国土交通省に聴覚障害者の福祉施策について要望書を提出

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 連盟の要望に対し、国土交通省からは「緊急通報118番については、予算要求し、消防庁のネット119システムを参考に検討中。改正バリアフリー法がスタートし、実施状況をモニタリングしながら、合理的配慮の好事例を増やしていきたい」との回答がありました。

要望書を提出
意見交換

連本第180229号
2018年7月17日

国土交通大臣
 石井 啓一  様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

聴覚障害者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、本年6月10日大阪府大阪市において開催された第66回全国ろうあ者大会にて、聴覚障害者の福祉施策に関する大会決議を行ないました。つきましては、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っております。すべての国民が安心、安全に生活ができ、そして円滑な移動ができるよう、より一層の基礎的環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

(海上保安庁)

1.緊急通報118番を、ろう者が聞こえる人と同じように通報システムを整備してください。

<説明>
 2017年、愛知県の海上でのボート事故でろう者が電話リレーサービスを通じて海上保安署へ通報したことにより人命が救われたという報道がありました。現状、118番は音声通話のため、ろう者は通報したくても直接通報ができず、愛知県での事例も、手話もしくは文字によるオペレーターを介する電話リレーサービスを通じて通報され、通報から救助までに5時間もの時間を要したとのことです。
 本来は電話リレーサービスの仕組みとは別に、118番等の緊急通報独自で、ろう者が聞こえる人と同じように通報できるようなしくみを早急に構築する必要があります。
 なお本件につきましては、2018年2月現在で海上保安庁において具体的な検討に入っているとの情報を頂いておりますが、その進捗状況と合わせてお考えをお聞かせいただきたくよろしくお願い申し上げます。

(航空局)

2.聴覚障害者の情報アクセス、コミュニケーション保障の観点から、音声による機内アナウンスや緊急時の放送だけでなく、音楽や映画などエンターテイメントなども楽しめるようにしてください。

<説明>
 ANAおよびJALなど国内における航空会社では、機内アナウンスや緊急時の放送に関する情報アクセシビリティは整備されつつあります。しかし、混雑するピーク時間帯では保安検査場前での切迫した状況で搭乗を待っているお客様に対し、音声による案内が目に付くことがあります。それでは聴覚障害者は何を案内されているのか分かりません。可視できるようホワイトボードに記載している例もありますが、簡潔な内容のみとなっている事あります。音声による案内と同様の内容がわかるよう、視覚的表示の工夫をしてください。
 またフライト中機内上映番組に音楽や映画などエンターテイメントの映像は音声のみが多く、聞こえる人が無料貸出のイヤホンやヘッドホンで楽しめるのに対し、聴覚障害者は字幕がないため楽しむことができません。
 字幕や手話の映像を流すなど、あらゆる情報が視覚的に分かるよう、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備について、国内便を有するすべての航空会社に働きかけてください。

(自動車局・総務課・鉄道局)

3.公共交通機関(駅・バス・高速道路等)やコインパーキングや無人駅や無人料金所におけるインターホンによる音声やり取りについて、聴覚障害者も安心して利用できる仕組みに改善してください。

<説明>
 利用者が少ない公共交通機関(駅・バス・高速道路等)やコインパーキング等において、自動券売機また精算機等が増加しつつありますが、これらの機械にトラブルが生じたとき、聴覚障害者はインターホンによる音声やり取りができません。
 また、無人駅の自動券売機で障害者割引適用の切符を買う際、インターホンによる音声やり取りで、カメラに障害者手帳をかざす方法になっているため、聴覚障害者は音声での対応ができません。
 インターホンに代わる方法として、タッチパネルによる文字送信等を導入するなど、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備について、関係会社に働きかけてください。なお、民間事業者について2017年度進捗状況および好事例があればご教示ください。

4.観光地や名所等において、音声による車内ガイダンスを聴覚障害者も楽しめるように改善してください。

<説明>
 電車が観光地や名所を通る時に、歴史や背景など、音声による車内ガイダンスがありますが、聴覚障害者は楽しむことができません。
 字幕や手話の映像を流すなど、あらゆる情報が視覚的に分かるよう、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備について、すべての鉄道会社に働きかけてください。よって2017年度進捗状況および好事例があればご教示ください。

5.緊急自動車の警光灯に緊急走行か、それ以外の走行か、が聴覚障害者にもわかるような表示を義務付けてください。

<説明>
 パトカーや消防自動車、救急車等の緊急自動車は、警光灯の点灯・回転が緊急時も緊急時以外でも同じである場合があり、聴覚障害者の場合はサイレンの音が聞こえず、緊急走行か、そうでないかを判断することができません。
 聴覚障害者も、緊急自動車が緊急走行をしているかどうかを判断できるような警光灯の表示もしくはそれに代わる視覚的な表示を義務付けてください。
 尚、本件については今まで消防庁、警察庁へも要望書を提出したところですが、貴省におかれましても法整備の面からもご検討いただきたくよろしくお願い申し上げます。

以 上

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