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第6回障害関連問題テーマ作業部会
会議終了後アンケートの回答

世界ろう連盟 理事
高田 英一


問2:貧困の問題

 この地域の障害運動にとって、貧困は大きな問題です。当然貧しい、途上国の障害者は「十年」の目標達成において、大変不利な立場におかれています。(例えば、貧しい国の障害者は地域会議に参加できない、バリア・フリーな物理的環境も推進できない、障害に関する啓蒙・広報を行うメディアとのつながりも持たない。)このような貧しい国でも「十年」の目標が達成されて行くために、ESCAPはどのようなことができるでしょう?

回答:
2003.6.10
貧困の問題
 国連の障害者問題に関わる目標は「完全参加と平等」である。
 アジア・太平洋地域のエスカップ障害問題部会レベルでは、「びわこミレニアム・フレームワーク」の実現が目標となる。
 そして「びわこミレニアム・フレームワーク」に対する的確な取り組みが、結果的に全体的な貧困の克服に貢献するであろう。また貢献できるように工夫しなければならない。「びわこ・ミレニアム・フレームワーク」の実現のために下記のようなプロセスを踏むことか必要であろう。
1.「びわこミレニアム・フレームワーク」の各国言語への翻訳

 「びわこミレニアム・フレームワーク」はエスカップ地域各国の全ての言語に翻訳、文書として広く普及を図り、それぞれの国内で政府、行政関係者、障害当事者さらに広く国民全体に理解され、支持されるように努める。
 各国言語への翻訳、文書化は政府の責任で行われることをエスカップは奨励し、必要な場合は翻訳、文書化資金支援の技術を提供する。
 各国での「びわこミレニアム・フレームワーク」に関する知識の平等実現が出発点である。なお、付属文書として「アジア太平洋障害者の10年(1993−2002)行動課題の実施及び10年の達成状況におけるエスカップの役割の評価」が添付されることも必要であろう。

2.「びわこミレニアム・フレームワーク」の署名国を拡大する

 「びわこミレニアム・フレームワーク」の署名国をエスカップ加盟国の全てに拡大する。アジア太平洋地域障害者フォーラム(APDF)は各国の障害当事者組織を通じて、署名することを各国政府に要請する。

3.障害当事者組織は政府と協力して、上記文書の普及に努める。

 障害当事者組織は、それを広く国民に普及するため、新聞、テレビ、ラジオなどのマスコミの協力を得るように努める。また視覚障害者には点字文書、聴覚障害者にはテレビでの手話解説が用意されるようにする。

4.シンポジウムまたはワークショップの開催

 エスカップは「びわこミレニアム・フレームワーク」に関わるシンポジウムまたはワークショップ(以下シンポジウム)を各国で開催する。このシンポジウムは、開催国障害当事者を中心として政府、行政その他の関係者が参加することを求める。エスカップはその開催費用を先進国政府、世界銀行、アジア開発銀行、その他の資金団体から支援を受ける。APDF及び先進国障害当事者組織はその開催にあらゆる方法で協力し、シンポジウムの成果を活用して開催国障害当事者組織の結成、拡充に努める。

5.シンポジウムまたはワークショップ開催の条件

 シンポジウムは各国障害当事者組織が全て参加できるように留意することが重要である。シンポジウムは、手話通訳者及び点字文書を用意するなど各国の実情に応じて配慮し、開催国の全ての障害者に参加の門戸を開き、「びわこミレニアム・フレームワーク」に関わる理解が深まるように留意すること。APDF、先進国障害当事者組織及びTWGDCはそのための技術を提供する。

6.シンポジウムまたはワークショップの開催国

 シンポジウムまたはワークショップの開催国はカンボジア、バングラデシュのような最も恵まれない国から順次開催していく。

7.カウンターパートの設定

 TWGDCは被援助国と援助国の障害当事者組織がそれぞれのカウンターパートが設定できるように技術提供し、シンポジウムを通じてそれぞれの理解が深まり、それらの絆が深まるように配慮する。結果として各国の障害当事者組織の間で、援助・被援助の関係が確立されていくであろう。援助・被援助の関係とは資金、資材物質だけでなく人材提供、技術援助が含まれることが重要である。

8.障害当事者組織の責務

 途上国障害当事者組織の問題は、分野別に全ての障害者を組織できていないこと。またそのように政府が支援し、育成に努めないことである。さらに障害当事者組織を承認しない傾向である。それゆえ、まず途上国に障害当事者組織を分野別の必要に応じてより多く結成し、育成することが課題となる。
 先進国障害当事者組織もカウンターパートとなる途上国障害当事者組織に対する援助技術に習熟しているわけではない。先進国障害当事者組織は、先進国内部における障害当事者組織の経験交流や知識学習を通じて援助技術の向上に努めなければならない。

9.政府間援助主流の変更

 障害当事者組織間の援助には自ずと限界がある。障害当事者組織間の援助はそれを呼び水として政府間援助、世界銀行、アジア開発銀行など資金団体による援助に発展させてこそ意義がある。政府間の援助は経済、工業援助からこのような民生、福祉に関わる援助が主流となるようにエスカップは奨励する。

10.貧困の解決のために

 今の段階では、先々の実行計画を詳細に論じることはできない。今必要なことは「びわこ・ミレニアム・フレームワーク」の普及という基本を着実に実行していくことである。その時々の過程で課題が浮上し、それを整理解決しながら「貧困の解決」という偉大な未来への展望を開いて行きたい。
以上

最終更新 2003年6月13日
財団法人 全日本聾唖連盟

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