外務省に国連およびアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)関連の
会議に係る情報保障について要望書を提出

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 ESCAPにおける情報保障については、ESCAP事務局に働きかけるだけでなく、日本政府としての対応の検討を申し入れ、また在外の大使館・領事館における聴覚障害者への配慮の一例として、手話マーク・筆談マークを紹介しました。
 障害者権利条約などの手話言語による情報発信に関しは、海外の事例を紹介し、外務省としても手話言語や国内のきこえない人への配慮を検討するよう要望しました。

要望書を提出
意見交換

連本第180233号
2018年7月17日

外務大臣
 河野 太郎 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

国連やアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)関連の会議・情報発信
及び在外大使館・領事館信における情報アクセシビリティの実現について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、当連盟は、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が開催する、2013-2020年アジア太平洋障害者十年に関するワーキングループ会合に、初回の2014年から、世界ろう連盟アジア地域事務局事務局長を派遣しています。
 初めの2回(2014年と2015年)は、会議での情報保障のために、日英の音声通訳に加えて、ろうの参加者のために日本語-日本手話言語の手話通訳、盲ろうの参加者のための触手話通訳の渡航・宿泊・謝礼などを、ESCAP及び開催国政府が全額負担していました。しかし、最近では予算不足を理由に、通訳者の渡航・宿泊・報酬を含め、会議での情報保障にかかる費用の自己負担を強いられており、この状況は2017年11月27日~12月1日に中国・北京で開催され、国連ESCAPアジア太平洋障害者十年中間年評価に関するハイレベル政府間会合においても改善されていません。
 このような事態は、2006年に国連で採択し2014年に日本が批准した、「障害者の権利に関する条約」に違反するものであり、国連の組織としてあってはならない由々しき問題であると考えます。
 国際会議に、日本国民であるろう者や盲ろう者が代表として、出席・参加することは大いに意義がありますが、これらの国際会議にろう者や盲ろう者が参加するためには日英通訳、手話通訳、触手話通訳などの情報保障が必要不可欠です。障害当事者が会議における情報にアクセスするために必要な手段を手配するためにかかる費用を当事者に求めるのではなく、開催国及び開催団体が負担するよう日本政府も率先して支援してください。
 また、外務省が公開している「障害者差別解消法に基づく対応指針」が、在外の大使館や領事館等にも適用されることを保障するようお願いいたします。現状としまして、在外の大使館・領事館の中には建物へ入る時にインターホンのみやマジックミラー越しに人物を確認する場合があります。このような状況下では、聴覚に障害がある人たちにとって音声でやり取りすることが困難です。聴覚に障害がある日本国民が、旅行中にパスポートを紛失する等、緊急の事態に遭ったときに、現地の大使館・領事館における円滑な情報アクセシビリティが実現されるように配慮をお願いします。
 最後に、国連の障害者権利条約第9条「施設及びサービス等の利用の容易さ(英文ではAccessibility『アクセシビリティ』です)」において、「締約国は、…障害者が情報を利用する機会を有することを確保するため、障害者に対する他の適当な形態の援助及び支援を促進すること」として、障害者のためのアクセシビリティの確保を締約国に求めています。この障害者権利条約(CRPD)を始め、国連が推進している持続可能な開発目標(SDGs)についても、いろいろなメディアを通して情報発信がされていますが、すべて日本語を通してであり、中には音声だけになっている場合もあります。このような状況の下では、音声で情報を得ることが困難な多くの聴覚障害者には伝わっておらず、情報の利用が容易な(アクセシブルな)状態になっていません。特にSDGsの内容は難解であり、これまでにも平易な日本語で解説しようとする試みがされていますが、手話を主に使うろう者にとっては依然として難解です。世界ろう連盟では、英国国際開発省(DFID)の資金援助を受けて、国際手話で説明した動画を発信するサイトを作成・公開しました(http://wfdeaf.org/crpdsdgstoolkit/)。国際手話を理解できるのは国内でもごく少数です。国内のより大勢のろう者に理解してもらうためには、日本手話言語への翻訳がさらに必要です。翻訳には機材や人材等、費用がかかります。CRPD第9条に鑑み、SDGsやCRPDの内容の利用が容易になるよう、日本手話言語への翻訳のための資金面も含めた支援をお願いします。

1.国連およびESCAPの関連会議に日本から障害当事者が参加する際に、障害当事者の負担とならないよう、国連、ESCAP及び開催国に日本政府から強く申し入れると共に、国としての助成を検討してください。

2.外務省が公開している「障害者差別解消法に基づく対応要領及び対応指針」に基づき、外務省管轄の在外施設や部署におきましても障害者がアクセスしやすい環境整備、改善を図ってください。

3.国連が推進している障害者権利条約(CRPD)と持続可能な開発目標(SDGs)の内容を日本手話言語で発信できるよう、資金面も含めて支援をお願いします。

以上

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