総務省に聴覚障害者の福祉施策について要望書を提出

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 電話リレーサービスの制度化と、聴覚障害者への参政権の保障、それに伴う「政見放送手話通訳士研修会」への予算化継続について要望しました。
 電話リレーサービスについては、ろう者も聞こえる人も利用できるよう双方向化を進めていきたいと説明がありました。

要望書を提出

連本第190219号
2019年7月16日

総務大臣
 石田 真敏 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

聴覚障害者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、本年6月16日宮城県仙台市において開催された第67回全国ろうあ者大会にて、聴覚障害者の福祉施策に関する大会決議を行ないました。つきましては、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。
 現在、「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っています。すべての国民が安心、安全に生活ができ、そして円滑な移動ができるよう、より一層の環境整備を講じていただきますよう、お願い申し上げます。

1.電話リレーサービスを通信サービスとして早急に制度化してください。

<説明>
 2018年11月の参議院予算委員会で、安倍首相は「電話リレーサービスは重要な公共インフラであり」「その整備は総務省が担当する」と明言され、それに基づいた検討会が総務省主導で開催され、今後の進展に大いに期待をしています。
 電気通信事業法第6条では「電気通信事業者は電気通信役務の提供について、不当な差別取り扱いをしてはならない」と規定しており、現状の電話(通信)が「音声伝送」のみと解釈されている点は、聴覚障害者にとって差別的な取り扱いと言わざるを得ません。
 ついては聴覚障害者が聞こえる人と等しく電話通信を利用できるよう、今後も当事者を含めた委員会等での議論を進め、電話リレーサービスを国の制度として早急に整備を図ってください。

2.聴覚障害者の参政権の保障について、下記の通り要望します。

(1)市町村選挙を含むすべての選挙について、聴覚障害者の参政権の保障のために手話通訳、字幕・要約筆記等を義務付けてください。また、聴覚障害者の被選挙権の保障のために手話通訳、要約筆記等の情報保障を義務付けてください。

<説明>
 現在、国政選挙・都道府県知事選挙では政見放送での手話通訳や一部字幕の付与が可能であり、演説会での要約筆記の配置・報酬の支払いが認められるなど、聴覚障害者への情報保障は少しずつ改善されてきております。しかし、政見放送では全てに手話通訳・字幕の付与がまだ実現されておらず、義務付けも行われておりません。
 また、市町村選挙における情報保障は義務付けがなく、例えば候補者の演説会などの手話通訳、要約筆記等の情報保障については、市町村の選挙管理委員会の判断が様々です。
 聴覚障害者が情報を正しく得、選挙権が保障されるために、すべての選挙において手話通訳、要約筆記等の義務付けをしてください。
 更に近年、聴覚障害者の市議会議員が誕生していますが、、その選挙活動において音声に代わる手段には制限があり、聞こえる人と等しく選挙活動ができない状況があります。今後、聴覚障害者の被選挙権を含めた参政権を保障するためにも、手話通訳、要約筆記等の情報保障を義務付け、手話及び文字による選挙活動を認めてください。

(2)手話通訳者及び要約筆記者を公職選挙法の「選挙運動に従事する者」に含めず、独立した条項になるよう改正をお願いします。

<説明>
 公職選挙法により手話通訳者及び要約筆記者については「選挙運動に従事する者」と規定されています。手話通訳者及び要約筆記者は公正・中立を重要な倫理としており、選挙運動員とされることは手話通訳者及び要約筆記者の社会的信用に関わります。さらに基本的人権としての参政権保障を求める私たちの取り組みが選挙運動とみなされる懸念があります。手話通訳者及び要約筆記者については「選挙運動に従事する者」に含めず、社会的信用と公正・中立の立場を保障していただきたくお願いします。

(3)2017~2019年度、貴省予算で実施しております「政見放送手話通訳士研修会」(地方研修会)を2020年度以降も継続して行えますよう、引き続き予算化をお願いします。

<説明>
 「政見放送手話通訳士研修会」(地方研修会)は、2019年度参議院議員選挙区選挙における政見放送での手話通訳付与を目指して、2017年度から貴省にて予算化いただき、御礼申し上げます。引き続き、政見放送を担える手話通訳士を継続して増やす必要があります。更に政見放送では社会情勢や時事問題等、専門的かつ新しい用語が使われ、手話通訳士も継続して通訳技術を磨く必要があることから、研修の履修更新制を設けております。2019年度以降も地方研修会を継続して行えるよう、予算化をお願いします。

3.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や公共団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。

<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。聴覚障害者が公的機関を利用する場合、これまで利用してきた障害者総合支援法の中の「意思疎通支援事業」による手話通訳派遣制度は引き続き利用が可能ですが、合理的配慮としての手話通訳者の派遣については各公的機関がその費用を予算化していくよう、貴省から関係の地方自治体各部局へ周知を図るようお願いします。

4.貴省における障害者雇用率の達成と聴覚障害者の採用時及び雇用後の職場における情報アクセスの保障やコミュニケーション・意思疎通の保障の整備を図ってください。  また貴省の障害者別の採用状況及び雇用の定着率もご教示ください。

<説明>
 非常に残念なことに昨年、官公庁や地方自治体でも、障害者雇用率の未達成が明らかになりました。昨年度、今年度には大量の障害者採用をされますが、採用試験や説明会等における要約筆記や手話通訳配置などの情報保障、採用後、機器も含めた職場環境の整備等必要な情報保障を講じ、長期定着しキャリアアップできるようにしてください。
 情報保障や聴覚障害者用設備についてご不明な点があれば、当連盟までご相談ください。
 また貴省における障害者別(身体障害種別も明記)の採用状況とそれら定着率もご教示ください。

以 上

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