総務省にきこえない・きこえにくい者の権利保障に関する要望書を提出

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 総務省に対し、「きこえない・きこえにくい人の権利保障」を進めるための要望書を提出しました。
 国政選挙の政見放送に手話言語通訳や字幕の付与を義務化すること、また通訳者を「選挙運動に従事する者」に含めないことを要望しましたが、選挙運動のあり方に関わる問題であることから、各党各会派において議論いただくべきものという考えを示されました。
 電話リレーサービスの電話番号二重所持解消と諮問委員会の委員に当事者や聴覚障害に関する知識を持つ有識者が設置を強く求めました。

要望書を提出

連本第260171号
2026年7月13日

総務大臣
 林 芳正 様

東京都新宿区原町3-61 桂ビル2階
電話 03-6302-1430/FAX 03-6302-1449
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石 橋 大 吾

きこえない・きこえにくい者の権利保障に関する要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の社会参加の促進にご理解とご支援を賜り、心より感謝申し上げます。
 さて、当連盟は2026年6月7日に富山県で開催された「第74回全国ろうあ者大会」におきまして、きこえない・きこえにくい人のさまざまな施策等に関する大会決議を行いました。
 近年、「手話施策推進法」や「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の成立、「改正障害者差別解消法」による合理的配慮の義務化により、きこえない・きこえにくい人の情報へのアクセスとコミュニケーションが改善されることが期待されます。しかしながら、地域によって対応に差があるなど、未だ解決すべき課題が残っています。
 つきましては、下記の通り要望いたしますので、すべての国民が安心安全に生活できるよう、早期実現に向けた取り組みを進めていただけますようお願い申し上げます。

1.きこえない・きこえにくい人等の参政権の保障について、下記の通り要望します。

(1)政見放送への手話言語通訳、字幕の挿入を義務づけてください。

<説明>
 現在、国政選挙・都道府県知事選挙のすべての政見放送に手話言語通訳・字幕の付与が実現されておらず、義務付けも行われていません。経歴放送には字幕もなく、音声放送のみでは候補者の経歴を知ることができません。2026年2月に行われた衆議院議員選挙では、準備期間も短いために手話言語通訳がつけられないと思った候補者もいたと聞いています。
 「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の観点からも、きこえない・きこえにくい人等がきこえる人と同等に選挙に関する情報を得て、選挙権を行使できるよう、政見放送への手話言語通訳や字幕の付与が義務となるように改正をするとともに、立候補者に対してもその重要性を説明し、必要な情報保障が行われるよう働きかけてください。

(2)政見放送や候補者の演説等に携わる手話言語通訳者の制限を撤廃してください。

<説明>
 現在、「選挙運動に従事する者」の中の「専ら手話通訳のために使用する者」として報酬を支払うことができることになっています。
 しかし、手話言語通訳者は自らの意見を述べ、候補者の応援をする「選挙運動に従事する者」ではなく、公正中立な立場で情報保障を担う者です。
 また、これまで「選挙運動に従事する者」であることを理由に、公務員である手話通訳士は選挙に関する手話言語通訳を行うことができませんでした。
 以上のことを解決するために、手話言語通訳者を「選挙運動に従事する者」に含めず、独立した「専ら手話通訳のために使用する者」と定めて、報酬が支払えるようにしてください。

 

(3)候補者が行う街頭演説に手話言語通訳や要約筆記等をつけることについて、制限を撤廃してください。

<説明>
 文字による情報保障として、字幕や要約筆記等をスクリーン等に投影する方法は認められていますが、屋外では投影することが禁止されています。情報アクセシビリティの観点から必要な法改正をしてください。

(4)2017~2025年度、貴省予算で実施しています「政見放送手話通訳士研修会」(地方研修会)を2026年度以降も継続して行えますよう、引き続き予算化をいただくとともに、選挙関連の手話の確定費用も予算化をしてください。

<説明>
 政見放送の手話言語通訳を担う者は、「政見放送及び経歴放送実施規定」により手話通訳士となっています。すべての政見放送において手話言語通訳挿入が実現した後も、政見放送を担える手話通訳士を継続して増やす必要があります。さらに政見放送では、社会情勢や時事問題等、専門的かつ新しい用語が使われ、手話通訳士も継続して通訳技術を磨く必要があることから、研修の履修更新制を設けており、今後も新規手話通訳士合格者や関係法令等の改正の理解及び政見放送内容に関わる新しい手話の習得のために「政見放送従事者研修会」が必須となります。2026年度以降も地方研修会を継続して行えるよう、予算化してください。
 また、新しい手話の確定は、厚労省の委託を受け標準手話の普及確定を行っている(社福)全国手話研修センターに依頼しています。しかし、選挙関連の新しい手話の用語確定は厚労省の委託対象外となっています。選挙のために必要な手話の策定であるため、その費用も予算化してください。

2.首相官邸の記者会見等における手話言語通訳について、テレビ放送でも手話言語通訳者が映るよう放送事業者に通知してください。

<説明>
 2011年3月11日の東日本大震災の発生後、首相官邸で行われる記者会見には手話言語通訳が付くようになりました。また、今般、重要な記者会見においては、多くのテレビ局がライブ放送で画面に手話言語通訳者の映像を組み入れて放送しており、従来に比べ、リアルタイムに情報を得ることができるようになりました。
 放送事業者が、その手話言語通訳の映像をテレビ放送に乗せることで、きこえない・きこえにくいテレビ視聴者が、きこえるテレビ視聴者と同じタイミングで発言内容を知ることができるようになります。それこそが「アクセシビリティが保障された環境の整備の促進」です。
 内閣府では、会見の際に話者の隣に手話言語通訳を配置されていますが、手話言語通訳を映すかどうか、また映す場合の大きさや、ニュース等での紹介時に通訳が映るかどうかは各放送局の判断と対応に任されています。改正障害者差別解消法では民間事業者も合理的配慮の提供が義務化されたことを踏まえ、きこえる人ときこえない・きこえにくい人の情報格差が生まれないよう、各放送局の対応を注視するとともに、どの放送局でもユニバーサルな放送が行われるように通知をしてください。

3.公共インフラとしての電話リレーサービスの改善について

(1)電話リレーサービスが公共インフラとして適切な利用ができるよう、引き続き貴省での周知および他省庁でも周知してもらえるよう、はたらきかけをしてください。

<説明>
 電話リレーサービスはきこえない・きこえにくい人が利用するだけでなく、きこえる人も使うことのできるサービスです。しかし、その認知度の低さから、未だに迷惑電話と間違えられたり、受話を拒否されたりするケースが続いています。また、本人確認を拒否されることもあり、きこえる人と同等に電話が使用できている状況ではありません。公共インフラとしての機能が果たせるよう周知をしてください。また 「ヨメテル」、「手話リンク」の利用についての周知もしてください。

(2)電話番号の二重所持の解消をしてください。

<説明>
 きこえない・きこえにくい人は電話リレーサービスを利用するにあたり、電話リレーサービスの電話番号と自ら契約している携帯電話の電話番号を所持しています。自ら契約している携帯電話の電話番号が使用できないことから、費用についても、電話リレーサービスの使用料と携帯電話の使用料を二重で支払っています。費用負担や利便性からも電話番号の1本化を強く求めます。

(3)電話リレーサービス諮問委員会の委員に当事者や聴覚障害に関する知識を持つ有識者が設置されるようにしてください。

<説明>
 電話リレーサービス委員会の委員は、電話提供事業者及び聴覚障害者等の福祉に関して高い識見を有する者その他学識経験のある者のうちから、総務大臣の認可を受けて、会長が任命するとされていますが、その選定方法についてご教示いただくとともに、聴覚障害に知見のある方が任用されるようにしてください。

(4)これらの問題が解決できるよう、電話リレーサービスの検討会を引き続き実施してください。

<説明>
 2025年度に「電話リレーサービスの在り方に関する検討会」が実施され、多くの課題が提起されました。その多くは事業者である日本財団電話リレーサービスが改善をしていくことと承知しておりますが、有識者と当事者間での認識等の違いも見られたことから、双方での理解を深めて、認識を共有することが重要であると考えます。
 そのため、引き続き継続的な検討会の開催と、開催に必要な予算の確保をお願いします。
 また、検討会を実施するにあたっての委員選定においても、聴覚障害等の福祉に関して識見のある学識経験者を採用することを検討してください。

【各省共通項目】

4.障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法及び改正障害者差別解消法の施行を踏まえ、手話言語通訳を含む情報アクセシビリティに必要な経費について、貴省関係部局に対し、明確な予算措置を講じるよう周知してください。

<説明>
 上記2法により、国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得・利用及び意思疎通に係る施策を総合的に策定・実施する責務を負っています。また、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務付けられ、共生社会の実現に向けた取り組みが強化されています。
 これは、すべての公的機関が自らの責任において情報アクセシビリティ環境を整備し、合理的配慮を提供する義務があることを意味します。しかし現状では、国や自治体の出先機関を含む行政機関の中に、
 ・手話言語通訳等に係る予算措置がないことを理由に「過重な負担」として情報保障を拒否する
 ・手話言語通訳等を用意できないとして、障害当事者に通訳者の手配を求める
といった事例が後を絶ちません。
 きこえない・きこえにくい国民が行政サービスを等しく受けられるよう、貴省関係部局が必要に応じて独自に予算化し、合理的配慮を提供できる仕組みを整備するよう周知してください。

5.情報アクセシビリティ実現のため、手話言語通訳者等の派遣が増加していますが、派遣される情報保障者の質が担保されるよう、必要な条件整備を行ってください。

<説明>
 法整備が進む一方、手話言語通訳者等の社会的資源は依然として不足しており、十分な人数の確保が難しい状況にあります。行政機関では、相見積もりや競争入札により派遣事業者を決定する例が多いものの、手話言語通訳者の技術・知識・経験等、質の面が十分に考慮されていないため、きこえない・きこえにくい人への情報提供が不十分となる事例が生じています。このままでは、法がめざす「情報アクセシビリティの全面保障」は実現しません。
 そのため、派遣費用だけでなく、通訳者の質の確保は不可欠です。きこえない・きこえにくい人との意見交換を踏まえ、適切な派遣事業者を選定する仕組みが望ましいと考えます。条件の整備については、まず当連盟との協議を要望します。

6.2025年6月25日に施行された「手話施策推進法」に基づき、貴省における手話施策の具体的実施に向け、必要な財政上・法制上の措置を速やかに講じてください。

<説明>
 上記法は、第2条において「手話を必要とする者および手話を使用する者の意思が尊重され、手話の習得および使用に関する必要かつ合理的な配慮が適切に行われるための環境整備」を基本理念として掲げています。
 また、第3条では、国及び地方公共団体が手話に関する施策を総合的に策定・実施する責務を有することを明記しています。
 貴省においても、国民の暮らしに直結する行政サービス・広報活動を行うにあたり、手話言語を活用した情報提供、相談体制の整備、職員研修、オンライン手続きのアクセシビリティ向上等、同法に基づく施策の具体化をしてください。

7.改正障害者差別解消法に基づいた対応要領・対応指針に以下を加えるよう、検討してください。

(1)事業者や省庁出先機関等から出される情報に、きこえない・きこえにくい人が容易にアクセスできるよう、情報アクセシビリティ保障の明記とその徹底を求めます。

<説明>
 現在、利用者や消費者が問い合わせをする「相談窓口」や「販売申込先」、省庁出先機関等の受付窓口は、電話番号のみの対応が依然として多く存在しています。2021年7月より公共インフラとして「電話リレーサービス」が利用できるようになり、その後、「ヨメテル」のサービスも開始されましたが、それだけではすべてのきこえない・きこえにくい人の対応としては不十分です。そのため、メール・FAX等の複数の手段によるアクセシビリティ保障について、見直しが進められている対応要領・対応指針に明確に記載し、その通りに運用してください。また、問い合わせ手段として、「手話リンク」の利用も検討するよう明記してください。
 また、各省庁及び関係機関からの情報発信の際には、きこえない・きこえにくい人の情報アクセシビリティの保障のために手話言語、文字による情報発信も行うことを徹底してください。

(2)公共施設・商業施設等における音声情報の文字化について、具体的に記述してください。

<説明>
 平時から音声情報を文字情報にて掲示することで、緊急時には有用な情報源となります。公共施設や商業施設等における音声によるアナウンス情報について、見直しが進められている対応要領・対応指針に「文字表示または手話言語表示」をすることを記載したうえで、その通りに運用してください。

以 上

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