2004年3月15日

総務大臣
麻 生 太 郎 様

財団法人全日本聾唖連盟
理事長 安藤豊喜

聴覚障害者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、当連盟は、昨年6月8日に山梨県甲府市において第51回全国ろうあ者大会を開催しましたが、この全国大会決議の趣旨に基づき、聴覚障害者の福祉に関し下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。

1.現在では、参議院議員比例代表選挙、衆議院議員小選挙区選挙においては、政党の「任意」という条件ながらも、手話通訳付政見放送が実現しています。しかし、2003年11月9日に行われた衆議院議員総選挙での手話通訳付政見放送は全体の半分以下にとどまっており、全くつかない政党もあります。聴覚障害者の選挙権を保障した政見放送とは言い難いのが現実です。さらに、参議院選挙区、都道府県知事選挙の政見放送に手話通訳を付けることは認められていません。

(1)  衆議院・参議院のすべての選挙、また都道府県知事選挙の政見放送は、政党の任意ではなく、国及び都道府県の責任による「手話通訳付きテレビ政見放送」として公営化して下さい。
(2)  すべての選挙公報番組に手話・字幕をつけてください。

2.公職選挙法一部改正により「選挙運動に従事する者のうち、専ら手話通訳のために使用する者」には「報酬を支払うことができる」とされました。これについては手話通訳者が選挙運動員と誤解される懸念があり、手話通訳者の社会的信用と公正・中立性にかかわる問題を残しています。

(1) 手話通訳者の社会的信用と公正・中立のため、手話通訳者については、「選挙運動に従事する者」に含めないよう改正して下さい。
(2) 改正までの間、通達等で「手話通訳のために使用する者」は、公正・中立を倫理として守る立場にあることを周知して下さい。

3.成年後見人に選挙権を保障してください。

公職選挙法では成年後見人は禁治産者に指定され、選挙権がありません。しかし、成年後見制度の説明や周知では、財産権の保護のみで選挙権がなくなることについての説明が一切ありませんでした。昨年4月からスタートした障害者支援費制度において、地方公共団体や厚生労働省は、障害者本人と事業者が直接契約するにあたって、成年後見人制度は障害者本人を保護し自己決定を尊重できるものとの指導があり、成年後見人になると選挙権がなくなることが分からないまま成年後見人になったという問題が起きています。成年後見制度は財産権を保護する等の権利擁護が目的の制度であるにもかかわらず、選挙権の行使が剥奪されるのは不当ではないでしょうか。早急に成年後見人が選挙権の行使ができるよう制度の改善をお願いします。

4.選挙期間中のFAX・携帯電話文字メールによる選挙運動を認めてください。

聞こえる人の場合は、電話による候補者への支援依頼ができますが、聴覚障害者にとって電話に代わるFAX・携帯電話文字メールを使っての依頼は、認められていません。聴覚障害者にも国民として、平等に選挙に参加する機会を保障してください。

5.職員定数条例にバリアフリーの一環として手話通訳を含めてください。

行政における住民サービスは、聴覚障害者へも他の住民と全く同じサービスを提供する責務を持っていることから、専門性を持った手話通訳者を必ず配置されるよう、職員定数条例にバリアフリーの一環として手話通訳を含めて下さい。

 以   上