スポーツ庁にきこえない・きこえにくい者の権利保障に関する要望書を提出

前のページへ戻る

 スポーツ庁に「きこえない・きこえにくい者の権利保障」への要望書を提出しました。
 スポーツ庁からは、第4期スポーツ基本計画には組織基盤強化を明記しており、連盟が設立した「デフスポーツ推進室」に参画し連携していきたい、デフスポーツやデフリンピックの啓発については令和8年度同様に次年度も予算を確保するとの回答がありました。デフアスリートの園遊会への推薦や講習会等での情報保障制度の構築や助成に対し、誠意ある検討をお願いしました。

要望書を提出

連本第260175号
2026年7月13日

スポーツ庁長官
河合 純一 様

東京都新宿区原町3-61 桂ビル2階
電話 03-6302-1430/FAX 03-6302-1449
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石 橋 大 吾

きこえない・きこえにくい者の権利保障に関する要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の社会参加の促進にご理解とご支援を賜り、心より感謝申し上げます。
 さて、当連盟は2026年6月7日に富山県で開催された「第74回全国ろうあ者大会」におきまして、きこえない・きこえにくい人のさまざまな施策等に関する大会決議を行いました。
 近年、「手話施策推進法」や「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の成立、「改正障害者差別解消法」による合理的配慮の義務化により、きこえない・きこえにくい人の情報へのアクセスとコミュニケーションが改善されることが期待されます。しかしながら、地域によって対応に差があるなど、未だ解決すべき課題が残っています。
 つきましては、下記の通り要望いたしますので、すべての国民が安心安全に生活できるよう、早期実現に向けた取り組みを進めていただけますようお願い申し上げます。

1.第4期スポーツ基本計画にデフスポーツ統括団体の組織基盤強化を図ることを明記し、当連盟内に設置された「デフスポーツ推進室」との緊密な連携及び必要な支援を講じてください。

<説明>
 デフスポーツにおける国際競技力の持続的な向上を確かなものにするためには、我が国における強固なデフスポーツ振興体制及び統括的な推進体制の確立が不可欠です。
 そのため、第4期スポーツ基本計画の策定における基本方針の1つである「ハイパフォーマンスの追求とアスリート等を取り巻く環境整備を通じた社会への還元」に係る施策として、デフスポーツ統括団体の組織基盤強化を盛り込む必要があります。
 また、2025年11月に開催された東京2025デフリンピックは、多くの方にデフスポーツを知っていただく貴重な機会となりました。その一方で、デフスポーツに係る組織体制のさらなる整備が、現在大きな課題となっています。
 そこで当連盟は、2026年6月の評議員会での承認を経て、2026年7月より新たに「デフスポーツ推進室」を設立しました。当推進室は、デフアスリートの競技環境向上やデフ競技団体の組織基盤強化、その他のデフスポーツの振興に関する調査検討を行い、強固なデフスポーツ推進体制を確立することを目的としています。
 実効性のある推進体制を構築するため、当連盟が設置した「デフスポーツ推進室」との連携を深め、同組織の活動に対する継続的な支援を要望します。

2.国際大会で顕著な成績を収めたデフアスリート及びデフスポーツの振興に寄与した関係者を、園遊会の招待候補者として推薦してください。

<説明>
 東京2025デフリンピックにおける、日本選手団の過去最多となる51個のメダル獲得並びに33万人の観客数に象徴されるように、近年、デフリンピックをはじめとする国際競技大会において、わが国のデフアスリートは目覚ましい活躍を遂げています。
 デフスポーツは、パラリンピックとは異なる独自の歴史と文化を持っていますが、依然として社会的な認知度は十分とは言えません。そのような中、デフアスリートが世界の舞台に挑む姿は、きこえない・きこえにくい子どもや国民に大きな夢と感動を与えました。こうした功績を公に評価いただくことは、選手本人の励みとなるだけでなく、全国のきこえない・きこえにくい人や子どもたちに大きな希望をもたらし、デフスポーツやデフリンピックの認知度向上にもつながります。
 園遊会という栄誉ある場への招待は、デフスポーツへの理解を深める契機となります。また、2026年3月に公表された「第4期スポーツ基本計画の策定の基本的な考え方について」が掲げる重点施策「国民のスポーツ実施促進と、健康長寿や経済成長等実現への貢献」につながるものと確信しています。
 つきましては、今後、園遊会において、2025年11月の「東京2025デフリンピック」を含めた国際大会で顕著な成績を収めたデフアスリートおよびデフスポーツの振興に寄与した関係者を、招待候補者として推薦していただくよう、要望します。

3.デフスポーツ及びデフリンピックに対する無関心層の新規取り込み、さらなる関心の向上、並びにデフスポーツ実施率及び観戦者数の向上を図るため、デフリンピック・レガシー継承・発展事業の予算を大幅に拡充してください。

<説明>
 東京2025デフリンピックの気運醸成に向け、令和6年度補正予算事業「障害者スポーツ振興事業 パラスポーツイベント開催支援事業」を活用し、全国47都道府県87か所でのイベント開催や延べ50校への学校講師派遣事業を展開しました。
 その成果は、大会観客数33万人、競技中継の視聴回数がのべ320万回になったという実績に加え、スポーツ庁の「令和7年度スポーツの実施状況等に関する世論調査」においてデフリンピックの認知度が42.9%を達成したことに明確に表れています。
 しかし、大会終了後は関心の低下が懸念されるため、大会を通じて得られた熱量や関心を維持しつつ、無関心層を継続的に取り込んでいくための取り組みが不可欠です。
 2026年度に当連盟が受託する「令和8年度パラスポーツ振興事業 デフリンピック等のレガシー継承・発展事業」を、さらに加速・発展させるため、2027年度予算の増額を要望します。

4.デフアスリートのセカンドキャリア形成に資する指導者資格の取得及びデフスポーツ競技団体のガバナンス・コンプライアンス強化を推進するため、講習会や会議等のあらゆる場面における情報保障制度(手話言語通訳・要約筆記等)の構築と費用助成を行ってください。

<説明>
 デフスポーツの持続的な発展には、きこえない・きこえにくい当事者の視点を持つ指導者の育成と透明性の高い組織運営の両立が不可欠です。しかし、現状ではその双方において多額の情報保障費用が障壁となっています。
 デフアスリートが現役引退後に公認スポーツ指導者等の資格取得をめざす際、講習会での手話言語通訳費用を受講者個人が自費負担しなければならない事例が散見されます。この経済的負担は、デフアスリートのセカンドキャリア形成や、次世代のロールモデルとなるきこえない・きこえにくい指導者の育成を妨げる大きな要因となっています。
 また、デフスポーツ競技団体の運営においても、例えば、ガバナンスの強化のため、弁護士や公認会計士等の外部専門家との専門的な協議を行うにあたっても、多くの団体は慢性的な予算不足から手話言語通訳者の確保に苦慮しています。ここにおいても経済的な負担が適正な組織運営を維持する上でのリスクとなっています。
 デフアスリートが指導者への道を志し、かつデフスポーツ競技団体が外部専門家と協働して健全な組織運営を実現できるよう、デフアスリートやデフスポーツ競技団体が活用できる情報保障制度(手話言語通訳・要約筆記等)の構築と公的な費用助成を要望します。

5.公式な「国歌の手話言語版」の策定に向けて検討を開始するとともに、策定までの当面の措置として、当連盟が制作した「国歌の手話言語 試行版」の普及を強力に推進してください。

<説明>
 2026年6月に成立した「手話に関する施策の推進に関する法律(手話施策推進法)」により、手話言語が独自の体系を持つ言語であることが法的に明文化されました。
 また、東京2025デフリンピックの開会式での手話言語による国歌斉唱や、表彰式において各国メダリストが自国国歌を手話言語で斉唱する姿は、国民に大きな感動を与え、国歌の手話言語表現に対する理解と関心を飛躍的に高める契機となりました。
 これを歴史的な機会と捉え、きこえない・きこえにくい人々や子どもたちを含む全ての国民が等しく式典に参画する権利を保障するため、公式な「国歌の手話言語版」の策定を強く要望します。
 なお、公式版策定までの当面の措置として、当連盟がスポーツ庁受託事業「スポーツに精通した手話通訳者の育成助成事業」にて制作した「国歌の手話言語試行版」の積極的な普及、活用を求めます。
 国民スポーツ大会や全国障害者スポーツ大会等の式典、および学校教育の現場において本試行版を活用することで、子どもたちのきこえに関わらず、手話言語を言語として学び、多様性を尊重する心を育む機会を創出してください。

【各省庁共通項目】

6.障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法及び改正障害者差別解消法の施行を踏まえ、手話言語通訳を含む情報アクセシビリティに必要な経費について、貴庁関係部局に対し、明確な予算措置を講じるよう周知してください。

<説明>
 上記2法により、国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得・利用及び意思疎通に係る施策を総合的に策定・実施する責務を負っています。また、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務付けられ、共生社会の実現に向けた取り組みが強化されています。
 これは、すべての公的機関が自らの責任において情報アクセシビリティ環境を整備し、合理的配慮を提供する義務があることを意味します。しかし現状では、国や自治体の出先機関を含む行政機関の中に、
 ・手話言語通訳等に係る予算措置がないことを理由に「過重な負担」として情報保障を拒否する
 ・手話言語通訳等を用意できないとして、障害当事者に通訳者の手配を求める
といった事例が後を絶ちません。
 きこえない・きこえにくい国民が行政サービスを等しく受けられるよう、貴庁関係部局が必要に応じて独自に予算化し、合理的配慮を提供できる仕組みを整備するよう周知してください。

7.情報アクセシビリティ実現のため、手話言語通訳者等の派遣が増加していますが、派遣される情報保障者の質が担保されるよう、必要な条件整備を行ってください。

<説明>
 法整備が進む一方、手話言語通訳者等の社会的資源は依然として不足しており、十分な人数の確保が難しい状況にあります。行政機関では、相見積もりや競争入札により派遣事業者を決定する例が多いものの、手話言語通訳者の技術・知識・経験等、質の面が十分に考慮されていないため、きこえない・きこえにくい人への情報提供が不十分となる事例が生じています。このままでは、法がめざす「情報アクセシビリティの全面保障」は実現しません。
 そのため、派遣費用だけでなく、通訳者の質の確保は不可欠です。きこえない・きこえにくい人との意見交換を踏まえ、適切な派遣事業者を選定する仕組みが望ましいと考えます。条件の整備については、まず当連盟との協議を要望します。

8.2025年6月25日に施行された「手話施策推進法」に基づき、貴省における手話施策の具体的実施に向け、必要な財政上・法制上の措置を速やかに講じてください。

<説明>
 上記法は、第2条において「手話を必要とする者および手話を使用する者の意思が尊重され、手話の習得および使用に関する必要かつ合理的な配慮が適切に行われるための環境整備」を基本理念として掲げています。
 また、第3条では、国及び地方公共団体が手話に関する施策を総合的に策定・実施する責務を有することを明記しています。
 貴庁においても、国民の暮らしに直結する行政サービス・広報活動を行うにあたり、手話言語を活用した情報提供、相談体制の整備、職員研修、オンライン手続きのアクセシビリティ向上等、同法に基づく施策の具体化をしてください。

9.改正障害者差別解消法に基づいた対応要領・対応指針に以下を加えるよう、検討してください。

(1)事業者や省庁出先機関等から出される情報に、きこえない・きこえにくい人が容易にアクセスできるよう、情報アクセシビリティ保障の明記とその徹底を求めます。

<説明>
 現在、利用者や消費者が問い合わせをする「相談窓口」や「販売申込先」、省庁出先機関等の受付窓口は、電話番号のみの対応が依然として多く存在しています。2021年7月より公共インフラとして「電話リレーサービス」が利用できるようになり、その後、「ヨメテル」のサービスも開始されましたが、それだけではすべてのきこえない・きこえにくい人の対応としては不十分です。そのため、メール・FAX等の複数の手段によるアクセシビリティ保障について、見直しが進められている対応要領・対応指針に明確に記載し、その通りに運用してください。また、問い合わせ手段として、「手話リンク」の利用も検討するよう明記してください。
 また、各省庁及び関係機関からの情報発信の際には、きこえない・きこえにくい人の情報アクセシビリティの保障のために手話言語、文字による情報発信も行うことを徹底してください。

(2)公共施設・商業施設等における音声情報の文字化について、具体的に記述してください。

<説明>
 平時から音声情報を文字情報にて掲示することで、緊急時には有用な情報源となります。公共施設や商業施設等における音声によるアナウンス情報について、見直しが進められている対応要領・対応指針に「文字表示または手話言語表示」をすることを記載したうえで、その通りに運用してください。

10.公共インフラである日本財団電話リレーサービスによる「電話リレーサービス」や「ヨメテル」、「手話リンク」の利用について、貴省でもご周知ください。

<説明>
 電話リレーサービスが本格的に開始されてから5年余りが経ちますが、未だに迷惑電話と間違えられて通話を拒否される、電話に出てもらえないなどの例が続いています。電話リレーサービスは、きこえない・きこえにくい人が使うだけでなく、きこえる人が電話を受け、きこえない・きこえにくい人に電話をかけることもできます。公共インフラとしての機能が果たせるよう、貴庁でも管轄の事業者へ周知してください。

以 上

前のページへ戻る