「障害者基本法改正(案)」に関する意見書
財団法人全日本ろうあ連盟
- 唐突に出された「障害者基本法改正(案)」
- 障害当事者との充分な論議がないままに、「法改正(案)」の策定が進められ、今国会に提出されることを非常に残念に思います。
- 「国際障害者年」以来培ってきた「障害者の完全参加と平等」、またこの条文にも謳われている「障害者平等参画」の理念が言葉だけのものになってしまうように思われます。
- 「障害」の定義について
- 第2条「定義」による障害の規定が従来のままで改正されていません。
- WHOで採択され、平成14年策定された「障害者基本計画」にもある「ICF」の理念をいかして改正してください。
- 「基本理念」について
- 新しく第3条2「差別をしてはならない」に盛り込まれた理念が、従来からの第3条3「機会を与えられるものとする」の文言で、半減してしまいます。
- 支援費制度にある障害者自身の「自己選択」「自己決定」の理念に合致するよう第3条3の改正もお願いいたします。
- なお、第3条2「不当な差別」の「不当」は不要と思われます。
- 「努力」でなく「義務規定」へ
- 「国及び地方公共団体は・・・努めなければならない」の文言が随所にみられ、この法律に規定される多くがあくまでも努力目標でしかありません。
- 実行力のある法文への改正を求めます。
- 「第2章 障害者の福祉に関する基本的施策」への意見
- (医療・福祉・年金)第14条4
- 「・・・介助者等の人材の養成に努めなければならない」に、「手話通訳者」を加えて明記してください。
- (教育)第15条2
- 「・・・及び学校施設の整備、・・」を「教育環境の整備」に変更してください。
- 欠格条項の改正により障害者の職域は大きく広がりました。
- しかし、その職業に就くためには教育環境が整備されていなければ、折角の職域拡大の意義も薄れてしまいます。特に聴覚障害者の場合には施設(ハード面)の整備に止まらず、教育現場における手話通訳者の配置等のソフト面での整備が必要になります。
- (障害者の自立と職業)第16条
- 第16条に「雇用・就労環境の整備を講じなければならない」の文言を明記してください。
- 欠格条項が改正された現在、雇用・就労の環境整備は当然のことと考えます。特に聴覚障害者の場合は前述したようにハード面だけでなくソフト面での整備が必要になります。
- (情報の利用等)第18条
- 聴覚障害者にとって情報保障とコミュニケーションのバリアフリー化は不可欠のものです。
- 改正条文では「情報」のみであり、また内容がITの範囲になっています。
- 「障害者基本計画」にも記されたように「情報・コミュニケーション」と括り、「聴覚障害者のコミュニケーションのバリアフリー化」「手話通訳者等の施策の整備」を明文化してください。
最後に「障害者基本法」の改正が、いわゆる「障害者差別禁止法」制定のスタートになることを期待します。