国土交通省にきこえない・きこえにくい者の権利保障に関する要望書を提出

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 国土交通省に対し、「きこえない・きこえにくい人の権利保障」を進めるための要望書を提出しました。
 2027年国際園芸博覧会では、きこえない・きこえにくい人が安心して参加できるよう、情報アクセシビリティの環境整備を求めました。
 また、無人施設の利用時や緊急車両の接近を、視覚的に分かる形で知らせるしくみを、当事者の意見を踏まえて整備することを求めました。
 国土交通省からは、より一層の周知に努めるとともに、EXPO協会・鉄道事業者・各省庁と連携しながら、改善に向けて働きかけを続けたいとの回答がありました。

要望書を提出

連本第260173号
2026年7月13日

国土交通大臣
 金子 恭之 様

東京都新宿区原町3-61 桂ビル2階
電話 03-6302-1430/FAX 03-6302-1449
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石 橋 大 吾

きこえない・きこえにくい者の権利保障に関する要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の社会参加の促進にご理解とご支援を賜り、心より感謝申し上げます。
 さて、当連盟は2026年6月7日に富山県で開催された「第74回全国ろうあ者大会」におきまして、きこえない・きこえにくい人のさまざまな施策等に関する大会決議を行いました。
 近年、「手話施策推進法」や「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の成立、「改正障害者差別解消法」による合理的配慮の義務化により、きこえない・きこえにくい人の情報へのアクセスとコミュニケーションが改善されることが期待されます。しかしながら、地域によって対応に差があるなど、未だ解決すべき課題が残っています。
 つきましては、下記の通り要望いたしますので、すべての国民が安心安全に生活できるよう、早期実現に向けた取り組みを進めていただけますようお願い申し上げます。

1.2027年国際園芸博覧会の情報アクセシビリティについて、国際園芸博覧会協会に働きかけてください。

(1)情報アクセシビリティ環境の整備について

<説明>
 2022年5月に制定された「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」では、障害の有無にかかわらず、必要な情報を十分に取得・利用し、円滑に意思疎通を図ることが、社会参加に不可欠な権利であると明記されています。
 また、2025年6月制定の「手話に関する施策の推進に関する法律(手話施策推進法)」では、国および地方公共団体に対し、手話言語が利用しやすい環境を整備する義務が定められます。
 しかしながら、2025年に大阪で開催された大阪・関西万博では、きこえない・きこえにくい人に必要な視覚的情報保障の面で課題が指摘されました。2027年3月から横浜市で開催される国際園芸博覧会は、国内外から約1,500万人の来場が見込まれる国際的な催事です。きこえない・きこえにくい人や、多様な言語背景を持つ来場者が安心して参加し楽しめるよう、きこえない・きこえにくい当事者団体の参画のもとで、情報アクセシビリティ環境を整備することが必要です。
 また、国際園芸博覧会が、誰もが安心して参加できるインクルーシブな国際催事となるよう、情報アクセシビリティの観点を含めた環境整備を推進することが重要です。

(2)スタッフおよびボランティアへの情報アクセシビリティ研修の実施について

<説明>
 国際園芸博覧会には、きこえない・きこえにくい人も、多様な背景を持つ人々も参加することが見込まれます。来場者が安心して会場を利用するためには、スタッフやボランティアが、手話言語・筆談・指差し・視覚的案内など、基本的なコミュニケーション手法を理解していることが不可欠です。障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法および手話施策推進法の理念に基づき、適切な研修を実施することで、来場者対応の質が向上し、誰もが参加しやすい環境整備につながります。
 当事者からは、以下のような声が寄せられています。

・会場で質問したいことがあっても、口元が見えず、声だけの案内では理解できず困った経験が多い。

・スタッフが手話や筆談に慣れていないため、案内を受けるまでに時間がかかり、不安を感じる。

・「どう伝えればいいのか分からない」とスタッフ側が戸惑う様子が見られ、当事者としても話しかけづらい。

・きこえない・きこえにくい人への理解不足により、移動用電動モビリティの利用を断られた。

(3)字幕および手話言語を付与するなど、視覚的情報保障の徹底について

<説明>
 きこえない・きこえにくい人にとって、音声のみの案内や映像では十分な情報取得が困難であり、字幕や手話言語通訳などによる視覚的情報保障が不可欠です。2025年の大阪・関西万博では、視覚的情報提供が十分でなかったことが指摘されており、国際的な催事における情報アクセシビリティの重要性が改めて浮き彫りとなりました。2027年国際園芸博覧会は、国内外から約1,500万人の来場が見込まれる大規模イベントであり、字幕・手話言語・視覚的サインなどを整備することは、すべての来場者が等しく情報にアクセスできる環境づくりに直結します。
 当事者から以下のような声が寄せられています。

・イベント映像に字幕がなく、内容が分からず取り残された気持ちになった。

・音声アナウンスだけで案内されても、何を言っているのか分からず不安になる。

・手話や字幕があるだけで「自分も参加者として歓迎されている」と感じられる。

(4)情報アクセシビリティに配慮した災害対応マニュアルを構築について

<説明>
 災害発生時には、迅速かつ正確な情報伝達が生命に直結します。しかし、音声アナウンスのみでは、きこえないきこえにくい人方は避難情報を取得できず、重大な危険にさらされる可能性があります。そのため、緊急時における字幕表示、視覚的サイン、デジタル掲示、手話言語による緊急情報提供などを含む「情報アクセシビリティに配慮した災害対応マニュアル」を整備することが不可欠です。
 国際的な催事として安全性を確保するためにも、誰一人取り残さない災害対応体制の構築が求められます。
 当事者から以下のような声が寄せられています。

・緊急時のアナウンスが聞こえず、周囲の人の動きだけを頼りに避難した経験がある。

・災害時に「何が起きているのか」「どこへ避難すべきか」が分からず、命の危険を感じた。

・視覚的な避難情報があれば、落ち着いて行動できるのに、現状は不十分で不安が大きい。

2.公共交通機関・無人駅・無人料金所・コインパーキング等における情報保障を改善してください。

<説明>
 昨年度、貴省からはガイドラインの公表や好事例の周知、無人料金所での視覚的案内の工夫、鉄道駅での筆談・ビデオ通話・テキストチャットの導入など、一定の取組が進められている旨のご説明をいただきました。しかし現場では、依然として音声対応のみのインターホンが多く、トラブル時に長時間待たされる事例や、モニター越しの対応では相手の理解状況が確認できず不安を抱えるケースが続いています。無人駅では、切符購入や問い合わせの手段が分からず立ち尽くすといった状況も報告されています。
 これらの課題を踏まえ、文字チャットやビデオ通話・筆談機能の標準化、インターホンの文字化・視覚化の制度的推進、さらに無人駅・無人料金所・コインパーキングにおいてQRコードを活用して遠隔手話通訳につながる仕組み(手話リンク)の整備を検討してください。
 あわせて、2022年に貴省が障害当事者団体(連盟参加)と鉄道事業者との意見交換会を開催し、ガイドラインを策定されていますが、それ以降、貴省の働きかけにより鉄道事業者においてどのような改善が図られたか、ご教示ください。

3.JRの合理的配慮及び無人駅・券売機のアクセシビリティの改善をしてください。

<説明>
 昨年度、貴省からはガイドラインの周知や無人駅の対応状況の検証が進められているとの回答をいただきました。しかし現場では、手話言語での対応がほとんど導入されておらず、モニター越しの対応ではスムーズな意思疎通が十分に図れない状況が続いています。
 障害者手帳提示時のプライバシー保護も不十分であり、障害者用ICカードの全国相互利用も進んでいません。無人駅での切符購入が困難であるとの声も多く寄せられています。
 これらを踏まえ、以下の対応をお願い申し上げます。
 ・みどりの窓口や券売機への遠隔手話通訳サービスの常設
 ・無人駅へのQRコードで手話通訳につながる仕組み(手話リンク)の導入
 ・職員への手話言語研修の促進
 ・障害者手帳提示時のプライバシー保護策の実施
 ・障害者用ICカードの全国相互利用に向けた制度調整の加速
 また、100km未満の鉄道移動にも障害者割引が適用されるよう、鉄道事業者への働きかけをお願いします。

4.緊急車両接近を知らせる装置の開発促進と標準装備化を検討してください。

<説明>
 昨年度、技術的には実現可能であるとの回答をいただきましたが、具体的な進展は見られていません。きこえない人は緊急車両の接近に気がつきにくく、特に後方からの接近は重大な事故につながる危険があります。
 メーカーや業界団体への具体的な要請、開発促進のための予算措置、将来的な標準装備化に向けた制度の検討を開始してください。

5.災害時の情報伝達体制を強化してください。

<説明>
 サービスエリアや道の駅における文字情報・手話言語情報の提供が依然として不十分であり、緊急時に情報が得られないとの声が多く寄せられています。「アイ・ドラゴン」等の情報提供機器の導入を具体化し、災害時の情報伝達体制を強化してください。

6.手話施策推進法に基づく施策を具体化してください。

<説明>
 昨年度、貴省も「国」として必要な対策を進めるとの回答をいただきました。交通機関や災害時における手話言語の情報提供体制の整備、手話言語を活用した接遇研修の導入など、具体的な施策の策定を進めてください。

7.「見えるアナウンス」の改善と全国展開を働きかけてください。

<説明>
 東京2025デフリンピック大会を契機に導入された「見えるアナウンス」は高く評価されていますが、駅間移動時に継続利用できない、トリガーボードが改札外にしかない、全国展開が進んでいない、鉄道以外の施設にも必要である等の課題が明らかになっています。
 これらの改善を進め、全国の駅や商業施設等への導入拡大を働きかけてください。

【各省共通項目】

8.障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法及び改正障害者差別解消法の施行を踏まえ、手話言語通訳を含む情報アクセシビリティに必要な経費について、貴省関係部局に対し、明確な予算措置を講じるよう周知してください。

<説明>
 上記2法により、国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得・利用及び意思疎通に係る施策を総合的に策定・実施する責務を負っています。また、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務付けられ、共生社会の実現に向けた取り組みが強化されています。
 これは、すべての公的機関が自らの責任において情報アクセシビリティ環境を整備し、合理的配慮を提供する義務があることを意味します。しかし現状では、国や自治体の出先機関を含む行政機関の中に、

・手話言語通訳等に係る予算措置がないことを理由に「過重な負担」として情報保障を拒否する

・手話言語通訳等を用意できないとして、障害当事者に通訳者の手配を求める

といった事例が後を絶ちません。
 きこえない・きこえにくい国民が行政サービスを等しく受けられるよう、貴省関係部局が必要に応じて独自に予算化し、合理的配慮を提供できる仕組みを整備するよう周知してください。

9.情報アクセシビリティ実現のため、手話言語通訳者等の派遣が増加していますが、派遣される情報保障者の質が担保されるよう、必要な条件整備を行ってください。

<説明>
 法整備が進む一方、手話言語通訳者等の社会的資源は依然として不足しており、十分な人数の確保が難しい状況にあります。行政機関では、相見積もりや競争入札により派遣事業者を決定する例が多いものの、手話言語通訳者の技術・知識・経験等、質の面が十分に考慮されていないため、きこえない・きこえにくい人への情報提供が不十分となる事例が生じています。このままでは、法がめざす「情報アクセシビリティの全面保障」は実現しません。
 そのため、派遣費用だけでなく、通訳者の質の確保は不可欠です。きこえない・きこえにくい人との意見交換を踏まえ、適切な派遣事業者を選定する仕組みが望ましいと考えます。条件の整備については、まず当連盟との協議を要望します。

10.2025年6月25日に施行された「手話施策推進法」に基づき、貴省における手話施策の具体的実施に向け、必要な財政上・法制上の措置を速やかに講じてください。

<説明>
 上記法は、第2条において「手話を必要とする者および手話を使用する者の意思が尊重され、手話の習得および使用に関する必要かつ合理的な配慮が適切に行われるための環境整備」を基本理念として掲げています。
 また、第3条では、国及び地方公共団体が手話に関する施策を総合的に策定・実施する責務を有することを明記しています。
 貴省においても、国民の暮らしに直結する行政サービス・広報活動を行うにあたり、手話言語を活用した情報提供、相談体制の整備、職員研修、オンライン手続きのアクセシビリティ向上等、同法に基づく施策の具体化をしてください。

11.改正障害者差別解消法に基づいた対応要領・対応指針に以下を加えるよう、検討してください。

(1)事業者や省庁出先機関等から出される情報に、きこえない・きこえにくい人が容易にアクセスできるよう、情報アクセシビリティ保障の明記とその徹底を求めます。

<説明>
 現在、利用者や消費者が問い合わせをする「相談窓口」や「販売申込先」、省庁出先機関等の受付窓口は、電話番号のみの対応が依然として多く存在しています。2021年7月より公共インフラとして「電話リレーサービス」が利用できるようになり、その後、「ヨメテル」のサービスも開始されましたが、それだけではすべてのきこえない・きこえにくい人の対応としては不十分です。そのため、メール・FAX等の複数の手段によるアクセシビリティ保障について、見直しが進められている対応要領・対応指針に明確に記載し、その通りに運用してください。また、問い合わせ手段として、「手話リンク」の利用も検討するよう明記してください。
 また、各省庁及び関係機関からの情報発信の際には、きこえない・きこえにくい人の情報アクセシビリティの保障のために手話言語、文字による情報発信も行うことを徹底してください。

(2)公共施設・商業施設等における音声情報の文字化について、具体的に記述してください。

<説明>
 平時から音声情報を文字情報にて掲示することで、緊急時には有用な情報源となります。公共施設や商業施設等における音声によるアナウンス情報について、見直しが進められている対応要領・対応指針に「文字表示または手話言語表示」をすることを記載したうえで、その通りに運用してください。

12.公共インフラである日本財団電話リレーサービスによる「電話リレーサービス」や「ヨメテル」、「手話リンク」の利用について、貴省でもご周知ください。

<説明>
 電話リレーサービスが本格的に開始されてから5年余りが経ちますが、未だに迷惑電話と間違えられて通話を拒否される、電話に出てもらえないなどの例が続いています。電話リレーサービスは、きこえない・きこえにくい人が使うだけでなく、きこえる人が電話を受け、きこえない・きこえにくい人に電話をかけることもできます。公共インフラとしての機能が果たせるよう、貴省でも管轄の事業者へ周知してください。

以 上

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