※全日本ろうあ連盟による仮訳
アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)行動課題の実施
および10年の達成状況における
アジア太平洋経済社会委員会の役割の評価
(草案)
ペニー・プライス
コンサルタント
UNESCAP 社会問題局 障害プログラム
2003年5月
目次
序文
参考文献
表1
序文
1.アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)は国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)のユニークなイニシアチブであった。障害者の10年は2002年12月に終了した。UNESCAPは、2002年10月24〜28日にかけて、日本の滋賀県大津市で「アジア太平洋障害者の10年最終年ハイレベル政府間会合」を開催した。会合の議事4ではアジア太平洋障害者の10年の実施における達成状況が評価された。この会合の準備として、UNESCAPはアジア太平洋障害者の10年行動課題の実施における達成状況を評価するため、広範なレビュー作業に取り組んだ。
2.レビュー作業では、国レベルおよび地域レベルでの行動の進捗状況に重点が置かれた。国レベルでは、地域内の政府の担当部署へ行動課題の12政策分野の実施に関するアンケートを送る方法で、2001年に地域調査が行われた。地域レベルでは、UNESCAP、他の国連組織や専門機関、さらに政府間機関の調査が行われた。
3.障害者10年の目標は、アジア太平洋地域における障害者の完全参加と平等の促進であった。前述の調査結果によると、地域の多くの加盟国および準加盟国において、UNESCAPの障害者の10年は多数の障害者とその家族の生活の質の著しい向上を含め、この目標の達成に向けて大きく貢献した。UNESCAPは継続的に重大な関心を寄せる分野を確認し、これを「アジア太平洋地域の障害者のための、インクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく社会に向けた行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク(BMF)」に組み込んだ。このフレームワークは、第2回のアジア太平洋障害者の10年(2003〜2012)期間中の政府や市民社会による継続的な行動の指針として作成された。BMFは2002年10月24〜28日に日本の滋賀県大津市で開催された「アジア太平洋障害者の10年最終年ハイレベル政府間会合」で採択された。
4.本報告の目的は、アジア太平洋障害者の10年の行動課題の実施、および10年の事業による達成状況における、UNESCAPの具体的な役割と取り組みを評価することである。評価では、プログラムに基づくUNESCAPによる数多くの取り組み、そして障害者の10年の目標達成を促進するためにUNESCAPが設置した調整・協力機構などが取り上げられる。アジア太平洋障害者の10年に関連するUNESCAP障害プログラムの評価について、障害関連問題テーマ作業部会(TWGDC)委員を対象に行ったアンケートの結果も報告される。また、第2回のアジア太平洋障害者の10年の実施における、UNESCAPの行動に関する勧告も述べられる。
I. アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)
A. アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)の発足
5.アジア太平洋地域は、第1回の国連障害者の10年(1983〜1992)終了後に続いて、障害分野に関する具体的な地域イニシアチブを推進した最初で唯一の地域であった。1981年の国連障害者年は、国際社会による障害問題に向けた大きな関心の出発点となった。障害者に関する世界行動計画は1982年に宣言された。国連障害者の10年に関連して1990年までに得られた情報を入念に調査した結果、10年の大きな成果は障害に対する世界的な認識の拡大であったが、この認識が行動に移されていないことが判明した。社会における障害者の均等な機会と完全な統合に至る肯定的な変化を実現するには、全レベルにおける明確な目標を持った行動が必要であるとの結論が出された(国連、1990)。1991年8月にUNESCAPがバンコクで開催した「国連障害者の10年のアジア太平洋地域における達成状況を見直し並びに評価する専門家グループ会議」では、当時の成果を強化ならびに拡大するには第2回の障害者の10年が必要であると認識された。
6.UNESCAP地域の政府は、委員会の第48回会議で採択した1992年4月23日の決議48/3により、アジア太平洋障害者の10年を宣言した。「アジア太平洋地域における障害者の完全参加と平等に関する宣言」は1992年12月に北京で開催されたアジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)の発足会議で採択された。このユニークなUNESCAPのイニシアチブは、世界の他の地域のモデルとなり、国際レベルでの発展を促すものとなった。結果として地域間協力、とりわけアフリカ地域との協力関係が生まれた。アフリカ障害者の10年(2000〜2009)は1999年に宣言された。また、アラブ障害者の10年(2004〜2013)も予定されている。
B. アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)の構造
7.アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)の行動課題は、委員会が1993年に開催した第49回会議で採択された。行動課題は、障害者に関連する政策開発、計画立案、プログラムの実施などにおいて政府が指針として利用できる「行動の青写真」となった。行動課題は次の12の主要な政策分野で構成された:国内調整、法律、情報、国民の認識、アクセシビリティとコミュニケーション、教育、訓練と雇用、障害原因の予防、リハビリテーションサービス、福祉機器、自助団体、地域協力。障害者の完全参加と開発における均等な機会を保障するのに必要となる全分野において、広範な行動指針を提供する必要性を十分に認識した上で、行動課題は作成された。
アジア太平洋障害者の10年は「障害者の機会均等化に関する基準規則(1994)」と比べ、開発途上国の状況をより重視して形作られた。世界人口の3分の2はアジア太平洋地域に住み、UNESCAP地域の62の加盟国および準加盟国のうち、54カ国は開発途上の国または領土である。東ティモールは、2003年4月24日にバンコクで開催された委員会の第59回会議において、62番目の加盟国となった。
8.障害者10年の発足後、進捗状況を評価する初めての地域会議は、1995年6月にバンコクでUNESCAPにより開催された。会議では、行動課題の12政策分野の実施に関連して、73の具体的な目標と、78の勧告が採択された。行動課題の実施におけるジェンダー(訳注:社会的性別)の側面も強化された。1999年にバンコクで開催された「アジア太平洋障害者の10年の目標達成に関する地域フォーラム」において、行動課題の実施に関する目標は73項目から107項目に強化ならびに拡大された。このフォーラムが、1995年に目標が設定されて以来、目標実施に関して進展を評価する最初の場となり、4年間における障害問題の変化、進展、難問などがそれぞれ協議された。
C. アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)の資金的・人的資源
9.「アジア太平洋障害者の10年行動課題の宣言」に関する1993年4月29日の委員会決議49/6を遂行するため、障害者の10年の技術協力信託基金が設立された。2002年8月までの寄付は424,000米ドルを超えた。基金には、一つの地方自治体、政府、労働組織、及び一つの民間会社などが寄付した。中国はこの基金へ毎年10,000米ドルの寄付を行った。この基金により、UNESCAPは国際的な協力を促進し、行動課題の12分野の全国と地方での実施を促進することができた。これは最良の慣行や諮問サービスに焦点を合わせた技術的な交流、研修、情報配信などにより実現した。障害者の10年の基金は、事務局の10年促進活動における人材の支援ともなった。
10.UNESCAPからの定期的な予算配分は、障害プログラムのスタッフを部分的に支えた。日本政府は10年の期間中に約250万ドルを提供し、事務局の小規模な障害チームを支援する障害プロジェクト専門家の雇用を含めて、13の単年および複数年の事業に対し資金提供を行った。アジア太平洋障害者の10年の発足、実施、及び全般的な成功に至ったこの貴重な支援と寄付に対し、UNESCAPは深く感謝している。
11.10年を通して事務局内で行動課題の実施作業に取り組んだ専門家とサポート・スタッフのチームは非常に小さかったが、全員が非常に熱心で献身的に活動した。
II. 地域調整機構
12.アジア太平洋障害者の10年の行動課題の実施を成功させるには、地域内の政府、NGO、市民社会のメンバー、さらに国連組織と専門機関による行動が必要であった。パートナーシップ、協力関係、共同作業は必要不可欠な要素であった。事務局は、10年が宣言される以前から協力関係に取り組んでいて、障害関連問題に関するアジア太平洋組織間タスクフォースの事務局も務めていた。この小委員会は1992年に拡大ならびに強化され、アジア太平洋地域の機関間委員会(RICAP)の障害関連問題に関する小委員会となった。障害分野におけるサービス提供団体や自助団体などの広範なNGOが小委員会に参加し、積極的に活動した。参加団体には11の国連組織や機関、さらに地域協力への取り組みに関心を寄せる自費参加の政府代表者なども含まれた。小委員会はチームに分かれ、それぞれ行動課題の特定分野の実施における、地域的支援の発展に取り組んだ。
13.2000年に国連機関の上層部は小委員会の構造を変更し、これにより障害関連問題テーマ作業部会がRICAP小委員会に取って代わった。作業部会の主な目的は、アジア太平洋障害者の10年の最終時期に向けて、10年の目標達成への取り組みにおける推進力を維持することであった。共同議長のポストは、国連機関やNGOと共にUNESCAPが担当した。参加団体には、アジア太平洋障害者の10年推進NGO地域ネットワーク(RNN)を含む50のNGO、15カ国の政府代表者、そしてアジア開発銀行なども含まれた。作業部会は、10年最終時期の目標の設定や、行動課題の達成状況の評価活動などに積極的に取り組んだ。また、アジア太平洋障害者の10年をさらに10年(2003〜2012)延長することを奨励する上で重要な役割を果たした。さらに参加団体は「アジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブで権利に基づく社会に向けた行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の起草においてUNESCAPを積極的に支援した。
14.TWGDCはさらに、障害を持つ全ての子どもと青年の教育、訓練と雇用と起業活動、情報と通信技術(ICT)の分野における行動課題の目標達成に向けた支援と活動を促進するため、4つのタスクフォースを結成した。4つ目のタスクフォースは東ティモールに関するものであり、新しく独立したこの国へ開発の初期段階における支援を提供することが目的とされた。2002年12月に開催されたタスクフォースの会議において、このグループの担当分野は、2002年10月に宣言の第42署名国となったアフガニスタンにも拡大された。2002年12月に開催されたTWGDCの第5回会議では、女性障害者を含む自助団体(SHOとWWD)の分野、そして「障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する国際条約」の分野の2つのタスクフォースが新しく結成された。国の全教育計画に障害児を含める必要性の認識の拡大、地域のICT会議での障害者問題への取り組みの促進、東ティモールにおける全国的な調査と障害に関する啓蒙活動を支援する資金調達などの分野において、タスクフォースの成果が現れた。
15.UNESCAPがアジア太平洋障害者の10年の目標達成を促進する上で、TGWDCは重要な役割を果たすため、TWGDCの所属団体を対象としたアンケートが2002年12月に実施された。アンケートの目的は、10年の実施を支援するUNESCAP活動の効果を、TWGDCメンバーに評価してもらうことであった。アンケートの結果は本報告書のセクションIVに述べられる。
III. 10年行動課題の実施を後援するUNESCAPの活動
A. プログラムの実施
16.アジア太平洋障害者の10年が宣言された決議48/3を支援するため、委員会は次の3つの決議を採択した:アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)の宣言と課題に関する1993年4月29日の決議49/6、21世紀以降に向けた障害者のための地域支援の強化に関する1998年4月22日の決議54/1、21世紀におけるアジア太平洋の障害者のためのインクルーシブでバリアフリーかつ権利に基づく社会の促進に関する2002年5月22日の決議58/4。これらの決議の遂行に向けて行動課題の政策分野における各国の能力を強化するため、UNESCAPは様々な事業を実施した。
17.障害者の10年の課題の実施において、UNESCAPのプログラムは複数の活動や取り組みを行った。これには、計画立案、運営、組織、プログラムの実施、技術支援、調整、協働活動、コミュニケーション、ネットワーク作り、人的・資金的資源の動員、報告、出版、アドボカシー活動などが含まれていた。政府、NGO、及び他の市民社会組織に広範な支援が提供された。主要な活動には、地域や小地域の会議・セミナー・ワークショップの開催を通した政府・NGO・自助団体との間の技術支援や良い慣行に関する情報交換、さらに10年の信託基金からの資金援助などが含まれた。
18.障害者の10年の期間中、行動課題の12政策分野の全てを促進する活動が組織的に試みられたが、他の国連団体や機関が取り組まない任務や専門分野にとりわけ重点が置かれた。国内調整機構の強化は、国レベルでの行動課題の実施における重要な分野として認識された。UNESCAPは、国際的なセミナーの開催に関連していくつかの政府に支援を提供し、さらに障害に関する国内調整委員会が直面する重大問題に取り組むための共同活動に関する地域会議を開催した。UNESCAPは法律の地域評価を実施した。出版物には、社会で弱い立場に置かれた集団への待遇に関する12カ国の憲法、そして10カ国の法律などが例として含まれた。これらの例は、国内調整委員会の設立および障害に関する法律を制定する行程について、各国や領土が見習うことのできるモデルとなった。
19.公衆の認識への取り組みは、地域内の多様な活動へのUNESCAPの参加を通して進められたが、この中でもアジア太平洋障害者の10年の年次地域キャンペーンを対象とした支援が中心的であった。これらのキャンペーンは、10年推進NGO地域ネットワークが、主催国の政府やNGOの協力を得て開催した。情報分野における重要課題の一つとして、政策開発と計画立案に不可欠となる、障害に関する統計を作成する必要性が確認された。UNESCAPとアジア太平洋統計研修所は2000年と2001年に小地域ワークショップを開催した。これは今後も活動が必要とされる重要分野として確認された。
20.UNESCAPのフラグシップ・プログラムには、1993年に開始された「障害者のためのハンディキャップを生まない建築環境の促進」、そして10年が宣言される前の1990年に開始された「自助団体の開発支援を通した障害者のエンパワーメント」があった。両方の政策分野で単年及び複数年の事業が実施され、最終的にはアクセシビリティと自助団体の両分野を統合した事業となった。ハンディキャップを生まない環境の促進に関する研修講師を育成するため、障害者を対象とした研修が行われた。研修の範囲は拡大されて社会動員(訳注:social mobilization)も含まれるようになり、ハンディキャップを生まない環境の概念は、建築環境と社会環境の双方まで広げられた。
21.地域内諸国の学校における障害児の通学促進において進展の不足が認められたため、UNESCAPは障害児の早期対処と教育に関する地域調査などを通してこれに対応した。UNESCAPは「21世紀以降に向けた障害を持つ子どもと青年の教育に関する地域フォーラム」を開催し、ユネスコ・アジア太平洋地域中央事務所の協力を要請した。
22.UNESCAPは多くの国連機関や組織と緊密に協力した。この中でもとりわけ、訓練と雇用に関する問題については国際労働機関(ILO)、地域に根付いたリハビリテーションについては世界保健機関(WHO)、障害者の貧困軽減と農村地域における雇用については国連食糧農業機関(FAO)と強いパートナーシップが作られた。この他、国連開発プログラム、国連難民高等弁務官、国連児童基金、アジア開発銀行、国際電気通信連合との協力もあった。協力関係の一部は、貧困軽減や情報・通信技術など、発展段階にある障害問題に焦点が合わされていた。
B. モニタリングと評価
23.決議48/3において、決議の実施における進展を2年毎に委員会へ報告し、10年の終了まで委員会へ勧告を行うよう、事務局長は要請された。レビュー会議は1995年、1997年、1999年、2002年に開催された。1995年のバンコク会議では、10年の発足からの進展が評価され、行動課題の実施に関連するジェンダーの側面を含めた、73の目標と78の勧告が採択された。「アジア太平洋障害者の10年中間年高級事務レベル会合」では、10年前半の進展が評価され、行動課題への取り組みを再確認する「10年後半へのソウル提言」が採択された。1999年に、バンコクで「アジア太平洋障害者の10年の目標達成およびUNESCAP地域における障害者の機会均等化に向けた地域フォーラム」が開催された。この会議にて、行動課題の実施に関する目標は1995年に採択されて以来、初めて見直された。見直しの結果、2002年までの行動として、目標は73項目から107項目へ強化ならびに拡大された。
24.2001年に、地域内の各政府の担当部署へ行動課題の12政策分野の実施に関するアンケートを送る方法で、地域調査が行われた。調査では、障害者の10年期間中の主要な達成事項と、改善が必要とされる重要分野に関する情報が集められた。それぞれの政府はNGOや関心を持つ他団体と緊密に協議の上、国の報告をまとめることが期待された。実際には、この協議の程度は国の間で大きく異なった。この状況は、地域内の10年の実施活動に積極的に取り組み、TWGDCのメンバーであった一部のNGOにより重大な問題として受けとめられた。アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)行動課題の実施に関する各国の進捗状況の評価報告は、2002年10月25〜28日に日本の滋賀県大津市で開催されたアジア太平洋障害者の10年最終年ハイレベル政府間会合の議事4で発表された。
IV. 達成状況の評価
A. アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)の実施において
UNESCAPが果たした役割のTWGDC委員による評価
25.RICAPとTWGDCのメンバーはそれぞれの活動期間において、アジア太平洋障害者の10年行動課題の実施における中心的な調整機構として、UNESCAPとの緊密なパートナーシップ、協力関係、共同活動の中で取り組んできた。活動期間を通して参加者は変わっていったが、多くの個人メンバーは10年の発足から全期間にわたって関わっていた。10年の終了時には、アジア太平洋障害者の10年に関連したESCAP障害プログラムの評価を、TWGDCに要請するのが適切であると考えられた。この評価は、第1回のアジア太平洋障害者の10年終了前に行われた最後の会議(2002年12月)で、アンケートの形で実施された。
26.TWGDCには、オブザーバーやESCAP事務局のメンバーを含めて、43名の代表者が参加した。アンケートには29のメンバーより回答があり、UNESCAP事務局とオブザーバーを除いて、回答の31%は政府から、15%は国連機関や組織から、54%はNGO代表者からのものであった。65%は以前のRICAP障害関連問題委員会のメンバーでもあり、45%は1992年の障害者の10年発足以来のメンバーであった。5名の長期メンバーに対して個人的なインタビューも行われた。ただし回答者全てが、全設問に回答したわけではない。
1.達成状況
27.アンケートでは、10年行動課題の実施に関連してUNESCAPが取り組んできた障害問題の内容と範囲において、アジア太平洋障害者の10年の目標や目的を支持する上で、最も重要と考えられる5つの成果とその理由を答えるよう要請された。最も多く選ばれた5つの分野は、高い順位より、地域協力、自助団体(SHO)、国民の認識、法律、教育であった。
28.地域協力におけるUNESCAPの重要な役割は、10年の実施における成功のカギと見なされ、10年の成果に最も貢献した要素であったと考えられた。UNESCAPは障害に関する地域活動の中核となり、政府、国連機関、NGOによる障害問題への取り組みを発展させる役割を果たした。行動課題は、政府と市民社会にとって政策の広範な指針となった。RICAP委員会やTWGDCを含む調整機構は、政府とNGOの間の交流とパートナーシップを良い方向に推進した。公式と非公式な交流、各国間の良い慣行の交換や共有、進捗状況の定期的な見直しおよび評価を行う機会などは、10年の全期間を通して、行動課題の目的や目標の達成に向けた行動の推進を維持させた。地域内の障害関連問題に関する広範なネットワーク作りは注目すべき成果であり、UNESCAPのリーダーシップと取り組みがなければ不可能であったと考えられた。また、人的・資金的資源の動員における役割、さらに研修、ワークショップ、年次キャンペーンにおけるNGOの最大限の参加を重視する取り組みにおいて、UNESCAPは高く評価された。
29.障害者のエンパワーメントへのUNESCAPの取り組みは、第1回のアジア太平洋障害者の10年の発足以前から行われていた。1991年には、自助団体の設立と強化に関するガイドラインを出版し、これは5つの言語に翻訳された。1993年から1996年にかけては自助団体の運営に関する一連のワークショップが開催され、ここから、広く利用される2つ目の出版物が生まれた。とりわけNGOの回答者は、障害者の発展を支援するUNESCAPの活動を高く評価した。UNESCAPによる自助団体への支援は、自助団体への政府の態度を変え、政府による自助団体の重要性の認識を促したと、回答者は述べた。UNESCAPは、自助団体の代表者を国内調整機構に含めること、そして計画立案の全レベルにおいて関わりを持たせることを奨励した。また、UNESCAPは障害者を雇い、地域調整機構や全てのUNESCAP会議への障害者の参加を保障し、これをモデルとして指導者研修や能力の育成活動を進めた。10年の期間中には22の国と領土において自助団体が設立され、この他にも4カ国の団体が設立の準備段階にある。公式と非公式の両分野において、重要かつ効果的で、継続的なネットワークが形成された。UNESCAPはこれらのグループを刺激し、奨励し、支援してきた。UNESCAPはジェンダーの側面に対する認識拡大においてとりわけ重要な役割を果たし、女性障害者(WWD)の能力育成に取り組み、一般のジェンダー関連組織における女性障害者問題の啓発を奨励した。2001年に結成された最初の小規模な女性障害者ネットワークは、強力で自立した地域組織に発展した。
30.回答者は、アジア太平洋障害者の10年の宣言が、障害問題について地域に非常に大きな影響を与えた、ユニークなイニシアチブであったと答えた。ここで生まれた公衆からの認識は、政府から個人の全レベルに影響する、広範な効果をもたらした。行動課題は当時の国内障害政策よりはるかに進んでいて、政府は行動課題で提供される政策開発の明確なガイドラインを尊重し、国際的なロール・モデルと見なされるようになったUNESCAP障害プログラムの指導的な役割を認知した。国レベルでの障害問題への取り組みの強化において、UNESCAPからの支援は不可欠だと考えらた。行動課題は、国の開発活動に障害問題を取り入れるために政府へ働きかける役割をNGOに与えた。地域内の様々な国と領土で開催される年次キャンペーンを含め、この10年で育て上げられた推進力は、メディアによる障害問題の報道の拡大につながり、公衆認識の範囲を大きく広げた。
31.回答者は、法律が大きな成果が見られた重要分野の一つであると報告し、UNESCAPが活動を促進する役割を果たし、政府に広範な技術的支援を提供し、法律の良い例に関する情報を普及させたと回答した。差別的な法律の改正の促進でも成功が見られた。地域内の13の政府が広範な障害に関する法律を制定し、このうち11の政府は、10年の発足後にこの行動を起こした(UNESCAP 2003:3)。インド政府は、UNESCAPの影響で、障害に関する法律の制定を1995年に決定したと報告した。
32.教育も大きな成果が見られた分野の一つとして回答者に選ばれ、1999年にバンコクでUNESCAPが開催した「障害を持つ子どもと青年のための教育に関する地域フォーラム」と、「障害を持つ全ての子どもと青年のための教育に関するタスクフォース」の結成などが、非常に建設的なイニシアチブの例としてあげられた。多くの政府が、障害児への教育の提供により積極的に取り組むようになったことが確認された。この取り組みについて政府とNGOの間の対話は拡大し、UNESCAPは良い慣行に関する情報を提供した。さらに、聴覚障害を持つ幼児の早期発見が改善され、ろう児による手話の利用がより広範に認められるようになったことが報告された。
2.さらなる行動の優先分野
33.アジア太平洋障害者の10年の目標と目的を促進する上で、さらなる取り組みが最も必要とされる5つの分野を問う項目では、回答者は次の分野を選択した:1位は訓練と雇用、障害原因の予防、リハビリテーション、とりわけ地域に基づいたリハビリテーション、2位は地域協力と教育、3位はアクセシビリティとコミュニケーション、自助団体、4位は情報と国民の認識、5位は国内調整。
34.回答者の答えるによると、訓練と雇用の分野における10年での進展は非常に限られていて、この分野は障害者の均等な機会を実現するために必要不可欠であるため、より重点的に取り組む必要性があった。とりわけNGOは、障害原因の予防の問題に関する関心の不足を、大きな問題として感じていた。CBRは、地域内で今もなお軽視されて十分な待遇を受けない農村地域の障害者にサービスを提供する重要な戦略であるにも関わらず、10年の期間中に、重要分野としてのCBRプログラムやサービスに対する注目は縮小していったと回答者は述べた。
35.早期対処と教育は、障害児にとって非常に重要な分野である。障害者を中心的なリソース・パーソンとして、早期対処の社会モデルを開発する必要性がある。一般(メインストリーム)教育におけるインクルージョンを実現するためにはより広い啓蒙活動が必要であり、地域全体を通して経験や良い例の共有を進めるため、教育方法を訓練するワークショップやセミナーの広範なプログラムが必要である。地域協力に関して回答者は、TWGDCの構造をより組織化し、国連の諮問団体としての地位を有する全ての障害機関が含まれるよう、メンバーを拡大しなければならないと答えた。また、他の国連機関や組織からより多くの支援を要請するべきである。さらに、障害関連組織間の団結を奨励すること、そして小さな組織も関わりが持てるように支援を提供することへも着目するべきである。
36.アクセシビリティの問題に関してはとりわけ政府が高い関心を寄せ、NGOは障害者との対話を奨励するようUNESCAPに要請した。ユニバーサル・デザインの考え方を採用する必要性があった。10年で部分的に大きな前進は見られたが、地域が適切なアクセシビリティ基準を持つまでにはほど遠い状況である。全ての情報・コミュニケーション技術(ICT)の計画立案と能力育成に障害者を含めるよう政府に奨励することを、NGOはUNESCAPに要請した。回答者は、10年を通して自助団体の参加は確実に拡大したと述べ、自助団体の完全な関わりを保障するためのUNESCAPの資金調達活動に感謝の気持ちを表した。自助団体は、国内と地域の協力で重要な役割を担う、障害者運動の先導力であると回答者は述べた。UNESCAP地域の全ての国および領土に障害者協会(DPA)を設置するという目標に向けて、活動を進める必要がある。この目標を実現するためにはUNESCAPの支援が必要である。
37.回答者は、国民の認識と情報の分野で、継続的な取り組みを要請した。メディアのより組織的で広範な活用が進められるべきであり、啓発教育を学校に広げる必要性がある。また、障害者組織とそのネットワーク、さらに政府や関連する投資者にアクセス可能で利用しやすい、体系的な障害データ収集のシステムを開発する重大な必要性が今も残されている。
3.UNESCAP活動の評価
38.アジア太平洋障害者の10年の目標と目的の実施を支援するためにUNESCAPが取り組んできた主要な活動には、計画立案、運営と組織、プログラムの実施、技術的支援、人的・資金的資源の動員、調整と協力、コミュニケーションとネットワーク作り、報告、出版、啓発活動などが含まれていた。回答者は、各活動においてUNESCAPに5段階での評価を付けるよう要請された。評価の5つの段階は、「非常に良い」、「とても良い」、「良い」、「悪い」「とても悪い」であった。さらに、10年の実施に関するESCAPの全般的な役割を、同様の5段階のスケールで評価するよう回答者は要請された。これらの結果は表1に示されている。
39.アンケートの回答者全てが評価を付けたわけではなかった。RICAP小委員会もしくはTWGDCの長期的なメンバーでなかった一部の回答者は、適切な評価を行えるだけの知識がないと答えた。また、一部の回答者は全ての活動を評価しなかった。20の回答者のうち18、すなわち約3分の2は、少なくとも一部に評価を付けた。全般的に見ると、アジア太平洋障害者の10年の行動課題の実施を支援するUNESCAPの活動に対し、高い評価が与えられた。5が「非常に良い」を示す数字で、評価は3.5から4.3の範囲にあった。全ての評価は「良い」以上であり、中央値は3.9であった。「良い」以下の評価を受けたのは、評価項目全体のわずか3%以下であった。人的・資金的資源の動員の分野においては、活動予算の制限でUNESCAPには実現できないレベルの資金援助が、NGOから繰り返し要請されていた。
表1.アジア太平洋障害者の10年の目標と目的の実施を支援する
UNESCAP活動の評価、及びUNESCAPの全体的な役割の評価
活動分野 | 非常に良い | とても良い | 良 い | 悪 い | とても悪い | 平 均 |
運営・組織 | 5 | 7 | 6 | 3.9 | ||
プログラムの実施 | 4 | 7 | 6 | 2 | 3.7 | |
技術的支援 | 2 | 6 | 11 | 3.5 | ||
人的・資金的資源の動員 | 3 | 9 | 5 | 2 | 3.7 | |
調整と協力 | 2 | 8 | 6 | 3 | 3.5 | |
コミュニケーションとネットワーク作り | 6 | 7 | 6 | 4.0 | ||
報告 | 6 | 6 | 8 | 3.9 | ||
出版 | 7 | 8 | 5 | 4.1 | ||
啓発活動 | 6 | 12 | 1 | 4.3 | ||
計画立案 | 5 | 5 | 8 | 1 | 3.7 | |
UNESCAP全体の評価 | 2 | 14 | 4 | 3.9 | ||
40.3つの活動は「4」以上の評価を受け、「とても良い」と見なされた。この3つとは出版、報告、調整と協力であった。10年の期間中におけるUNESCAPの出版物の価値は前述した通りであり、行動課題の実施を支援する地域レベルの行動の評価(UNESCAP 2002b)の中でもこれは取り上げられている。政府、国連機関、NGOなどが10年の目標達成に向けて活動する中で、行動課題と、課題の各政策分野に関する他の出版物は、重要な指針としての役割を果たした。UNESCAPによる報告の水準は10年を通して高く、2002年10月に日本の滋賀県大津市で開催された「アジア太平洋障害者の10年最終年ハイレベル政府間会合」のために準備された資料で、UNESCAPは非常に高い評価を受けた。調整と協力の分野におけるUNESCAPの成果は既に詳細に述べた。行動課題が扱う政策分野の広さ、多様で非常に広範な投資者の層、そして10年プログラムを通して変化してきた政治的、経済的、社会的背景などの理由で、この分野は10年の実施において最も複雑な側面の一つであった。プログラムの実施において、これはUNESCAPが誇りに思うことのできる分野である。
41.アジア太平洋障害者の10年の実施を支援する上で、UNESCAPの全体的な役割の評価は3.9であり、アジア太平洋地域における行動課題の目的と目標の達成に向けたUNESCAPの活動は高く評価された。アジア太平洋障害者の10年はUNESCAP内でのフラグシップ・プログラムとなった。行動課題の全12政策で成果が見られ、地域内に大きな影響を与えられ、政府、NGO、国連関連組織の間の適切なパートナーシップと継続的な協力関係を築く重要性が証明された。10年は世界的にも賞賛され、アフリカとアラブ地域における障害者の10年のモデルとなり、障害問題に関する地域間の協力においてUNESCAPがリーダーシップをとる道を切り開いた。
42.BMFの実施に関わるUNESCAP活動に対する具体的な勧告は、本報告のセクションVに述べられる。
B. アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)の生きた遺産
43.2001年12月にハノイで開催されたTWGDCの第3回会議では、UNESCAP地域の政府が、アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)をさらに10年間(2003〜2012)延長するべきことが強く勧告された。TWGDCの参加者は、第2回の10年でUNESCAP地域の全加盟国と領土の積極的な参加を保障する目標を、第1回の10年以降のフレームワークに入れるべきこと、そしてこれを小地域に重点を置く方法で促進するべきことを勧告した。また、活動で集中的に取り組む重要課題の分野を探しだし、さらに「障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する総合的かつ包括的な国際条約」の案を検討するために2001年12月19日の総会決議56/168で設置された特別(アドホック)委員会の活動を全面的に支援することを勧告した。2002年5月にバンコクで開催された第58回会議において、委員会はアジア太平洋障害者の10年をさらに10年間(2003〜2012)延長することを宣言した。
44.UNESCAP事務局は、TWGDCから豊富な意見を取り入れ、さらに他の国連機関や市民社会パートナーとの広範な協議を通して、第2回のアジア太平洋障害者の10年(2003〜2012)の実施で政府の指針となる、「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク(BMF)」の起草でリーダー的な役割を果たした。「アジア太平洋地域の障害者のための、インクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく社会に向けた行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」は、2002年10月25〜28日に日本の滋賀県大津市で開催され、大成功したアジア太平洋障害者の10年最終年ハイレベル政府間会合で採択された。
45.アジア太平洋障害者センター(APCD)事業は2002年8月1日にバンコクで開始された。2000年12月に開催された「アジア太平洋障害者の10年キャンペーン2000」でまとめられた「アジア太平洋地域における障害者の権利の促進に関するバンコク・ミレニアム宣言」は、アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)の生きた遺産として、タイにAPCDを2002年までに設立することを支持した。APCDの目的は、タイ王国政府と日本政府の共同後援のもとで、アジア太平洋地域の障害者のエンパワーメントを促進することであった。UNESCAPは1998年以来、センターの予備調査と初期段階の計画立案に密接に関わっていて、第2回のアジア太平洋障害者の10年とBMFの実施において、APCDとの密接な協力関係とパートナーシップを維持する。
46.障害者の10年で注目に値する成果の一つは、一連の地域ネットワークの発展であった。これらのネットワークはUNESCAPの訓練事業の結果として生まれ、初期段階では障害プログラムのスタッフの継続的な支援と奨励により発展した。2000年12月に開始されたアクセス・イニシアシブ・ネットワークは、地域における重要な啓発活動の勢力とコミュニケーションの経路として発展した。このグループのメンバーは、身体的なアクセシビリティから大学レベルの第3次教育へのアクセスに至る分野の中で、改善を促す強力な能力を持つことを証明した。ネットワークの活動の結果として、地域内の多くの国や領土で身体的・社会的バリアが取り除かれ、ネットワーク所属者の多くは自国の内外より表彰された。
一般のジェンダー運動において自らの問題を啓発するためにUNESCOの研修を2001年に受けた、女性障害者(WWD)の小規模なネットワークは、女性障害者の地域ネットワークを発展できる基礎となった。この地域ネットワークは、2002年10月に大阪で開催された大阪フォーラム(「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラム)で発足された。このグループのメンバーは、障害を持つ他の若い女性リーダーの能力育成事業を開始し、それぞれの自国内での今後の取り組みに関する提案や事業を考案した。この他、ネットワークを介して情報や経験を共有し、互いに支援を提供した。2001年4月にフィジーで太平洋障害開発ネットワークが発足され、これは2002年12月に、障害者インターナショナル・オセアニア小地域事務所(DPIOSO)とのパートナーシップで、太平洋小地域の障害問題担当部署の役割を果たす「太平洋障害フォーラム(PDF)」となった。UNESCAPはこれら全てのネットワークの発足において支援を提供した。
47.アジア太平洋障害者の10年への貢献に対する日本国総理大臣賞は、2002年12月にUNESCAPの社会問題局人口・社会統合課内の障害プログラムを担当していた高嶺豊氏に授けられた。高嶺氏はUNESCAPを退職しており、現在は日本の沖縄の琉球大学にて社会事業の教授を務めている。
V. 勧告
48.第2回アジア太平洋障害者の10年と「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の実施におけるUNESCAPの活動を導くために、数多くの勧告が行われた。
A. 国連ミレニアム開発目標(MDG)B. 行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク
- UNESCAPは、BMFに含まれるミレニアム開発目標(MDG)の障害の側面を強調し、これらがUNESCAPや他の国際機関による貧困軽減およびMDGの達成に関する進捗報告へ確実に含まれるよう取り組むべきである。
C. BMFの実施のための資金的資源
- UNESCAPは、第2回アジア太平洋障害者の10年(2003〜2012)の初期段階において、「アジア太平洋地域の障害者のための、インクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく社会に向けた行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク(BMF)」を全ての加盟国・国連機関や組織・政府間組織・INGO・NGO・市民社会パートナーへ体系的に配布するべきである。
- UNESCAPは、アジア太平洋障害者の10年の行動課題を、BMFに加えて、第2回の10年における政策ガイドラインとして維持して行くべきである。行動課題は、障害政策とプログラム実施の初期段階にある国や領土を支援できる。
- UNESCAPは、言語、資金、その他の障壁によって、10年関連活動への参加が限られている加盟国を支援する方策を考案しなければならない。これは、テクノロジーの活用、指導者としての関係作り、技術支援、機関間協力による先進国から後進国への知識や能力の普及、国際資金提供機関を活用した事業の開発などを通して実現するべきである。
- UNESCAPは、DPI、APCD、PDFなどの地域機関やNGOとの協力的な取り組みを用いて、「アジア太平洋地域における障害者の完全参加と平等に関する宣言」にまだ署名していない全ての国と領土を関わらせるために、積極的な戦略を考案ならびに実施するべきである。とりわけ中央アジアと太平洋の諸地域における国や領土に関わりを持たせることに重点的に取り組む必要がある。この行動は、第2回障害者の10年の初期段階においてとられるべきである。
D. 戦略的パートナーシップ
- UNESCAPは、第1回障害者の10年で利用できた資金のレベルを維持するよう努め、日本政府と中国政府からの広範な支援を補足するために、他の加盟国からの支援も求めるべきである。小地域でのBMFの実施を支援するため、小地域内の新しい資金提供者を探し、小地域レベルでの訪問交流を促進するべきである。
E. 優先課題
- UNESCAPは、地域内のBMFの実施に向けた推進力を育てるために、具体的な共同活動を行う戦略的パートナーを取り込む、組織的な政策を採択ならびに実施するべきである。これには、国連機関、政府、ASEAN、SAARC、SEAMOなどの地域の政府機関、とりわけ障害者組織などの国際的・地域的・全国的なNGO、世界銀行やアジア開発銀行などの政府間組織、人権組織などの関心を寄せる市民社会の他のメンバーなどが含まれるべきである。
- UNESCAPは、BMFの実施にあたってAPCDと密接に協力し、共同活動を進めるべきである。
F. BMFの実施(2003〜2012)に向けた成果のモニタリングと評価
- BMFを実施する利点を政府に示す方法としての障害者の発展に関する費用便益分析などを含め、UNESCAPは、BMFの重要な優先課題に関する研究の促進において、パートナーと協力して活動を進めるべきである。
- UNESCAPは他の関連機関との協力で、全加盟国の主要な全政策分野を扱う、障害に関する地域データベースの設置に向けて取り組むべきである。この情報データベースは、政策の立案および第2回障害者の10年の評価プロセスを支援できる。
- UNESCAPは、情報・コミュニケーション技術(ICT)の活用を通して、全ての関連組織との情報交換をさらに促進する必要がある。ESCAPはAPCDなどの賛助組織とのパートナーシップで、広範な地域ネットワークの開発を通した、地域内の障害者のためのアクセス可能な情報の提供にあたって、先導的な役割を果たすべきである。
- UNESCAPは、自助団体の能力育成へ、組織運営の訓練およびリーダーシップやネットワーク作りも含まれるよう拡大し、地域の訓練活動において障害者をリソース・パーソンとしてより多く採用するべきである。
- UNESCAPは、適切な地域・国際機関とのパートナーシップで、一般学校における障害児のインクルージョンの飛躍的な拡大を促進するための戦略に重点をおいて、インクルオーシブ教育の適切なイデオロギーと実施手順を明確化する事業の開発やワークショップの開催を行うべきである。教員訓練を強化するための取り組みでは、小地域と地域における良い慣行に関する情報を広く交換する機会を設け、教員が一般学級において多種多様な範囲の能力を持つ子どもを教えられるよう、全ての教員の能力育成に焦点を合わせるべきである。
- UNESCAPは、農村地域における障害者の発展に優先的に取り組み、ICTの利用と適用における障害者の能力育成を奨励し、障害者が「デジタル・デバイド」の不利な側に置かれるケースを縮小させるべきである。
G. 調整機構 − TWGDCの主要な役割
- UNESCAPは、BMFに述べられる定期的な進捗状況を計るための基準として、障害者の10年の開始に伴って、ESCAPの全加盟国における障害開発の状況について広範な基礎的データを収集するべきである。
- UNESCAPは、第2回障害者の10年の期間中に進捗状況を評価する地域モニタリング委員会を設立し、必要性や要請に応じて国レベルでの支援やアドバイスを提供するべきである。
H. UNESCAPの主要な役割
- BMFの実施においてUNESCAPを支援する中心的な調整機構として、TWGDCは維持されるべきである。TWGDCは成功のカギとして見なされ、地域内の障害問題を前進させて、世界・地域・国レベルでの障害問題や発展について高度な知識を共有するのに不可欠なフォーラムである。
- TWGDCのメンバーは拡大され、より多くの地域組織や政府の代表者、そしてより広い範囲の全国的・国際的なNGOや市民社会組織の代表者が含まれるべきである。とりわけ障害者組織や、最も開発が遅れている国や領土から、より多くの代表者が参加するべきである。
- TWGDCとTWGDCのタスクフォースは、明確な時間枠を設けた目標、目的、及び戦略を含む、結果と行動を優先した計画を考案するべきである。TWGDCは、BMFの実施に関わるモニタリングと評価の責任を担うべきであり、全ての評価プロセスにおいて、有意義で時宜を得た協議を行う必要がある。
- UNESCAPは、障害者の発展促進におけるリーダーとしての役割を維持し、全ての一般(メインストリーム)開発活動に障害問題を含めるよう政府に奨励し、地域の第2回障害者の10年の期間中におけるBMFの実施を目的とした、適切な事務局スタッフと資金を確保するべきである。
参考文献
国連 1990 総会 第45回会議 議事92号 「障害者に関する世界行動計画および国連障害者の10年の実施。国連障害者の10年の終了において取りうる方法の予備調査」(A/45/470)
国連 1994 障害者の機会均等化に関する基準規則 ニューヨーク(DPI/1454)
UNESCAP 2002a 「アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)行動課題の実施における各国の進捗レベルの評価。2002年10月25〜28日に日本の滋賀県大津市で開催されたアジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)終了年ハイレベル政府間会合での報告用」(E/ESCAP/APPDP/1)
UNESCAP 2002b 「アジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)行動課題の実施の支援に関連する地域レベル活動の評価。2002年10月25〜28日に日本の滋賀県大津市で開催されたアジア太平洋障害者の10年(1993〜2002)終了年ハイレベル政府間会合での報告用」(E/ESCAP/APPDP/2)
最終更新 2003年5月19日
財団法人 全日本聾唖連盟