総務省に電話リレーサービス及び聴覚障害者の参政権の保障について要望書を提出

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 全日本ろうあ連盟は、総務省へ要望書を提出、電話リレーサービスの通信事業としての国の制度化と、ろう者等への参政権の保障を要望しました。
 選挙課からは6月に改正された公職選挙法について、参議院選挙区選挙の政見放送で手話通訳の付与が可能になった旨の説明がありました。

要望書を提出

連本第180224号
2018年7月17日

総務大臣
 野田 聖子  様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

聴覚障害者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、本年6月10日大阪府大阪市において開催された第66回全国ろうあ者大会にて、聴覚障害者の福祉施策に関する大会決議を行ないました。
 つきましては下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。
 なお我が国は「障害者権利条約」批准に向けての国内法整備の一環として「障害者差別解消法」を制定し、2年が経過しました。障害者を取り巻く環境は一歩前進しましたが、聴覚障害者にとっては手話通訳・要約筆記等を含めた情報アクセス・コミュニケーション支援が不可欠です。今後、合理的配慮の事例を積み重ねていき、障害者の社会参加のためにも、より一層の基礎的環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.電話リレーサービスを通信サービスとして制度化してください。
<説明>
 聴覚障害者と聞こえる人との電話によるやりとりを支援するため、オペレーターを介しての手話または文字による電話リレーサービスが広まっています。民間レベルで公衆電話型の電話リレーサービス「手話フォン」が主要空港や自治体で設置されており、厚生労働省では、昨年度に引き続き2018(平成30)年度事業として一部の聴覚障害者情報提供施設における電話リレーサービス実施のための予算化がなされています。電話リレーサービスの実施・普及に向けて前進しておりますが、今後実用化のためには通信サービスとしての事業化が不可欠となります。
 電気通信事業法第6条では「電気通信事業者は電気通信役務の提供について、不当な差別取り扱いをしてはならない」と規定しており、現状電話(通信)が「音声伝送」のみと解釈されている点は、聴覚障害者にとって差別的な取り扱いと言わざるを得ません。
 ついては聴覚障害者が聞こえる人と等しく電話通信を利用できるよう、電話リレーサービスを国の制度として創設し、普及を図ってください。

2.聴覚障害者の参政権の保障のために、下記の通り要望します。

(1)市町村選挙を含むすべての選挙について、聴覚障害者の参政権の保障のために手話通訳、字幕・要約筆記等を義務付けてください。また、聴覚障害者の被選挙権の保障のために手話通訳、要約筆記等の情報保障を義務付けてください。

<説明>
 現在、国政選挙・都道府県知事選挙では政見放送での手話通訳や一部字幕の付与が可能であり、演説会での要約筆記の配置・報酬の支払いが認められるなど、聴覚障害者への情報保障は少しずつ改善されてきております。しかし、政見放送ではまだすべてに手話通訳・字幕の付与が実現されておらず、義務付けも行われておりません。
 また、市町村選挙における情報保障は義務付けがなく、例えば市町村長選挙では候補者の演説会などに手話通訳、要約筆記等をつけることについて、市町村の選挙管理委員会における判断がまちまちのようです。
 聴覚障害者がすべての選挙の情報を正しく得て、参政権を保障するために、すべての選挙について手話通訳、要約筆記等を義務付けてください。
 更に近年、聴覚障害者の市議会議員が誕生している中、その選挙活動において音声に代わる手段に制限があり、聞こえる人と等しく選挙活動ができない状況があります。今後、聴覚障害者の被選挙権を保障するためにも、手話通訳、要約筆記等の情報保障を義務付け、手話及び文字による選挙活動を認めてください。

(2)手話通訳者及び要約筆記者を公職選挙法の「選挙運動に従事する者」に含めず、独立した条項になるよう改正をお願いします。

<説明>
 公職選挙法により手話通訳者及び要約筆記者については「選挙運動に従事する者」と規定されています。手話通訳者及び要約筆記者は公正・中立を重要な倫理としており、選挙運動員とされることは手話通訳者及び要約筆記者の社会的信用に関わるだけでなく、基本的な人権としての参政権を求める私たち聴覚障害者の取り組みが選挙運動とみなされる懸念があります。手話通訳者及び要約筆記者については「選挙運動に従事する者」に含めず、社会的信用と公正・中立の立場を保障していただきたくお願いします。

(3)2017~2018年度、貴省予算で実施しております「政見放送手話通訳士研修会」(地方研修会)を2019年度以降も継続して行えますよう、引き続き予算化をお願いします。

<説明>
 「政見放送手話通訳士研修会」(地方研修会)は、2019年度参議院議員選挙区選挙における政見放送での手話通訳付与を目指して、2017年度から貴省にて予算化いただき、御礼申し上げます。仮にすべての選挙において政見放送での手話通訳が実現した後も、政見放送を担える手話通訳士を継続して増やす必要があります。更に政見放送では社会情勢や時事問題等、専門的かつ新しい用語が使われ、手話通訳士も継続して通訳技術を磨く必要があることから、2019年度以降も地方研修会を継続して行えるよう、予算化をお願いします。

以 上

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