国土交通省に聴覚障害者の福祉施策について要望書を提出

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 海上保安庁へ緊急通報システムNET118のシステムの整備と、交通各局へは、視覚的に情報を取得できる機器等の導入・整備について要望しました。
 交通各局より、現在の整備状況の説明とともに、好事例もご紹介いただきました。

要望書を提出
交渉風景

連本第190222号
2019年7月16日

国土交通大臣
 石井 啓一 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

聴覚障害者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、本年6月16日宮城県仙台市において開催された第67回全国ろうあ者大会にて、聴覚障害者の福祉施策に関する大会決議を行ないました。つきましては、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。
 現在、「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っています。すべての国民が安心、安全に生活ができ、そして円滑な移動ができるよう、より一層の環境整備を講じていただきますよう、お願い申し上げます。

(海上保安庁)

1.緊急通報118番を、ろう者が聞こえる人と同じように使える通報システムを整備してください。

<説明>
 現状、118番通報は音声通話のみであり、音声電話を使えないろう者は、直接通報をすることができません。2017年の愛知県の海上でのボート事故で、電話リレーサービスを通じでろう者が海上保安庁へ通報をし、救助に至った例がありましたが、現在、民間団体が行っている電話リレーサービスは、本来は緊急通報には対応しておらず、特例措置での対応でした。ろう者が聞こえる人と同じように通報できるシステムを早急に構築する必要があります。
 なお本件につきましては、海上保安庁において本年11月を目標に「Net118番」システムを開始する予定と伺っています。現在の進捗状況についてお聞かせください。

(航空局)

2.聴覚障害者の情報アクセス、コミュニケーション保障の観点から、音声による機内アナウンスや緊急時の放送だけでなく、音楽や映画などエンターテイメントなども楽しめるようにしてください。
 また日本に乗り入れている海外の航空会社や海外の航空会社の共同運航便でも日本の航空会社と同様の方法で購入できるようにしてください。

<説明>
 ANAおよびJALなど国内における航空会社では、機内アナウンスや緊急時の放送に関する情報アクセシビリティは整備されつつあります。しかし、混雑するピーク時間帯では保安検査場前での切迫した状況で搭乗を待っているお客様に対し、音声による案内が目に付くことがあります。それでは聴覚障害者は何を案内されているのか分かりません。可視できるようホワイトボードに記載している例もありますが、簡潔な内容のみとなっている事あります。音声による案内と同様の内容がわかるよう、視覚的表示の工夫をしてください。
 またフライト中機内上映番組に音楽や映画などエンターテイメントの映像は音声のみが多く、聞こえる人が無料貸出のイヤホンやヘッドホンで楽しめるのに対し、聴覚障害者は字幕がないため楽しむことができません。
 字幕や手話の映像を流すことが難しければ、UDCastによる字幕(専用の眼鏡(グラス)に字幕が映る)等、情報が視覚的に分かるよう、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備について、国内便を有するすべての航空会社に働きかけてください。

 海外の航空会社からのチケット購入において、共同運航、国際線乗継便、また介助員のいない聴覚障害者の団体旅行では航空券購入ができなかったという事例があります、国内の航空会社と同様に、スムーズに購入できるよう海外の航空会社にも働きかけてください。

(自動車局・総務課・鉄道局)

3.公共交通機関(駅・バス・高速道路等)やコインパーキングや無人駅や無人料金所におけるインターホンによる音声やり取りについて、聴覚障害者も安心して利用できる仕組みに改善してください。

<説明>
 利用者が少ない公共交通機関(駅・バス・高速道路等)やコインパーキング等において、自動券売機また精算機等が増加しつつありますが、これらの機械にトラブルが生じたとき、聴覚障害者はインターホンによる音声やり取りができません。
 また、無人駅の自動券売機で障害者割引適用の切符を買う際、インターホンによる音声やり取りで、カメラに障害者手帳をかざす方法になっているため、聴覚障害者は音声での対応ができません。
 インターホンに代わる方法として、タッチパネルによる文字送信等を導入するなど、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備について、関係会社に働きかけてください。
 なお、民間事業者について2018年度進捗状況および好事例があればご教示ください。

4.観光地や名所等において、音声による車内ガイダンスを聴覚障害者も楽しめるように改善してください。

<説明>
 電車が観光地や名所を通る時に、歴史や背景など、音声による車内ガイダンスがありますが、聴覚障害者は楽しむことができません。
 字幕や手話の映像を流すなど、あらゆる情報が視覚的に分かるよう、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備について、すべての鉄道会社に働きかけてください。
 なお、2018年度進捗状況および好事例があればご教示ください。

5.各種業界団体と障害者団体の意見交換場を設けていただけますようお願いいたします。

6.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や公共団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。

<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。聴覚障害者が公的機関を利用する場合、これまで利用してきた障害者総合支援法の中の「意思疎通支援事業」による手話通訳派遣制度は引き続き利用が可能ですが、合理的配慮としての手話通訳者の派遣については各公的機関がその費用を予算化していくよう、貴省から関係の地方自治体各部局へ周知を図るようお願いします。

7.貴省における障害者雇用率の達成と聴覚障害者の採用時及び雇用後の職場における情報アクセスの保障やコミュニケーション・意思疎通の保障の整備を図ってください。 また貴省の障害者別の採用状況及び雇用の定着率もご教示ください。

<説明>
 非常に残念なことに昨年、官公庁や地方自治体でも、障害者雇用率の未達成が明らかになりました。昨年度、今年度には大量の障害者採用をされますが、採用試験や説明会等における要約筆記や手話通訳配置などの情報保障、採用後、機器も含めた職場環境の整備等必要な情報保障を講じ、長期定着しキャリアアップできるようにしてください。
 情報保障や聴覚障害者用設備についてご不明な点があれば、当連盟までご相談ください。
 また貴省における障害者別(身体障害種別も明記)の採用状況とそれら定着率もご教示ください。

以 上

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