2004年8月23日

公共サービス適切対応推進に関する意見
全日本ろうあ連盟

 「完全参加と平等」の理念のもとで私たち聴覚障害者が社会に参加していくためには、この社会から情報とコミュニケーションの面でのバリアが取り除かれる必要があります。
 公共サービスの利用においても、情報とコミュニケーションの面での不便さに加え、公共サービス従事者の聴覚障害者に対する理解にばらつきが見られます。
 以下、聴覚障害の特性を列記し、全てではありませんが、私たち聴覚障害者が共通して感じる「不便さ」を数例挙げます。
 そして、官庁窓口や公共サービス現場において、聴覚障害の特性に配慮した対応のあり方及び、従事者が聴覚障害者の理解をさらに深めるための要望事項を記します。

(1)  聴覚障害の特性について

(ア) 聴覚障害者は外見ではその障害が判別できないために、聴覚障害者自身が予め伝えない限り、その聴覚障害者の存在が周りにわかりません。
(イ) 聴覚に障害があるため、音声情報の入手に困難があります。また、音声言語によるコミュニケーションが不得手であり、教育を十分に受けられなかった聴覚障害者の存在があります。
(ウ) 手話を日常的なコミュニケーション手段とする聴覚障害者は手話による対応を必要とします。
(エ) 日常的なコミュニケーション手段とする聴覚障害者は筆談による対応を必要とすることもありますが、抽象的表現は避けることです。

(2)  公共サービスの利用に際しての不便さについて

(ア) 公共サービスの受付や窓口は、聴覚障害者が自分の障害を気楽に伝えられるような環境となっていません。(例:申し出制による簡易筆談器利用)
(イ) 公共サービスの説明などに必要な文字及び視覚的な資料が用意されていません。説明の内容が理解出来ないこともあります。
(ウ) 公共サービスにおける映像著作物に字幕と手話の付与がありません。(例:運転免許証更新時講習のビデオ)
(エ) 公共サービスの問い合わせ・予約・通報・連絡先にファックス・Eメールなど、電話以外の方法の公開がされていないところが多くあります。(例:社会保険事務所、税務署、警察、消防署、病院等)
(オ) 各官庁の責任において、全ての公共サービス機関に手話通訳が設置されているとはいえない状況にあります。
(カ) 各官庁の責任において、全ての公共サービスに手話通訳が用意されているとはいえない状況にあります。
(キ) 音声放送が聴覚障害者にはわかりません。(例:受付での順番待ち)
(ク) 緊急時・災害時の連絡体制が聴覚障害者に対応していません。(例:火災や津波など非常時の各(サイレン)警報、災害時の給水情報、交通運行情報)

(3)  聴覚障害の特性に配慮した対応について

(ア) 公共サービスの受付・窓口は聴覚障害者が自分の障害を気軽に伝えられるような環境にしてください。例えば、簡易筆談器は初めから受付・窓口のわかるところに設置ください。
(イ) 公共サービスの説明は文字による資料あるいはイラストや図表をふんだんに用いて視覚的にわかりやすい資料を用意してください。
(ウ) 公共サービスの説明及び広報に係る映像著作物は全てに字幕と手話を付与してください。運転免許更新時の講習に使用するビデオにも字幕と手話を付与してください。
(エ) 公共サービスの問い合わせ・予約・通報・連絡先にファックス・Eメールなど、電話以外の方法の公開をしてください。
(オ) 各官庁の責任において、全ての公共サービス機関に手話通訳を設置してください。
(カ) 各官庁の責任において、全ての公共サービスに手話通訳を用意してください。
(キ) 音声放送は全て文字など視覚化してください。例えば、受付は番号札制とし、電光掲示板でわかるようにしてください。交通運行情報も駅や停留所の電光掲示板が役に立っています。交通運行情報は最近技術発展のめざましい携帯端末などで利用できるよう、整備をしてください。
(ク) 緊急時・災害時の聴覚障害者への連絡体制を確立してください。

(4)  公共サービス従事者の聴覚障害者理解の促進について

(ア) 公共サービスのあり方に関し、聴覚障害者当事者組織の意見が定期的に出されるような体制を整備してください。
(イ) 公共サービス従事者の接遇研修カリキュラムに、簡易筆談器や無線・振動呼出機などの利用訓練を含めて、聴覚障害者の多様なコミュニケーションに対応できるよう、聴覚障害者への理解を深める内容の講義及び演習を盛り込んでください。
(ウ) 本人以外の同席を認めない公共サービスにおいても、手話通訳等コミュニケーション保障に関わる者の同席は認めるよう、従事者に指導してください。