文化庁に聞こえない・聞こえにくい人の文化振興施策への要望を提出

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 文化庁に対し、聞こえない・聞こえにくい人の文化芸術活動に関する4つの要望を提出しました。
 文化庁からは、来たる2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を契機に、バリアフリーな文化事業や活動を推進していくことや、オリンピック・パラリンピックの大会ビジョンにもある「多様性と調和」という理念に沿い、社会の中のさまざまなバリアについて対応を検討すること、大会終了後も、バリアフリーな環境がレガシーとして社会の中に根づいていくよう、各関連機関と連携しながら取り組みを進めていくという説明がありました。
 連盟からは、聞こえない人が聞こえる人と同様に、自国の文化や文化芸術のイベント・施設に親しみ、聞こえない人自らも表現者として活躍できるよう、より一層の文化芸術領域のバリアフリー化の推進を要望しました。

要望書を提出
交渉風景

連本第190225号
2019年7月16日

文化庁 長官
 宮田 亮平 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

聞こえない・聞こえにくい人の文化振興施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より私ども聞こえない・聞こえにくい人(以下、「聞こえない人」)の文化活動にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、当連盟は、2019年6月14日宮城県仙台市において開催された第67回全国ろうあ者大会にて、聞こえない人の福祉施策や文化施策に関する大会決議を行いました。つきましては、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。
 なお、我が国は2014年にようやく「障害者権利条約」を批准し、2016年4月より障害者差別解消法が施行され、障害者を取り巻く環境は一歩前進しましたが、文化的な活動時の課題の改善に取り組む姿勢はまだまだ見られません。当連盟は「手話言語法」の制定を視野に入れ、聞こえる人と同様の文化的な生活が享受できるよう、聞こえない人の文化芸術活動の環境整備を強く求めます。
 今後、聞こえない人、ひいては国民全体のために、より一層の課題改善に取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」第9条、第10条に則り、「障害者が文化芸術を楽しむ機会の確保」、「障害者が文化芸術を表現する機会の確保」を徹底してください。

<説明>
 昨年6月、上記「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」が衆議院にて全会一致で可決、公布されました。この法律では、第9条で「障害者が文化芸術を鑑賞する機会の拡大を図るため、文化芸術の作品等に関する音声・文字・手話等による説明の提供の促進(中略)障害の特性に応じた文化芸術を鑑賞しやすい環境の整備の促進」が、第10条で「障害者が文化芸術を創造する機会の拡大を図るため、障害者が社会福祉施設、学校等において必要な支援を受けつつ文化芸術を創造することができる環境の整備」が謳われています。
 しかし、上述の環境整備は未だ途上であり、障害者の文化芸術活動の発展に寄与するには不十分な状態です。障害者が文化芸術活動を楽しむ機会の確保、文化芸術活動を行う機会の確保について、具体的な取り組みを行ってください。
 例えば、聞こえない人たちが文化芸術活動を享受する際の情報保障には、学芸員が手話言語による解説を行うことはもちろん、音声言語の解説・案内を印刷配布する、展示物ごとにタブレット端末などにQRコードをかざすことで解説文や手話言語動画を表示するなど、ITを活用した方法も考えられます。また、手話言語での対応が可能な学芸員を養成するために、研修として地域のろう協会から手話講師を招き、学芸員が手話言語を学ぶ機会を設けたり、大学等の学芸員養成課程に、手話言語での案内をはじめとした、バリアフリーな対応ができるようになることを目指したカリキュラムを組み入れたりすることも有用であると考えます。
 聞こえる人と同様に、聞こえない人がいつでも好きなときに文化を楽しめるよう、手話言語等による鑑賞の機会拡充とともに、聞こえない人の文化芸術活動全体を発展させる具体的な取り組みを、全国のすべての地域で行ってください。

2.来たる「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」に関わる文化プログラムにおいて、手話言語・字幕などのアクセシビリティの確保を推進してください。

<説明>
 来夏、我が国において「東京オリンピック・パラリンピック競技大会」が開催されます。この競技大会に関わる文化プログラムを、聞こえない人たちも他の人と同様に楽しめるよう、必要に応じて手話言語や字幕等の付与などによる情報保障を行ってください。

3.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や公共団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。

<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。聴覚障害者が公的機関を利用する場合、これまで利用してきた障害者総合支援法の中の「意思疎通支援事業」による手話通訳派遣制度は引き続き利用が可能ですが、合理的配慮としての手話通訳者の派遣については各公的機関がその費用を予算化していくよう、貴庁から関係の地方自治体各部局へ周知を図るようお願いします。

4.貴庁における障害者雇用率の達成と聴覚障害者の採用時及び雇用後の職場における情報アクセスの保障やコミュニケーション・意思疎通の保障の整備を図ってください。  また貴庁の障害者別の採用状況及び雇用の定着率もご教示ください。

<説明>
 非常に残念なことに昨年、官公庁や地方自治体でも、障害者雇用率の未達成が明らかになりました。今年度、来年度には大量の障害者採用をされますが、採用試験や説明会等における要約筆記や手話通訳配置などの情報保障、採用後、機器も含めた職場環境の整備等必要な情報保障を講じ、長期定着しキャリアアップできるようにしてください。
 情報保障や聴覚障害者用設備についてご不明な点があれば、当連盟までご相談ください。
 また貴庁における障害者別(身体障害種別も明記)の採用状況とそれら定着率もご教ください。

以 上

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