内閣府に聴覚障害者の福祉施策について要望書を提出

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 「手話言語法及び障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」については、昨年4月より5年計画で始まった第4次障害者基本計画について、計画の実施状況を監視や勧告を行うことを目的として、内閣府に設置された障害者政策委員会において議論が必要という回答をいただきました。
 連盟からは手話言語法については手話言語をよく知っている人で議論を行ってもらいたいという要望を出しました。また、手話マーク・筆談マークについては障害者白書に追記するように取り組んでいくという回答をいただきました。

要望書を提出
交渉風景

連本第190230号
2019年7月16日

内閣総理大臣
 安倍 晋三  様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

聴覚障害者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、本年6月16日宮城県仙台市において開催された第67回全国ろうあ者大会にて、聴覚障害者の福祉施策に関する大会決議を行ないました。つきましては、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。
 現在、「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っています。すべての国民が安心、安全に生活ができ、そして円滑な移動ができるよう、より一層の環境整備を講じていただきますよう、お願い申し上げます。

1.「手話言語法」及び「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の早期制定を進めてくださいますようお願いします。

<説明>
 当連盟では2010年より「手話言語法」、「情報・コミュニケーション法」の早期制定を求めて取り組みを進めております。改正障害者基本法で「手話」が言語のひとつとして認知され、同法を中心に関連施策が進められている点は承知しております。しかし、ろう者の手話言語獲得や手話を使える環境整備を保障する「手話言語法」、ろう者、盲ろう者、視覚障害者等の情報アクセス・コミュニケーションを保障する「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の双方を制定させ、福祉・医療・雇用・教育・司法等の様々な場面で具体的な施策を行うことで、ろう者等の真の社会参加を推進できるものと考えます。
 特にろう児への手話言語獲得の保障は急務であります。大阪府において手話言語条例を基にしたろう乳幼児の手話言語獲得支援の取り組みを参考に、日本において手話言語法を早急に制定するよう進めてください。また、併せてろう者等をはじめ広く障害者を対象とした「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の制定を進めてください。

2.全日本ろうあ連盟が策定した、手話マーク・筆談マークを聴覚障害者等のコミュニケーションマークとして広く周知していただけるよう、ご協力をお願いします。

<説明>
 当連盟は、2016年12月に「手話マーク」・「筆談マーク」を策定・公表しました。このマークは聴覚障害者が利用する役所や公共施設等で対応可能なコミュニケーション手段を誰にでも一目でわかるように示すことができ、2020年、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、聴覚障害者に対するコミュニケーション手段の配慮について理解を広めていくことを目的としています。
 現在、当連盟加盟団体を通じて普及を進める中で、市役所や郵便局等の公共施設、店舗等で活用されております。また経済産業省や総務省、国会議事堂受付などにも「筆談マーク」を表示していただいています。
 今後、手話マーク・筆談マークを公共、民間施設へさらに普及を図るために、貴府内でのマークの設置やホームページで紹介いただく等、周知にご協力をいただきたくよろしくお願い申し上げます。

3.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や公共団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。

<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。聴覚障害者が公的機関を利用する場合、これまで利用してきた障害者総合支援法の中の「意思疎通支援事業」による手話通訳派遣制度は引き続き利用が可能ですが、合理的配慮としての手話通訳者の派遣については各公的機関がその費用を予算化していくよう、貴省から関係の地方自治体各部局へ周知を図るようお願いします。

4.昨年の国の行政機関および地方自治体における障害者雇用率の水増しの再発防止と民間企業の模範となるべく採用時・雇用後の職場環境の整備を図ってください。
 また障害者別の採用状況及び雇用の定着率もご教示ください。

<説明>
 非常に残念なことに昨年、官公庁や地方自治体でも、障害者雇用率の未達成が明らかになりました。今年度、来年度に大量の障害者採用をされますが、その大半が軽度障害者や環境整備に費用の掛からない障害者の採用だと予想されます。
 国が率先し、採用されている聴覚障害者の職場での情報アクセスの保障やコミュニケーション・意思疎通の保障について範を示していただき、貴省をはじめとする各省庁、地方自治体、民間企業において聴覚障害者への理解を促進してください。
 また国の行政機関における障害者別(身体障害種別も明記)の採用状況とそれら定着率もご教示ください。

以 上

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