国土交通省に「きこえない・きこえにくい者の福祉施策」への要望書を提出

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 鉄道駅、空港、バスなど様々な場面での音声情報も可視化について要望をしました。
 すべての機器をきこえない人が使いやすいものに一新することは難しいが、機器更新や新たに開発する際には、当事者の意見を聞きながら、当事者目線で進めていきたいとの回答がありました。

要望書を提出

要望の様子

連本第220183号
2022年7月11日

国土交通大臣
 斉藤 鉄夫 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その対応については地域差がある等、まだまだ改善すべき課題は残っております。今般、「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が制定されました。これを機に、すべての国民が安心、安全に生活ができるように、一層の環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.きこえない者の情報アクセス、コミュニケーション保障の観点から、空港及び機内での音声情報は緊急時のみでなく、すべて可視化できるようにしてください。機内でも、音楽や映画などエンターテイメントなども楽しめるようにしてください。
 また航空業界(特にお客様の対応をするキャビンアテンダント)と意見交換ができる場を設けてください。

<説明>
 国内の航空会社では、機内アナウンスや緊急時の放送に関する情報アクセシビリティは整備されつつありますが、混雑するピーク時間帯に保安検査場付近で、出発直前便への優先搭乗案内が音声でされていることがあります。きこえない者は何を案内されているのか分かりませんでしたが、最近、登録したメールに音声と同様の内容が届くようになり、以前より情報が把握できるようになり、便利に感じています。しかし、日本語の読み書きが苦手なきこえない者もいますので、手話言語等による案内も検討をしてください。
 また機内のエンターテインメントサービス(特に音楽や邦画)には字幕が挿入されているものもありますが、音声のみのものは、きこえない者は楽しむことができません。
 機長の挨拶や話も音声のみで、ディスプレイには「アナウンス中」の表示のみです。時折、フライトアテンダントの方から内容の書かれたメモを渡されることもありますが、簡潔なものなので音声の内容とは大きな隔たりがあるのではと不安になります。
 字幕や手話言語での情報保障が難しければ、UDCast(専用の眼鏡(グラス)に字幕が映る)等の機器の貸し出しやフライトアテンダントの手話言語の研修等、情報が視覚的に分かるように情報アクセシビリティの基礎的環境の整備を国内便すべての航空会社に働きかけてください。

2.公共交通機関(駅・バス・高速道路等)やコインパーキングや無人駅や無人料金所におけるインターホンによる音声のやり取りについて、きこえない者も安心して利用できる仕組みに改善するようと要望を出しましたが、未だ改善が見られていません。これから無人化が増えつつあるなか、電話ができない聞こえない方が取り残されてしまいます。早急に改善されてください。また好事例があればひろく周知してください。
<説明>
 利用者が少ない公共交通機関(駅・バス・高速道路等)やコインパーキング等において、自動券売機また精算機等が増加しつつありますが、これらの機械にトラブルが生じたとき、きこえない者はインターホンによる音声やり取りができません。
 また、無人駅の自動券売機で障害者割引適用の切符を買う際、インターホンによる音声やり取りで、カメラに障害者手帳をかざす方法になっているため、きこえない者は音声での対応ができません。
 インターホンに代わる方法として、タッチパネルによる文字送信等を導入するなど、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備について、引き続き関係会社に働きかけてください。なお、民間事業者について2021年度の進捗および好事例があればご教示ください。

3.観光地や名所等において、音声による車内ガイダンスをきこえない・きこえにくい者も楽しめるように改善してください。
<説明>
 電車が観光地や名所を通る時に、歴史や背景など、音声による車内ガイダンスがありますが、きこえない者は楽しむことができません。
 字幕や手話の映像を流すなど、あらゆる情報が視覚的に分かるよう、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備をすべての鉄道会社に働きかけてください。
 昨年も同様の要望をしましたが、2021年度の進捗および好事例があればご教示ください。

4.国交省バリアフリー法関連の会議に参加されている交通事業者等をはじめとする各種業界団体と障害者団体の意見交換場を設けてください。
<説明>
 現在、駅の無人化意見交換会等、各種会議において意見交換を行える場を設けて、それぞれ異なる障害者の立場から意見交換を行っています。意見交換会の場で行うのも重要ですが、現場にて実際に体験(切符購入方法やトラブルが生じた時の連絡手段等)しながら意見交換を行うことが重要です。会議の場で意見を述べても現場でない場合はイメージが難しい場合があります。そのために現場(現物)にて実際に体験しながら意見交換を行っう場を設けてください。

<<各省庁共通事項>>
5.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。

<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、昨年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 聴覚障害者が手話通訳を利用する場合、聴覚障害者自身が居住する自治体の福祉事務所等の派遣窓口に依頼をし、手話通訳者を派遣する方法ですが、この際の手話通訳者にかかる費用は、障害者総合支援法の中の「意思疎通支援事業」としていわゆる福祉の経費で、これは厚労省管轄の予算となっています。障害者差別解消法は、こうした福祉的な側面からのアプローチのみならず、あらゆる公的機関で、その機関の責任において合理的配慮を提供することを求めています。
 行政を含む公的機関が、合理的配慮が提供できない状況にならないよう、利用者から手話通訳等の希望があった場合に対応するため、各公的機関で手話通訳等の情報保障の予算を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いいたします。

6.「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」の成立を踏まえ、貴省が所管する分野において必要な計画の策定や予算措置が行われるようにしてください。
<説明>
 2022年5月19日に「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」が成立し、国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に策定し、並びに実施することとされました。
 同法は、障害者が自立した日常生活及び社会生活を営むために必要な分野(医療、保健、介護、福祉、教育、労働、スポーツ、レクリエーション、司法手続その他)において、障害者がその必要とする情報を十分に取得及び利用し、円滑に意思疎通を図ることができるようにするため、意思疎通支援従事者の確保・養成および資質の向上を講ずるものと規定しています。
 貴省の所管する分野において、この法律の趣旨に沿った施策が推進されるよう、必要な計画の策定や予算措置が行われるように取り組みを進めてください。

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