外務省に国連やアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)関連への会議参加及び在外大使館・領事館、観光客における情報アクセシビリティの実現について要望書を提出

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 ESCAP会議等における情報保障や、国際手話通訳養成の予算措置、大使館における情報保障について話し合いました。
 その他、人事課からは現在、外務省は障害者雇用問題に積極的に取り組んでおり、まずは4人の支援員を配置した上で、障害者が働ける環境づくりを重視しているとの報告を受けました。

連本第190231号
2019年7月16日

外務大臣
 河野 太郎 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

国連やアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)関連への会議参加及び
在外大使館・領事館、観光客における情報アクセシビリティの実現について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、我が国が2014年に批准した国連の障害者権利条約は、障害者に基本的人権を保障し、その促進・保護・確保を締約国に義務づける内容となっており、当連盟はわが国の障害者の基本的人権が障害のない人と平等の水準に保障されることを強く求めております。
 つきましては、障害者の更なる情報保障の施策推進をお願いしたく、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。

1.国連やESCAPの関連会議における情報保障にかかる費用が障害当事者の負担とならないよう、国連やESCAP及び開催国に日本政府から強く申し入れると共に、情報保障にかかる費用の助成を検討してください。

<説明>
 現在、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が開催する、2013-2020年アジア太平洋障害者十年に関するワーキングループ会合(以下、WGとする)に、当連盟からも、ろう者である世界ろう連盟アジア地域事務局事務局長を派遣しております。
 我々ろう者が国際会議に参加し発言するためには、日英の音声通訳者に加えて、日本語-日本手話言語の手話通訳者、また盲ろう者の場合は触手話通訳者による情報保障が、その他の障害者もそれぞれの介護者が必要であり、自分だけでなくそれぞれの通訳者及び介護者の渡航・宿泊・謝礼も必要になります。これらの情報保障にかかる費用はESCAP及び開催国政府の全額負担となっていましたが、2016年以降は予算不足を理由に自己負担を強いられており、我々、障害当事者が会議に容易に参加できない状況となっています。
 そのため、国連、ESCAPをはじめとする国際会議に障害当事者が参加しやすいように開催国に日本政府から強く申し入れると共に、国として派遣費用の助成を検討してください。

2.国連およびESCAPの関連会議における情報保障を実現するために、国際手話通訳者の養成に必要な体制整備と予算化を図ってください。

<説明>
 一方で、2019年のWGでは国際手話通訳者2名が用意されたおかげで、障害当事者であるろう者が副議長を務める等、大役を果たす事ができました。しかしながら、国際手話とは、ろう者が国際交流を行う際に公式に用いるために作られた手話ですが、養成カリキュラムが確立されておらず、質の高い国際手話通訳者が不足しております。そのため、国際会議における国際手話通訳者の養成に必要な体制整備と予算化を図ってください。

3.外務省が公開している「障害者差別解消法に基づく対応要領及び対応指針」に基づき、外務省管轄の在外施設や部署においても障害者がアクセスしやすい環境整備、改善を図ってください。

<説明>
 外務省が公開している「障害者差別解消法に基づく対応指針」が、在外の大使館や領事館等にも適用されることを保障するようお願いいたします。現状は、在外の大使館・領事館の中には建物へ入る時にインターホンのみやマジックミラー越しに人物を確認する場合があり、このような状況下では、聴覚に障害がある人たちにとって音声でやり取りすることが困難です。聴覚に障害がある日本国民が、旅行中にパスポートを紛失する等、緊急の事態に遭ったときに、現地の大使館・領事館における円滑な情報アクセシビリティが実現されるように配慮をお願いいたします。

4.各国の在日大使館に、海外から来た聴覚障害者たちに対する情報保障について周知してください。

<説明>
 当連盟は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けて、外国人へのコミュニケーション保障だけでなく、国内の聴覚障害者等に対するコミュニケーション手段の配慮について理解を求めるために、「手話マーク」・「筆談マーク」を策定しました。
 経済産業省・総務省等をはじめ、各省庁・行政等の窓口で、「手話マーク」・「筆談マーク」が設置されるところが増えています。
 今後、鉄道・バス・船舶・航空・タクシー・道路・公園・駐車場・競技場・病院などの公共機関において、また心のバリアフリーによる研修などを通して、このマークを広め、海外から来た聴覚障害者も自由に情報にアクセスし、コミュニケーションの取れる社会を実現していただきたくお願いします。
 また海外から来た聴覚障害者たちが何かしらのトラブルにより在日大使館へお世話になることも考えられます。この時の国際手話通訳等の情報保障についても各国の在日大使館へ周知していただけるようお願いいたします。

5.国連が推進している障害者権利条約(CRPD)と持続可能な開発目標(SDGs)の内容を日本手話言語で発信できるよう、資金面も含めて支援をお願いします。

<説明>
 国連の障害者権利条約第9条「施設及びサービス等の利用の容易さ(英文ではAccessibility『アクセシビリティ』)」において、「締約国は、障害者が情報を利用する機会を有することを確保するため、障害者に対する他の適当な形態の援助及び支援を促進すること」として、障害者のためのアクセシビリティの確保を締約国に求めています。
 この障害者権利条約(CRPD)を始め、国連が推進している持続可能な開発目標(SDGs)についても、いろいろなメディアを通して情報発信がされていますが、すべて日本語を通してであり、中には音声だけになっている場合もあります。
 このような状況の下では、音声で情報を得ることが困難な多くの聴覚障害者には伝わらず、情報の利用が容易な(アクセシブルな)状態になっていません。特にSDGsの内容は難解であり、これまでにも平易な日本語で解説しようとする試みがされていますが、日本手話言語を主に使うろう者にとっては依然として難解です。
 世界ろう連盟では、英国国際開発省(DFID)の資金援助を受けて、国際手話で説明した動画を発信するサイトを作成・公開しました(http://wfdeaf.org/crpdsdgstoolkit/)。
 国際手話を理解できる者は国内でもごく少数です。国内のより大勢のろう者に理解してもらうためには、日本手話言語への翻訳がさらに必要です。翻訳には機材や人材等、費用がかかります。CRPD第9条に鑑み、SDGsやCRPDの内容の利用が容易になるよう、日本手話言語への翻訳のための資金面も含めた支援をお願いします。

6.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や公共団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。

<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。聴覚障害者が公的機関を利用する場合、これまで利用してきた障害者総合支援法の中の「意思疎通支援事業」による手話通訳派遣制度は引き続き利用が可能ですが、合理的配慮としての手話通訳者の派遣については各公的機関がその費用を予算化していくよう、貴省から関係の地方自治体各部局へ周知を図るようお願いします。

7.貴省における障害者雇用率の達成と聴覚障害者の採用時及び雇用後の職場における情報アクセスの保障やコミュニケーション・意思疎通の保障の整備を図ってください。  また貴省の障害者別の採用状況及び雇用の定着率もご教示ください。

<説明>
 非常に残念なことに昨年、官公庁や地方自治体でも、障害者雇用率の未達成が明らかになりました。今年度、来年度には大量の障害者採用をされますが、採用試験や説明会等における要約筆記や手話通訳配置などの情報保障、採用後、機器も含めた職場環境の整備等必要な情報保障を講じ、長期定着しキャリアアップできるようにしてください。
 情報保障や聴覚障害者用設備についてご不明な点があれば、当連盟までご相談ください。
 また貴省における障害者別(身体障害種別も明記)の採用状況とそれら定着率もご教示ください。

以 上

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