ろう者を対象とした詐欺事件に対する全日本ろうあ連盟の声明


 ろう者を対象とした東京都世田谷区の会社社長と従業員3人による詐欺と出資法違反容疑事件は、過去に起きた詐欺の疑い等の事件に比べても被害者数、被害総額とも過去最高であり、連盟は、このような事件の生起に強い怒りを感じます。
 過去、わが国では、高齢者・障害者・児童等は地域でその安全を見守るべき存在として意識されていました。
 しかしながら、情報不足を利用した横領、ねずみ講、物品販売に関係した詐欺など、ろう者を狙った反社会的な犯罪は多々起きていました。そして、被害者の多くは情報・コミュニケーションの制約などにより、関係機関に訴えられず、被害に耐え、泣き寝入りをすることが多いのが実状でした。
 今回の事件の背景には、現在、社会的な問題となっている高齢者、認知症等を標的としたリフォーム詐欺、振り込め詐欺等の極めて悪質かつ冷酷な犯罪の多発があります。一部の人たちの行為ではありますが、社会的な弱者を狙った犯行を多くの国民が憂いています。今回の事件は、このような社会的風潮のなかで起きた事件であり、ろう者だけの問題ではなく社会全体の課題として捉え、対処していかねばならないと考えます。
 被害に遭われた皆さんは、老後や自立した生活を維持するために長年にわたって生活費を切りつめ、蓄えてこられました。それだけに事件が与えたショックは大きく、その損害を取り戻そうと力を合わせて「被害者の会」を結成され、泣き寝入りをせずに弁護士に相談し警察に訴え、民事裁判を起こしました。
 また、地域のろう団体が支援しています。このような取り組みには、ろう者を狙った犯罪を許さないという思いと、前記のような国民にとって憂いのある出来事の根を絶つきっかけになればとの思いがあります。
 当連盟は、ろう者の社会参加や自立を促進する立場から、手話の国民的な普及や手話通訳制度の実現を優先課題として長年にわたって努力してきました。この取り組みは国民の皆さんに支持され手話やろう者に対する理解は大きな広がりを見せています。今回の事件は、この手話の広がりと、ろう者の手話通訳者に対する信頼が悪用されたと言えます。手話を解し、通訳技術に優れた健聴者に対するろう者の信頼は、手話通訳行為が、自身の社会参加や自己選択、自己決定の手段となっているだけに強いものがあります。連盟は、このような事件が二度と起きないように関係機関や団体と連携して対策を講じていく所存です。


全日本ろうあ連盟トップページに戻る