウジろう協会、リヤドろう女学校、そしてその他の政府機関が、サウジろうコミュニティーと共にこのイベントに招待されました。

イベントは、国歌斉唱とコーラン経典の朗読で始まりました。学校長のサミラ・シュクリ氏は、王妃、ろう者、その他の観客を歓迎するスピーチを述べました。彼女は、学校運営陣はろう者を支援する努力を続けていく思いがあることを述べ、彼女自身がサウジ手話を学びたいと発表しました。PSCDRのろう者と手話プログラムのコーディネーター兼、ろう女性のための文化センターの教育部門とサウジろう協会のディレクターであるヘンド・アル‐ショワイアー氏は、(WFDの)「ろう者の人権に関するグローバル教育プレ計画プロジェクト」のアラブ諸国に関する部分について簡潔に報告し、サウジアラビアの手話の地位向上、サウジ手話の保存の重要性と、アラブ諸国に広まっている「統一アラブ手話辞典」に対して力を合わせて反対運動を立ち上がることの重要性に集中して話をしました。

PSCDRの常任副理事長ヘイディ・アル‐アスカリ博士は、本来の自分たちの手話を使用するろう者の権利を強調し、PSCDRは、フィンランドろう協会と協力してサウジ手話の記録のための国家的プロジェクトを行うことも強調しました。

王妃アルジョハラは、短い挨拶の中で、ろう者の支援を続けていくこと、アラブ・オープン大学で学問を追求する意志のあるろう学生への奨学金支援、そしてろう者と共にサウジ手話の保存のため活動していくことを約束しました。

キング・サウード大学、特殊教育学部副学部長のハニア・メルザ博士は、スピーチの中で、サウジ王国大学は来年から初めてろう学生の受け入れを始めることと、全ての障害を持った学生にとって、大学をアクセス可能なものにするため、新しく特別支援サービスセンターを設置したことを報告しました。

「ろう者の生活の実情」と題した劇が行われ、教師がサウジ手話の訓練を受けていなことで、メインストリーム学校に通うろう学生が直面する問題や障害、そして手話の出来ない家族のと家庭での問題と障害が描かれていました。あるシーンでは、流暢にサウジ手話を使う教師と、それにより全ての情報を得ることが出来るろう学生の姿が演じられました。

アルタルビア・アリスマリア学校は、サウジアラビアで最初に手話を承認し、生徒に手話を教えた学校であることは、言及する価値があります。それだけではなく、ろう者プロジェクト支援のために寄付金も募りました。



サウジアラビア -手話を承認
By イエーカー・アンダーソン

ヘンド・アル‐ショワイアーは、サウジアラビア教育省が、ろう学校とろう学生を受け入れている一般校で働く教師と、ろう・難聴学生のために働いているその他のスタッフのために、サウジ手話のトレーニングプログラムを開発したことを、喜びと共に発表しました。アル‐ショワイアー氏は、サウジアラビアのリヤドにあるプリンス・サルマン障害者研究センターで、「ろう」と「手話」のプログラム・コーディネーターとして働いているろう者です。

アル‐ショワイアー氏は、すでに、全ての管理職と教師たちのためのプログラムを設立することに同意し、教師たちは、人工内耳のあるなしに関わらず、ろう難聴学生とのコミュニケーション手段としてサウジ手話を容認しました。彼女は、手話トレーニングに関する研究レポートを探しています。ろう者学(Deaf Studies)プログラムを持つ各国の大学には、その教材をプリンス・サルマン障害者研究センターと共有していただきたいです。連絡先は、www.pscdr.org.sa.に載っています。

ろうの子どもを受け入れている私立、公立学校は、プログラムを作成します。最大の問題点は、サウジ手話の訓練を受けた適切な指導者の採用です。サウジアラビアのろうの大人たちには、サウジ手話の技術を、ろうの子どもたちや教師のために役立てることのできる、またとないチャンスとなりました。

アル‐ショワイアー氏は、アラブ地域のろう者の状況を、常時私に知らせてくれます。サウジアラビアのろう成人たちの経験は、素晴らしいです。こういったろう者たちは、他のアラブ諸国のろう者の手本となるでしょう。自国のため共に活動するろう者が増えれば増えるほど、ろう文化がその国の文化の一部として根付いていくことになるでしょう。

音声のアラビア語は、アラブ諸国の標準語とされていますが、各国で話されているアラビア語は、方言の様に、国によって少しずつ異なります。ろう者の手話は、音声言語よりもさらに強く、自然、文化、産業的環境の影響を受けます。これは、他の国々のろう児やろう者と同じです。アル‐ショワイアー氏は、他国の手話を取り入れるのではなく、ろうの子どもたちがzサウジ手話を習得してくれることを願っています。通訳も、やがては、サウジ手話で提供されることとなるでしょう。

手話を承認している国は、現在、世界中で増え続けています。自国の憲法や法律の中で手話を承認した国もあります。宣言や決議のなかで手話を承認した国は、ほとんどありません。フィンランドは、憲法だけではなく、いくつかの法律の中にフィンランド手話が明記されている点で、その他の国から一歩抜きん出ていると言えるでしょう。国連とユネスコによって発行された人権に則って、WFDは、全ての国のろう者が自国もしくは地域の手話を尊重する権利の保障のために断固闘っていきます。

各国の、憲法、法律、宣言、決議での手話承認に関する最新情報をWFD事務局までご連絡ください。



ウガンダ

ウガンダでのろう教育、遅れを取り戻す

報告者:ジョセフ・ムブランワナ(Joseph Mbulamwana)とイユテ・O・デボラ
ウガンダろう協会 - UNAD

20年前のウガンダには、ろう者のための学校は、NgoraとNtindaろう学校のわずか2校しかなく、ここに入学できたろう者でも、受けられる教育は小学校6年まででした。その後、運の良い人は、隣国ケニヤで大工、編み物、洋裁などの職業訓練を受けに行っていました。

両親や保護者がケニアに行くお金がない子どもたちは、村のろう者の先輩たちに倣い、材木運び、水くみ、子守、家畜の番人のような単純労働に就きました。このような状況下で、ろう者のためのワークショップや研修会を開催したら、10人に1人は自分の名前の読み書きも出来ませんでした。

時が経ち、デンマーク、フィンランド、スウェーデンのろう協会やその他の団体とのパートナーシップが進み、UNADは、手話開発、手話指導者と通訳者トレーニング、権利擁護運動とロビー活動などを始めました。

これらパートナーシップの成果は、特記に値します。
  • 手話を流暢に使える教師の数は、増えています。これにより、地域の教師が海外からの教師に取って代わりました
  • 手話通訳養成は、国立大学で行われています。ウガンダ憲法では、手話の開発の支援を政府に義務付けています。そのため、このように国立大学で、政府が保障する手話開発が行われ、持続可能性の点で評価できます。
  • ろう小学校の数が2校から15校に増え、ろうと健聴の学生を受け入れている付属クラスが約60あります。
  • 政府助成の特別ろう中学校が2校(ワキソとムバレろう中学校)とインクルーシブの中学校が2校(ンゴラ高校とケント財団学校)設けられ、ろう学生へ質の高い教育を提供しています。
  • 「高等教育と大学進学のための行動計画」が策定され、これにより、大学入学を希望する6名のろうの高校卒業生が、大学の奨学金審査を受けた際、4.5ポイントが加点されました。現在20人以上のろう学生が国立大学に通っています。
以前は大工、洋裁師、靴磨き、牛飼いとして働いていたウガンダのろう者でしたが、今は、大学に通っているか、もしくはすでに様々な大学、短大を卒業しています。

 今後のイベント

クリティカル・リンク会議2009(Critical Link conference 2009)
通訳者会議 -カナダ バンクーバー 2009年5月6日−8日
詳しい情報はウェブサイト(www.criticallink.org/2009conference)から

第3回リハビリテーション障害国際会議(The 3rd International Conference on Disability & Rehabilitation)
プリンス・サルマン障害センター(PSCDR)
開催日:2009年3月22日−26日
場所:サウジアラビア リヤド
参加登録と発表の応募は、大会ホームページ(http://www.icdr.org.sa/en/)から

英国ろう者子育て会議2009:教育・教育・教育(Deaf Parenting UK Conference 2009: Education, Education, Education)
開催日:2009年6月12日(金)
場所:英国 ロンドン
連絡先: info@deafparent.org.uk
ウェブサイト:www.deafparent.org.uk

ろうレインボー連盟会議(Rainbow Alliance of the Deaf Conference)
開催日:2009年6月30日−7月4日
場所:米国イリノイ州 シカゴ
連絡先:Windy City Rainbow Alliance of the Deaf, 3656 N. Halsted Street,
Chicago, IL 60613, USA
Fax: +1 888 772 5073
ビデオ電話: +1 773 904 0026
Eメール:info@wcrad.org
ウェブサイト: http://wcrad.org/rad2009.htm

文化歴史と文化研究の国際学会(International Society for Cultural History & Cultural Studies)
テーマ:ストーリーテリング(口承文学)、記憶、アイデンティティの構築
開催日: 2009年7月1日−5日
場所:メキシコ メキシコシティ
連絡先:info(at)enkidumagazine.com
ウェブサイト:http://enkidumagazine.com/chics/esc.htm

Multimod 2009
テーマ:子供たちのコミュニケーションの多様性(マルチ・モダリティ):身振り、感情、言語、および認識
開催日:2009年7月9日−11日
場所:フランス トゥールーズ
連絡先:multimod2009@univ-tlse2.fr
ウェブサイト:http://w3.eccd.univ-tlse2.fr/multimod2009/index.php?pg=acc&lg=en

第7回ろう歴史国際会議(7th Deaf History International conference)
テーマ:歴史なくして未来なし
開催日:2009年8月4日−8日
場所:スウェーデン ストックホルム
連絡先:dhi2009@sdhs.se
ウェブサイト:www.sdhs.se/dhi2009

第10回アジア太平洋ろう会議(10th Asia Pacific Congress on Deafness - APCD2009)
開催日:2009年8月4日−7日
場所:タイ バンコク
ウェブサイト:www.apcd2009.org

第21回夏季デフリンピック大会(21st Summer Deaflympics Games)
開催日:2009年9月5日−15日
場所:中華台北 台北
ウェブサイト: www.2009deaflympics.org

第5回国際ろう道化フェスティバル(5th International Deaf Clownery Festival)
開催日:2009年9月23日−25日
場所:ウクライナ キエフ
連絡先: chepchina@bigmir.net

ヨーロッパ手話通訳者フォーラム(EFSLI)会議(European Forum of Sign Language Interpreters (EFSLI) Confernce)
開催日:2009年9月18日−20日
場所:エストニア タリン
ウェブサイト:www.evkty.ee/eng_efsli2009/index.html

完全参加−機会と支援技術(PARTICIPATION FOR ALL - Opportunities & Supporting Technology) 中止となりました
開催日:2009年10月14日−16日
場所:スウェーデン オレブルー
ウェブサイト: www.partforall.se

精神医学治療者および回復者国際ネットワーク世界会議2009(World Network of Users and Survivors of Psychiatry (WNUSP) General Assembly and Conference 2009)
テーマ:われわれの権利を現実のものに−障害者の権利条約の時代の人権

日程:2009年3月16日−20日
場所:ウガンダ カンパラ
会議のプログラムと参加登録はホームページ(http://wnusp.rafus.dk/preliminary-program-for-the-wnusp-general-assembly-and-conference.html)から

世界盲ろう連盟会議(世界盲ろう連盟第9回へレンケラー世界会議および第3回総会、World Federation of the DeafBlind conference)
開催日:2009年10月22日−27日
場所:ウガンダ カンパラ
ウェブサイト:www.wfdb.org

第4回精神衛生とろう世界会議(4th World Congress on Mental Health and Deafness)
日程:2009年10月27日−30日
場所:オーストラリア ブリスベン
ウェブサイト: www.mhd2009.org

ギャローデット大学主催 国際ろう映画祭(International WORLDEAF Cinema Festival hosted by Gallaudet University)
日程:2009年11月4日−7日
場所:米国 ワシントンDC
登録と詳しい情報はこちらから: http://wdcf.gallaudet.edu

国際ろうパントマイム祭−ボレック・ポリブカ劇場(International Festivale Pantomime of the Deaf - Theatre of Bolek Pol?vka)
日程: 2009年11月10日−15日
場所: チェコ共和国、ブルノ
連絡先: snncr@snncr.cz または ecpn@ecpn.cz
チェコ共和国文化省の経済的支援とブルノの町の協力の下、チェコ共和国ろう難聴者協会とヨーロッパろうパントマイムセンター(ECPN)によって運営

サイン4(SIGN4)
日程: 2009年12月17日−19日 (プレ会議ワークショップは、12月16日)
場所: インディラ・ガンディー国立オープン大学(Indira Gandhi National Open University)インド、ニューデリー
運営者: インディラ・ガンディー国立オープン大学  ニューデリー、 国際手話ろう者学センター(International Centre for Sign Languages and Deaf Studies)イギリス、プレストン、イシャラ財団 ムンバイ、デフ・エンパワーメント財団 オランダ
要約の締切日: 2009年4月15日
連絡先: sign4conference@uclan.ac.uk
その他詳細は、2月/3月にサイン4会議ウェブサイトで発表

第21回ろう教育国際会議(21st International Congress on the Education of the Deaf )
日程: 2010年7月18日 - 22日
場所: カナダ、ブリティッシュ・コロンビア、バンクーバー
ウェブサイト: www.iced2010.com

今後開催予定の、地域もしくは国際的に関心の高い会議の情報がありましたら、お知らせください。WFDニュースまたはWFDニュースレターとウェブサイトの今後の活動カレンダーに掲載します。



WFD支援団体

フィンランドろう協会
アメリカろう協会(National Association of the Deaf in USA)
ノルウェーろう協会、スウェーデンろう協会、フィンランドろう協会、そしてデンマークろう協会は、事前計画プロジェクトを支援してくれました。
Schwung ApS
ウェブサイト支援:CSD


 書籍及び出版物

ろう者と人権(Deaf People and Human Rights)
このプロジェクトの調査者を務めたヒルデ・ハウアランド(Ms. Hilde Haualand)とプロジェクト・コーディネーター兼調査アシスタントのコリン・アレン( Mr Colin Allen)によって執筆されました。

『ろう者と人権』は、ろう者の状況について、過去最大規模の調査に基づくレポートです。主に途上国の、世界93カ国のろう者の生活について記述されています。スウェーデンろう協会と世界ろう連盟が調査を実施し、スウェーデン国際協力開発事業部(Sida)およびスウェーデン障害者国際支援協会 (Shia)による財政支援を得ています。

このレポートは英語もしくは国際手話のDVDで、WFDのウェブサイトから入手できます。国際手話版の発送料は (5ユーロ)です。
DVD版での入手を希望される方は、WFD事務局(orders@wfdeaf.org)までご連絡ください。


DVD-世界ろう者会議における望ましい国際手話(Suggested International Signs for use at the World Federation of the Deaf General Assembly)ノルウェーろう協会・AIエクスペリエンシャルカレッジ・ろう者会議センター発行、ドブス・メディア製作
このDVDは4年毎のWFD評議員会で一般に使われる手話のガイドとなることを目的としています。DVDの値段は30ユーロです。次の11のトピックがあります。

WFDと国際連合
評議員会
理事会
地理の手話
ミーティングの手続
ミーティングのコミュニケーション
プロジェクトと募金
財務
数字
その他の手話
WFD青年部

国際手話ハンドブック(A Handbook on International Sign)
国際手話のハンドブックは25ユーロの値段で、とりわけろう者のためのツールになることを意図しています。私達グループの共同生活を和らげるのに役に立つ手話を提案します。この本がFESORD CV財団の協力のもと(WFDのサポートとともに)CNSE財団とFAXPG財団によって考案・開発・作成された共同製品であることも大変意義のあることです。電子メールで宛先メールは、faxpg@hotmail.comへ注文できます。

グアテマラのろうコミュニティに関する 社会言語学的調査 (A Sociolinguistic Survey of the Guatemalan Deaf Community) エリザベス・パークス、ジェイソン・パークス著
国際SIL  2007年3月
この調査をお読みになりたい方は、orders@wfdeaf.org までご連絡ください。

デモクラシーを教える−民主主義に基づく市民行動と人権教育事例集(EDC/HRE第VI巻、Teaching democracy - A collection of models for democratic citizenship and human rights education) 2009年1月26日刊
Council of Europe Publishing発行
価格:19 ユーロ/ 38 米ドル+ 送料10%
注文先:publishing@coe.int または http://book.coe.int
この教員向けのマニュアルは、民主主義に基づく市民行動(EDC)および人権教育(EDC)の実践例やモデルを集めたものです。学校のみならず、非正規教育の現場での事例もおさめられています。

 WFD 販売品

さまざまな国の名前の手話表現を知りたいと思っている方は多いのではないでしょうか。人気の一冊、"Country Name-Sign(国名手話)"(2003)はWFDのために、全日本ろうあ連盟(JFD)によって出版されました(訳注:『国名手話ガイドブック』(2002)の国際版)。データの収集は、日本手話研究所とスウェーデンろう協会のトーマス・ヘドバーグ氏によって行われました。この書籍は完売いたしました。近い将来増刷し、入手可能となったら、ホームページでお知らせします。

WFDでTシャツ(ゴルフ、女性、および普通)、WFDピン、水筒、時計、腕輪、ペン、およびキャップなどのアイテムの注文をご希望の方は、Eメール(宛先アドレスはorders@wfdeaf.org)で注文することができます。

 WFD事務局の連絡先情報

連絡はすべて下記までお願いします。
WFD General Secretariat
PO Box 65
FIN- 00401 Helsinki
FINLAND
Fax: +358 9 5803 572
Email: info@wfdeaf.org

より詳しいことや最新の情報、また連絡のためにはWFDのウェブサイト(www.wfdeaf.org)もチェックしてみてください(会員専用の直接窓口やWFD販売品の注文はWFDのウェブサイトのContactsのページへどうぞ)。WFD理事長と直接連絡を取りたい方は電子メールアドレスメールは、wfd@kl-deaf.fi へどうぞ。

WFDの正会員窓口(各国のろう協会)と連絡を取りたい方は、WFDウェブサイトの'National Members'をクリックしてください。

今後のためニュース価値のある記事はご遠慮なくご投稿ください。いつでもinfo@wfdeaf.orgに記事を転送できます。次号に掲載するよう最善をつくします。また、ニュースレターに関する、どのようなご意見やコメントも大歓迎です!

WFDの内部で起きていることの詳細は、WFDウェブサイトをご覧ください:www.wfdeaf.org

世界のろう者コミュニティについてお知らせしたいことがあるときは、フィリパ・サンドホルム( Ms Phillipa Sandholm)かラウラ・パユネン(Laura Pajunen)までご連絡ください。




WFDニュースレター 2009年2月号

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