スポーツ庁に聴覚障害者のスポーツ施策について要望書を提出

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 デフリンピックの啓発の要望に対し、連盟とスポーツ庁で共同のイベントを企画する、連盟が主催するスポーツ大会にスポーツ庁の幹部が出席することでマスコミに呼びかける等の回答が出されました。また、障害者スポーツ施設の情報保障の要望に対しては、現在建設中の新国立競技場をこれからのモデルにし、国の施設から聴覚障害者でも使いやすい設備を進めていくとの回答がありました。

要望書を提出
意見交換

連本第180232号
2018年7月17日

スポーツ庁長官
鈴木 大地 様

162-0801
東京都新宿区山吹町130SKビル8階
Tel03-3268-8847・Fax03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

聴覚障害者のスポーツ施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 国連の障害者権利条約において、障害のある人が平等にあらゆるスポーツ活動に参加できるよう定めております。また、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックを機に、国内における障害者へのあらゆるバリアフリーを推進させる施策について具体的な審議がされていることと思います。これら障害者のスポーツ施策への取り組みがより一層、国民の皆さまから後押しして頂けることを期待しております。
 つきましては、さらなる聴覚障害者スポーツの施策推進をお願いしたく、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。

1.デフリンピックやデフスポーツの認知度向上の目標値を設け、さらなる啓発普及に取り組んでください。

<説明>
 我が国における障がい者スポーツ認知度(日本財団パラリンピック研究会調べ:平成26年)は、パラリンピック98.2%、スペシャルオリンピックス19.8%、デフリンピック11.2%となっており、依然としてデフリンピックの認知度は低い状態です。
 そのため、ろう選手やスタッフが練習やデフリンピック参加する際、職場の理解が得られずに休暇を取得しにくいという状況があります。
 また、デフリンピックの認知度が低いために、デフスポーツ競技団体から地域の小中高等学校等に在籍する聞こえない競技者の掘り起こしに苦労しているという訴えがあります。
 これらの課題を打破するため、デフリンピック認知度の目標値を設け、さらなる啓発普及に取り組んでください。

2.デフリンピックに出場する聴覚障害者のアスリートに課せられる経済的な負担を軽減すべく、デフリンピックアスリートの強化支援やデフリンピック等の国際大会派遣への補助を拡充してください。

<説明>
 第23回夏季デフリンピック競技大会2017サムスン(トルコ)では過去最高のメダル数を獲得することができました。各競技団体では、次の大会に向けてトップアスリートの育成や強化に取り組んでいます。
 しかし、選手たちは研鑽を積みたくとも経済的な負担が重く、それが競技力の向上を妨げる一因となっています。また障害者スポーツ活動への助成を行っている自治体もありますが、ほとんどが対象はパラリンピック関係となっています。東京2020パラリンピックに向けて、パラスポーツに注目が集まりがちですが、選手たちが継続的・日常的に競技を続けられるために、またデフリンピックで選手たちが障害を乗り越え挑戦する姿を見せ、社会へ障害に対する理解につながるよう、デフリンピックアスリートの強化支援やデフリンピック等の国際大会派遣のための施策の実施と拡充してください。

3.障害者が参加する・観ることができる環境作りのため、スポーツ施設や競技における音声情報へのアクセシビリティ向上やユニバーサルデザインの考え方に沿った環境の整備の推進を図ってください。

<説明>
 障害者権利条約では、第30条「文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加」に「障害者が、利用しやすい様式を通じて、テレビジョン番組、映画、演劇その他の文化的な活動を享受する機会を有すること」とあるように、障害者が自分の言語やコミュニケーション手段に合った方法で、文化的な活動を享受する権利が定められています。
 2020年の東京オリンピック、パラリンピックに向けて、障害者の観客も受け入れられるよう、会場整備が進んでいますが、我々聴覚障害者に対する設備はほとんど検討されていません。
 また、一般の競技大会における競技環境においても、聴覚障害者が参加できるよう音声情報を視覚で補う設備などが設けられてはおらず、聞こえない選手たちが参加できる環境はまだ十分とは言えません。
 選手及び観客がスポーツに参加、観ることができるよう、施設や競技大会における筆談マークや手話マーク、ヒアリングループ、電光掲示板や光警報装置等、音声情報へのアクセシビリティ対応やユニバーサルデザイン環境整備のガイドラインを策定してください。

4.聴覚障害者の競技大会開催における支援施策の実施と拡充を行ってください。

<説明>
 当連盟が主催する全国ろうあ者体育大会(夏季大会は毎年1回、冬季大会は4年に1回、全国各地輪番制)は、デフリンピックや世界選手権等への競技力向上の場となっています。
 このような意義のある大会に対しては、スポーツ基本法においても国がその経費について補助することができるとうたっています。
 聴覚障害者が参加する大会では、競技補助員や手話通訳者の配置、補助設備(スタートランプ等)の設置等の視覚的な情報保障が必要になります。しかし、地域自治体の補助金縮小などにより十分な環境が整えられない状況にあります。
 聴覚障害者の競技環境の保障のため、全国ろうあ者体育大会への財政的支援を要望します。

以 上

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