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※全日本ろうあ連盟による仮訳

ESCAP決議58/4
「21世紀における、アジア太平洋地域の障害者にとって
包括的でバリアフリーの、権利に基づいた社会の促進」


決議58/4. 21世紀における、アジア太平洋地域の障害者にとって包括的でバリアフリーの、権利に基づいた社会の促進

アジア太平洋経済社会委員会は、

国連総会が障害者に関する世界行動計画を採択した1982年12月3日の総会決議37/52、及び障害者に関する世界行動計画の実施に関連する2001年12月19日の決議56/115「21世紀における全ての人のための社会に向けて」を思い起こし、

委員会がアジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)を宣言した1992年4月23日の委員会決議48/3、及びアジア太平洋地域における障害者の完全参加と平等に関する宣言に対して高い評価を示し、アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)行動課題を採択した1993年4月29日の決議49/6をも思い起こし、

教育、保健、生産的な就労のための訓練、及び社会開発の主流への統合を保障する他の社会サービスの分野において、既存のサービスへのアクセスを障害者に提供する効果的な施策の実施を政府に求める、1994年10月にマニラで開催された世界社会開発サミットに向けた準備のためのアジア太平洋閣僚会議で採択された、ESCAP地域における社会開発の行動課題を思い起こし、

アジア太平洋障害者の10年の開始以来、行動課題の12の政策分野において、国家調整と法律の分野で大きな成果があり、また、障害要因の予防、リハビリテーション・サービス、建設環境へのアクセス、障害者の自助団体の開発の分野で部分的な成果があるなど、成果は一定でないにしても行動課題の全12政策分野において全体的な改善が見られたこと、しかしながら障害を持つ子供や青年の教育へのアクセスが今もなお驚くべき低いこと、そして行動課題の実施状況に地方間で著しい格差があることを認識し、

2001年12月10〜15日にハノイで開催されたアジア太平洋障害者の10年キャンペーン2001の参加者が採択した、障害者の地域社会への統合促進に関するキャンペーン2001ハノイ宣言の中で、アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)を、国際障害者権利条約の起草と施行を促進する地域メカニズムとして、さらに10年延長することが政府に強く促されていることを心に留め、

最近の世界銀行の概算によると、世界で最も貧しい人々の5人に1人は障害者であり、障害により教育と就労へのアクセスが制約されるため、これが経済的社会的排斥に至ること、また、貧困と障害は相互の原因ならびに結果となるため、貧しい障害者が貧困・障害という苦境のサイクルから抜け出せないことをも心に留め、貧困軽減プログラムに障害問題対策を組み込む世界銀行とアジア開発銀行のイニシアチブを歓迎し、

障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する2001年12月19日の総会決議56/168と、障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約の案を検討するための、国連の全ての加盟国とオブザーバーが参加可能な特別検討会の設立が決定されたことを歓迎し、

アジア太平洋地域における障害者のエンパワーメントとバリアフリー社会の促進のため、アジア太平洋障害者の10年の成果の象徴として、アジア太平洋障害開発センターを2004年までに設立する運動が、タイ政府と日本政府の共同後援のもとで進められていることを歓迎し、

障害に配慮した事業の計画と評価に関する適時で信頼可能なデータの重要性と、障害者人口に関するデータの収集と処理のための実用的な統計方法をさらに発展させる必要性を認識し、

情報と通信技術が、情報、教育、就労機会へのアクセス改善、そして社会における完全参加の促進に新しい可能性を障害者にもたらすことへの認識を深め、

障害者によるアクセスを改善する施策は、高齢者、幼い子供、妊娠中の女性、幼児を持つ親などの利益ともなることに留意し、

武力紛争が今もなお障害者の権利にとりわけ深刻な被害を与えていることに重大な関心を示し、長期で破壊的な紛争状態からアフガニスタンを再建するための国際的な運動を認知し、

日本政府と滋賀県の主催で2002年10月25〜28日に滋賀県大津市で開催される、アジア太平洋障害者の10年最終年ハイレベル政府間会合に向けた準備を高い評価をもって歓迎し、

2002年がアジア太平洋障害者の10年の最終年であることに留意し、

1. ESCAP地域において2002年以降も、障害者に関する世界行動計画およびアジア太平洋障害者の10年行動課題の実施をさらに活発化させることを視野に入れ、アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)をさらに10年間延長することを宣言する。

2. 障害者の平等な権利のさらなる促進と擁護を視野に入れ、障害者の権利条約の起草を行う特別検討会の活動、さらに条約に関連する他の活動に支援ならびに貢献するよう政府に強く促す。

3. アジア太平洋障害者の10年最終年ハイレベル政府間会合へ積極的に参加すること、さらに以下の作業に積極的に関わることを、全ての加盟国と準加盟国に強く促す:

(a) 行動課題の実施結果の評価
(b) とりわけ以下の分野の強化を目的とした、次期10年の行動枠組みの考案ならびに採択
(i) 教育、訓練と就労、建設環境と情報・通信技術へのアクセス、社会保障と持続可能な生計などの重要分野
(ii) 地方協力と共同活動

4. これらの目標の実現において、ハイレベル政府間会合はとりわけ以下の点に強い関心を示すべきことを強調する:

(a) 21世紀の包括的なバリアフリー社会に完全な形で寄与できるメンバーとなれるようなエンパワーメントを視野に入れた、農村地域の貧困で様々な障害を持つ人々、とりわけ女性障害者の、自助団体やその連盟の設立支援と強化。
(b) 全国的な政策や事業の開発における早期発見や家族に対する支援の導入を含めた、障害児の完全な発育に必要な教育へのアクセスの積極的な促進。
(c) アジア太平洋地域における社会への統合と人権促進を重要視した、障害を持つ女児や女性、障害者を持つ高齢者、発達障害や精神障害を持つ人々に対する特別な擁護の提供。
(d) アジア太平洋地域における情報格差の排除と情報・通信技術の活用を通した、障害者の社会参加を実現するための促進活動。

5. ハイレベル政府間会合と、会合のテーマに関連する会議や研究の実施を含めたその準備プロセスに参加し貢献するよう、国連団体と特別機関、さらに他の政府間組織や障害分野の非政府組織に要請する。

6. アフガニスタンに対する全国的な再建支援において、80万人いると予想されるアフガニスタン人障害者を、支援の対象集団として明示するよう、国連機構、国際的な資金提供団体、供与国政府、非政府組織に要請する。

7. アジア太平洋障害者の10年の成果をまとめ、長期的なフォローアップを保障する実質的な施策としてタイに設立されるアジア太平洋障害開発センターの重要性を認識し、経済的支援、技術的支援、及び物資による他の支援の提供を通じ、アジア太平洋障害開発センターの運営と活動を支援するよう、全ての政府、国連機構、政府間組織に奨励し、さらに障害者組織、非政府組織、民間部門にも、センターの運営と活動に適切な支援を提供するよう奨励する。

8. 障害に関するデータの収集と普及、さらにデータ収集と障害統計を行う方法の必要に応じた開発を含め、障害に関する統計の開発と、全国的なデータ収集システムのための国の能力育成において、アジア太平洋統計研修所との協力で、事務局の技術的支援と訓練の提供能力を強化するよう、政府に強く促す。

9. 国連機構で関心をよせる全ての特別機関と団体、さらに政府間組織、地方組織、資金提供機関に、アジア太平洋地域で実施中のプログラムや事業、とりわけ貧困軽減や他の主流の開発問題の分野に関するものにおいて、その活動計画に体系的な形で障害問題を取り入れること、そして本決議の全国的な実施に対する支援を行うことを視野に入れ、プログラムや事業の見直し調査を行うよう強く促す。

10.利用可能な資金的資源に応じて、以下を強化するよう事務局長に要請する:

(a) 来たる10年の全国的な行動プログラムを開発ならびに推進する、加盟国と準加盟国の国家能力。
(b) アフリカ障害者の10年(2000〜2009)の実施運動との最良の慣行に関する情報共有などを含めた、障害分野の他の地域イニシアチブとの共同活動。

11.さらに、本決議の実施の進捗状況について、委員会への隔年報告を10年の最後まで続けること、また、10年の運動の勢いを維持するための行動勧告を必要に応じて提出することを、事務局長に要請する。

第5回会議
2002年5月22日


国連ESCAP決議58/4
最終更新 2002年6月14日
財団法人 全日本聾唖連盟

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