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ニュージーランド政府に手話の法的認知の動き

〜 ニュージーランド手話に関するQ&A 〜
ニュージーランド社会開発省障害問題局 作成
(全日本ろうあ連盟 仮訳)

なぜ政府はこのような法案を提案しているのですか?

国内のろう者の意見を聞くと、現行の法の下ではNZ手話の扱い及び政府のサービスへのアクセスに大きな支障があることが分かった。NZ手話が音声言語と同格の言語であるという認識が希薄なために多くの不当な扱いを受けている。例としては、裁判の際に手話通訳が認められなかったり、手話を使用したことが攻撃的な態度と誤解され、無法な態度をとった罪に問
われるなどといったことがある。医療の場においては、資格のあるNZ手話通訳者がいなければ誤診の恐れがあり、本人に十分に情報を伝えて意思確認(インフォームド・コンセント)をすることもできない。

労働党の声明文(1999年)には「労働側はニュージーランド手話を公用語として認める」と書かれている。NZのろう者コミュニティーとニュージーランドろう協会は、手話の公的認知を求める運動を20年間続けてきた。

法案が可決された場合、何時から効力が発するのですか?

法案は2003年12月に下院議会に提案され、その後特別委員会にて審議される。政府としては、特別委員会でのプロセスを経て、2005年1月1日に発布されることを目指している。

この法案はろう者やろうコミュニティーをどのように支援するのですか?

この法によりNZのろう者固有の言語が音声言語と同格の言語として認められ、このことにより、正当な扱いが得やすくなる。マオリ族のろう者の報告によると、NZ手話が公的に認知されると、マオリの伝統的集会や儀式の際にNZ手話の使用が認められることが期待でき、その結果マオリの言語と文化へのアクセスが拡大される。

ろうではない人々への影響は?

ろうの子どもの親にとって、自分の子どもの第一言語が公用語として認知されることは良い影響が期待できる。(ろう児の95%は聞こえる親を持つ。)家族にろう者が居る健聴者も、このろうの人を家族生活や地域生活に統合するツールとして、この法案を活用できる。

また、ニュージーランドのろう者の社会参加と貢献が拡大することで、社会全体にとって良い影響がもたらされる。ろう者の言語を含む、ろう文化からも社会は多くを得られるであろう。この法案により民間団体に対して特別の義務は生じない。

他の国でも手話は公用語として認知されているのですか?

欧州議会は手話を認知する法律を奨励する決議を採択し、その結果スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スイス、アイルランド、ポルトガル、ギリシャなどでは手話の認知が立法化されている。

欧州決議に関する詳細な情報は英語と手話で以下のサイトに掲載される:
  EUDeaf2003

欧州決議全文は以下のサイトにも掲載される:
  手話に関する決議(Official Journal C 379 , 07/12/1998 P. 0066)

スウェーデン政府は以下のウェブサイトに手話のビデオを掲載することで、ろう者に関連する取り組みへの積極的な姿勢を示した:
  市民のガイド:国際手話

そのほか、カナダやアメリカ合衆国のいくつかの州が手話を公的に認めている。

ニュージーランド手話は本当に言語なのですか?

はい。英語ともマオリ語とも異なる、独自の文法体系を持つ完全な視覚言語です。NZ手話は、ジェスチャーや身振りを即興的に並べているのではない。全ての言語と同じように考えや意見の伝達など幅広く機能する。NZ手話は、完全に視覚的であるため、ろう者にはもっとも適した言語である。

ニュージーランドでは、何人くらいの人がNZ手話を使っていますか?

国勢調査の結果から、約28、000人が使用していることが分かる(この数にはろう者と健聴者が含まれる)。ニュージーランドには最低でも210、000人のろうもしくは聴覚障害の人がいると推計される。

手話は世界のどの国でも通じるのですか?

いいえ。手話は世界共通ではない。NZ手話はNZ固有のものであり、世界の他の国では使用されていない。NZ手話はマオリ文化固有の概念の表現が含まれると言う特徴があり、マオリ族のろう者はこの国のろう者コミュニティーの一員であると言う自覚を持っている。

ろう文化(Deaf culture)とはどのようなものですか?

ろう文化の基礎はNZ手話である。ろう文化のろう(Deaf)を大文字の「D」で書いた場合、NZ手話を第一言語として使用もしくは選択する人々、NZのろう文化とろう者集団の一員であると自覚する人々が形成するろう者集団を意味する。他の文化と同様に、ろう文化も独特で豊かな習慣、特徴、芸術、ユーモア、歴史などを有する。ニュージーランドのろう者コミュニティーは力強い、活気溢れる集団であり、デフ・クラブ、定例のスポーツ大会、会議、ワークショップ、その他の集会など様々な機会に集まることが多い。

この法案は、現在ニュージーランドの公用語として使用される英語とマオリ語の位置づけにどのような影響を与えますか?

現在ニュージーランドには英語とマオリ語の二つの公用語がある。このNZ手話法が立法化されても、これらの言語の位置づけは変わらない。マオリ族のろう者の報告によると、NZ手話が公的に認知されると、マオリの伝統的集会や儀式の際にNZ手話の使用が認められることが期待でき、その結果マオリの言語と文化へのアクセスが拡大される。

点字、その他の言語も公用語として認められるようになるのでしょうか?

いいえ。点字は英語を記号化したものであり、独自の言語ではない。NZ手話の場合は、英語やマオリ語とは違う、独自の文法体系と言語的特性を持つ真の言語である。

ニュージーランドでは、他にもいろいろな言語が使用されている。これらの殆どは共通した特徴として、その言語の発生の国又は母国において法的に認められている。NZ手話をその母国において公的に認めることにより、NZ手話も他の言語と同格に位置づけられることになる。

原文 (ニュージーランド政府社会開発省障害問題局ホームページ内)

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更新日:2004年1月16日