外務省に「国連の国際会議への障害のある人の参加
および情報アクセシビリティの実現について」要望書を提出

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 国際会議における情報保障や省内における障害者差別解消法に基づく対応について話し合い、「外務省としても情報保障は重要と考えており、今回いただいた要望は重く受け止めている。少しずつだが外務省も変わってきているので、引き続き、取り組みを続けていく。」という報告を受けました。

要望書を提出

連本第220178号
2022年7月11日

外務大臣 
 林 芳正 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

国連の国際会議へ障害のある人の参加及び
貴省における情報アクセシビリティの実現について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するきこえない者の当事者団体です。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 今般、「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が制定されました。これを機に、すべての国民が安心・安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

1.国際会議の情報保障のための手話通訳者派遣費用の助成を予算化してください。
<説明>
 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が開催する、2013-2022年アジア太平洋障害者十年に関するワーキングループ会合(以降、WGとする)に、当連盟からも、世界ろう連盟アジア地域事務局副事務局長を派遣してきました。
 現在、国連やESCAP、障害者権利委員会の関連会議において、きこえない人に対する情報保障のために自動文字起こしシステムを使用する等の取組をおこなっていると承知していますが、手話言語を母語とするきこえない人が国際会議に参加し発言するためには、日英の音声言語通訳者に加えて、日本語の音声から日本の手話言語への手話通訳者、また盲ろう者の場合は触手話通訳者による情報保障、他の障害者もそれぞれの介助者が必要であり、本人に加え通訳者及び介助者の渡航・宿泊・謝礼などの経費も必要になります。これらの情報保障者や介助者にかかる費用はESCAP及び開催国政府の全額負担となっていましたが、2016年以降は予算不足を理由に自己負担を強いられており、我々、障害当事者が会議に容易に参加できない状況となっています。障害当事者が会議に参加するためには情報保障が必須です。
 日本政府として、日本が加盟する組織の国際会議における情報保障にかかる経費について、助成等の仕組みと予算化をしてください。

2.貴省が公開している「障害者差別解消法に基づく対応要領及び対応指針」に基づき、貴省管轄の在外公館及び国内の部署においても、障害者がアクセスしやすい環境整備、改善を図ってください。
<説明>
 2020年度にも同様の要望を出したところ、貴省から在外公館へ、入り口のわかりやすい場所に「筆談マーク」を掲示するよう指示を出していただいたと回答をいただきました。
 そこでこの指示を受けて実際に対応した在外公館数及び、他の在外公館等のモデル及びスタンダートとなるような、具体的な実例や実績を公開してください。
 また、入口に「筆談マーク」の掲示があっても、インターホンのみの場合は、きこえない人は音声でやり取りすることが困難です。きこえない人にとって円滑な情報アクセシビリティが実現されるように、改善と配慮を要望します。
 そのうえで、「手話マーク」も掲示していただくために、スマートフォンやタブレット端末を利用して手話オペレーターによる手話言語通訳を受けることができるサービスである「遠隔手話通訳サービス」を導入するなど、国内外問わず、情報保障に対応した体制構築に取り組んでください。

3.国際条約における「Sign Language」の和訳は「手話言語」にしてください。
<説明>
 2022年8月の障害者権利条約の建設的対話に向けて、障害者権利条約にある「手話は言語である」ことを日本政府が明確にしていくためにも、当連盟より2019年12月17日付で貴省に提出した「連本第190644号 障害者の権利に関する条約の事前質問外務省仮訳への修正意見及び要望」(添付)にも記載してあるとおり、「Sign Language」を手話言語と和訳したうえで、貴省ホームページなどで公開してください。

4.外務省動画チャンネルや、国連が推進している障害者権利条約(CRPD)と持続可能な開発目標(SDGs)の内容を日本手話言語で発信してください。
<説明>
 2021年度に貴省より「外務大臣の会見については、動画(日本語・英語)を配信するだけでなく、会見での発言を全て文字にして、外務省HPに記録を掲載(外国人記者との英語でのやり取りは和訳)しております。また、その他の動画についても字幕(必要に応じて多言語化)を入れる等の工夫を進めているところです。」と回答をいただきました。
 きこえない者は音声による情報獲得の困難さに加え、日本語の文書を読むのが苦手な者もいます。CRPDの「手話は言語である」ことを明確にし、CPRD第21条の手話言語の使用を促進する機会を確保し、SDGsの「誰一人取り残さない」精神に鑑み、CRPDとSDGsの内容を日本手話言語でも周知するとともに、貴省が発信している外務大臣会見をはじめとする動画全般に「日本手話言語」を入れて発信してください。

<<各省庁共通事項>>
5.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。

<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、昨年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 聴覚障害者が手話通訳を利用する場合、聴覚障害者自身が居住する自治体の福祉事務所等の派遣窓口に依頼をし、手話通訳者を派遣する方法ですが、この際の手話通訳者にかかる費用は、障害者総合支援法の中の「意思疎通支援事業」としていわゆる福祉の経費で、これは厚労省管轄の予算となっています。障害者差別解消法は、こうした福祉的な側面からのアプローチのみならず、あらゆる公的機関で、その機関の責任において合理的配慮を提供することを求めています。
 行政を含む公的機関が、合理的配慮が提供できない状況にならないよう、利用者から手話通訳等の希望があった場合に対応するため、各公的機関で手話通訳等の情報保障の予算を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いいたします。

6.「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」の成立を踏まえ、貴省が所管する分野において必要な計画の策定や予算措置が行われるようにしてください。
<説明>
 2022年5月19日に「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」が成立し、国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に策定し、並びに実施することとされました。
 同法は、障害者が自立した日常生活及び社会生活を営むために必要な分野(医療、保健、介護、福祉、教育、労働、スポーツ、レクリエーション、司法手続その他)において、障害者がその必要とする情報を十分に取得及び利用し、円滑に意思疎通を図ることができるようにするため、意思疎通支援従事者の確保・養成および資質の向上を講ずるものと規定しています。
 貴省の所管する分野において、この法律の趣旨に沿った施策が推進されるよう、必要な計画の策定や予算措置が行われるように取り組みを進めてください。

以 上

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