総務省へ聴覚障害公務員の研修及び情報保障に関する要望書を提出

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 11月11日、日本聴覚障害公務員会が総務省へ要望書を提出、意見交換に連盟福祉・労働委員が同行しました。

要望書を提出
意見交換

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令和元年11月11日

総務大臣
 高市 早苗 様

日本聴覚障害公務員会
会長  廣瀬 美貴

聴覚障害公務員の研修及び情報保障に関する要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 平素は私共聴覚障害者の活動につきまして格別の御高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 当会は日本各地で働く聴覚に障害のある公務員が集まり、職場における業務遂行能力の向上と、それに基づく住民サービスの向上を目的として活動しています。この目的に向けた研鑽のために、毎年1回、全国聴覚障害公務員研修討論集会を開催し、業務を円滑に遂行するための研修や、持てる能力を最大限に発揮して業務を行うために必要となる合理的配慮や支援についての情報交換等も行っています。
 平成28年には、社会福祉法人全国手話研修センターと共同で全国の地方自治体を対象に聴覚に障害のある公務員の雇用実態や職場環境等についてアンケート調査及び訪問調査を実施し、その結果を「地方自治体における聴覚に障害のある職員の雇用等に関する実態調査 報告書」(以下「報告書」)としてまとめて公表いたしました。
 【掲載場所】
 https://www.com-sagano.com/archives/4667.html

 国としても、聴覚に障害のある公務員がその持てる能力を最大限に発揮して業務にあたるために必要な基礎的環境整備や研修等における情報保障の整備等が各自治体において着実に実施できるよう、下記の措置を講じてくださいますようお願い申し上げます。

1 聴覚障害のある職員の採用後の会議や研修における情報保障を合理的配慮として必ず実施するよう、各自治体に通知してください。

<説明>
 障害者の雇用の促進等に関する法律第36条の3において、事業主(地方自治体も含む)は、障害者である労働者について、能力の有効な発揮の支障になっている事情の改善を講じるとともに、障害の特性に配慮した必要な措置を講じることが規定されています。また、地方公務員法第39条では、「職員には、その勤務能率の発揮及び増進のために、研修を受ける機会が与えられなければならない」と定めています。
 当会が実施した上記の調査では回答があった600人のうち、情報を得る手段として口話(補聴器・人工内耳併用)を希望している職員は160人で、それ以外の職員は手話通訳や要約筆記などを望んでいました。一方、係会議や研修に関しては、300人以上の職員から、「情報保障が行われていない」との声が寄せられています。このように会議や研修の際に、聴覚障害公務員が希望する情報保障が実施されていないという状況が浮かびあがっており、聴覚障害職員のために必要な情報保障の提供の措置を講じておらず、また能力発揮のための適切な研修や会議の環境も整えていない自治体が少なからずあるということが明らかになっています。(参考:報告書p10 Q6)
 各自治体が障害のない職員と聴覚障害公務員との均等な待遇の確保を図るとともに、聴覚障害公務員が持てる能力を最大限に発揮し、ひいては住民サービスをの提供を円滑に遂行できるように、職場環境を改善するための措置を講ずるよう、貴省から各自治体に通知してください。

2 聴覚障害公務員の雇用実態を明らかにすると共に、積極的な採用を促してください。

<理由>
 厚生労働省が実施する障害者雇用実態調査では、障害者雇用は着実に進展しているとのことですが、当会の上記の調査では、都道府県における聴覚障害公務員の数は10年前と比較して明らかに減少しています。(参考 報告書p6 表4)
 厚生労働省の障害者雇用実態調査では身体障害者が一括りに公表されるため、その中での聴覚障害者の割合が把握できません。公務員の障害種別の雇用率を公表すると共に、多様な障害者を雇用するよう、厚生労働省及び各自治体へ働きかけてください。

3 職員採用試験における介助者に関する受験資格の撤廃をお願いします。

<理由>
 当会が平成17年に47都道府県人事担当課に対して実施した聴覚障害公務員の雇用等に関する実態調査(別添資料あり) では、受験時の要件として「介助者なしで~の業務を遂行できること」というような要件を設定している都道府県がほとんどでした(設定していなかったのは北海道と大阪府のみ)。この要件に基づき「介助を要しないで職務遂行ができる者」を条件として採用していることから、手話通訳者や要約筆記者等の情報保障者も介助者とみなし、会議・研修時等における聴覚障害公務員への情報保障に取り組んでいない自治体も見受けられました。
 また、当会が平成28年8月に行った調査においてもほとんどの自治体でこの受験資格要件を設定していました(参考 報告書p24 Q9)。
 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第5条の「行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない」の趣旨も踏まえ、貴省から職員採用試験時の「介助者不要」要件を撤廃するよう各自治体へ通知してください。

4 聴覚障害公務員への合理的配慮のための情報保障があまねく行われるよう、地方自治体への地方財政措置予算を設けてください。

<説明>
 民間事業所の場合には、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構を通じた手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金の制度が利用できますが、公務員はこの制度の対象外であるため、聴覚障害公務員を雇用する自治体への同様の助成の地方財政措置予算を組み、対応することを求めます。

5 全国聴覚障害公務員研修討論集会への支援をお願いします。

(1)貴省による当会への後援名義の付与をお願いします。
<説明>
 各自治体では、聴覚障害公務員に特化した研修(情報保障が充実、または手話で対応している等)が少ないため、これに代わるものとして、当会が主催する全国聴覚障害公務員研修討論集会(以下「全国集会」)を各自治体にも活用いただきたいと考えています。
 今年開催するこの全国集会(令和元年11月30-12月1日、山梨県甲府市)では、手話を広める知事の会・全国手話言語市区長会からも後援をいただきました。より多くの聴覚障害職員が参加できるようにするため、貴省にも是非後援をいただけますようお願い申し上げます。

(2)貴省から各都道府県へ全国集会の開催を通知してください。
<理由>
 聴覚障害公務員が複数採用されている自治体は極めて少ない状況です(参考 報告書 p4 Q1)。全国集会は聴覚障害公務員が他の自治体で働く聴覚障害公務員と共に研修に参加し、共に研鑽することで、聴覚障害職員に特化した職場研修の代替となるものと考えます。一方で聴覚障害者を雇用していない自治体もまだ多数あり、各自治体の人事担当課職員の参加を促し、障害者雇用を促進するという観点からも、各自治体へのこの全国集会の周知は有意義であると考えます(参考 報告書 P18 Q6)。
 より多くの聴覚障害公務員に参加を促すため、貴省から各都道府県を通じ、全自治体にこの全国集会開催について通知してください。

(3)全国集会への参加に特別の措置を講ずるよう、各自治体に通知してください。
<理由>
 前述のとおり、同じ障害者が一同に会し研修を行うことは当事者の情報・意見交換のためにも必要なことです。
 このため、全国集会への参加については、公費出張扱いもしくは職務に専念する義務の特例(専免)等、特別の措置を講じるよう併せて通知を願います。

6 電話リレーサービスを通信サービスとして早急に制度化し、聴覚障害職員が職務に使用できるよう各自治体に導入を図ってください。

<説明>
 平成30年11月の参議院予算委員会で、安倍首相は「電話リレーサービスは重要な公共インフラであり」「その整備は総務省が担当する」と明言され、それに基づいた検討会が総務省主導で開催され、今後の進展が大いに期待されるところです。
 本年8月の「電話リレーサービスに係るワーキンググループ」報告(案)に対する意見募集に関し、当会からも、聴覚障害職員が一人しかいない地方自治体や財政規模の小さな地方自治体において「地方自治体自らが適切な措置を講ずるべき」となった場合、聴覚障害職員への情報保障の必要性の理解の不足や、財政的な課題によって導入が進まないことが懸念されるため、実施にあたっては、国が積極的に電話リレーサービスの導入・体制について各自治体に必要性の周知や財政的支援を含む働きかけを行うことが必要と考える旨の意見提出をさせていただきました。
 聴覚障害者が聞こえる人と等しく電話通信を利用でき、また各自治体に勤務している聴覚障害職員が職務上でも使用できるよう、今後も当事者を含めた委員会等での議論を進め、電話リレーサービスを国の制度として早急に整備を図ってください。また合理的配慮の機器の一つとして電話リレーサービスを加えるよう、貴省からも各自治体に働きかけてください

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