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「障害者の権利及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約」
に向けての地域ワークショップ
参加報告 (WFDアジア太平洋地域事務局作成)


10月14日
開会に際して、在タイ日本大使の高田氏が声明を読み上げた。「日本―ESCAP協力基金がこのワークショップの開催を支援している。びわこミレニアム・フレームワークの実施が重要である。日本政府はアドホック委員会が設置するワーキング・グループに加わる。障害者の国際人権条約の採択に向けて尽力する。条約制定のプロセスにNGOが参加することが重要である。」といった内容であった。

10月15日〜16日
事前にバーンズ博士が準備した条約の第一草案を4分割し、4つのワーキング・グループで討議を行った。高田理事は、「前文、定義、第1〜5条」を検討する第1グループに入ったが、この会議でろう者を代表していたのは高田理事一人であったため、全条約草案に関する修正、追加、削除などを急ぎ用意し、4グループ全てに配布した。高田理事は、第1グループでの討議を踏まえ、その後も合計3回ろう者の権利に関する修正案を書面にて提出した。

10月17日
午前中は、議長団(高田理事は副議長として参加)、各ワーキング・グループの代表者で構成される特別グループが本会議の「全般的な提案」を作成。ワーキング・グループ討議をもとにバーンズ博士が取りまとめた条約の第二草案が昼前にやっと配布されたが、この第二草案に高田理事の意見はほとんど反映されていなかった。

午後2時から6時半までの全体会議で第二草案が条項ごとに検討される。高田理事は再度ろう者のニーズと権利を説明し、書面で提出したろう者の主張は、ほぼ全面的に最終条約草案に盛り込まれることになる。

会議の終盤では中国政府,日本政府,インド政府が、モニタリングの部分(第二草案の第34条から47条)を全て削除しないと賛成しかねると発言。日本政府も,『この部分が残るのであれば,恐らく多くの政府は批准しないだろうと』強調する。この発言に対して、多くのNGOが反発した。高田理事も,「批准についてそんなに悲観的になる根拠はない。当専門家会議の理想を盛り込んだ内容を,政治外交的な理由で妥協するのはおかしい」と発言。結局これらの条項は,最終草案に残ることになった。


高田理事の提案によるESCAP草案の修正箇所は次のとおりである:

第1部 第2条 定義

「差別」の定義に〔言語的〕を追加:
(1) 障害に基づく区別、排除、または制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的、〔言語的〕、その他いかなる分野においても、障害者がその人権及び基本的自由を認識し、享有し、または行使することを害しまたは無効にする効果または目的を有するものをいう。

(2)-(b) それが政治的、経済的、文化的、市民的、〔言語的〕、その他いかなる分野においても、障害者がその人権及び基本的自由を認識し、享有し、または行使することを害しまたは無効にする効果または目的を有する場合。
「コミュニケーション」の定義を追加:
「コミュニケーション」方法には、音声言語によるコミュニケーション、手話によるコミュニケーション、指点字、点字、拡大文字、及びオーディオ・アクセシブル・マルチメディア、文字リーダー、アクセシブルな情報通信技術を含むその他補完的あるいは代替的コミュニケーション方法が含まれる。
「言語」の定義を「障害」や「差別」の定義と同格の標記として追加:
「言語」には音声言語と手話がある。
第2部 第18条 意見及び表現の自由、及び情報・コミュニケーション・アクセスの権利

訂正前の文章は以下のとおり:
1.障害者の表現の自由には、自らがもっとも適当と考える言語又はその他のコミュニケーション手段(手話、点字、その他のコミュニケーション形態を含む)を使用する権利を含み…
カッコ内の「手話」と言う言葉の削除。本条約は手話を言語として認めているので,「その他のコミュニケーション手段」の一つとして挙げるのはおかしい。

修正後のこの条項は下記のとおりとなる:
1.障害者の表現自由には、自らがもっとも適当と考える言語又はその他のコミュニケーション手段(点字、その他のコミュニケーション形態を含む)を使用する権利を含み…
第2部 第19条 言語の分野における平等

新たに第19条「言語の分野における平等」を追加:
締約国は障害者の参加を阻む、もしくは制限する言語的環境を改善すべきである。必要な法的、政治的、行政的措置により、特に次を保障する必要がある:
  1. 手話が国の一言語として規定されること。
  2. 国ごとに、手話使用者の参加を得て標準手話を開発し、手話通訳を養成することで、全ての人々のコミュニケーションを保障しなければならない。
  3. 全てのテレビ、映画、その他映像メディアの音声情報には字幕又は手話通訳を付加し、全ての人々がその情報をアクセスできるようにしなければならない。
第3部 第27条 教育への権利

以下の文章を追加:
5.聴覚に障害のある児童は手話による教育を受ける権利を有する。各締約国は法的、行政的、政治的措置を講じて、手話に堪能なろう又は健聴の教師の採用を保障し、手話による質の高い教育を提供しなければならない。
以上

作成日 2003年10月30日
更新日 2003年11月11日
財団法人 全日本聾唖連盟

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