厚生労働省に聴覚障害者の福祉施策について要望書を提出

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要望書を提出
要望書を提出

連本第180275号
2018年7月26日

厚生労働大臣
  加藤 勝信 様

一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

聴覚障害者の福祉施策に関する要望について

 時下、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
 平素より聴覚障害者福祉の向上にご理解、ご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
 さて、我が国は「障害者権利条約」批准に向けての国内法整備の一環として「障害者差別解消法」を制定し、2年が経過致しました。障害者を取り巻く環境は一歩前進しましたが、聴覚障害者にとっては手話通訳・要約筆記等を含めた情報アクセス・コミュニケーション支援が不可欠です。
 全日本ろうあ連盟では、聴覚障害者情報提供施設、ろう重複障害者、ろう高齢者等の聴覚障害者福祉の関係諸団体とともに、聴覚障害者の福祉施策の充実のための施策について協議をし、これまで関係団体が各々要望している事項をもとに、下記の通り統一要望として取りまとめました。
 つきましては、ぜひとも施策に反映し、必要な予算措置を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.全国の聴覚障害者が地域格差なく福祉サービスを利用することができるよう、社会福祉施設等の社会資源の整備を図ってください。

(1)全ての都道府県ならびに政令指定都市で「聴覚障害者情報提供施設」が設置できるよう制度の充実を図ってください。

①身体障害者社会参加支援施設の設備及び運営に関する基準第40条「聴覚障害者情報提供施設の職員の配置基準」の改正を行い、施設長の他に意思疎通支援事業、養成事業、相談事業等の担当職名を明示し、必要な職員の配置基準を明確にしてください。

②「聴覚障害者情報提供施設」運営費金額の増額を基本に職員待遇改善および現行の都道府県1施設に支所を追加設置できる仕組みづくり、人的体制の充実が可能な条件を整備してください。

③電話リレーサービス提供事業の発展継続を図ってください。
高度情報通信等福祉事業費の国庫補助による個々の情報提供施設への補助金交付はありますが、都道府県の枠を越えた全国共通の事業であること、その性質から、各施設の機能強化と合わせ、本事業そのもののより効率的な運営と基盤の強化が重要となります。
 事業の発展のためには実施施設間の協力・連携体制の整備、オペレーターの育成等共通の課題に対応する事務局機能が必要だと考えます。来年度においては、事業本体部分での予算拡充と、この部分における予算化ならびに執行可能な制度の運用を図ってください。

(2)障害者権利条約の批准、また障害者差別解消法に基づく環境整備、合理的配慮の提供の義務で、ろう高齢者を含む聴覚障害者また他に障害をもつ重複聴覚障害者が利用できるために障害福祉サービスおよび介護保険サービス等の充実を図ってください。

①意志疎通支援事業以外の障害福祉サービスの充実を図る施策を講じ、必要な予算を確保してください。具体的にはどの障害福祉サービス利用でも意志疎通の面で保障される仕組みをつくることです。

②全ての都道府県に聴覚障害児や聴覚障害者が、自ら選択する言語やコミュニケーション手段により利用できる障害福祉サービス、放課後等デイサービス、地域活動支援センター、グループホーム・ケアホーム、介護保険サービス、特別養護老人ホーム等の社会資源を計画的に整備してください。

③児童福祉法の障害児通所支援(児童発達・放課後等デイサービス)に「視覚聴覚障害者支援体制加算」を適用してください。

2.介護保険制度に関して、次のことを講じてください。

(1)特別養護老人ホームへの要介護1・2に該当する方の特例入居制度について、今後の見直しにおいても継続してください。
特に加齢による要介護状態の介護の手間を測る現行の「介護認定調査」内容は、高齢期に入る前から障害を持って暮らしてきた「障害者」の障害特性や支援と介護の必要量を反映するものとは言えず、特記事項の評価により、認定合議体が一次判定を変更してようやく「要介護1」とされる現状があります。

(2)高齢の聴覚障害者が利用している短期入所、通所介護、訪問介護においても、「障害者生活支援体制加算」をつけてください。これらの事業所も特別養護老人ホームと同様に「常時コミュニケーション支援を一体的に行っている」ことから、障害者支援体制加算を適用してください。

3.聴覚障害者福祉に関わる人材養成・確保を強化してください。

(1)意思疎通支援事業において、意思疎通支援のネットワークを確立するため、「情報提供施設」や市町村等への手話通訳者の設置(雇用)が推進されるよう予算面および制度面で講じてください。自治体で雇用されている手話通訳者の91.1%が非正規雇用となっており(2017年全国手話通訳問題究会調べ)、不安定な身分のまま働き、健康破壊を起こす手話通訳者が後を絶ちません。2020年度から地方自治体が導入する「会計年度任用職員制度」に伴い、現在非正規で雇用されている手話通訳者が「常時勤務を要する職として」正規職員に移行するよう総務省に働きかけてください。

(2)聴覚障害者の社会参加が広がっている中、手話通訳者、要約筆記者の養成が急務となっています。その養成を担当する講師の養成事業と併せて、全ての都道府県において、養成事業を早期に実施するようにしてください。

(3)聴覚障害者を対象とする在宅支援の強化のため、同じ聴覚障害のある介護福祉士やホームヘルパー等の養成及び研修について、自治体の責任で手話通訳者配置等の配慮を行うようにしてください。 また、介護職員の研修についても、聴覚障害のある職員の受講について、自治体の公費負担により手話通訳者・要約筆記者が配置されるようにしてください。具体的には障害者差別解消法施行にもかかわらず、養成及び研修を実施する各事業者から手話通訳者・要約筆記者派遣(事業者負担)を拒否される例が続いていることにあります。

以 上

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