2025年を振り返りながら、私たちろうコミュニティのために行動するとはどのようなことなのか、私自身の経験から考えたことを3つ皆様に共有したいと思います。
今年、私は12万キロ以上、つまり地球3周分の距離を移動しました。自宅から空港までの移動だけで120時間以上を費やしました。私が皆様に共有したい考えの1つ目は、「(物理的に)その場にいること」は、戦略的な選択だということです。現在は、オンライン会議が主流となっています。そのような中、ニューヨークの国連、パリのユネスコ、ベルリンの「グローバル障害サミット」に現地に行って実際に参加することで、ろうコミュニティが国際的な意思決定において、影響力を持つ存在であることを示すことができます。重要な決定が行われる国際的な場において、ろう者が使用する手話言語の存在が認識されるようにするためには、リーダーが「長い道のり(長距離の移動)」を引き受けて現場に立つ覚悟が必要です。
今年、世界ろう連盟(以下、WFD)は、WFD内部での大きな課題に直面しました。事務局長が4か月間不在になるという事態でした。私は事務局スタッフを支援しながら、新しい事務局長を探すため、世界規模で選考を行いました。この出来事により気がついたことは、変化が起きる時期において、リーダーシップのあり方が極めて重要だということです。皆様も、国内のNGOの職員が交代したり、理事会が改選したりなどを経験すると思いますが、そのような中でも、リーダーの役割は継続性と安定を提供することです。WFDは、この変化の期間を、停滞ではなく、組織運営を強化する機会と捉え、無事に乗り越えることができました。事務局スタッフが、この変化の期間も、円滑かつ献身的に仕事をしてくれたことに感謝しています。素晴らしいチームに恵まれて、私たちは幸運です!
ローマで開催された「国際ろう教育会議」(ICED)では、口話主義という時代遅れの思想について説明するとともに、今こそ前進すべき時であると訴えました。2026年に向けて皆様と共有したい考えの2つ目は、単に「話し合いの場に席を求める」段階を超え、「正当な認知」を求めるべきだということです。各国のリーダーの皆様には、政府がろう者について検討する際、ろう当事者の専門家や、ろう者に関するデータをきちんと引用しているかを確かめていただきたいです。私たちは単なるサービスの利用者ではなく、自らの教育や人権の枠組みを形づくる主体です。国連障害者権利委員会や欧州ろう連合(EUD)の会合、タイを訪れた際には、AIや技術革新について発言しました。このテーマは2026年に私たちが向き合う重要な課題です。この課題について考えるとき、政府は、ろう者の言語的な視点を取り入れながら未来を築くことが必要です。
2026年、そしてWFD創立75周年に向けて、WFDが世界で最も長い歴史を持つ、障害のある当事者が主導する国際NGOであることを改めて心に留めていただきたいです。最後に、皆様と共有したい考えの3つ目は、「強靱性」(レジリエンス)についてです。今年訪れた15か国、そしてナイロビで出会ったリーダーの方々を通じて、私は皆様の強さを目の当たりにしました。リーダーシップをとっていると、ときには孤独な道を歩むことになります。自国のコミュニティのために下す決断の重さを、私自身もよく理解しています。しかし、私たちが世界的に繋がっていることを、思い出してください。例えば、今年、アゼルバイジャン、日本、レソト、ボリビアが自国の手話言語の法的認知を得たように、ある1ヵ国のろう協会が自国の手話言語の法的認知に成功すると、それは世界中のろうコミュニティを力づけることになります。
WFDは設立75年目を迎えるにあたり、過去を祝うだけでなく、未来を戦略的に設計していきます。皆様のリーダーシップに感謝申し上げます。共に、「世界中のろう者が、どこでも手話言語でコミュニケーションできる社会」に向かって前進していきましょう。
2025年9月、WFDは新しい事務局長を選任するため、世界規模での公募を開始しました。そして、世界各地から、多様な専門分野や経歴を持つ非常に優秀な応募者からの申し込みが多数寄せられました。
その結果、このたびWFDは、ジョン・ムーア氏(Mr John Moore)を次期事務局長として任命することを発表します。就任日は2026年1月1日です。理事会は、同氏の豊富なリーダーシップ経験と、組織を戦略的に強化・近代化してきた実績を高く評価しました。
ムーア氏の就任を受け、WFDは今後も、世界中のろう者の人権および言語権を推進するという決意を改めて表明します。
このたび、WFDは、2025年の「年次報告書」を公表します。本報告書では、ろう者のリーダーシップが強化され、WFDの活動が世界各地へ広がり、手話言語権が具体的に前進した2025年を振り返っています。
2025年、WFDは、会員およびパートナーの皆様と共に、以下の取り組みを行いました。
2026年は、WFDが創立して75周年を迎える節目の年です。しかし、WFDの使命はこれからも変わりません。WFDは、引き続き、ろう者の人権を推進し、ろう者が主導する組織を強化し、「世界中のろう者が、どこでも手話言語でコミュニケーションできる社会」の実現を目指していきます。
WFDの地域パートナー団体である欧州ろう連合(EUD)は、12月2日に創立40周年を迎えました。WFD理事長は、ベルギー・ブリュッセルの欧州議会において、EUDが手話言語権を求めて活動し続けた40年を共に祝いました。
当日は、ろうのリーダー、欧州議会議員、EU関係者、そして支援者が集まりました。EU各地において、立法や政策決定、市民との日常的なコミュニケーションなど、あらゆる場面で手話言語が十分に認知され、社会の中で見える形となり、実際に使われるようにするために何が必要かについて、経験や意見を共有しました。

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