国土交通省に「きこえない・きこえにくい者の福祉施策」への要望書を提出

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 公共交通機関等における無人の施設でも、きこえない人も安心して利用できる仕組みや音声情報を視覚的に把握できるための対応等について要望しました。
 改正障害者差別解消法に基づいて指針改正、好事例などの周知などをして、さらなる工夫や検討をしていきたいとの回答がありました。

要望書を提出

連本第240284号
2024年7月16日

国土交通大臣
 斉藤 鉄夫 様

東京都新宿区原町3-61 桂ビル2階
電話03-6302-1430・Fax 03-6302-1449
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石橋 大吾

きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の社会参加促進にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、本年6月9日和歌山県において開催された第72回全国ろうあ者大会にて、きこえない・きこえにくい者の様々な施策等に関する大会決議を行ないました。
 「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の成立や、「改正障害者差別解消法」で合理的配慮の提供が義務となり、情報の取得やアクセスが容易になっていくことが期待されているところです。しかしながら、その対応については地域差がある等、まだまだ改善すべき課題は残っております。
 つきましては、下記の通り要望いたしますので、すべての国民が安心、安全に生活ができるよう、早期実現をお願い申し上げます。

1.公共交通機関(駅・バス・高速道路等)やコインパーキングや無人駅や無人料金所におけるインターホンによる音声のやり取りについて、きこえない者も安心して利用できる仕組みに改善するようと要望を出しましたが、未だ改善が見られていません。これから無人化が増えつつあるなか、電話ができない聞こえない方が取り残されてしまいます。早急に改善されてください。また好事例があればひろく周知してください。
<説明>
 利用者が少ない公共交通機関(駅・バス・高速道路等)やコインパーキング等において、自動券売機また精算機等が増加しつつありますが、これらの機械にトラブルが生じたとき、きこえない者はインターホンによる音声やり取りができません。
 また、無人駅の自動券売機で障害者割引適用の切符を買う際、インターホンによる音声やり取りで、カメラに障害者手帳をかざす方法になっているため、きこえない者は音声での対応ができません。
 インターホンに代わる方法として、タッチパネルによる文字送信等を導入するなど、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備について、引き続き関係会社に働きかけてください。
 画面を通じて筆談が可能なモニター付き券売機の導入やETCや料金精算機のトラブル発生時のモニターでの筆談対応、係員が駆けつけて対応する体制としているのはいいですが、購入までの時間がかかる、コールセンターにつながるまでの順番待ちなど時間ロスが生じる、また高齢者には不便等声がたくさん寄せられています。
 駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関するガイド策定の経緯にハード対策・ソフト対策一体の環境整備を行うことが重要と掲載されていることから、ソフト対策でインターホンにテレビ電話機能をつけるとか、オペレーターの顔がよく見えるようにするなどきこえない・きこえにくい人のバリアにならないように改善されてください。

2.「JRの合理的配慮」についてICTの普及や合理化などにより、JRでは、無人駅化、さらにみどりの窓口の縮小による時間制限や不便が生じています。これに関して国交省バリアフリー法関連の会議など毎年要望を出していますが、未だ改善や進展が見られません。
<説明>
①駅無人化が進んでおりますが、きこえない・きこえにくい人たちの切符購入等、不便の軽減が見られません。
②EXでは障害者割引が使えず、わざわざみどりの窓口に行かなければならないため、インターネット「おでかけネット」EXでも使えるようにしてほしい。
③みどりの窓口は時間短縮や駅無人化による切符購入制限があり、みどりの窓口の券売機では意思疎通ができず時間ロスが生じるため、インターホンにテレビ電話機能をつける等、改善してほしい。
④券売機のカメラに対し、身体障害者手帳を掲示するため、個人情報を周囲にみられるため、目隠しやパーテーションを設置する等工夫する配慮してほしい。
というような内容が毎年寄せられています。無人駅増加により、利用者が利用しやすい方法など考えていただいているのですが、改善がみられていませんので、早急に改善されてください。

3.国交省バリアフリー法関連の会議に参加されている交通事業者等をはじめとする各種業界団体と障害者団体の意見交換場を設けてください。
<説明>
 現在、駅の無人化意見交換会等、各種会議において意見交換を行える場を設けて、それぞれ異なる障害者の立場から意見交換を行っています。そのお陰で少しずつ利用しやすくなりつつあります。しかしながら前より使いにくくなって不便になったなど意見がよせられています。テーブル上での意見交換会の場で行うのも重要ですが、現場にて実際に体験(切符購入方法やトラブルが生じた時の連絡手段等)しながら意見交換を行うことが重要です。会議の場で意見を述べても現場でない場合はイメージが難しい場合があります。そのために現場(現物)にて実際に体験しながら意見交換を行う場を設けていただくよう各交通事業者に周知してください。
 昨年度も要望を出していますが、きこえない当事者団体と現場にて体験しながら問題点、改善すべき点などその場にて意見交換を行ったのがごく僅かです。実際に現場(駅や乗り物)にてきこえない当事者団体と体験しながら意見交換を行った実績があれば情報をください。

<<各省庁共通項目>>
4.「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」及び「改正障害者差別解消法」施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算措置を明文化するよう、貴省からも周知ください。
<説明>
 上記2法により、国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に策定、並びに実施することのみならず、民間企業も合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人の社会参加がしやすくなります。
 これらの法律では、当事者が手話通訳を手配する福祉的な側面からのアプローチではなく、あらゆる公的機関で、その機関の責任においてアクセシビリティに関する環境整備や合理的配慮を提供することを求めています。
 にもかかわらず、国や自治体の出先機関を含めた行政機関において、手話通訳等を含めた情報アクセシビリティに関する予算措置がされていないことを理由に、「過重な負担」として手話通訳等の情報保障の配慮を拒否・または手話通訳等を用意できないとして、障害当事者に情報保障を自ら手配させることを要請する例は後を絶ちません。
 きこえない・きこえにくい国民が行政を含む公的機関を利用するにあたり、障害を理由とした差別的な取り扱いのない環境整備は当然のこと、合理的配慮の提供は、民間のモデルとなるべきであると考えます。
 利用者から手話通訳等の希望に対応できるよう各公的機関で手話通訳等の情報保障の予算は、障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の出先機関を含め、地方自治体部局へ周知徹底ください。

5.改正障害者差別解消法に基づく対応要領・対応指針に以下を加えるよう、検討してください。
(1)事業者や省庁出先機関等から出される情報に、きこえない・きこえにくい人が容易にアクセスできるよう、情報アクセシビリティ保障を進めてください。
<説明>
 現在、消費者や利用者が問い合わせをする「相談窓口」「販売申し込み先」、省庁出先機関等の受付窓口は、電話番号のみの対応が多く存在しています。2021年7月からは公共インフラとして電話リレーサービスが利用できるようになりましたが、きこえない・きこえにくい人がアクセスしやすい方法(メール・FAX等)でのアクセシビリティ保障について、見直しが進められている対応要領・対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。

(2)公共施設・商業施設等における音声情報の文字化について、具体的に記述してください。
<説明>
 平時から公共施設・商業施設等における音声情報を文字情報にて掲示することで、緊急時にも有用な情報源となります。公共施設や商業施設等における音声によるアナウンス情報について、「文字または手話言語表示」をすることを、見直しが進められている対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。
例)①観光地や名所等の音声による車内ガイダンスなど(各鉄道会社)
  ②空港での搭乗アナウンス、優先搭乗アナウンスなど
  ③機内での音楽や映画などエンターテイメントなどへの手話・字幕挿入
  ④機内での緊急アナウンス(「アナウンス中」しか表示されない)
  ⑤列車の緊急停止を示す電光掲示板や、緊急を示すランプなどがあると分かりやすい

6.きこえない・きこえにくい人への環境整備や合理的配慮として、手話通訳者等の配置が行われる例が増えていますが、配置する情報保障者の質についても担保できるようにしてください。
<説明>
 きこえない・きこえにくい人へのアクセシビリティ保障として手話通訳等の配置がありますが、手話通訳者等の社会的資源は限られているため、環境整備や合理的配慮を要求するきこえない・きこえにくい人のニーズに応えられるだけの十分な人数が確保されにくい状況があります。
 社会的な流れにより、行政機関による手話通訳派遣依頼の際、競争入札により手話通訳派遣事業者を選定する例が増えていますが、選定条件の中に、派遣する手話通訳者の質について明記されていることはほとんどなく、機械的に応札額が最も低額であった事業者が選定されているのが現状です。
 金額のみで派遣事業者が決定され、派遣された手話通訳者の技術が担保されないことで、環境整備や合理的配慮の提供が不十分だった例が生じています。
 情報アクセシビリティは、単に提供されるだけでは不十分であり、提供される配慮が障害者の希望に沿ったものであり、かつ目的を十分達成できるようなものであるべきです。
 配置する手話通訳を含めた情報保障者の質の保障ついて、十分な配慮を行ってください。

以 上

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