高齢・障害・求職者雇用支援機構との意見交換

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 11月11日、福祉・労働委員会は高齢・障害・求職者雇用支援機構へ要望書を提出し、意見交換をおこないました。

要望書を提出

連本第190525号
2019年11月11日

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
 理事長  和田 慶宏 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・FAX 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

聴覚障害者の労働及び雇用施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 当連盟は、本年6月16日宮城県仙台市において開催された第67回全国ろうあ者大会にて、聴覚障害者の福祉施策に関する大会決議を行ないました。つきましては、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。

1.各企業が法定雇用率を達成できるように、また聴覚障害者の雇用を拡大できるように強力なバックアップを図ってください。

<説明>
 昨年6月の障害者の民間企業における実雇用率は、実雇用率2.05%と過去最高となりましたが、まだ、法定雇用率(2.2%)は達成されていない状況です。
 障害者の社会参加を後押しするためにも、すべての企業が法定雇用率を遵守することで、障害者の失業問題も改善され、社会参加が促されるものと思います。そのためにも、「障害者の雇用の促進等に関する法律」を実効性のあるものとするために、雇用納付金の引き上げをはじめとした納付金制度の改正や雇用率の向上のための対策を強力に推進してください。

2.各企業が積極的に聴覚障害者を雇用できるように障害者介助等助成金(手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金)を改善するとともに、より一層の周知、広報に努めてください。

<説明>

(1)手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金(以下「委嘱助成金」)の支給額に上限をつけることは、法的義務である合理的配慮の提供を妨げることになり、聴覚障害者を排除することになります。

①障害者雇用促進法の改正においても参議院の付帯決議(令和元年6月6日参議院厚生労働委員会)でも指摘されていたように、「委嘱助成金」の利用期間を10年間とする制限や更新不可となっている取り扱いを撤廃してください。

②1日研修のように長時間にわたる手話通訳時間でも、現行は委嘱1回の支給額1人3/4(6千円)だけなので、支給額の上限を撤廃し、手話通訳等料金(手話通訳・要約筆記に要した時間)を1回とし3/4に応じた支給額にしてください。

③申請日時点において聴覚障害者が初めて雇用された日から1年以上経過した場合、「委嘱助成金」の支給対象障害者から外すことを撤廃するとともに、聴覚障害者の雇用を開始するのと同時に事業主が「委嘱助成金」を活用し、手話通訳者等を配置できるよう対策を講じてください。

(2)「委嘱助成金」の周知が捗ってこそ聴覚障害者雇用の拡大につながり、また労働意欲や職場定着が進みます。

①企業に対して企業秘密等の理由で手話通訳を断ることのないよう指導してください。

②「委嘱助成金」の拡大につなげるために、全国の利用状況をホームページ等で公表するようにしてください。

3.職場適応援助者(ジョブコーチ)事業の拡充を図ってください。

<説明>
 手話を必要とする聴覚障害者にとって、手話の堪能な職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援事業は、円滑な意思疎通で聴覚障害者本人に対する適切な支援また事業主に対しても聴覚障害の特性を踏まえた専門的な支援につながり、聴覚障害者の職場適応、定着を図ることに大きな役割をもっていますが、実際はなかなか支援に結びつかない現状があります。

①手話を必要とする聴覚障害者の支援にあたって、「手話ができる」ジョブコーチの配置体制の整備、またジョブコーチ養成カリキュラムに「手話」を取り入れてください。

②聴覚障害者がジョブコーチ養成研修を受けられるように手話通訳者の配置等、情報保障を整備してください。

4.障害者職業センターにおける準備訓練・リワーク支援等のサービスに対して、聴覚障害者が利用しやすいように、手話通訳をつけて下さい。

<説明>
 障害者の就労支援をしている障害者職業センターでは、聴覚障害者がサービスを利用する場合の情報保障が十分ではありません。コミュニケーションが十分でないために情報が行きわたらず、就労のための貴重な情報や訓練がきちんと身に付けることができません。例えば、ジョブコーチ支援につなぐためには障害者職業センターが実施する職業評価と登録が必須ですが、ここで手話通訳等情報保障がなされないため、ジョブコーチ支援に結びつかない現状があり、就労を希望する聴覚障害者にとって障害者職業センターは利用しにくい現状があります。障害者職業センターに手話通訳者を常勤配置するか、手話通訳者派遣のために必要な予算を確保してください。

5.障害者職業能力開発校に手話通訳者等を設置し聴覚障害者が学べる環境の整備を図ってください。

<説明>
 職業能力開発校は、新たに技術を身につけ、就職できるようにするために大切な場となっています。社会モデルに基づく共生社会の理念に添う職業教育環境を推進するためにも、貴機構で運営している訓練校が、他の県立訓練施設や開発校のモデルとなるよう手話通訳者や要約筆記者を設置する等、聴覚障害者が学べる環境を整備してください。

6.企業に『聴覚障害者のための職場定着推進マニュアル』等の頒布を通じて、聴覚障害者を受け入れる環境の整備を働きかけてください。

<説明>
 聴覚障害者の職場定着を一層推進するためには、企業への理解だけでなく、当事者である聴覚障害者自身の努力も求められています。しかし、情報が行き渡らず、コミュニケーションが十分でないために誤解されやすく、職場定着がままならない聴覚障害者について理解を浸透させるために、『重度障害者(聴覚障害者)の職域開発に関する研究報告書』(2003年~2005年機構委託事業)の活用や『聴覚障害者のための職場改善に関する好事例集』、『聴覚障害者の職場定着推進マニュアル』改訂版の頒布を図り、企業に聴覚障害者を受け入れる環境の整備を引き続き働きかけてください。

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