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※全日本聾唖連盟による仮訳

この翻訳はあくまでも仮訳です。できる限り原文の意味に忠実に訳すことを心がけましたが、様々な分野の専門的知識をお持ちの方がご覧になり、適当でない和訳にお気づきの際は遠慮なくご指摘ください。なお、本条約案に含まれる他の国連条約などからの転用部分につきましては以下の和訳資料を仮訳に利用させて頂きました:
外務省 訳 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約:A規約)
市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約:B規約)
女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約
児童の権利に関する条約
国連広報センター 訳 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約選択議定書
長瀬 修 様 訳 障害者の機会均等化に関する国連基準規則

「障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する総合的かつ包括的
な国際条約」に向けての地域ワークショップ
2003年10月14日〜17日
タイ、バンコク

バンコク草案:障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する
総合的かつ包括的な国際条約に提案する項目

ワークショップ公式HP掲載の原文


序文

.添付の「バンコク草案:障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する総合的かつ包括的な国際条約に提案する項目」(略称「バンコク草案」)は、2003年10月14〜17日にタイのバンコクで開催された「障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する総合的かつ包括的な国際条約に向けての地域ワークショップ」において採択された。*この「バンコク草案」は、2001年12月19日の国連決議56/168に基づいて設置された障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する総合的かつ包括的な国際条約に関する特別(アドホック)委員会の条約起草に関する討議に寄与する目的で作成された。

.この「バンコク草案」はいくつかの文書に基づいて作成された。文書の構成と内容は主に2003年6月にバンコクで開催された「アジア太平洋専門家会議」で採択された「バンコク提案」**に沿って作成された。また、世界の他の地域で行われた会議結果、及び特別(アドホック)委員会での討議なども一部反映している。ワークショップ参加者は、新しく作られる条約に取り入れることが重要だと思われる項目をこの「バンコク草案」としてまとめたのであり、条約に取り入れるべき項目を全て書き記そうとは考えていない。

3.「バンコク草案」は、全ての障害者が全ての国際的に認められる人権と基本的自由を完全にかつ平等に享有する権利があるということを基本に置き、これらの権利を再度確認する。同時に、障害者の権利に関する新しい条約は、これらの権利を障害者が享有することの具体的な意味合いを明確にし、さらに女性、男性、男児、女児、障害の性質、種類、重度などに係わらず全ての障害者がこれらの権利を完全に享有できることを保障するために締約国がとらなければならない措置を明記することにその意義がある。「バンコク条約」は全ての存在する人権と自由を再度述べることはせず、主に障害者の優先課題に関する権利を細かく述べることに専念している。

4.「バンコク草案」は次の部分から成る:
前文

第1部:この部分には定義、全てに係わる原則、既存の人権と基本的自由の再確認、締約国の全般的な義務、障害者の特定の小グループに関する記述などを取り上げる。

第2部:いくつかの市民的、政治的権利を取り上げる。

第3部:経済的、社会的、文化的分野の権利をいくつか取り上げる。

第4部:その他の締約国の義務をいくつか取り上げる。(これには国内制度の設置、統計的データの収集、関連事項が含まれる。)

第5部:新しい人権条約機関の設置を提案する。この機関は独立した専門家で構成され、条約の実施を監視するほか、報告をし、個人からの苦情や質問を受けることができる。

第6部:形式的な条項、その他の条項が含まれるが、この中には条約の留保に関する条項もある。
5.会議参加者は、討議の題材となり得る意見を提供することも、成果文書の重要な役割の一つであると考え、「バンコク草案」のいくつかの箇所には一つ以上の提案が記されている場合がある。(例えば、「障害」の定義もその一例である。)また、角括弧〔 〕の中の内容には会議で承認されていないものもあるが、条約の起草プロセスの際これらがさらに討議されるべきであると言う判断からこの条約案に書き加えてある。さらにいくつかの項目について、是非バンコク条約案に記すべきであると判断したが、文章化する時間がなく、表題のみを書き記すに留まっている。



脚注:

* 参加者の中には、この条約のいくつかの項目について、それを条約に明文化することについて躊躇があった。これらの部分は脚注で分かるようにしてある。本文へ戻る

** 「障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する総合的かつ包括的な国際条約の起草に関するバンコク提案」E/ESCAP/EGM-PWD/Rep,2003年6月4日は次に掲載されている: http://www.worldenable.net/bangkok2003/recommendations.htm.本文へ戻る






バンコク草案:障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する
総合的かつ包括的な国際条約に提案する項目
2003年10月


目次

前文

第1部
1. 条約の目的と基本的な原則
2. 定義
3. 基本的な人権と自由
4. 締約国の一般的な義務
5. 救済措置と関連した義務
6. 平等と非差別
7. 権利の享有における障害を持つ女性と男性の平等
8. 障害に対する意識(態度)を変える
9. 農村部又は遠隔地、島嶼、過疎地に暮らす人々の権利
10. 重度障害者の権利
第2部
11.生命の権利
12.拷問又は残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは刑罰を受けない権利
13.個人の自由と安全についての権利
14.自由を奪われたものが人道的に取り扱われる権利
15.移動、移民、亡命の自由
16.アクセシビリティ
17.移動(mobility)に対する権利
18.意見及び表現の自由、及び情報コミュニケーションへのアクセスの権利
19.言語領域における平等
20.私生活及び家庭が尊重され、家族が保護される権利、婚姻に関する権利
21.地域社会の一員として地域内に暮らす権利
22.障害を持つ子どもの権利
23.政治的、公的活動に参加する権利
24.少数者の権利
25.財産を所有し管理する権利
第3部
26.健康およびリハビリテーションへの権利
27.教育への権利
28.労働の権利
29.社会保障および相当な生活水準に関する権利
30.文化的な生活、レクリエーション、及びレジャーに参加する権利
31.ユニバーサル/インクルーシブ・デザインへの権利
32.経済的・社会的・文化的権利の制限
第4部
33.統計とデータの収集
34.各国内の実施体制
35.条約と委員会活動に関する周知
36.この条約と他の条約および国内法の関係
第5部
37.委員会の設置
38.締約国による報告
39.報告の審査
40.委員会の運営
41.個人通報を受理する委員会の権限の承認
42.国内的救済措置の枯渇および受理の条件
43.暫定的措置の要請
44.締約国への通報の伝達
45.通報の検討、意見の採択、およびフォローアップ
46.調査手順
47.調査報告へのフォローアップ
48.締約国による調査手順への不参加に関する規定
49.報復からの保護
50.委員会の年次報告
第6部
51.寄託者
52.署名、批准、加入
53.条約の効力発生
54.条約の改正または修正
55.留保
56.締約国間の紛争
57.正文

*****

前文
この条約の締約国は、

(a) 世界人権宣言及び各国際人権規約において定められる全ての権利と自由を全ての人が、人種、肌の色、性、言語、宗教、政治上、若しくはその他の意見、国若しくは社会的身分、貧富、出生又はその他の状況に基づく区別又は差別なく享有する権利を有することを国際連合が宣言し、確認したことを想起し、

(b) 障害を理由にするあらゆる差別は平等の権利の原則と人間の尊厳の尊重に反するものであり、障害者の市民的、社会的、経済的、政治的、文化的生活への平等な条件での参加を阻害することを認識し、

(c) 障害者の人権を促進し差別をなくすためのあらゆる国際及び地域条約、宣言、規範、及び計画を考慮し、

(d) 障害者の機会均等化に関する基準規則が、国内、地域内、あるいは国際レベルにおいて、障害者により、障害者のために、または障害者とともに均等な機会を促進する政策、計画、施策、行動などを促進、策定、評価する上で重要な役割を果たしてきたことを多大な満足感を持って留意し、

(e) この条約と他の人権条約及び人権規範との間の関連性、及び本国際条約の実施における基準規則の有用性を強調し、

(f) 世界行動計画(1983〜1992)の採択以来、協力体制とインテグレーションの拡大、および障害の諸問題に対する意識向上を目指して、政府機関、国連機構の関連機関や組織、非政府組織などが多大な努力を払ってきたにもかかわらず、世界各地で起きている障害者に対する人権侵害と差別をなくすにはこれらの努力で不十分であったことを認識し、

(g) 障害者の機会均等化を達成するには、国際人権条約及びその他の人権規範に記される全ての政治的、市民的、社会的、文化的権利の享有、及び物理的環境、公共交通、情報通信に関する支援機器を含む情報・通信へのアクセシビリティを保障しなければならないことを認識し、

(h) 障害者及び多重又は加重な差別を受けやすい障害者が、平等の条件の下、社会的経済的、文化的、政治的生活の全ての面に完全に統合され、参加できることを阻む障害や障壁を取り除く責任が政府にあることを強調し、

(i) 極貧、保健ケアの欠如、家庭の内外での暴力、事故、アルコールと薬物の乱用、不十分な医療体制、組織的な人権侵害、加齢に対する適切なケアの欠如、環境要因、武装紛争など、障害の発生の増大につながる社会的状況を危惧し、

(j) 障害の原因となり、あるいは障害を重度化する要因を減らすため必要な策を講じることに最大の努力をし、

(k) 障害者、障害者の組織、及びそれらの代表者が障害者の権利に対する啓蒙と意識改革のために行ってきた努力を支援する世界の動きを意識し、

(l) 極貧、一般的な予防とリハビリテーションなどの保健・健康ケアの欠如、家庭内外での暴力、事故、アルコールや薬物の乱用、医療の不足、制度的な人権侵害、加齢に対する適切なケアの欠如、環境要因と職場における危険、武力紛争などといった社会的経済的、政治的要因が障害の発生の増大につながることを危惧し、

(m) 障害者の自己決定権を認め、障害者に影響を及ぼす政策、施策の決定にこれらの人が中心的な役割を果たすべきことを強調し、

(n) 国連の主な宣言や取り組みから、障害を持つ人々は今なお排除され続けていることを憂慮し、

(o) 発展途上国、先進国双方において同様に障害者が深刻な社会的不利を受けていることを認め、障害者の人権を特別に扱う条約がこの不利な状況を改善する上で重要な役割を果たすことを認識し、

(p) 地域の全般的な健全と多様性の維持に対して障害者が既に重要な貢献をしていることを認める。障害者がその人権と基本的自由を完全に享有し、完全参加できることの促進は、社会の人間的、社会的、経済的開発の大いなる進展と、貧困の軽減をもたらすことを認め、

(q) 障害者の権利の完全な享有及び開発への完全かつ平等な参加を保障するため国際協力が重要であることを強調し、

(r) 障害を持つ女性や女児は周縁化や多重の差別などに苦しみ、特に不利な立場にあり、これらの人々が完全にかつ効果的に人権と基本的自由を享有し、平等の原則に基づく完全参加が得られることを保障するにはこの問題に特化した措置が必用であることを強調し、

(s) 障害者が依然としてその人権を奪われ続けていることは、これらの人々が社会に参加し、貢献する能力を持たず、その資格もないという根深い、持続的な、不当な偏見や固定概念を反映するものであり、障害者が尊厳に値する個人であり、社会の完全な参加者であり、一員であることを保障することはこの条約の主目的の一つであることを認識し、

(t) 障害者の自立生活の達成の重要性を認め、

(u) 重度、重複、知的障害を持つ人々、少数者集団、先住民の障害者などは多重の差別に直面し、継続的に欠乏状態におかれ、放置され、権利が剥奪され、これらの人々および家族の特別なニーズに対処しなければならない切実な状況を認識し、

次の通り同意する:
第1部

全般



第1条

条約の目的及び基本的な原則
1.締約国は、次の原則に則って、この条約に定められる基本的な権利と自由を、障害者がその障害の発生、性質、重度、原因に関わらず享有できることを保障することがこの条約の目的であることを宣言する:

(a) 充実し、自立した生活を可能にする障害者の自律と自己決定の原則

(b) 社会生活の全ての側面において、平等の市民及び参加者として障害者の完全参加の原則

(c) 他の人との違っている権利を認める、多様性容認の原則

(d) 女性、男性、女児、男児の平等の原則。
第2条

定義
1.この条約の適用上:

アクセシビリティ (Accessibility)

「アクセシビリティ」とは、障害者を含む全ての人が物やサービスを容易に入手あるいは利用できる状態を意味する。この状態は、物理的環境、公共交通機関や情報通信技術及び支援機器を含む情報とコミュニケーション、社会的制度及びあらゆる決定と政策策定プロセスへのアクセスを促進するためのインクルーシブ及びユニバーサルなデザインや適応、及び法的、計画的手段などにより達成できる。

アソシエート (Associate)

「アソシエート」とは障害を持つ人の家族、助力者、介助者、親戚、擁護者を含む。

コミュニケーション (Communication) 

「コミュニケーション」方法には、音声によるコミュニケーション、手話によるコミュニケーション、指点字、点字、拡大文字、オーディオ、アクセシブル・マルチメディア、人による朗読支援、アクセシブルな情報通信技術を含むその他補完的あるいは代替的コミュニケーション方法が含まれる。

障害 (Disability)

 提案A

「障害」とは人の医学的状態もしくは健康状態と、その人を取り巻く社会的、経済的、物理的環境とのダイナミックな相互作用である。その人を取り巻く環境と、その人の身体的、感覚的、精神的、発達、学習、神経、その他の機能障害(impairment)(体内に機能不全もしくは疾患の原因となる生物もしくは媒介物が存在する場合も含む)との相互作用の結果一つもしくはそれ以上の日常生活活動への参加機会が制限される状態を言う。

 提案B

「障害」とは、人の身体的、感覚的、精神的、発達、学習、神経、その他の機能障害(impairment)(体内に機能不全もしくは疾患の原因となる生物もしくは媒介物が存在する場合も含む)とその人を取り巻く社会的、経済的、物理的環境とのダイナミックな相互作用であり、その結果その人が一つもしくはそれ以上の日常生活活動に参加する機会が制限されることを言う。

 提案C

「障害」とは、身体的、感覚的、精神的、発達、学習、神経、その他の機能障害(impairment)を有する人(体内に機能不全もしくは疾患の原因となる生物もしくは媒介物が存在する人も含む)が直面する身体的、社会的、意識的、文化的バリアが原因で、他の者と平等な条件で地域社会に参加する機会が奪われ、もしくは制限されることを言う。

差別 (Discrimination)

「障害を理由にした差別」 とは:

(1) 障害を理由にしたあらゆる区別、排除、または制限であり、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的、[言語的]、又はその他の分野において、障害者がその人権及び基本的自由を認識し、享有し、または行使することを害しまたは無効にする効果または目的を有するものをいう。

(2) 明確に障害を理由にしていなくても、下記のような行動、基準、慣行、政策、規則、取り決めなども障害を理由にした差別と言う。
(a) [それが障害者全般あるいは特定の障害を持つ人々にだけ不均衡な影響を及ぼす場合。]

(b) それが政治的、経済的、文化的、市民的、[言語的]その他いかなる分野においても、障害者がその人権及び基本的自由を認識し、享有し、または行使することを害しまたは無効にする効果または目的を有する場合。

(c) 客観的に判断して、それが正当な目的を達成するための常識的且つ適切な手段であると認められない場合。
(3) 適切な配慮の欠如、環境及び人々の態度に起因するバリアを取り除くことを怠ること、望まれるサービスへのアクセス及び市民的、文化的、経済的、政治的、社会的活動への完全参加を害する新たなバリアをつくることをいう。

(4) 障害を持つ人に[もっとも適した方法で]、これらの人々の[ニーズに適した最もインクルーシブな環境において]物、サービス、設備等を提供することの欠如を意味する。

(5) 障害を持つ人に関係する人(アソシエート)が、関わる障害あるいはその関わりを理由に望ましくない扱いを受けることを意味する。

更に障害には今後障害となり得る疑わしい状態、推定される状態、推測される状態、そのような可能性のある状態、認知できる障害、過去の障害あるいは過去の障害の影響、障害の特徴などが含まれる。

機会の均等 (Equality of opportunity)

「均等の機会」とは、社会が障害を持つ人を平等の尊厳と権利を持つ人間として扱い、適切な方法、調整、配置、積極的改善措置(affirmative action)、適切な配慮(reasonable accommodation)もしくは「特別措置」(special measures)を用いて全ての制限や制約を取り除き、障害者の可能性を引き出す環境を提供し、障害を持つ人と持たない人の事実上の平等を保障する状態を意味する。

言語 (Language)

「言語」には音声言語と手話が含まれる。

適切な配慮 (Reasonable Accommodation)

「適切な配慮」とは、障害を持つ人が基本的人権と自由を享有できるようにするため、[及び物、サービス、設備にアクセスできるようにするため、]必要かつ適切な措置をとることを意味する。

ユニバーサル/インクルーシブ・デザイン (Universal/Inclusive Design)

[「ユニバーサル・デザイン」とは…]

2.障害による差別には、複数の障害を理由に受ける差別、障害の種類や重度による差別、あるいは人種、民族、皮膚の色、性、言語、宗教、政治意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生、社会的地位、性的特性、障害などのうち一つ、あるいは複数の特性と障害を合わせた理由に夜差別も含まれる。

3.障害者が[他の人々と同等に人権と基本的自由を享有し][基本的人権と自由と完全に享有し]地域社会の生活に完全に参加できることを保障するための措置(例えば金銭的支援あるいは補助機器や技術支援の提供等)は均等な機会を保障する上で必要な措置であり、差別と解してはならない。

4.締約国が障害者の事実上の平等を促進することを目的とする特別な〔暫定的な〕措置をとることは、この条約に定義する差別と解してはならない。ただし、その結果としていかなる意味においても不平等な又は別個の基準を維持し続けることとなってはならず、これらの措置は、機会及び待遇の平等の目的が達成されたときに廃止されなければならない。
第3条

基本的な人権と自由
1.この条約の締約国は、障害を持つ人を含む、全ての人が生まれながらに自由であり、尊厳と権利において平等であり、人権と基本的な自由を完全且つ平等に享受できることを確認する。これらの人権と自由には次が含まれる:
(a) 生命の権利(自由権規約第6条が認めるとおり)

(b) 拷問又は残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは刑罰を受けない権利(自由権規約第7条が認めるとおり)

(c) 個人の心身の安全(integrity)を維持する権利(自由権規約第7条、こどもの権利条約第19条が認めるとおり)

(d) 奴隷の状態、隷属状態に置かれること、強制労働に服することなどを要求されない権利 (自由権規約第8条が認めるとおり)

(e) 個人の自由と安全についての権利(自由権規約第9条が認めるとおり)

(f) 自由を奪われたものの人道的に取り扱われる権利(自由権規約第10条が認めるとおり)

(g) 移動の自由(自由権規約第12条が認めるとおり)

(h) 法の前に人として認められる権利(自由権規約第16条が認めるとおり)

(i) 裁判所及び採決機関に対する権利 (自由権規約第14&15条が認めるとおり)

(j) 裁判及び裁決機関において私生活、家庭、もしくは家族の尊厳が保護される権利 (自由権規約第17条が認めるとおり)

(k) 思想、良心及び宗教の自由 (自由権規約第18条)

(l) 意見及び表現の自由、及び情報アクセスの権利 (自由権規約第19条が認めるとおり)

(m) 集会の自由 (自由権規約第21条が認めるとおり)

(n) 組織する自由 (自由権規約第22条、社会権規約第9条が認めるとおり)

(o) 家族の保護、婚姻する自由 (自由権規約第23条、社会権規約第10条が認めるとおり)

(p) 児童の権利 (自由権規約第24条、子どもの権利条約第23条が認めるとおり)

(q) 政治的、公的生活に参加する権利 (自由権規約第25条、女性への差別撤廃条約大7条が認めるとおり)

(r) 国際的な公的活動への参加 (女性への差別撤廃条約第8条が認めるとおり)

(s) 法律の前の平等及び法律による平等の保護 (自由権規約第26条が認めるとおり)

(t) 少数者集団に属する者の権利 (自由権規約第27条、子どもの権利条約第30条が認めるとおり)

(u) 財産を所有し、取り仕切る権利 (世界人権宣言第17条、女性への差別撤廃条約第13条)

(v) 労働の権利 (社会権規約第6条が認めるとおり)

(aa) 公正かつ良好な労働条件への権利 (社会権規約第7条が認めるとおり)

(bb) 社会保障の権利 (社会権規約第9条が認めるとおり)

(cc) 相当な生活水準に関する権利 (社会権規約第11条が認めるとおり)

(dd) 健康への権利 (社会権規約第12条が認めるとおり)

(ee) 教育への権利 (社会権規約第13条が認めるとおり)及び

(ff) 文化的な生活とレジャーに参加する権利 (社会権規約第15条が認めるとおり)
2.段落1の権利の範囲の解釈について、「世界人権宣言」及び各国連人権条約の権利の解釈を参考にするが、いかなる場合も本条約における権利の範囲の解釈が他の文書の範囲より狭いことはない。
第4条

締約国の一般的な義務
1.この条約の締約国は、
(a) その領域内にあり、且つ、その管轄の下にあるすべての個人に対し、この規約において認められる権利を尊重し保障し、確保することを約束する。

(b) 障害を理由とするあらゆる形態の不平等と差別を非難する。
2.この条約の締約国は、障害を理由とする差別を排除し、障害者の全ての人権と基本的自由の完全享有を促進することに同意する。そのために次のことについて努力する:
(a) この条約において認められる権利を実現するために必要な立法措置、行政措置、  その他の措置を取り、これらの権利と矛盾する習慣や慣行を排除する。

(b) 障害を持つ人々に対する平等と非差別の原則が自国の憲法又はその他適切な法律に取り入れられていない場合は、これらを取り入れ、立法措置やその他適切な方法により、これらの原則の実践的達成を保障する。

(c) この条約において認められる権利に矛盾する行動や慣行を控え、公的資格を有する人や機関はこの条約において認められる権利に即して行動することを保障する。

(d) 人、組織、民間団体などが障害を理由に行う差別を無くすために、あらゆる適切な措置をとる。
3.この条約の締約国は、この規約の第三部において認められる経済的、社会的、文化的権利のうち、直ちに実現可能な権利の側面は直ちに実現する。(これらの権利の享有に際して非差別の義務を含むが、それのみに限定するのではない)。又、これらの権利の他の側面は、自国における利用可能な手段を最大限に用いり、特に立法措置など、全ての適当な方法により、その完全な実現を発展的に達成する事を目指す。
第5条

救済措置と関連した義務
1.この条約の締約国は次のことを行う:
(a) この条約において認められる権利もしくは自由を侵害された人もしくは集団は効果的な救済措置を受けることを保障する。その侵害を行った人又は集団が公的資格で行動する場合も、個人の資格で行動する場合も等しく保障をする。

(b) 救済措置を求めるものの権利が権限のある司法上、行政上若しくは立法上の機関または国の法制で定める他の権限のある機関によって決定されることを確保すること。これには差別の結果として受けた被害に対して公正かつ十分な賠償又は満足の行く弁償をこの決裁機関に求める権利が含まれる。

(c) 救済措置が与えられる場合に権限のある機関によって執行されることを確保すること。
(2) 締約国は、障害者が効果的な救済措置を得られるようにするには、無料の法的支援の提供及び、手順や証言などを規定する既存の法律や慣行の修正又は柔軟な適用が必要となる場合があることを認める。
第6条

平等と非差別
1.この条約の締約国はその管轄下にある全ての個人に対して、障害を理由にしたいかなる差別もなく、この条約において認められる権利を尊重し、保障し、実現する。

2.全ての者は法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。このために、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人権、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、出生、障害、その他の地位などのいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護を全ての者に保障する。
第7条

権利享有における男女の平等
1.締約国は、障害を持つ女性や少女は多重の(multiple)差別を受ける可能性があることを認識し、女性や少女にも男性と同等の人権と基本的自由の享有を確保するには、女性の問題に特化した、集中的な措置(保護措置を含む)が必要であることを認める。

2.各締約国は全ての必要な措置をとり、この条約に定められる全ての権利の享有について女性も男性も同等の権利を確保することを約束する。
第8条

障害に対する意識(態度)を変える
締約国は、障害の性質及び障害を持つ人々に対する定型化された偏見を取り除き、地域社会を啓発するため、特に指導、教育、文化、情報、民間社会、メディアなどの分野において、即時的且つ効果的な措置をとる。
第9条

農村部もしくは遠隔地、島嶼、過疎地に暮らす人々の権利
締約国は、農村部もしくは遠隔地、島嶼、過疎地に暮らす障害者が直面する特別の問題を考慮し、これらの人々に対するこの条約の適用を保障するために必要なすべての適切な措置をとる。
第10条

重度の障害を持つ人々の権利
1.締約国は、重度の障害を持つ人々が特にその人権と基本的自由を奪われやすい立場にあり、特別なケア及び支援サービスを要することを認める。

2.締約国は、これらの人々が必要とする特別なケアとサービスを受けられ、虐待や放置から守られることを保障するためあらゆる必要な措置をとる。


第2部


第11条

生命の権利
全ての人間は、生命と生存に対する固有の権利を有する。この権利は法律によって保護される。何人も、理由なくその生命を奪われない。
第12条

拷問又は残忍な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは
刑罰を受けない権利
1.何人も、拷問又は残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意無しに医学的又は科学的実験(または診療行為)を受けない。

[.障害を有する人からの自由なインフォームド・コンセントが得られない場合、正当に権限を有する代理人の承諾がない限り、いかなる介入もあってはならない。]

[.全ての人は、実際の障害もしくはあると想定される障害を矯正、改善、あるいは軽減する目的の医学的もしくはその他の介入を無理やり、強制的に受けさせられることを拒否する権利を有する。]

3.締約国は全ての適切な法的、行政、社会的、教育的措置をとり、障害を有する者、特に障害を有する女性や子どもを、あらゆる形態の身体的もしくは精神的な暴力、傷害、もしくは虐待、放置もしくは怠慢、性的虐待を含む不適当な扱い又は搾取から保護する。
第13条

個人の自由と安全についての権利
1.全ての人は、個人の自由と安全についての権利を有する。

2.障害を持つ人々は、その障害のみを理由に本人の同意なく拘束、投獄、あるいは監禁されてはならない。ただし、この拘束や監禁が法に裏付けられ、公共の保健、安全、もしくは 他の者の権利擁護に必要であり、厳密に必要な期間中のみ拘束あるいは監禁される場合はこの限りではない。

2.  (a) 拘束あるいは監禁された障害者は、独立した公正な法廷において、このように自由を奪われたことの適法性と正当性について反論する権利を有する。
(b) 次の場合はこの拘束もしくは監禁に関する定期的な審査を求める権利が含まれる。(拘束もしくは監禁が継続的に正当であるかに関する審査を含む。)
(i) 拘束又は監禁の期間が法律又は裁判により明確にされていない場合。

(ii) 拘束又は監禁がその人の健康又は健康に関連する状態を理由にしている場合。
3.全ての障害者は、反対の主張が証明されない限り、法律の前に全ての法的能力を有する人として認められる権利を有する。

4.全ての障害者は、その障害の性質や重度に関わらず、裁判所及び裁決機関の前に平等とし、障害を理由にした一切の差別なく全ての訴訟手続きを受ける権利を有する。

5.裁判、裁決機関、行政その他の権限を有する機関における手続き及び関連事項において:
(a) 障害者は、いかなる場合も手続きを理解し、そこへの参加を可能にする言語及びその他のコミュニケーション形態が使用される権利を有する。

(b) (視覚、聴覚、言語障害者を含む)全ての障害者及び盲ろう者は、いかなる場合も、自分の意見を表明し,手続きに参加するために必要な支援を受ける権利を有する。

(c) 自分の権利を主張し、情報を理解し、コミュニケーションをとることが困難であると感じる障害者は、提供された情報を理解し、自分の決定、選択事項、優先事項などを伝えるために援助者を利用する権利を有する。

(d) 補助機器を使用する障害者は、いかなる場合もそれらの補助機器をしようできる権利を有する。
第14条

自由を奪われたものが人道的に取り扱われる権利



第15条

移動、移民、及び亡命の自由



第16条

アクセシビリティ
1.締約国は、障害者が物理的環境、公共交通機関、情報通信支援機器を含む情報とコミュニケーションにアクセスする権利を有することを認め、詳細な国内基準を設けるなどを含む発展的な方法で、生活の全ての場面において障害者の自由、自立、及び完全参加を保障する。特に次におけるアクセスを保障する:
(a) 公共の建物、道路、及びその他公共の目的に使用される施設(機関)

(b) 公共の交通機関とサービス

(c) 公共の住居と施設、もしくは公的資金で新築または改修された建物。民間企業も、住居もしくは施設を新築もしくは改修する際には、アクセシビリティを考慮することを奨励する。

(d) 公共及び民間のサービス、とりわけ健康と教育に関するサービス

(e) 雇用及び職場

(f) 情報通信、電子銀行サービス、報道・マスコミなどを含む情報と通信サービス。
2.締約国は障害者を生活の全ての面において支援するための新技術の研究、開発、促進を奨励すべきである。
第17条

移動(mobility)に対する権利
この条約の締約国は全ての障害者の行動の権利を認め、障害者に対して次のことを保障するためすべての必要な措置をとる:
(a) 障害者の可能な限りの自立を支援するため、高品質な移動支援用具、生活支援用具・機器類の入手を保障する。

(b) 公的助成金、その他障害に掛かる経費を軽減する措置を用いて、障害者が移動支援用具、生活支援機器・用具を低価格もしくは無料で容易に入手できることを保障する。

(c) 障害者に可能な限り自立した移動を可能にする物理的環境の設計・適応を保障する。
第18条

意見及び表現の自由、及び情報コミュニケーションへのアクセスの権利
1.障害者の表現の自由には、自らがもっとも適当と考える言語又はその他のコミュニケーション手段(点字、その他のコミュニケーション形態を含む)を使用する権利が含まれ、このコミュニケーションのモードが公的に認められ、この代替のコミュニケーション・モードにより、政府、公的機関、その他重要なサービスを提供する人や機関からの情報やサービスを受け取る権利も含まれる。

2.情報を受ける権利には、適時に、追加の費用を伴うことなく、全ての公知の情報が障害者(特に盲もしくは弱視の人、知的障害、認知発達障害、学習障害の人)にもアクセシブルな形態で提供される権利が含まれる。すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。

3.締約国はこの権利の完全な実現を達成するために必要な全ての支援を提供する。
第19条

言語領域における平等
締約国は障害者の参加を阻む、もしくは制限する言語的環境を改善すべきである。必要な法的、政治的、行政的措置により、特に次を保障する必要がある:
(a) 手話が国の一言語として規定されること。

(b) 国ごとに、手話使用者の参加を得て標準手話を開発し、手話通訳を養成することで、全ての人々のコミュニケーションを保障すること。

(c) 全てのテレビ、映画、その他映像メディアの音声情報には字幕又は手話通訳を付加し、全ての人々がその情報をアクセスできるようにすること。
第20条

私生活及び家庭が尊重され、家族が保護される権利、婚姻に関する権利
1.家族は、いかなる形態の場合も、社会の基本的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。

2.障害者は性への権利を有し、他の者と親密な関係を築く権利を有する。この権利は、全ての婚姻をすることができる年齢の障害を持つ男女が婚姻をし、且つ家族を形成る権利を含む。

3.障害を持つ人々は自由に、自己の責任において子どもの数及び出産の間隔を決める平等の権利を有する。又、この権利を行使するために必要な情報、性と生殖に関する教育、この権利を行使する方法などへのアクセスも確保されなければならない。

4.婚姻は、両当事者の自由かつ完全な合意なしには成立しない。

5.この条約の締約国は、婚姻中及び婚姻の解消の際に、婚姻に係る配偶者の権利及び責任の平等を確保するため、適当な措置をとる。その解消の場合には、児童に対する必要な保護のため、措置が取られる。

6.障害者は、児童の養護、保護、監護、養子縁組及びこれらに順ずる制度を定める国の法律において平等の権利を有する。

7.障害者は自分の生活のあり方を選択する平等の権利を有する。この権利には自分の世帯を作ること、家族と共に暮らすことなどの選択が含まれ、これらの選択を実現するために必要な金銭的またはその他の支援を受ける権利も含まれる。

8.締約国は障害を持つ人に対する家族からの家庭内暴力(ドメスティック・バイオレンス)及び虐待を犯罪とみなす。

9.障害者は自分の生活のあり方を選択する権利を有する。これには生活の場所の選択、一緒に暮らす相手又は単独で暮らす選択、家族を作る選択などが含まれ、これらの選択を実現するに必要な金銭的又はその他の支援を受ける権利も含まれる。

10.障害の性質、重度などに関わらず、全ての障害者は差別なく、且つ必要な支援を受けて地域に生活する権利を有する。

11.障害を持つ親(知的障害、精神障害を持つ親を含む)は、自分の子どもを家族の単位の中で養育するために必要な継続的且つ十分な社会的支援と援助を受ける権利を有する。締約国は、親の持つ障害を直接的もしくは間接的な理由としてその子どもが親から引き離されないため立法措置、行政措置その他全ての適当な方法をとる。
第21条

地域社会の一員として地域内に暮らす権利
1.締約国は全ての障害者が地域社会の一員として地域内に暮らす権利を認め、次のことを保障するために必要な全ての措置を行う:
(a) 障害を持ついかなる人も施設に収容されない保障。

(b) 障害者の地域生活を効果的に支援する様々な在宅(in-home, residential)及び   地域支援サービスを受けられる保障。

(c) 一般的な地域サービスが地域内に暮らす障害者にも利用可能であり、そのニーズに適応していることの保障。
2.この権利には、施設での生活を選ばない権利を含む。
第22条

障害を有する児童の権利
1.全ての障害を有する児童は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、国民的若しくは社会的出身、財産又は出生によるいかなる差別もなしに、未成年者としての地位に必要とされる保護の措置であって家族、社会及び国による措置について権利を有する。

2.すべての障害を有する児童は、出生の後直ちに登録され、かつ氏名を有する。

3.全ての障害を有する児童は、国籍を取得する権利を有する。

4.締約国は、障害を有する児童が、その尊厳を確保し、自立を促進し及び社会への積極的な参加を容易にする条件の下で十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める。

5.締約国は障害を有する児童が早期発見、早期介入、特殊ケアへの権利を有することを認めるとし、利用可能な手段の下で、申し込みに応じた、且つ、当該児童の状況及び父母又は当該児童を養護している他の者の事情に適した援助を、これを受ける資格を有する児童及びこのような児童の養護について責任を有するものに与えることを奨励、かつ確保する。

6.障害を有する児童の父母又は家族は、適切な情報、照会、カウンセリングなどを受ける権利を有する。これらの情報は、家族が児童自身について、また児童の充実した、社会へ統合された生活を送る潜在能力と権利について、肯定的な考えを与える方法で提供されるべきである。

7.障害を有する児童の特別な必要を認めて、5の規定に従って与えられる援助は、父母又は当該児童を養護している他の者の資力を考慮して可能な限り無償で与えられるものとし、かつ、障害を有する児童が可能な限り社会への統合及び個人の発達(文化的及び精神的な発達を含む。)を達成することに資する方法で当該児童が教育、訓練、保健サービス、リハビリテーション・サービス、雇用のための準備及びレクリエーションの機会を実質的に利用し及び享受することができるように行われるものとする。

8.障害を有する児童及び更に低年齢の人は通常の(regular)教育サービスへのアクセスの権利とその教育を受ける権利を有する。
第23条

政治的、公的活動に参加する権利
1.締約国は、いかなる差別もなく、性による差別もなく障害者の政治的権利を認め、障害者の政治的活動への完全参加を保障するための措置をとる。これらの措置には、特に次が含まれる:

(a) 障害者の投票する権利ならびに選挙される資格を保障するため、選挙制度に障害者の様々なニーズに合わせた、適切な、アクセシブルな、理解しやすい形態の情報,特殊且つ必要な機器類及び技術を導入する。

(b) 政党及び民間団体の活動に参加し、公務に携わる平等の権利を保障する。

(c) 全ての政策の策定プロセス、特に障害者に関係する課題に関する政策には、障害者および障害者組織の参加を保障する。

2.  (a) 全てのものは結社の自由についての権利を有する。
(b) 締約国は次の権利を保障するために、必要な手段を全て用いる:
(i) 障害者および家族や支援者が独立した組織をつくり、その主張を代表し自助活動を行う権利。

(ii) 障害者の権利の享有の完全達成をそくしんするため、これらの組織を認知し財政的な支援をする。
(c) この結社の自由の権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全もしくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することが出来ない。
4.締約国は、国際的に自国政府を代表し及び国際機関の活動に参加する機会を、障害者に対していかなる差別もなく確保するための全ての適当な措置をとる。
第24条

少数者の権利
1.民族的、宗教的又は言語的少数者又は先住者が存在する国において、それら少数者集団あるいは先住者集団に属する障害者は、その集団の他のメンバーとともに独自の文化を享有し、独自の宗教を信仰及び実践し、独自の言語を使用する権利を否定されない。

2.締約国は、少数者集団及び先住者の障害者も、これらの権利を平等に享有できることを保障するために必要とされるあらゆる積極的な方法をとる。
第25条

財産を所有し管理する権利
1.全ての障害者は、とりわけ障害を持つ女性は、単独で又は他の者と共同して財産を所有する権利を有する。

2.いかなる障害者も、ほしいままに自己の財産を奪われることはない。

3.障害者は銀行貸付、その他の形態の金融上の信用を受け、自己の金融上の事柄を自ら決定し、事業を行う権利を有する。知的障害を持つ人が、この権利を行使できない場合、その人の法的後見人がその人に代わり、その人の利益のためにその権利を行使できる。

4.障害者は、障害を持たない人と平等の条件で,また男女平等に,財産を相続する権利を有する。

5.締約国はこの権利が効果的に保護されるため、権利侵害を是正するのに必要な全ての法的及びその他の措置をとる。


第3部


第26条

健康およびリハビリテーションへの権利
1.全ての障害者は、到達可能な最高水準の身体的・心理社会的・精神的健康を享受する権利を有する。これは、保健およびリハビリテーションのサービスおよびケアが、全ての障害者に提供可能な状態であること、アクセシブルであること、低価格であること、そして受けるにふさわしい形である必要性を意味する。障害者は社会の他の構成員と同レベルの保健・医療ケアへのアクセスを持ち、さらに障害を理由に必要となる他のあらゆるサービスへのアクセスを持つべきである。

2.この権利を完全な形で実現するために、締約国は以下を含む適切な措置をとるべきである:
(a) 二次障害要因の防止、損傷の早期発見、早期介入、評価、処置に関するプログラムの導入。

(b) 障害者の機能レベルを改善もしくは最大化するのに必要とされる低価格で適切な治療や投薬へのアクセスの確保。

(c) 以下を含む、適切なリハビリテーション・サービスの提供:
(i) リハビリテーションの専門分野における人材育成と研修

(ii) 公共および民間施設でのリハビリテーション・サービス

(iii) とりわけ農村、遠隔地、往来が困難な地域、小島嶼や過疎地などに住む人々のための、地域に根ざしたリハビリテーション、支援グループ、代替的な管理体制

(iv) 補助具の提供と保守整備

(v) 差別、平等、尊重など障害の社会的な側面を取り入れた医療・保健ケアの履修課程
3.障害者およびその家族とケア提供者が、その管理とケアに完全な形で参加し、十分な知識を得た上でこれらに関する決定が行えるよう、締約国は必要とされる情報、教育、カウンセリングを提供するための適切な全ての措置をとるべきである。障害者への保健ケアやサービスは、インフォームド・チョイスとインフォームド・コンセントを基本原則として提供されるものとする。

4.障害者はプライバシーと機密保持の権利を有する。障害に関連する医療記録は本人の事前承諾なく第三者に公開されてはならない。

5.全ての保健およびリハビリテーションのサービスおよびケアが、全ての個人・グループ・少数者・障害者の文化を尊重し、さらにジェンダーについても考慮し、高い質で提供されることを締約国は保障しなければならない。

6.障害者とその組織は、障害者が利用する保健やリハビリテーションのサービスに関する決定へ参加する権利を有する。これには、法律や政策の策定、さらに保健やリハビリテーションのサービスの計画立案、提供、評価などにおける先導的な役割も含まれる。
第27条

教育への権利
1.教育への権利は全ての障害者が有する。教育は、人間としての潜在能力の完全な育成と尊厳の意識を指向し、人権及び基本的自由の尊重を強化するものでなければならない。

2.教育への権利には、自らの地域社会内でインクルーシブ教育を受ける障害児の権利(幼年早期介入へのアクセス、及び一般学校制度へ参加するための就学前準備へのアクセスを含む)と、この制度の中で障害を持つ生徒の完全参加を保障するためのアクセシブルなカリキュラム、媒体や技術、学習計画、建築環境など、必要とされるあらゆるサポートを受ける権利が含まれるべきである。

3.一般学校制度が障害者のニーズをまだ適切に満たさない場合、特別および代替的な学習形式を提供することもできる。ただしこれらは、生徒が一般学校制度で教育を受けられるように準備することを目的とし、一般学校制度と同等の水準と目標を反映する質の教育でなければならない。

4.特定の補助や代替的なコミュニケーション方式が必要な場合、これらは一般学校内もしくは特別教育学校で提供しなければならない。

5.聴覚に障害のある子どもは手話による教育を受ける権利を有する。各締約国は法的、行政的、政治的措置を講じて、手話に堪能なろう又は健聴の教師の採用を保障し、手話による質の高い教育を提供しなければならない。

6.障害者は、他者との平等に基づいて高等教育、職業訓練、成人教育への対等なアクセスを持つ権利を有し、これらへの有効なアクセスを保障するのに必要な経済的もしくは代替的な形の支援を受ける権利も有する。

7.全ての教員訓練学校の履修課程へインクルーシブ教育の要素が含まれるよう変更されることを保障するため、締約国は全ての適切な措置をとるべきである。この他、締約国はインクルーシブ教育に関する現任職員の現職研修を行うものとする。
第28条

労働の権利
1.障害者は、生産的なリソースやサービスへのアクセスを持つ権利、及び自由に選択または承諾した労働によって生計を立てる機会を得る権利を含めた労働の権利を有する。障害を持たない労働者と対等な機会と待遇の促進を目的として、この権利には職場へのアクセスを持つ権利、そして募集と雇用の過程および職場全面における適切な配慮への権利が含まれる。

2.締約国は以下の通り、この権利を擁護[促進及び実現]するための適切な処置を講じる:

(a) 求職と職の確保、職への定着、キャリアの昇進において障害者を制限または拒否する差別的な規定や慣行を根絶することにより、障害者が対等な機会の条件のもとで労働市場に参加し、対等な報酬を受けられることを確保する。

(b) 差別禁止法、割り当て雇用や納付金制度、特別措置、さらに税金の払い戻しや減額、報奨金、公共事業の優先契約など雇用者に対する奨励措置など、この権利を実現するための政策や建設的措置を採用する。

(c) 安全と保護、職場研修、有給休暇、その他の優遇措置、さらに全ての適切な争議解決制度へのアクセスに関して、職場での障害者が対等な待遇の享受を確保する。

(d) 農村や遠隔地域、小島嶼、過疎地域、ビジネス及び非公式部門などにおける障害者の自営業に対する政策的・資金的補助を保障する。

(e) 一般労働市場で働く能力を持たない可能性のある障害者のために、建設的で報酬のある仕事を保障し、一般労働市場への移行を含む職業的な昇進機会を提供する環境を持つ、地域に根ざした代替的な形の労働の開発を行う。

(f) 必要に応じて適応措置および補助を提供しながら、障害を持たない人と対等な条件で、職業ガイダンス、能力育成訓練、雇用サービスを含む、職業リハビリテーションおよび職場復帰サービスを提供する。

(g) この権利の実現を目指す上で、女性障害者や重複障害者を含む全ての種類の障害者のニーズへ取り組む。
第29条

社会保障および相当な生活水準に関する権利
1.締約国は、社会保障、社会保険、社会事業、及び相当な生活の質についての全ての障害者の権利を認める。

2.締約国は、自己及びその家族のための相当な食糧、衣類及び住居を内容とする、相当な生活水準についての、並びに生活条件の不断の改善についての障害者を含む全ての者の権利を認める。

3.障害者の場合、この権利には、必要となるサービス、補助具、その他障害に関連して必要な介助・援助の全てが含まれるものとする。

4.締約国は、貧困な環境のなかで生活する重度障害者および重複障害者の家族が、障害関連費用(レスパイト・ケアを含む)を負担するために国から補助を受ける権利を認める。補助する際、家族発展の意欲を阻害しないような形で提供すべきである。
第30条

文化的な生活、レクリエーション、及びレジャーに参加する権利
1.締約国は、全ての障害者が文化的な生活に参加する権利を認め、以下を保障するために必要なあらゆる措置をとらなければならない:
(a) 障害者が自己のためだけでなくそのコミュニティを豊かにするために、自らの創造的、芸術的及び知的な潜在能力を十分に活かす機会を有すること。

(b) 電子テキスト、点字、音声テープを含む様々なアクセシブルな形式、及びテレビ番組、映画、演劇などへの字幕の付加などを通して、文書情報へのアクセスを有すること。

(c) 劇場、美術館、映画館、図書館などの文化的な公演やサービスが行われる場所、およびホスピタリティ産業へのアクセスを有すること。
2.障害者による文化作品へのアクセスにおいて、知的所有権を保護する法律が不合理な、または差別的なバリアを築かないよう、締約国は必要とされるあらゆる手段を講じなければならない。

3.ろう者は、その固有な文化的・言語的アイデンティティに対する認知と支持を受ける権利を有する。

4.締約国は全ての障害者がスポーツ活動を含むレジャー活動に参加する権利を認め、以下を確保するために必要なあらゆる措置をとらなければならない:
(a) スポーツ活動の開催ならびにスポーツ活動への参加において均等な機会を持ち、他の参加者と同等に高い質の指導とトレーシングを受けられること。

(b) スポーツ及び他のレクリエーション活動を行う場所への有効なアクセスを有すること。

(c) スポーツやレジャー活動の主催者から提供されるサービスにアクセスを持つこと。
第31条

ユニバーサル/インクルーシブ・デザインへの権利
この条約の締約国は、それぞれの障害者の特定のニーズを満たすことのできるユニバーサル[インクルーシブ]デザインの製品、サービス、機材、施設を、全ての障害者が最小限の適応と費用で得られる権利を認める。
第32条

経済的・社会的・文化的権利の制限
締約国は、この条約の第3部で保障される権利に関して、その権利の性質と両立しており、かつ、民主的社会における一般的福祉を増進することを目的としている場合に限り、法律で定める制限のみをその権利に課すことができる。


第4部

締約国のその他の義務


第33条

統計とデータの収集


1.締約国は国際的に認められた基準および規範に沿った障害の用語および分類を採用し、これらと国内の分類システムを調和させ、データを相応に処理するべきである。

2.締約国は、障害者組織や研究機関との緊密な協力により、国勢調査や世帯調査などを通して定期的に障害に関連する情報を収集するべきである。このデータには、ジェンダー、先住民、少数者集団、農村部や遠隔地に住む人々、及びその他の関連集団の問題に関連した情報が含まれるものとする。

3.締約国は障害に関する統計および情報を収集、分析、整理し、集中的なデータ・バンクを構築する。全ての分類の障害者、障害者組織、とりわけ全てのレベルでの政治的・行政的な政策立案に関わる人々にとって、この情報をアクセシブルかつ活用可能にする措置をとる。これらの措置をとる際には個人のプライバシーを保護する必要性が考慮されなければならない。

4.締約国は、この条約が扱う、障害者とその家族や関連する人々の生活に影響する全ての分野について、障害者によるアクセスと参加に関する研究プログラムを開始ならびに支援するべきである。

5.データ収集、調査、政策開発、実施、評価の全段階において、締約国は障害者の積極的な参加を促進するべきである。
第34条

各国内の実施体制
1.締約国はこの条約の遵守を監視ならびに促進するために国内レベルの体制を整えなければならない。これには以下のような独立した国機レベルの関が含まれるべきである:
(a) パリ原則を遵守して活動する。

(b) 障害者および障害者を代表する組織との協議の上で設立される。

(c) 全国機関の政策やプロセスの形成において、障害者の継続的な関わりを促進するような構造を有する。
2.とりわけ、この条約の実施に関わる諸事項の責任が政府内の特定の担当部署に割り当てられることを、締約国は確保しなければならない。

3.全ての新しい法律、政策、プログラムなどの提案が障害者の立場にどのような影響を与えるか見極めるため、それらの開発段階において評価を行う制度を締約国は採用するべきである。
第35条

条約と委員会活動に関する周知
各締約国はこの条約、およびこの条約の第5部に従って設立された委員会の見解や勧告、その中でもとりわけ締約国に関連する事柄について、広く宣伝して周知するよう努めるべきである。
第36条

この条約と他の条約および国内法の関係
1.この条約のいかなる規定も、次のものに含まれる規定であって障害者の権利と自由に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない。

(a) 締約国の法律または慣行

(b) 締約国について効力を有する国際法

2.本条約のいかなる規定も、国、集団又は個人が、この条約において認められる権利もしくは自由を害する活動に従事し又はそのようなことを目的とする行為を行う権利を有すると解してはならない。


第5部

条約の適用


第37条

委員会の設置
1.この条約の適用を審査するため、全ての障害者とその家族の権利擁護に関する委員会(以下「委員会」という)を設置する。

2.この条約が発行される際、委員会は[10] [12] [18]名の徳望が高く公正で、この条約の対象分野での高い能力が認知されている専門家で構成する。委員会は:
(a) その過半数を障害者で構成しなければならない。

(b) 同人数の女性と男性で構成しなければならない。

(c) 委員会に必要とされる独立性と公正さの体面にそぐわない立場にある人を含んではならない。

(d) 独立した専門家として個人の資格で任務を遂行しなければならない。
3.委員会の委員の選出は、締約国から推薦された候補者の名簿より、衡平な地理的配分と障害経験、ならびに主要な法制度を代表する委員が含まれることに配慮しながら、締約国が無記名投票で行う。

4.各締約国は、締約国内の障害者組織から推薦された者の名簿より選出された、自国民一名の候補者を推薦できる。締約国内の障害者組織から推薦が出なかった場合、締約国は可能であれば障害者組織や他の適切な団体と協議の上で推薦する者を選出することができる。

5.最初の選挙はこの条約の効力発生の日から6ヶ月以内に行うものとし、その後は2年ごとに行う。国際連合事務総長は、各選挙日の4ヶ月前までに、全ての締約国に対し、2ヶ月以内に推薦する者の氏名を提示するよう書簡で要請する。同事務総長は推薦された全ての者をアルファベット順に並べて推薦を行った締約国を明記した名簿を作成し、推薦された者の経歴書と共に、選挙日の1ヶ月前まで締約国へ送付する。

6.委員会の委員の選挙は、事務総長により国際連合本部に招集される締約国の会合において行う。締約国の三分の二をもって定足数とするこの会合では、出席しかつ投票する締約国の代表によって投じられた票の最多数で、かつ、過半数の票を得た者をもって委員会に選出された委員とする。

7.委員会の委員の任期は4年間とする。ただし最初の選挙において選出された委員のうち5名の委員の任期は2年で終了するものとし、これらの5名の委員は、最初の選挙の後直ちに、最初の選挙が行われた締約国の会合の議長によりくじ引で選ばれる。

8.委員会の委員は再推薦された場合には再選される資格を有するが、どの委員も2回の完全な任期を越えて委員会に務めてはならない。

9.委員会の委員が死亡、辞任、または他の理由により委員会の任務を遂行できないと宣言した場合、この委員を推薦した締約国は、残りの任期を務める別の専門家を自国民より任命する。この新しい任命は委員会の承認を受ける必要がある。

10.国際連合事務総長は、委員会がその機能を効果的に発揮するのに必要なスタッフと施設を提供する。

11.委員会の委員は、総会で決定された条件に従って、国際連合の財源より報酬を受ける。

12.委員会の委員は、国際連合の特権及び免除に関する条約の関連箇所に述べられる規定に基づいて、国際連合の任務を遂行する専門家の便益、特権および免除を享受する。
第38条

締約国による報告
1.締約国は、次の場合に、この条約の実施のためにとった立法上、司法上、行政上その他の措置に関する報告を、委員会による検討のため、国際連合事務総長に提出する。

2.締約国は自国について、この条約が効力を生ずる時から一年以内に最初の報告を提出し、その後は5年ごとまたは委員会が要請するときに報告を提出する。

2.この条項に基づいて作成された報告には、この条約に基づく締約国による義務の履行の程度に影響を及ぼす要因及び障害を記載し、障害者組織との詳細で広範な協議に基づいて作成されるべきである。

3.報告の内容に関連する追加ガイドラインが必要であり、委員会が適切と認めた場合、委員会はこれを採用する。

4.締約国は自国の報告の草案を、報告の完成および事務総長への提出の[3、4,6ヶ月]前までに、各地方の言語およびアクセシブルな形式で、国民に広く閲覧可能な状態にするべきである。

4.締約国は自国の報告を、事務総長への提出後の可能な限り早期に、各地方の言語およびアクセシブルな形式で、国民に広く閲覧可能な状態にするべきである。
第39条

報告の審査
1.委員会は各締約国から提出された報告を審査し、委員会が適当と考える場合その意見を関係する締約国に送付する。その締約国はこの条項に従って、委員会より出された意見に対する見解を示すことができる。委員会はこれらの報告の審査時に、締約国より補足的な情報を要請することができる。

2.委員会は報告の審査において締約国代表者の参加を促す。締約国による報告の提出が著しく遅れた場合、委員会は報告のないままその締約国の状況を検討することができる。

3.委員会は、適当と考える一般的意見を採択すること、また国際連合および他の団体へ適当と考える勧告を提示することができる。

4.国際連合事務総長はさらに、委員会との協議の上で、専門機関および政府間組織へ、それぞれの専門機関および政府間組織の権限の範囲内にある報告の項目の写しを送付することができる。

5.委員会は、国際連合の専門機関ならびに諸機関、国際連合の地域委員会、さらに政府間組織および他の関連団体から、それぞれの活動分野内にありこの条約が扱う事項について、委員会による検討のために書面での情報の提出を要請することができる。

6.委員会は、国際連合の専門機関や諸機関、さらに政府間組織の代表者へ、それぞれの権限の範囲内にある議題が取り上げられる会議について、参加および発言を要請することができる。

7.委員会は、締約国が提出した報告の審査を補助するため、国際連合の専門機関や他の関連団体へ技術的援助を要請することができる。

8.委員会は、この条約の実施の促進を目的として、締約国や他の関連団体の間の協力分野を勧告することができる。委員会によるこのような勧告は、国際連合事務総長に対して行われるべきである。

9.委員会は、障害問題分野や他の関連分野における専門的知識を持つ非政府組織の代表者へ、委員会の活動を補助するための関連情報の提示を要請すること、および会議への参加や会議での発言を要請することができる。

10.委員会は、とりわけ締約国から提出された報告や所見に対する見解に基づいた、委員会の独自の考察や勧告が含まれる、この条約の実施に関する年次報告を、国際連合の総会に提出しなければならない。

11.国際連合事務総長は年次報告をこの条約の締約国、経済社会理事会、国際連合人権委員会、国際連合社会開発委員会、およびその他の関連組織へ送付する。
第40条

委員会の運営
1.委員会は、その手続規則を採択する。

2.委員会は、役員を二年の任期で選出し、委員長は障害者でなければならない。

3.委員会は、その任務を遂行するのに必要とされる期間開かれ、最低でも年一回は会合を開く。

4.委員会の会合は、国際連合本部および持ち回りで国際連合の地域委員会事務所において開催する。
第41条10

個人通報を受理する委員会の権限の承認
1.この条約の締約国は、この条約の定める個人的権利が締約国により侵害されたと主張する、締約国の管轄下にある個人又は個人に代わる通報を受理及び審議する委員会の権限を認めることを、この条項に基づいて何時でも宣言することができる。

2.通報は、締約国の管轄下にある個人又は集団であって、条約に定めるいずれかの権利が侵害されたと主張する者により、又はそれに代って提出することができる。個人又は集団に代わって通報を提出する場合は、当該個人又は集団の同意を得て行うものとする。ただし、かかる同意がなくとも申立人が当該個人又は集団に代わって行動することを正当化できる場合は、この限りでない。

3.通報は、書面で行うものとし、匿名であってはならない。委員会は、条約の締約国ではあるがこの議定書の締約国でないものに関するいかなる通報も受理しない。
(訳注:この部分は「女性に対する差別撤廃条約の選択議定書」に基づく。この文章もそのまま書き写したものであるため、「議定書」に触れている。この後も数箇所「条約」と書くべきところを「議定書」としているところがある。)
第42条

国内的救済措置の枯渇および受理の条件
1.委員会は、利用し得るすべての国内的救済措置が尽くされたことを確認した場合を除き、通報を検討しない。ただし、かかる救済措置の適用が不当に引き延ばされたり、効果的な救済の見込みがない場合は、この限りでない。

2.委員会は、次の場合、通報を受理することができないと宣言する:
(a) 同一の問題が委員会によってすでに審議されている、もしくは他の国際的調査又は解決手続きの下ですでに審議され又は審議中である。

(b) 通報が条約の規定に相いれない。

(c) 通報が明らかに根拠を欠いており又は十分に立証されない。

(d) 通報提出の権利の乱用である。

(e) 通報の対象となった事実が、当該締約国についてこの議定書が発効する以前に発生している。ただし、かかる事実がこの期日以降も継続している場合は、この限りでない。
第43条

暫定的措置の要請
1.通報が受理されてから理非の決定に到達するまでのいずれかの時点で、委員会は、該当する締約国に対し、通報の対象となった権利侵害の被害者に取り返しのつかない損害が及ぶ可能性を回避するために必要となり得る暫定的な措置を講ずるよう要請し、その緊急な検討を求めることができる。

2.委員会による本条第1項に定める裁量権の行使は、該当する通報の受理可能性又は理非に関する決定を示唆するものではない。
第44条

締約国への通報の伝達
1.委員会が該当する締約国に対する照会を行わずには通報が受理不可能と判断し、かつ、通報人である個人又は集団が当該締約国に対するその身元の開示に同意する場合を除き、委員会は、この議定書に基づき提出された通報は開示せずに、当該締約国の注意を喚起するものとする。

2.通報を受理する締約国は、6箇月以内に、委員会に説明書又は声明書を提出し、事実関係及び当該締約国によってとられた救済措置がある場合には、これを明らかにする。
第45条

通報の検討、意見の採択、およびフォローアップ
1.委員会は、個人又は集団により、若しくはそれらに代わり、並びに関係締約国によって提出されたあらゆる情報に照らして、この議定書に基づき受理した通報を検討するものとするが、この場合、この情報が当事者に伝達されていることを条件とする。

2.委員会は、この議定書に基づく通報を検討する際には、非公開の会合を開くものとする。

3.委員会は、通報を検討した後、通報に関する意見を、勧告があればこれと共に当事者に送付する。

4.当該締約国は、委員会の意見をもしあればその勧告と共に十分に検討した上で、6箇月以内に、委員会に委員会の意見及び勧告に照らしてとられたいかなる行動に関する情報も含め、回答書を提出するものとする。

5.委員会は、当該締約国に対し、同国がその意見又はもしあれば勧告に応じて講じたいかなる措置に関してもさらに情報を提出するよう促すことができるが、委員会が適切と判断する場合、かかる情報は、条約第43条に基づき当該国が後に作成する報告書に含めることができる。
第46条

調査手順
1.委員会は、締約国による条約に定める権利の重大又は組織的な侵害を示唆する信頼できる情報を受理した場合には、当該締約国に対し、情報の検討における協力及び、この目的のために関係情報に関する見解の提出を促す。

2.委員会は、当該締約国から提出された見解及びその他の信頼できる情報があれば、これらを考慮した上で、調査を実施し、委員会に緊急の報告を行うよう1名又は複数の委員を指名することができる。十分な根拠及び当該締約国の同意がある場合、調査に同国領域への訪問を含めることができる。

3.かかる調査の結果を検討した上で、委員会は、何らかの註釈及び勧告があればこれを添えて、これらの調査結果を当該締約国に送付する。

4.当該締約国は、委員会が送付した調査結果、註釈及び勧告の受理から6ヶ月以内に、その見解を委員会に提出する。

5.かかる調査は極秘に行うものとし、手続きのあらゆる段階において、当該締約国の協力が求められる。
第47条

調査報告へのフォローアップ
1.委員会は、関係締約国に対し、条約第46条に基づき行われた調査を受けて講じられたいかなる措置も、条約第38条に基づく報告書に含めるよう促すことができる。

2.委員会は、必要に応じ、前項にある6ヶ月の期間の満了後も、当該締約国に対し、かかる調査に応えて講じられた措置について通知するよう促すことができる。
第48条

締約国による調査手順への不参加に関する規定
1.締約国は、この条約の署名又は批准、若しくはこれへの加入の際に、第45条に定める委員会の権限を認めない旨を宣言することができる。

2.この条項の第1項に基づく宣言を行った締約国は、事務総長に対する通告により、いつでもこの宣言を撤回することができる。
第49条

報復からの保護
締約国は、その管轄下にある者が、この条約に従って委員会へ通報を行った結果として、虐待あるいは脅迫を受けないよう、あらゆる適切な措置を講ずる。
第50条

委員会の年次報告
委員会は、条約第39条に基づくその年次報告の中に、この条約に基づくその活動の概要を含める。


第6部

最終規定


第51条

寄託者
国際連合事務総長は、この条約の寄託者として指名される。
第52条

署名、批准、加入
1.この条約はすべての国による署名のために開放しておく。この条約は批准されなければならない。

2.この条約はすべての国による加入のために開放しておく。

3.批准書または加入書は国際連合事務総長に寄託する。
第53条

条約の効力発生
1.この条約は、20番目の批准書又は加入書が寄託された日から3ヶ月を経過した翌月一日から効力を生じる。

2.この条約が効力を生じた後に批准または加入する国については、その批准書または加入書が寄託された日から3ヶ月を経過した翌月1日から効力を生じる。
第54条

条約の改正または修正
1.条約の効力が生じてから5年間が経過した後は、いずれの締約国も、国際連合事務総長への書面での提出により条約の改正をいつでも要請することができる。事務総長は締約国に対し、その改正案を送付するものとし、締約国による改正案の審議及び投票のための締約国の会議の開催についての賛否を示すよう要請する。その送付の日から4ヶ月以内に締約国の3分の1以上が会議の開催に賛成する場合には、事務総長は、国際連合の主催の下に会議を招集する。会議において出席しかつ投票する締約国の過半数によって採択された改正案は、承認のため、国際連合総会に提出する。

2.改正は、国際連合総会が承認し、かつ、各国の憲法上の手続に従って締約国の3分の2以上の多数が受諾した時に、効力を生ずる。

3.改正は、効力を生じたときは、改正を受諾した締約国を拘束するものとし、他の締約国は、改正前のこの条約の規定と以前に受諾した改正内容により引き続き拘束される。
第55条

留保
1.国際連合事務総長は、署名、批准、または加入の際に行われた留保の書面を受領し、かつ、すべての国に送付する。

2.この条約の趣旨及び目的と両立しない留保は、認められない。

3.留保は、国際連合事務総長にあてた通告によりいつでも撤回することができるものとし、同事務総長は、その撤回をすべての国に通報する。このようにして通報された通告は、受領された日に効力を生ずる。
第56条

締約国間の紛争
1.この条約の解釈又は適用に関する締約国間の紛争で交渉によって解決されないものは、いずれかの紛争当事国の要請により、仲裁に付される。仲裁の要請の日から6ヶ月以内に仲裁の組織について紛争当事国が合意に達しない場合には、いずれの紛争当事国も、国際司法裁判所規程に従って国際司法裁判所に紛争を付託することができる。

2.各締約国は、この条約の署名もしくは批准またはこの条約への加入の際に、この条項1の規定に拘束されない旨を宣言することができる。他の締約国は、そのような宣言を付した締約国との関係において1の規定に拘束されない。

3.この条項の2の規定に基づいて宣言を付した締約国は、国際連合事務総長にあてた通告により、いつでもその留保を撤回することができる。
第57条

正文
1.この条約は、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、国際連合事務総長に寄託する。

2.国際連合事務総長は、この条約の認証謄本をすべての国に送付する。

3.国際連合は、点字、拡大文字、音声、マルチメディア、発達障害を持つ者のための理解しやすい文書、アクセシブル・ウェブサイトなど、障害者にアクセシブルな形式でこの条約を国際連合の公用語で公開する。





脚注:

 段落(a)から(k)はメキシコのワーキング・ペーパーA/_AC.265/WP.1、メキシコ条約案から抜粋したものだが、段落(g)のみに修正を加えた。段落(l)と(m)は、2003年4月9〜11日にエクアドルのキトにて開催された「障害者の権利及び開発に関する規範と基準に関する全アメリカ地域セミナーとワークショップ」の「セミナーの各ワーキング・グループの結果のまとめ」からの抜粋である。段落(n)から(u)は今回のバンコク会議で追加された。本文へ戻る

 採択される全ての取り決めは、障害者の完全なインクルージョン及びサービスを受ける最適の方法を障害者本人が決定する権利を尊重し、国が障害者の権利の完全享有に結びつかない分離あるいは隔離の方法で物やサービスを提供するようなことを承認したり奨励したりすべきでない。本文へ戻る

 参加者は、ユニバーサル/インクルーシブ・デザインの定義を条約に明記する必要性を指摘した。本文へ戻る

 参加者は、このような趣旨の定義を入れるならば、「インフォームド・コンセント」及び「正当に権限を有する代理人」を定義する必要があることに着目した。一部の参加者から、精神障害を理由に行われる強制治療は人権の侵害であると言う意見であった。本文へ戻る

 「障害者の機会均等化に関する基準規則」段落27及び33を参照。本文へ戻る

 参加者本文へ戻る

 参加者は、移民及び亡命に関する法律と慣行において、障害者への非差別と機会均等化を保障するには、更に検討を重ねる必要性を認識した。本文へ戻る

 会議参加者の中には、「自立生活への権利」の条項を次の通り明記することを提案した:
 「自立生活への権利」
1.締約国は障害を有する人々の自立生活(Independent Living)への権利を認める。
2.締約国は、障害者に対して、特に次の権利を認める:
(a) パーソナル・アシスタント(介助人)を雇用する費用を賄う経済的支援を受ける権利
(b) 障害者の自立生活を達成するために必要なその他の適切なサービスを受けるための経済的支援を受ける権利
参加者は、このような条項を設ける場合は「自立生活」(Independent Living)の定義が必要になる点を留意した。本文へ戻る

 国連総会決議48/134(1993年12月20日)「人権の促進及び擁護のための国内機構の地位に関する原則(パリ原則)」本文へ戻る

10 何人かの参加者は、第38条から47条を本条約草案に含めることを躊躇う意見を述べた。本文へ戻る

作成日 2003年12月11日
財団法人 全日本聾唖連盟

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