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※全日本ろうあ連盟による仮訳。なお、これはあくまでも会議参加者の便宜のために取り急ぎ翻訳したものであり、完成された訳文ではありません。翻訳上の不備な点はご容赦ください。また、原文には沢山の脚注がありますが、時間の制約のため、翻訳できませんでした。したがって、この訳文をご活用なさる場合は、くれぐれも原文と照らし合わせながらご覧くださいますよう、お願い申し上げます。

「アジア太平洋障害者のための、インクルーシブでバリアフリーな、かつ
人権に基づく社会に向けた行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」
の実施に対するモニタリングに関する地域ワークショップ

2004年10月13-15日、バンコク・タイ



ワーキング・ドキュメント1

BMFの実施の進捗に関する指標の確認

(原文:http://www.worldenable.net/bmf2004/docworking1.htm
序文

2004年の前半に、国連ESCAPは、びわこミレニアム・フレームワークに示される、行動のための7つの優先領域の実施の進捗状況に関する情報を収集する目的で、政府及び非政府組織に対してアンケートを配布した。その結果(ESCAPの全ての小地域から)23の政府、二つの国家人権委員会(フィジー、タイ)、及び18の障害者の当事者団体若しくは関連団体から回答が得られた。「アジア太平洋地域の障害者の完全参加と平等宣言」に署名した政府の50%から回答が寄せられた。回答をよせたNGOの60%はアジア太平洋障害フォーラム(APDF)の会員である。APDFは、啓蒙活動とBMFへの支援を動員するための地域内の諮問機構である。

アンケートへの回答からは、BMF目標及び戦略の実施に関する多くの経験的データが収集でき、BMFの目標をさらに促進するための政府及びNGO関係者の重要な貢献を示している。回答をよせた政府の過半数は:(1)BMFをさらに促進するための国内行動計画の作成若しくは採択をした(2)障害問題の国家調整委員会若しくは同様の組織を有し、障害者組織との協議の場を提供している。また、障害者の福祉及び生活に影響する法律、計画、プログラムなどの策定及びモニタリングを行う民間団体も存在する(3)障害者の権利と尊厳の促進及び保護のための国際条約の起草作業を支援し、または協力している、と回答した。

この政府及びNGOに配布した第一回質問状からは、あまりにも膨大なデータが得られたため、今後この地域におけるBMFの目標や戦略の実施の達成度を評価する適切な「指標」(判断基準)の必要性が生じた。

この資料は、BMFの目標に関連する「指標」の確認、開発に関するものである。

これまでにも、国連ESCAPは、他の国際規範のための「指標」の確認と開発に重要な、かつ意義ある貢献をしてきた。特に、このESCAP地域では、北京行動綱領にしたがってジェンダー問題の進捗評価のための「指標」の開発に貢献してきた。

「指標」の確認と開発に関する国連ESCAPのこれまでの経験は、BMFの指標の確認作業において、大きなリソースとなるであろう。しかし、ジェンダー問題の指標と、BMFの指標にはひとつ大きな違いがある。ジェンダーは「女性」と「男性」という、人間の明確な属性(特性?)に関するものである。しかしBMFは、アジア太平洋地域の障害者の地位向上に関する。「障害」は状態であり、属性(特性?)ではない。しかも、国際的な比較に使用できる、万人が合意する「障害」の定義もない。

このペーパーは三つの部分からなる。第一部では、障害者に関連するデータと統計について簡単に述べる。第二部はBMFの実施の条項に関する「指標」の確認と開発について解説する。第三部では、BMFの目標と戦略達成のためのいくつかの「指標」を提示する。

これまで国連の統計部、国連事務局の経済・社会問題局、世界保健機関などが、障害に関する統計的データの収集と提供のために、「障害」の定義について、多くの重要な概念的及び実質的な取り組みを行って来た。しかし、いまだに全ての人が合意できる、国際評価のための障害の定義がないことが、BMFの目標・戦略の進捗状況に関する実際的で、信頼性の高い、タイムリーな情報の収集を阻害しているのが現状である。

障害の定義は、現在検討中の「障害者の国際条約」の草案の第3条で扱っている。拘束力を持つ国際規範の場合、その内容が、どのような人々を対象とするのかを明確にしなければならないことから、定義は非常に重要である。

また、条約草案の第6条は、統計とデータ収集に関する部分であるが、ここでは、障害者のプライバシーの尊重を訴えており、収集されるあらゆるデータは障害者の権利を侵害してはならないと明記されている。草案の討議の際に、いくつかの政府代表団は、この統計とデータ収集の部分を条約に入れることを強く強調した。その理由として、情報収集は、障害者の機会均等化の基準規則の規則13にも、その必要性が謳われている。統計・データ収集の義務が条約にあれば、政府はより効果的に障害者のニーズに反応し、対象となる人々について、より正確な評価をし、これらの人々のためのプログラムが実施できる。しかし、このような統計とデータに関する記述に反対した政府もある。これらの政府は、プライバシーの侵害の問題や、情報の悪用を懸念した。このような条項は人権条約には適していないという声もあった。政策ツールとして、統計はあまり役立たないので、データ収集にかける財源は、障害者のためのプログラムに支出すべきであるという意見もある。また、統計的調査はメインストリーミングされるべきであり、障害者だけの調査であってはならないという見方もある。

上記の条項は、引き続き国連総会が設置した特別委員会(アドホック)において審議されるが、以下の部分では、これらの課題にも触れていく。

I.国際的比較のための、障害に関するテータ収集及び統計に関する課題と問題

国際社会配膳から、障害に関するデータ収集と統計の必要性を感じていた。1982年に国連総会が採択した「障害者に関する世界行動計画」にも、国連と各国政府が協力し、「様々な障害に関する、現実的かつ実質的なデータ収集システムを開発し、障害者の向上のためのプログラムを策定する際のツールや参考基準として使用する」ことが記されている。

また、国連障害者の機会均等化のための基準規則の規則13には、「政府は…定期的に、障害者の生活状況に関するデータ、とりわけジェンダーに関わる情報など、を収集すべきである」と明記されている。また、1995年12月21日の国連総会決議50/44でも、国連事務総長に対して、「世界規模の障害に関する指標の開発を決定するため、会員国との討議のうえ、関連の情報を収集し、提供する努力を続ける」ことを奨励している。

これらの総会決定を受けて、国連事務総局は専門家会議を開催し、技術的なガイドラインを準備し、2000年度の人口及び住居に関する国勢調査には、「障害」に関する質問を入れるよう勧告もした。 「世界行動計画」、「基準規則」、1966年の上記「マニュアル」、そして2000年度「世界人口、住居調査プログラム」に使用された「障害」の定義は、1980年にWHOが発行したICIDH(国際障害分類)の定義に基づく。この定義は、障害者の置かれる状況を観察し、モニターする際に三つの側面を確認した: 「理念と提言」の改訂1、段落2.2261には、次のように記される:「国勢調査の際の限られたスペースを考えると、ICIDHが示す障害の三つの側面のうち、どれかひとつに焦点を当てて調査し、あと二つの側面は個別調査で行うべきである。」

また、「理念と提言」の段落2.262には次のような提案がある:

「障害を評価するにあたり、障害を持つ人とは、長期的な身体的、知的状況若しくは健康上の問題により、持続的な困難を抱え、そのため本来可能な活動の質及び量に制約を受ける人である。骨折や病気など、一時的な状況のための短期的な制約は障害とは言わない。六ヶ月以上持続する障害のみを言う。」

機能障害(インペアメント)とハンディキャップに関することは、「提言」の段落2.273にしるされる:

「政府が詳しい情報の収集を優先課題とするならば、さらにインペアメント、ハンディキャップ、若しくは障害の原因などに関する質問を調査に加える方法がある。障害の重さと長さ(年月)も障害者の状況を把握するうえで重要であるが、これらについて、国勢調査では質の高いデータが得られないのが現状である。」

ICIDHに関する批判もあった。特に、障害を「健康ではない状態」と定義した「医療モデル」との密接な関係に対する批判、インペアメント・ディサビリティ・ハンディキャップのといったそれぞれの状況においての分類の欠如に対する批判、機能障害による行動の制約を社会的不利にする環境因子の問題に十分に触れていないという批判などである。

国連は、1999年12月13〜17日まで香港において、香港機会均等化委員会との協力で開催された「障害に関連する国際的規範や基準に関するセミナーとシンポジューム」において、障害の定義に関する課題と考え方の変遷などを取り上げた。このセミナーのワーキンググループは、障害の定義を二つの大きなカテゴリーに分類できることを確認した:

「第一カテゴリーの定義は、障害を持つ人個人の問題として、また個人の欠陥として障害を捉えている。このカテゴリーはさらに二つの密接に関係しあうサブ・グループに分けられる。第一サブ・グループは個人に的を絞っていることから、生物的若しくは医療的モデルといえる。第二サブ・グループは個人の機能の向上に焦点を当て、機能若しくはリハビリテーションの観点から捉えている。これらのモデルはある基準をもうけていて、障害を持つ人として確認されたならば、この基準を充たす必要がある。

第二カテゴリーは個人ではなく、障害という結果を生み出す可能性のある社会的、経済的、政治的、組織的、法的状況に焦点を当てている。この第二カテゴリーにも二つのサブ・グループがある。第一サブ・グループは環境モデルとも言える。このサブ・グループは障害を持つ人が直面する社会的、文化的、経済的バリア(障壁)に着目する。第二サブ・グループは障害を持つ人も含めて、社会のすべての人々が享有すべき権利に焦点を当てている。このサブ・グループは人権モデルと呼べる。

表1.

「障害」の定義の分類

カテゴリーI
分析の対象は「個人」
カテゴリーII
分析の対象は「社会」
生物学的、または医療的モデル 機能またはリハビリテーションモデル 環境モデル 人権モデル
個人の特性に焦点を当てる 個人の機能を回復させることに焦点を当てる 環境のバリアに着目:障害を生む可能性のある社会的、経済的、政治的、組織的、法的バリア 障害者を含む、全ての人が享有すべき権利に焦点を当てる
ICIDHに対する批判を受けて、WHOは1990年代後半に、その改訂作業を開始した。その結果まとめられたICIDH―2は、「保健の重要な要素である人間の機能と障害を解説するための統一された、基準言語とフレームワーク」を提供することが目的だった。この改訂された分類は、あらゆる障害(disturbance)を、身体、個人、社会の各レベルにおける健康状態と関連した「機能の状態」として考える。つまり、ICIDH―2は、情報を身体、個人、社会の三つのレベルで整理した。 ICIDH―2には、三つの次元の全てに影響し得る環境因子も列挙している。これらは、個人の周辺の環境から、全体的な環境へと整理されている。

ICIDH―2に関する一般からの意見や実地試験は2000年の半ば頃に終了した。さらに改訂されたICIDH―2は、「国際生活機能分類(ICF)」と言う題名で、2001年5月22日に開催された世界保健会議において、WHOの国際分類のひとつとして採択された。

ICFは健康と健康に関連する分野の分類であり、身体の機能、構造、活動、参加を観察する。関連分野は身体、個人、社会の側面において分類される。個人の機能と障害は、背景がある中で起きることから、ICFは環境因子も取り上げる。

「ICFの枠組みにおいて、障害と機能は、健康状態(病気、機能不全、怪我など)と背景因子(contextual factor)との相互作用の結果とみなす。

背景要因には、外的な環境因子(例えば社会の態度、建造物の特徴、法的・社会的制度、機構、地形、その他)と内的な個人因子(ジェンダー、年齢、好み、社会的経歴、教育、諸企業、過去・現在の経験、全般的な行動形態、個性、及びその他この個人の障害の受け止め方に影響する全ての因子を含む)がある。」

ICFは、人間の機能の三つのレベルを次のように分類する:(1)身体、若しくは身体の一部の機能、(2)一人の人間の全体像、(3)社会的背景の中の人間の全体像。ICFにおいて、障害とは、この三つのレベルの内のひとつ以上において制約がある状態を言う:すなわち機能的制約(インペアメント)、活動の制約、及び参加の制約。ICFのこれらの要素の定義は下記のとおりである: ICFは、障害に関するデータ収集及び分類のため、の概念的枠組みを提供する。障害に関する概念と用語を標準化し国際的な比較を容易にすることで、そのデータを幅広く、あらゆるレベルの末端ユーザーにも適用可能にする。ICFは「機能」に焦点を当て、「障害」を、インペアメントを持つ人と、環境や社会の態度といったバリアとの相互作用の結果として捉えたことで関心を集め、支持された。

しかし、国際生活機能分類(ICF)への批判がないわけではない。生活機能(functioning)と障害を健康状態や背景因子と結びつけ、その国の保健の状態を示す指標として「障害調整生存率(DALYs)」を用いるというICFの考え方は、障害者の現状にとって不利な分析結果をもたらすと指摘する人もいる。ICFが機能障害と生活機能の欠如として定義づけている障害(disability)は、しばしば、障害者が受けている差別や貧困、戦争や暴力の影響を考慮することなく、障害調整生存率(DALY)によって示される。そのため、ICFに批判的な人たちは、障害は健康の問題ではなく、障害者を社会生活や開発から排除しようとする社会的メカニズムであり、社会が「非常に人道的」なやり方で、障害者を組織的に否定する方法なのだと主張している。障害は、人権問題である。障害の定義は、「障害者の機能障害は、障害者の社会参加を阻む障壁を作り出す社会的・環境的要因によって作り出されると考える障害の社会的モデル」に基づいたものでなければならない。

ICFの概念的・実際的な側面についての議論もある。第一の論点は、ICFにおける環境要因の表現を、国際条約の中で規定すべき特定の目標領域を明確に示すことができるように、再構成する必要があるということである。これらの目標は、構造、機能(なにをするのか)、特徴(なにをもっているのか)などの点で、環境の構成要素と関係している。ろう者と専門家とのかかわりに影響を与えることを目的とした条項は、その一例である。この条項では、その専門家の職業の機能や特徴を明記した上で、どのようなタイプの専門家なのかを明確に示さなければならない。このことは組織についても当てはまる。ICFの環境因子(ICF第一章、第三章、第五章)では、生産品と用具、支援と政策が規定されているが、これらは環境構造として考えることもできる。これらは環境ではあっても、環境機能の観点から、こうした環境構造が実際に人々に影響を与える環境の特徴を示したものではない。二つ目の問題は、基本的人権であるアクセスに関係する。アクセスは、個人の視点と環境的視点からとらえることができるため、分析には二つ以上の方法をつかう必要がある。アクセシビリティは、排他性を覆し、インクルージョンを促進し、積極的かつ組織的な方法で機会均等を推し進める方法であり、障害者の権利の促進と保護に重要な役割を果たす。アクセスは、特定の行為や状態ではなく、参加すること、アプローチすること、コミュニケーションすること、自由に移動すること、状況を利用することの自由である。アクセスの範囲を体系的に整理することによって、機会均等の促進のために評価を必要とする、人と環境の関係領域を示すことができるだろう。アクセシビリティ及び機会均等の促進、または社会的排除および社会的不利を阻止することによって、障害者の人権が保障されているか否かを確認するために、こうした領域を基にして障害者の現状を監視することができる。最後に、ICFおよびICIDHは、障害そのものを規定するものではない。そのため、ICFは、さまざまな障害経験および障害を生み出す環境を考慮することを推奨している。しかし、ICFでは、社会的周辺化(marginalization)、社会的不利、アクセス、社会的排除など、人権に関する事柄が明確にされていないため、ICFは国際条約に必要な情報を構成する基盤を形づくるものではないという議論がある。

障害の定義についての条文案は、特別委員会が設置した作業部会が作成した障害者の権利に関する新しい国際条約の草案に含まれている。

条文案3 定義 条文案3の脚注

9)この条文の検討に際し、特別委員会は、ここの含まれている諸概念の具体的な定義に関して、特別委員会および作業委員会に提示された多様な提案を考慮することを望むかもしれない。

10)「アクセシビリティ」の定義の必要性及びそのいかなる定義の内容も、アクセシビリティに関する条文草案第19条についての、特別委員会での討議の成果に拠る。

11)特別委員会は、(表現および意見の自由、情報へのアクセスに関する条文案13条とは別にして)「コミュニケーション」の定義が必要であるか、また必要な場合には定義の内容について検討することを望むかもしれない。

12)作業部会のメンバーの多くは、条約が全ての障害者(あらゆるタイプの障害者)の権利を保護することを強調し、「障害」という言葉を広義に定義づけることを提案した。メンバーの中には、障害の複雑性や条約の範囲を制限する危険性を考慮して、条約の中には「障害」の定義を盛り込むべきではないとの見解を示す者もいた。他のメンバーの中には、国際的文脈で用いられている既存の定義(世界保健機関の国際生活機能分類(ICF)を含む)を挙げた者もいた。定義を含める場合には、障害の医学的モデルではなく社会的モデルを含めるべきだということについては、一般的な合意を得た。

13)作業部会メンバーの中には、「障害」の定義よりもこの定義を含めるほうが重要であると考える者もいたが、この定義は必要ではないと考えるメンバーもいた。

14)この定義は、平等と非差別に関する条文案7で述べられている。特別委員会は、条約におけるこの定義の最適な配置を検討することを望むかもしれない。

15)代表者の中には、条約の別の条文案で、言語には手話が含まれることが明記されているため、本条文のこの定義を含めることに疑問を呈した者もいたが、この定義の必要性を表明した者もいた。

16)この概念についての定義は、条文案7(平等および非差別)に含まれる以上のことは討議されなかったが、作業部会は、この定義を含める必要があると考えた。

17)これらの定義については討議されなかったが、作業部会は、これらを有用であると考えた。

参照:http://www.un.org/esa/socdev/enable/rights/ahcwgreporta3.htm

条文案3は、新しい国際条約のその他の条文案とともに、現在特別委員会で検討中である。

ICFに限界があることは既に知られており、同意された障害の定義とは言えないが、国際・地域レベルおよび多くの全国の統計機関のために、ICFは、共通の概念的フレームワーク、標準的概念、障害に関するデータ収集・統計のための用語を提供する。

障害についての各国間で比較可能な統計を実現するための、障害者人口の測定方法を発展させる取り組みは、国際的レベルおよび国内レベルで継続している。この取り組みは、国連経済社会局の統計部の協力を得て、「障害統計に関するワシントングループ」が行っている。この取り組みの発展は、政策立案、計画立案、プログラムの実施のためのBMFの目標および戦略の実施進捗状況を、障害者の観点から監視し、評価する作業に多大なメリットをもたらすだろう。

2005年には、国連の統計部の主導で、既存の「人口統計年鑑」に、障害者に関する統計的質問を追加して、生活機能と障害についての体系的かつ定期的な統計の基礎データ収集がおこなわれる。

II.BMFの行動目標および戦略の実施進捗状況を示すための指標作成の問題

A. 基本的な考慮事項 国際開発協力の分野で、もっともよく知られている総合指標のひとつは、国連開発計画の人間開発局が算出する「人間開発指数(HDI)」であろう。HDIの算出には、三つの要素が用いられる。(1)平均寿命、(2)教育水準(15歳以上の成人識字率および初等・中等・高等教育への就学率)、(3)人間らしい生活水準を確保するための一人当たり実質国内総生産(購買力平価)全ての要素は、各国の人々の安寧の判断基準として、平等に指数化される。

HDIにも批判がないわけではない。HDIには、それが各国における人間開発の短期的な変化をとらえることができず、各国の格づけを決定するには、十分なものではないことが記されている。

国連ESCAPの"ジェンダー指数"マニュアルは、ある集団やある時点における特定のターゲットグループの現状、又は、特定の目標や目的、目標に関して生じる文書の変化を示す膨大な統計をいくつもの"個別"の指標をつかってまとめる方法を示した。

一般的には、変化を見分けたり、指標のもとになる要素を分析したりするのが容易なため、個別指標が好まれる。指標の開発には、実践的な側面から、少なくとも三つの事項を考慮しなければならない。(1)明確で、関連があり、求められる使用目的や解釈に適していること。(2)適切な時期に、収集および算出をシンプルかつ容易に行うことができ、信頼のおけるデータを作成できること。(3)時の流れと共に意図された変化がみられても算定がおこなえる信頼性・妥当性を備えていること。

指標は、ジェンダー別に分けられるものでなければならない。また、国内の地域、少なくとも「農村部」と「都市」には分けられることが望ましい。

本文書では、BMFの行動目標および戦略の実施状況を示す指標に焦点をおき、実際的で運営的な側面に的を絞っているが、特定の政策アジェンダを提唱するときの経験的な基盤を提供するという指標の役割を見過ごしてはならない。その一例が、国連児童基金(UNICEF)が、幼児開発(ECD)への支援を呼びかけるために作成している「五歳以下の死亡率ランク」http://www.unicef.org/files/Table1.pdfである。

障害者に関する指標は、国の政策や法律にあわせて多くの政府機関が開発してきた。香港(中国)の「障害平等指数」は、国勢調査からデータを抽出して障害者の現状を分析するという有効な例である。「障害平等指数」は、識字率、教育到達度、就労、収入、婚姻状況、障害者の家族構成についての国勢調査のデータを利用する。障害平等指数は、これらの領域を算出して、障害者と障害をもたない人の相対関係を示すのに用いられる。
 
障害に関する国際的な指標の開発は、国際的な比較のための統計の収集と普及を目的とした障害の定義づけの問題のために、制限されてきた。

B. BMF実施状況を示す指標の開発

本文書におけるBMFの行動目標と戦略の実施状況を示す指標の開発に対するアプローチは、既存の指標を最大限に活用し、既存のデータ内で障害に関する考察を強化する方法を示すことにある。これは、BMFの指標および一般的な障害の指標は、特別な下位分野に限定されるものではなく、政策研究および評価のメインストリームの一部だからである。

この点から、アジア太平洋の障害者統計の状況分析である重要なBMF分析を思いおこすことも重要である。

「適切なデータの不足が、アジア太平洋地域におけるBMFの実施を監視し、評価するための政策や方法の開発を含む障害問題を看過する大きな要因の一つであった。多くの開発途上国では、収集されたデータは、障害の広がりの全体像を反映するものではない。こうした制約は、概念的枠組みの採択や調査のカバー範囲と共に、障害の定義や分類、障害にかんするデータを収集する際の方法にも起因する。またアジア太平洋地域おいて、障害の定義づけや分類に共通のシステムが統一的に使われているわけではないことも明らかになっている。(BMF 54パラグラフ)」

二つ目に考慮すべきことは、現在のBMF実施段階においては、アウトプットを示す指標の選定に力点をおくことである。アウトプットとは、BMF戦略実施の直接的な結果として、成果指標で示される、社会経済・社会生活・参加における適切だと考えられる変化のことである。

三つ目に考慮すべきことは、指標選定の枠組みは、障害者に関する世界行動計画の実施状況の世界的な評価に用いられている分析の枠組みに基づいて決定されることである。この枠組みには、20年以上にわたって、障害者に関する世界行動計画の実施を再考・評価してきた実績がある。三度目の世界行動計画(A/52/351)の評価・査定には、枠組みの重要な要素が示されている。 四つ目に考慮すべき事項は、リソースを節約し、すでに経済・社会セクターの政策レビューや分析で用いられているデータや統計を利用することである。その統計が、現時点で障害者と障害をもたない人が区別されていなくてもよい。2000年度の人口住宅総調査の中の原則と提案の国連改訂1では、図表の7つの欄に、障害者の特徴に関するデータが記入された。

グループ8 障害者の特徴を示す図表 提案された図表の脚注

1) 障害の種類は、1980年の国際障害分類(ICIDH)に基づき、広い範疇(カテゴリー)に分けられている。視覚困難(眼鏡をかけた時も)、聴覚困難(補聴器を使用した時も)、発話困難(話す)、移動/可動困難(歩く、階段を上る、立つ)、身体運動困難(手を伸ばす、かがむ、ひざまずく)、握力・掌握困難(指をつかって握る、ものを扱う)、学習困難(知的困難、精神遅滞)、行動困難(心理的・精神的問題)、自立困難(入浴、着替え、食事)、その他(具体的に記すこと)一人の人が二つ以上の障害をもっている場合もあるため、「障害の種類」に記入した人の合計は、報告されている障害者の人口と異なる場合がある。

2) 初等教育に入学する通常の年齢

3) 学齢期を過ぎてから就学した障害学生のために、年齢の上限を緩和することができる。

統計開発の二つ目の問題は、データの収集と普及の優先度を明らかにすることである。1990年代、国連は経済および社会分野のいくつもの大きな会議やサミットを開催した。このときの成果が、ミレニアム宣言における開発目標の実施において、活用されている。こうした会議のフォローアップの分析、計画、評価において、より重要な力点を明確にする手段として、国連は、「ミレニアム全国社会データセット」(MNSDS)を策定するために、国際専門家グループを召集した。MNSDSに含める事項として、15項目が提案された。

(a) 性別、年齢別の人口予想、可能であれば民族別も。
(b) 性別ごとの平均寿命
(c) 性別ごとの乳幼児死亡率
(d) 性別ごとの児童死亡率
(e) 妊産婦死亡率
(f) 性別ごとの2500グラム以下で生まれた新生児の割合
(g) 性別ごとの平均的な学校教育修了年数、可能であれば収入別も。
(h) 一人当たりの国内総生産(GDP)
(i) 一人当たりの世帯収入(レベルおよび配分)
(j) 最低栄養要求に必要な食料詰め合わせバスケットの貨幣価値
(k) 性別ごとの失業率
(l) 性別ごとの総人口に対する就業者数の割合、必要に応じてフォーマル/インフォーマルセクター別も。
(m) 安全な水へのアクセス
(n) 公衆衛生へのアクセス
(o) 台所とバスルームを除く一部屋当たりの人口密度

専門家は、MNSDSリストの全ての項目について、データを作成する必要性を認め、農村部の人口が総人口の25%以上の地域においては、都市部と農村部を分けなければならないと述べた。しかし、専門家の報告では、障害者の状況については触れていない。

五番目に考慮すべき事項は、BMFの行動目標と戦略の実施による発展を示す指標は、量的かつ質的なものになる点である。質的な指標は、政策やサービス、施設の有無に対する「YesかNoか」の回答を導きだす。量的な指標は、割合や比率、具体的な数字で示される。

指標の枠組みでは、まずBMF実施の前提条件に関する「核」となる部分を取り扱う。これには、国の政策又は行動計画、あるいはその両方への政府の取り組み、障害者団体への諮問のメカニズム、障害者の社会、経済、文化領域および市民、行政領域、国の基準としてのテクニカルガイダンス、各種建築物や情報通信技術を含む環境へのアクセスに関する規約や法律、プライバシーの権利保護に配慮した適切なメカニズムと集団における障害者のデータおよび統計において、障害者の権利を促進し保護するための政府の行動、法律、行政ガイダンス、または同様の政府文書の調整が含まれる。

BMFの七つの行動優先領域の全てに、数量化できる目標が設けられているわけではないが、BMFの発展を示す指標は、BMFの七つの行動優先領域に関連づけて決定されることになる。優先領域1:自助団体、優先領域2:女性障害者、優先領域5:各種建築物へのアクセスについては、その目標が達成されているか否かを「Yesかノーか」の二者択一で回答できる行動目標が設定されている。優先領域3:早期発見と教育、優先領域4:訓練と雇用、優先領域6:ICTへのアクセス、優先領域7:貧困の軽減の全ての領域において、量的な結果を得ることができる行動目標が設置されている。しかし、障害に関する統計に制約があるため、このデータのリスト案では、多くの「空欄」が生じる可能性がある。これは、BMFの行動目標および戦略に対する批判ではないが、提案されている指標の基盤となっている仮定条件を明確にするための分析かつコメントである。

III. BMFの目標および戦略の実施の進捗状況を示す指標の概要

BMF指標の概要は、国連ESCAPの「びわこミレニアムフレームワークの実施に関する質問状」に基づき、個々の指標に沿って、 BMFの目標を達成するための行動案を導きだす。

BMF指標の概要は、二つの部分に分けられる。BMF実施の前提条件を示す指標とBMFの目標および戦略の実施進捗状況を示す指標である。BMFの指標の概要の更なる開発に関する議論は、本章の第三セクションで行う。

A. BMF実施の前提条件

国連ESCAPのBMF質問状では、世界行動計画の評価で用いられた政策、施設、リソースの枠組みに沿って、それを少し調整したものが提案されている。

それぞれの指標は、53の全てのESCAP加盟国と9の準加盟国における発展を、それぞれの要素に基づいて比較する。

1)政策指標群
国の取り組みを示す指標は、まず適切な政策や障害者に関するメインストリーム政策への取り組みの存在を明らかにしなければならない。補足質問として、憲法に障害者の権利に関する特定の記述があるか、全ての市民と「平等の保護」が示されているかを確認する。

二つ目の指標では、「アジア太平洋地域の障害者の完全参加と平等宣言」への署名の成果として、障害分野における地域の行動を政府が支援しているかどうかを示す。補足質問として、障害者の権利に関する新しい国際条約を批准または受諾するか否かを問う必要がある。

三番目の指標では、BMFの実施に関する国の行動計画が作成され、政府が採択しているか否かを示す。補足質問として、その行動計画がカバーするセクターおよび国の領域を問い、特記すべきことがあればそれを記入する。(自由回答式にする)

2)制度指標群
四番目の指標は、障害者に関する国内調整機関または同様のメカニズムの存在を示す。補足質問では、設立年、構成、機能を問う。

五番目の指標では、障害者の権利と尊厳に関する法律又は行政ガイダンス、あるいはその両方の有無を示す。補足質問では、障害に特化した条項を有する包括的な法律の有無、社会的、経済的、文化的領域および市民、政治領域における障害者の権利の促進と保護に関する特定の法律の有無を問う。

3)リソース指標群
六番目の指標では、障害に関する統計の有無を示す。補足質問では、2005年以降の国連の人口統計年鑑に障害者に関するデータを記載するために現在おこなわれている作業に基づき、適用範囲と収集の方法について問う。予算についてのデータは、地域内の比較に有用であるが、質問状には含まれない。国連の技術協力活動に関するデータは、地域における活動との関係において議論される。

B. BMFの目標および戦略の実施進捗状況を示す指標

BMFの進捗状況を示す指標は、それぞれの要素にあわせて質的な指標になる場合と量的な指標になる場合がある。提示されたデータは、障害の定義に関する合意が成立するまでは、障害者と障害をもたない人の国際的な比較に用いることできないだろう。

2005年の人口統計年鑑に障害者のデータを含めるよう国連事務局の統計部に求めた提案の中で、障害別の統計の開発には時間がかかることが指摘されている。人口統計年鑑に記載する障害者のデータの特徴は、以下に示す国々から収集した統計情報の三つの領域に基づいている。これらの情報は、障害者の性別、年齢別および選別された社会経済的な特徴の基礎的データを提供する。全ての人たちを対象とした同様のデータは、人口統計年鑑のためにすでに収集されている。ここに示すデータが、各国における障害者の割合を予測し、障害をもたない人と比較したときの障害者の社会経済的状況を示すのに役立つことが期待される。

人口統計年鑑2005年 障害者の統計収集案

統計情報は、以下の事項に関係したものでなければならない

(a) 年齢別、性別、都市部・農村部の居住地域別に分類した障害者
(b) 就学状況、各学年の年齢別・性別に分類した5歳から29歳までの障害者
(c) 日常(現在の)活動状況、年齢別、性別に分類した15歳以上の障害者

1. BMF行動優先領域に関する指標

(a) 障害者の自助団体(SHOs) 障害者および障害者の自助団体は、障害者を代表して語り、障害者に関する問題の解決に貢献するのに、最も適切な情報をもち、最もすぐれた知識をもちあわせている。

目標1 2004年までに、政府、国際融資機関、NGOは、障害者の自助団体の発展を支援するのに必要な資金分配を確保するための政策・方針を打ち出すこと。

基本的な指標は、自助団体の設立および発展を支援する政策または手続きの有無、達成年及びESCAPの地域の到達目標に関連した目標達成度である。

下位指標として、2004年末および実施日までの目標達成度をパーセントで示す。

下位指標 指標項目 情報源
政府がSHO開発政策を策定する YesかNoか /実施年 2年毎の質問票
政府がSHO開発のガイドラインおよび手続きを策定する。 YesかNoか /実施年 2年毎の質問票
SHOが意思決定に参加するための能力開発を行う    
障害者の公共生活への参加 政府のさまざまなレベルや機関において障害者が役員に選出されている割合 列国議会同盟が役員選出のデータを収集している。障害者のデータは、知られていない。国連婦人開発基金(UNIFEM)が、女性の政治参加のデータを収集している。障害者のデータは、知られていない。
意思決定への障害者の参加 政府の管理職に占める障害者の割合 2年毎の質問票。政府の局、省、部、機関における管理職
国際機関は要請がある場合、SHOの開発を支援する 国連開発支援フレームワーク(UNDAF)におけるSHOの開発:YesかNoか セクター、プロジェクト名、UNDAFからの支援期間および金額
二国間の援助機関は、要請がある場合、SHOの開発を支援する 関連する二国間協定におけるSHOの開発:YesかNoか プロジェクト名、協定による支援期間および金額

目標2 2005年までに、政府、市民社会組織は、計画立案、プログラムの実施に関する意思決定過程に、自らの生活にこれらの影響が直接に及ぶ自助団体が、完全に参加することができるようにする。

基本的な指標は、市民社会組織やSHOを含む障害者が、計画立案およびプログラムの実施に参加することができるよう支援するメカニズムおよび手続きの有無、達成年及びESCAPの地域の到達目標に関連した目標達成度である。

下位指標として、2004年末および実施日までの目標達成度をパーセントで示す。

下位指標 指標項目 情報源
政府が、SHOが計画立案およびプログラムの意思決定に参加することに関する政策を策定する YesかNoか /実施年 2年毎の質問票
政府がSHOが意思決定に参加するためのガイドラインおよび手続きを策定する YesかNoか /実施年 2年毎の質問票
障害者の公共生活への参加 意思決定委員団で障害者がリーダーを務める割合 2年毎の質問票:意思決定委員団の構成に関する項目
意思決定における障害者の参加 政府高官に占める障害者の割合 2年毎の質問票:政府の局、省、部、機関における高官に関する項目
SHOが、社会生活・政治参加のための能力開発を行う YesかNoか /実施年 2年毎の質問票。調査期間中、BMF優先領域の項目ごとの研修コースが提供される。
SHOが、アウトリーチ事業および能力開発を行う。特に農村部と都市部の貧困層に力点をおく。 YesかNOか /実施年 2年毎の質問票。調査期間中、BMF優先領域にあわせた項目別活動。
国際機関は、要請がある場合、SHOのリーダーシップ研修および意思決定を支援する。 国連開発支援フレームワーク(UNDAF)の中でのSHOの開発:有/無 セクター、プロジェクト名、UNDAFからの支援期間および金額
二国間の援助機関は、要請がある場合、SHOの開発を支援する。 関連する二国間協定におけるSHO開発:有/無 プロジェクト名、協定による支援期間および金額

(b) 女性障害者 女性障害者は、女性という立場と障害者という立場から何重もの不利益を受けており、貧困層の多数を占めている。

目標3 2005年までに、まだ差別禁止措置をこうじていない政府は、女性障害者の権利を保護する適切な措置をとるようにする。

基礎的な指標は、女性障害者の権利を促進し保護するための差別禁止措置の有無であり、達成年、あるいは既存の差別禁止法に女性障害者についての記述を加筆改訂した年、E ESCAPの地域の到達目標に関連した目標達成度である。

下位指標では、2005年末および実施日までの目標達成度をパーセントで示す。

下位指標 指標項目 情報源
政府が、女性差別撤廃条約(CEDAW)を批准・受諾する YesかNoか /批准/受諾した年 2年毎の質問票。

女性障害者を含む定期的なCEDAW報告(一般提案18)
政府が女性障害者に関する政策を策定する YesかNoか /実施年 2年毎の質問票
政府が、障害者に対する差別禁止法を制定する。女性と男性の平等が保護されている。 YesかNoか・制定/改訂年 2年毎の質問票の関連項目
政府の女性への暴力を禁止する法律に女性障害者を含める 女性への暴力を禁止する法律が存在し、女性障害者が含まれる:YesかNoか /制定年
女性障害者を含めるための改訂をおこなう:YesかNoか /改訂年
2年毎の質問票の関連項目
政府が、女性に対する暴力に関する統計を収集する際に、女性障害者を含める サンプル調査・女性に対する暴力についての登録データ:有/無女性障害者:YesかNoか 10万人当たりの女性が受けている暴力の統計;統計をおこなった年
政府が、女性障害者の権利の促進と保護に関するガイドラインおよび手続きを制定する YesかNoか /実施年 2年毎の質問票のBMFの優先領域に沿ったガイドラインの項目
政府が、女性に関する担当部局に女性障害者を含める YesかNoか /実施年 2年毎の質問票
NGOが、能力開発およびアウトリーチ事業をおこなう。特に、農村部および都市部の貧困層に力点をおく。 YesかNoか /実施年 2年毎の質問票。調査期間中、BMFの優先領域にあわせた活動を項目別に行う。
NGOが、女性障害者のための能力開発・リーダーシップ研修をおこなう。 YesかNoか /実施年 2年毎の質問票調査期間中、BMFの優先領域にあわせた活動を項目別に行う。
女性障害者の公共生活への参加 団体の役員に女性障害者が選出されている割合 2年毎の質問票における委員団に関する項目
女性障害者の意思決定への参加 政府管理職に占める女性障害者の割合 2年毎の質問票:政府の局、省、部、機関における管理職の項目
国際機関は、要請がある場合、障害者の権利に関する情報提供および女性障害者による/ためのリーダーシップ研修を支援する。 国連開発支援フレームワーク(UNDAF)における女性障害者の権利:有/無 セクター、プロジェクト名、UNDAFによる支援期間と金額
二国間の援助機関は、要請がある場合、NGOの女性障害者の権利促進とリーダーシップ研修の取り組みを支援する。 関連する二国間協定における女性障害者と開発:有/無 プロジェクト名、協定による支援期間および金額


目標4 2005年までに、全国的な自助団体が、団体活動における女性障害者の平等な立場、完全参加を促進するための方針を採択する。

目標5 2005年までに、女性障害者が全国的な女性のメインストリーム団体のメンバーに含まれるようになる。

これらの補足的目標を示す基本的な指標は、NGO及びSHOが、その活動において女性障害者の完全かつ効果的な参加を促進するための方針および手続きを導入しているか否かをであり、達成年及びESCAPの地域の到達目標に関連した目標達成度である。

下位指標では、2005年末および実施日までの目標達成度をパーセントで示す。

下位指標 指標項目 情報源
政府が、NGOと女性障害者と開発の協力に関するガイドライン及び手続きを制定する。 YesかNoか /実施年 2年毎の質問票。
NGOが女性障害者のための能力開発・リーダーシップ研修をおこなう YesかNoか /実施年 2年毎の質問票。調査期間中、BMFの優先領域にあわせた項目別の研修コースを設ける。
NGOの意思決定に女性障害者が参加する NGOの運営に携わる女性障害者の割合 2年毎の質問票のNGOに関する項目
女性障害者による/ためのNGOが、障害のある乳幼児・少女についての研修および出張事業を実施する。特に、農村部と都市部の貧困層に力点をおく。 YesかNoか /実施年 2年毎の質問票調査期間中、項目別の活動や研修コースを提供する。

5歳以下の死亡率(男児・女児)、低い出生率などの幼児開発指標は、優先領域で検討される(c)
国際機関は、要請がある場合、アウトリーチ事業、情報提供、女性障害者による/ためのリーダーシップ研修を支援する 国連開発支援フレームワーク(UNDAF)におけるNGOの発展と女性障害者:有/無 セクター、プロジェクト名、UNDAFによる支援期間と金額
二国間の援助機関は、要請がある場合、女性障害者の参加を促進するためのNGOの取り組みを支援する。 関連する二国間協定における女性障害者と開発:有/無 プロジェクト名、協定による支援期間および金額

(C)早期発見、早期介入、および教育
アジア・太平洋地域において障害のない子供および青年の初等教育就学率が70%以上であるのに対し、あらゆる形態の教育を含めても、教育を受けられる障害を持つこどもおよび青年は10%未満であるとを、データは示している。障害を持つこどもおよび青年から教育の機会を取り上げることは、今後の彼らの人格、社会性、および職業面での成長の機会を奪うことになる。

目標6.
障害を持つ子ども及び青年は、ミレニアム宣言の開発目標3の主要なターゲットであり、2015年までにあらゆるこどもたち、男子も女子も初等教育課程を修了できるようにすることを保障することが目標である。

目標7.
2010年までに、障害を持つこどもおよび青年の少なくとも75%が初等教育を修了できること。

この2つの目標は両者ともミレニアム宣言の開発目標2(全ての人に初等教育を提供する)に関連している。これに関連する進捗指標は、国際レベルで確認されている「指標」と同様なものを使用し、障害を持つこどもとそうでないこどもの状況の国際的な比較を容易にする必要がある。しかし、問題なのは、ミレニアム宣言では障害を持つ人の状況について触れておらず、それゆえに開発目標2に関連する可変要素の障害別データは、大目に見ても限られたものとなっている。障害を持つ人たちの能力向上には教育や読み書きが重大な役割を果たすことから見ても、これは至急統計の改善が求められる分野である。

開発目標2における監視進捗指標:注47 この指標は、教育省または類似機関からの報告による初等教育機関に在籍するこどもの数を、就学年齢児の総人口で割ったものである。

100人の学齢児童に対する実際の在籍児童数は、通常文部省または類似機関、もしくは国勢調査のサンプル調査により集計される。「住民と住宅調査の原則および勧告(Principles and Recommendations for Population and Housing Censuses)」の改訂版1では、2000年における住民と住宅調査で、5歳から29歳の障害を持つ人を対象にした初等教育や就学状況に関するデータ集計を勧めたが、このようなデータで入手可能なものはいまだに限られている。

国際的比較を目的とした初等教育の就学率はユネスコ統計機関<http://www.uis.unesco.org/>から出されているが、そのベースは各国の教育省またはその国の統計機関から出されたのデータを編集したものであり、人口予測は国連事務局(人口部門)から出されたものである。

国勢調査または初等教育就学登録機関などから障害別の初等教育就学状況のデータを収集していない国の政府は、初等教育就学年齢にある障害者の数と特徴を把握するために世帯調査を行うことを検討すべきである。 この指標は、学校集団における生徒総数から、ある特定された学校教育において支障なく進級している生徒総数を割り出すことで集計されたものである。

この指標のもととなるデータは、ユネスコの統計機関が提案している通り、某国における2年連続進級した生徒数のデータおよび留年(2年連続して留年)生徒数のデータをもとにしている。

初等教育課程を修了した者の障害別データは、政府が住民・住宅調査から障害者の特徴のデータを割り出す態勢にない場合、登録データまたは世帯調査で把握できるはずである。 この指標は15−24歳集団全体から読み書き教育を受けている15−24歳の集団を割り出すことで算出されたものである。

読み書きのデータは国勢調査や住宅調査から割り出せる。しかし、住民と住宅調査の原則および勧告の改訂版1には、各障害ごとに作成された表に読み書きの要素は含まれていない。

このBMFの目標における進捗の監視という目標を果たすためには、調査後のサンプリング調査結果を出すかまたは世帯調査との関連付けが検討されるべきである。

目標8.
2012年までに、すべての乳幼児(誕生から4歳まで)は、生存の保証のために、コミュニティに根ざした早期介入サービスを、彼らの家族へのサポートと指導とともに利用し受けることになっている。

目標8の進捗はミレニアム宣言の開発目標4−こどもの死亡率の低下に関連する。

開発目標4における進捗指標:注48
特定の年齢の死亡率は、人口統計登録制による基本データとともに、人口統計、国勢および世帯調査から、誕生から死亡のデータを算出したものである。障害を持つ乳幼児の死亡データは世帯調査から得るのが望ましい。

この指標はこどもの生存状況を示すものであり、社会および経済的状況全体を反映している。5歳以下の障害児の死亡データを収集することは、彼らが生活安定のためのサービスを利用できるところまでに至っているかを把握することになる。

更新されたアジア太平洋の障害者10カ年、2003年から2012年までのあいだに、障害を持つ乳幼児の、5歳以下の死亡率の低下は、すべての人々の福祉の改善に貢献するのである。 乳児の死亡率は、満1歳に達する前に死亡した乳児の数から明確にされる。これは、人口統計登録から年1000人が生存することを基準にして算出される。障害を持つ乳児に関してこの統計方法で算出するとなると論争の的になりうる。したがって、障害別データは世帯調査から得るのが望ましい。 予防接種率からすべての乳幼児が病気発見やそれに関連するサービスを受けているかどうかを知ることができる。予防接種はこどもの救命に重要なものである。

WHOの予防接種拡大計画に応じて国民の健康管理や予防接種サービスを担当する省と、世帯調査からデータが出されるべきである。

こどもの生存保証にとって重要な別の要因は、水の浄化と基本的な衛生を行うことであり、これはミレニアム宣言の開発目標7−生命維持が可能な環境の保証(Ensure environmental sustainability)−に含まれる。

開発目標7は、2015年までに、安全な飲料水と基本的な衛生設備がない人たちの割合を半減させるという目標10を含む。注49 汚染された水は疾病の直接的要因であり、それゆえ飲料水の水源を浄化することはすべての健康状態の改善につながる。

通常飲料水の利用に関するデータは国勢調査から収集するものである。障害者のいる世帯の水の利用に関しては、世帯調査が基本的でもっとも信頼性のあるデータとなろう。重要なのは、この調査データは地方と都市両方から割り出すことである。 人間が出すゴミを人や動物が触れないよう衛生的に隔離させる設備についてのデータは、自然、ないしは市民のインフラストラクチャーの維持の程度をあらわし、それは、発生しうる疾病や汚染の源を減らすことで人々の生活改善に貢献するものである。障害者のいる世帯へのインフラストラクチャーの適用範囲については、世帯調査によるデータが基本的でかつもっとも信頼性があるといえよう。

目標 9. 各国政府に障害の可能な限り早期の発見を確保するよう促す。

目標 9の基本的な指標は、早期発見のためのサービスが存在するか否か、またそれがすべての人々に提供されているかである。もし全ての地域で可能になっていなければ、早期発見を確保するための戦略の説明はすべての人に対してなされなくてはならない。

目標 6から9までの下位指標は政策と施設の変数および選択された結果に関係する。

下位指標 指標項目 情報源
すべての人を対象とする教育に関し、政府は法制化するか、ガイドラインと手続きを策定する。もしくはその両方を行う。 Yesか Noか /実施年 2年毎の質問票
教育省もしくは類似機関は障害別に就学および教育の到達度に関する統計を収集する。 Yes か Noか/ 対象年(限)

a. 5-29歳の人口,学校の出席状況, 都市部/農村部, 障害の種類

b. 5歳以上,教育の到達度,都市部/農村部, 障害の種類

c. 15歳以上の識字人口, 都市部/農村部, 障害の種類
障害別の就学および到達度に関する調査または登録データ
早期発見および介入に関し、政府は法制化するか、ガイドラインと手続きを策定する。もしくはその両方を行う。 Yes か Noか /実施年 2年毎の質問票
保健省もしくは類似機関は障害別に早期発見/介入サービス関する統計を収集する。 Yes か Noか/ 対象年(限)

a. 早期発見経費

b. 早期介入経費
障害の種類別の早期発見/介入に関する登録または調査データ及び保健サービス総支出に対するパーセンテージ
保健省もしくは類似機関は障害別に健康状況に関する統計を収集する。 Yes / No / 対象年(限)

a. 出生時平均余命

b .死亡率
障害の種類別の健康状況に関する登録または調査データ、1000人の乳児および1000人の幼児(1-4歳)当たりの死亡率
NGOは児童の早期発達、および生存に関し、手をさしのべ、能力開発を行う事に着手する。 Yes か Noか /実施開始年 2年毎の質問票: テーマ、 期間中の活動内容は現在見直し中
障害をもつ女性による/ためのNGOは障害を持つ乳児及び少女に対するトレーニングと働きかけを組織する。特に農村部と都市部の貧困層に力点を置く。 Yesか Noか /実施年 2年毎の質問票;現在 見直し中の期間におけるトピックスによる活動/コース
国際機関は要請がある場合、子どもの早期発達と生存に関し、障害をもつ女性による/ための働きかけ、情報提供、リーダーシップ研修を支援する。 国連開発援助フレームワーク(UNDAF)の中での障害に配慮した子どもの早期発達と生存: 有 /無 分野、プロジェクト名、期間及びUNDAFからの額
二国間の援助機関は、要請がある場合、NGOが障害に配慮した子どもの早期発達/生存を促進する努力を支援する。 関連した二国間協定における障害に配慮した子どもの早期発達/生存: 有 /無 プロジェクト名、期間、および協定からの額

(d) 職業訓練と雇用(自営を含む). 障害をもつ人々はまっとうな職に就く権利を有している。しかしながら、ほとんどは教育水準が低く、職業訓練を受けておらず、就業していないか、潜在的に不就業で貧しい状態に留まっている。また、彼らは社会的に隔離されていること、更には職業訓練と雇用に関して、障害者と共に働く熟練した有能なスタッフが不足していることから一般の労働市場に十分なアクセスを持っていない。

目標 10 2012年までには, 少なくとも署名国(締約国)の30%がILOの1983年の(障害者)職業リハビリテーション及び雇用条約(159号)を批准する。
この目標の進捗状況は「新アジア太平洋障害者の10年」(2003-2012)の間のILO159号条約批准/加盟状況に関するILO "国際労働基準" (ILOLEX)のデータベース <http://www.ilo.org/ilolex/>をモニターすることによって簡単に把握できる

目標 11 2012年までに、 (ILO159号条約の)署名国の少なくとも 30%は職業訓練プログラムに障害者を含み、適切な支援を行い、就職斡旋および職業開発サービスを提供する。

目標 11の基本的な指標は職業サービスが存在するか否か、障害者が含まれているか、必要に応じ付随的なカウンセリング、就職斡旋または職業開発サービスが提供されているか、である。

目標 11の下位指標は政策および制度上の変数と選択的な成果に注目する。

下位指標 指標項目 情報源
すべての人の雇用機会に関し、政府は法制化するか、ガイドラインと手続きを策定する。もしくはその両方を行う。 Yesか Noか /実施年

a. 雇用促進および差別禁止施策

b. 雇用促進・アクセス可能な職場

c. 雇用開発―割り当て

d. 人的資源開発・訓練/技術開発/職業カウンセリング

e. 平等な給与規定
2年毎の質問票
労働省もしくは類似機関は障害別に障害者の雇用および経済的な社会参加に関する統計を収集する。 Yesか Noか /対象年

a. 経済活動を行う人口 (15歳-64歳), 分野, 障害の種類

b. 非公式な分野参加, 都市部/農村部, 障害の種類

c. 学歴別失業率, 都市部/農村部, 障害の種類

d. 特定的な活動における時間の利用 ,15歳以上人口, 都市部/農村部, 障害の種類

e. 企業の上級管理職における障害者

f. 労働組合の上級管理職における障害者
雇用および経済的社会参加に関する調査または登録データ;家計調査の時間使用データ;企業/労働組合の登録または調査データにおける管理職データ
NGOは雇用促進、男女、従来進出していなかった分野における就労に関し、手をさしのべ、能力開発を行う事に着手する。 Yes か No か/開始年 2年毎の質問票: 見直し期間中のトピックス、活動,
国際機関は要請がある場合、生活手段と起業に関し、障害をもつ男・女による/ための働きかけ、情報提供、リーダーシップ研修を支援する。 国連開発援助フレームワーク(UNDAF)の中での障害に配慮した維持可能な生計と企業に関する研修: 有 /無 分野、プロジェクト名、期間及びUNDAFからの額
二国間の援助機関は、要請がある場合、NGOが障害に配慮した起業および維持可能な生計を促進するための努力を支援する。 関連した二国間協定における障害に配慮した起業および維持可能な生計:有 /無 プロジェクト名、期間、および協定からの額

目標 12 2010年までに、 全ての国において障害者の雇用率及び自営率に関する信頼に足るデータが存在する。

本目標の指標は、下位指標に障害者の雇用促進が含まれている目標 11と関連づけてて開発される。

(e) 既存の作られた環境および公共の交通機関へのアクセス. 公共の交通機関等既存の環境へのアクセスが不可能である事は、障害者の完全かつ効果的な社会参加と発展における主要な障害である。しかしながら、作られた既存の環境と公共の交通システムへのアクセス不能性は社会の全ての成員にとって差別的である。人口が老化するに伴って、その状況は悪化する。ユニバーサル・デザインは障害者だけでなく、高齢者、妊婦、年少の子どもを持つ親を含む社会の全ての成員にとって有益である。

既存の環境へのアクセス権は「障害者の権利に関する国際条約(案)」の第19条で言及されている。[50]

目標 13 政府は、まだ設定できていない場合には、農村部を含めた公共の施設、インフラと交通機関の設計の際にアクセス基準を策定し、それを執行するよう要請する。

目標 14 実行可能になり次第、既存の陸上、水上、航空の公共交通機関(停車場及び駅)はアクセス可能にするべきである。また、新規および改修した公共交通機関(道路、水道、鉄道、航空システムを含む)は障害者に対して、完全にアクセス可能にされるべきである。

目標13と14の基本的な指標は、公共の建物、施設、交通機関をアクセス可能にするための資金があることを条件として、環境アクセス基準、または建設基準あるいはその両方が採択され、手続きが始まっているか否かである。

目標13と14の下位指標は政策と制度上の変数に注目する。

下位指標 指標項目 情報源
政府は建造物環境へのアクセスを法制化するか、拘束力のある規範を作る Yes か Noか /実施年

環境アクセス

a. 建造物と施設

b. 民営及び公営

c. 交通機関

d. 適用に関するインプットとアドバイスについての諮問構造

e. アクセスできる環境にむけての事後の活動の扱い

f. 促進 /執行
2年毎の質問票
公共事業省、または住宅省あるいはその両方、または国の基準機関はアクセス基準とガイドラインの法制化を目指して準備する Yes か Noか / 対象年 2年毎の質問票
教育省または権限を有する専門機関は、設計の専門家を対象とした、環境アクセスに関するカリキュラムを開発する。 Yes か Noか / 発出年 2年毎の質問票
国の統計機関はアクセス可能な建造物、施設,交通機関に関するデータを収集する。 Yes か Noか / 対象年限 調査または登録データ
建造物、施設、交通機関のアクセス規定の遵守状況、都市部/農村部
環境アクセスに関する意思決定への障害者の参加 技術的または諮問的機関における障害者のパーセンテージ

技術的・法的なアクセス関連機関の代表者としての障害者(の有無)
環境アクセスに関する技術的、または法的団体によるサンプル調査
NGOは環境アクセス・バリアフリーデザインに関し、手をさしのべ、能力開発を行う事に着手する。 Yes か Noか /開始年 2年毎の質問票;見直し期間中のトピックス,活動
国際機関は要請がある場合、環境アクセス・バリアフリーデザインに関し障害者による/ための働きかけ、情報提供、トレーニングを支援する。 国連開発援助フレームワーク(UNDAF)の中での環境アクセス研修または実験的活動への支援: 有 /無 分野、プロジェクト名、期間及びUNDAFからの額
二国間の援助機関は、要請がある場合、NGOの環境アクセス促進、バリアフリーデザインへの努力を支援する。 関連した二国間協定における環境アクセスおよびバリアフリーデザイン支援:有 /無 プロジェクト名、期間、および協定からの額

目標 15 インフラの開発に関わる国際的および地域的な援助機関は借款や助成の決定に際し、ユニバーサルデザインや障害者も含めたデザインのコンセプトの有無を判断の対象に含めるよう要請する。

本目標の活動は関連する財源またはプログラムに関する政府間機関の決定を必要とする。環境アクセスまたは改修あるいはその両方への無償援助または譲許的借款の獲得における進捗状況は2年毎の調査票に基づき関連の国際または地域機関に送られるデータによって判定される。

(f) 情報・コミュニケーションおよび補助的技術を含む情報・コミュニケーションへのアクセス. 情報・コミュニケーション技術(ICT)は成長と発展のためのエンジンである。ICTの利点と知識集約型の世界経済に参加する機会はICTへのアクセスとアクセス可能性における障壁により、均等に享受されていない。アクセスはICTのインフラとテレコミュニケーションサービスの蓄えを意味し、アクセス可能性はICTが合理的な適応変化を加えて社会の必要性と嗜好にあわせることができる能力を意味する。アクセス可能なICTはすべての人の権利である。

ICTへのアクセス可能性は新しい「障害者の権利に関する国際条約(案)」の第19条でも取り上げられている

目標 16 2005年までには、[アジア太平洋]地域の障害者はインターネットや関連のサービスに対し、少なくとも自国のほかの市民がもっているのと同等の割合のアクセスを持っているべきである

開発目標8 ・開発のためのグローバル・パートナーシップを開発する ・ミレニアム宣言の目標18は、特に情報とコミュニケーション関連の新しい技術の利点を享受できるようにすることを含んでいる。この目標に関係のある3つの指標の内の2つは、BMFの目標16の実施状況のモニタリングに 関連している。

- 100人あたりのパソコン使用者、100人あたりのインターネット使用者

- 100人あたりのインターネット使用者

パソコンおよびインターネット使用に関するデータは国際電気通信連合(ITU)が各国政府の電気通信担当に送った質問票に対する回答に基づいており、結果は 「国際電気通信指標データベース」で集計されている。 <http://www.itu.int/ITU-D/ict/statistics/>. コンピュータあるいはインターネット使用に関するデータはいずれも障害別には集計されていない。BMFのモニタリングのためのデータは補助的技術についての調査ないしは登録データから得られる可能性が高い。

目標 17 2004年まで、関連の国際機関 (例えばITU, 世界貿易機構(WTO), 国際標準化機構(ISO), 動画技術グループ [ISOのワーキンググループ], ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム [非政府機関])は それぞれの機関の国際的なICT基準の中に、障害者に対するアクセス基準を盛り込むよう要請する。

目標 18 2005年までに、政府は、もしまだ達成されていない場合には、 国のICT政策の中に障害者のICTアクセスのガイドラインを盛り込むよう要請する。

上記2つのターゲットを実施するに当たっての進捗状況を測定する適切な基準は「障害者の権利に関する国際条約(案)」の採択と批准である。条約の第19条はアクセス可能なICTついて言及しており、同条約はICTのアクセスに関する拘束力のある国際な法的文書となるであろう。

情報社会世界サミットはアクセス可能なICTに関する問題を取り上げていない。世界貿易機構(WTO)はウルグアイ・ラウンド貿易協定によって設置され、国際商取引における行動規範を提示し、貿易の自由化と拡大のために、定期的な多国間交渉の枠組みを提供する国際機関である。加盟国は国内的な理由というよりは、貿易を容易にするためにICTアクセス法制を実施してきたが、WTOはアクセス可能なICTに権限を持たない。国際標準化機構(ISO)はワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム同様、独立した、非政府系の技術団体である。 ICTに関する他の有力な独立した技術団体として、インターネット・エンジニアリング・タスクフォース、電気・電子エンジニア協会がある。情報社会サミットの第二段階(2005年11月16-18日、チュニス)で検討されることにはなろうが、現時点で、インターネット・ガバナンスに権限を有する、」唯一の技術的あるいは政府間の団体は存在しない。

目標 19 政府に、現在までにできていない場合、〔アジア太平洋地域における〕各国の標準手話、点字、触手話を開発、調整し、その結果を教え、広めるよう要請する。

目標 20 政府に、現在までにできていない場合、〔アジア太平洋地域における〕各国において手話通訳者、点字筆記者、指点字通訳者を養成し、派遣し、また、それらの雇用を促進するようなシステムを開発するよう要請する。

上記2目標の進捗においては、それら特殊なコミュニケーション方法の使用者、またはそれらコミュニケーション方法の開発にかかわっている者・団体の完全かつ効果的な参加を必要とする。なぜならば、かれらこそが手話、点字、触手話の基準・標準について最も適切にアドバイスすることができるからである。

政府の役割は、適切な法制化、行政的ガイダンスの実施など、社会・経済・文化面のみならず、市民生活・政治面においてもそのようなコミュニケーション方法へのアクセスを保障するような適切で支援的な環境を提供することである。
そうすることが可能である政府は、手話通訳、点字筆記、指点字通訳や、その他関連するコミュニケーション方法の指導者への働きかけや研修も支援する。

「障害者の権利に関する国際条約(案)」第13条-表現と意見の自由および情報アクセス-は上記2目標の実施における進捗状況にかかわるいくつかの条項を含んでいる。 上記目標の達成には、時間的制限が設けられていないので、2年毎の質問票でもっとも効果的にデータが集められる。

(g)能力開発、社会保障、および生計維持プログラムによる貧困の解消
障害者はアジア太平洋地域における貧困層の中で最も貧困である。域内の約400万人の障害者のうち、利用可能なデータによれば、40%の160万人以上の障害者が貧困を余儀なくされている。貧困は障害の原因であるとともに結果でもある。双方が、社会の中での更なる不安定さと排斥を助長する。貧困に対処するための活動には包括的なアプローチが必要である。障害者にとっては障害を防ぐためのプログラムとエンパワメントや能力開発といったリハビリテーション・サービスがより密接に関係付けられることになる。ミレニアム宣言の開発目標1は極貧と飢えを2015年までに根絶することを全世界的な目標としている。この目標を達成するために、貧困削減戦略の中で、障害者は優先的なターゲットグループとして認識されるべきである。

目標 21 1990年と2015年の間に、政府は1日の収入/消費が1米ドル以下の障害者の割合を半減するべきである。

目標21はミレニアム宣言の優先的な到達目標と関係している。目標21の進捗状況をモニターするのは、関連した障害別のデータが限られていることから、困難である。

開発目標1実施の進捗状況の主要な指標は1日1米ドル以下(購買力基準:PPP)で生活している人口のパーセンテージである。これは各国の統計サービスによって得られたデータから世銀の開発研究グループが算定している。データは障害別には算出されていない。

目標21の実施進捗状況をモニターするためのデータはおそらく、各国が全人口の中で、また、都市部と農村部において「貧困ライン」以下の生活をしている障害者を特定することをめざして行なう家計・消費調査から得られるであろう。

社会保障や援助を提供する政府にとっては、登録データは障害別、性別、都市部・農村部別、また全人口との比較(社会的支援を得ている障害者と健常者の比較)から研究されるべきである。これにより、社会的支援を得た人口の中で、いかなる障害を持つ者の比率が高いのか、低いのかのを算定することができるであろう。

極少額の助成を行なう政府は、登録データを障害の種類別、性別、都市部/農村部別、また全人口比の観点から研究すべきである。

3つの指標の焦点は、障害者間の貧困の性質と程度を決定し、変化を記載し、観察された変化をもたらす可能性のある原因を特定することである。

2.結語:BMF指標の今後の発展

前章ではBMFの活動のうち、7つの重点分野の実施状況をモニターするための指標の概要を提示した。「概要」という言葉を用いたのは、国際的に比較可能な障害の種類別のデータが極めて限られているからである。

データの不足は統計収集・普及を目的とした障害の定義にコンセンサスが存在しないことに関係している。

「概要」は量的および質的な指標を含んでいる。量的指標の中には、データの不足により空白のセルがいくつかある。変数は政策分析、計画、評価のために統計を作成・利用し、障害の種類別に関連データを収集することを考えている人たちを後押しするために提示されている。

障害に関する統計の更なる進歩は国連人口年鑑(2005年)に障害の特徴に関する情報を含めるという決断から導かれるであろう。
進歩は新しい「障害者の権利に関する国際条約」の早期採択及び批准によってももたらされるであろう。
社会・経済分野における指標の作業はいつでも"進行中"である。

最終更新 2004年10月19日
財団法人 全日本聾唖連盟

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