2002年9月5日

日本障害者雇用促進協会
会長 椎谷 正  様

財団法人 全日本聾唖連盟
理事長 安 藤 豊 喜

聴覚障害者の福祉施策への要望について

時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上については、深いご理解とご配慮をいただき、厚くお礼申し上げます。
さて、当連盟は、本年6月9日沖縄県宜野湾市において第50回全国ろうあ者大会を開催しました。
この大会決議に基づき、聴覚障害者の福祉に関し下記の通り要望いたしますので、早期実現を心からお願い申し上げます。

1. 重度障害者介助等助成金による手話通訳の積極的な活用をはかるようにモデルケースを紹介するなどして、制度を企業や職業安定所職員に周知徹底させて下さい。また次の改善を行って下さい。

(1)障害等級制限や回数制限をなくし、必要としている聴覚障害者すべてのコミュニケーションや情報の保障を図れるようにしてください。
(2)手話通訳者の健康を守るために、配置基準や時間を考慮して複数の派遣を可能にするなど、制度を改善してください。
(3)手続き経路の簡略化、インターネットを活用した申請方法など、手続きを更に簡素化できるように改善してください

2.職業能力開発校に手話通訳者を設置し、また社外研修や資格取得のための講習に手話通訳者を派遣できる制度を新設して下さい。

(1)職業能力開発校は、新たに技術を身につけ、就職できるようにするために大切な場になっております。しかし手話通訳者が設置されていないために、聴覚障害者は学ぶに学べません。ノーマライゼーション理念に添う職業教育環境を整備するためにも、開発校への手話通訳設置をお取り計らい下さい。
(2)現在企業はIT時代に入りすべてコンピューター化されており、技術革新も目覚ましいものがあります。それに即した社外研修や技術取得のための講習が増えております。聴覚障害者であっても働く意欲を持ち、仕事を続けていくためには、新しい技術や知識を身につけていかなければなりません。そのためにも、社外研修などへの手話通訳派遣できる制度を新設してください。
(3)厚生労働省に対し、労働部門における手話通訳制度の充実を働きかけてください。

3.聴覚障害者の職場適応・定着のために全国的調査事業を実施するとともに、あわせて「職業別専門手話」の開発・普及事業を実施してください。

〔説明〕
・聴覚障害者は、職場のコミュニケーションや情報が不足しているために、人間関係の維持や新しい知識や技術の獲得が容易でなく、障害者の中でも職場定着率が一番低くなっております。
・こうした問題を解決するためには、聴覚障害者の職場適応の状態を全国調査し、科学的に分析し対策を講じる必要があります。
・また、職場の技術指導やコミュニケーションを円滑にするために、「職業別専門手話」の開発・普及事業を実施して下さい。

4.障害者作業施設設置等助成金制度に、聴覚障害者の連絡等をスムーズにするために「テレビ電話システム」を付け加え、聴覚障害者の職場環境の向上に努めて下さい。

〔説明〕
・聴覚障害者の中には文章を正しく読めなかったり書けない人が多くいます。この方々が情報を獲得し、コミュニケーションをスムーズにするためにも「テレビ電話システム」は有効な手段です。このような機器が使えるよう、積極的に運用して下さい。

5.「聴覚障害者職場定着マニュアル」「障害者雇用マニュアルコミック版3」を増刷し、 聴覚障害者雇用拡大、職場定着に役立てるようにしてください。

〔説明〕
・企業が聴覚障害者を雇用する際、「どのように対応したらいいのか」「コミュニケーションの方法は」「手話通訳制度の活用の仕方は」ということで戸惑っているとのことです。
・聴覚障害者自らが積極的に説明できれば良いのですが、言語機能にも障害があり、それが困難なのが現状です。
・この2つのマニュアルは、よい参考となるものと考えますので、増刷し企業へ配布して障害者雇用を啓発して下さい。

6.ろう学校での職業教育充実と職場定着のために、納付金制度を弾力的に活用し「就職準備講習会」を開催して下さい。また、企業向けの手話講習会も増設して下さい。

(1)ろう学校の卒業生が、自分の希望する企業に就職ができ、またしっかり職場定着できるようにするためには、ろう学校における職業教育や職場定着指導が有効と思われます。優秀な人材を企業に送るためにも納付金制度を更に効果的・弾力的に運用し、ろう学校で就職準備講習会を開催できるよう、お取り計らい下さい。
(2)聴覚障害者を積極的に雇用している企業に対して、納付金を有効に使い手話講習会を開催できるよう積極的に働きかけてください。

7.障害者雇用機会創出事業の積極的な宣伝と運用を行なってください。

〔説明〕
・障害者雇用機会創出事業を理解している企業はまだ少ないと思われるので、積極的にPRし、企業が積極的に活用できるようにしてください。

8.職場適応援助者(ジョブコーチ)制度を重複聴覚障害者にも活用できるように、手話のできる人材育成を図ってください。

・ジョブコーチ制度が本格化していく中で、あらゆる障害者に対応できる人材育成に重点が置かれようとしております。重複聴覚障害者への対応できるためにもジョブコーチの条件に「手話ができる」ことや養成のカリキュラムに「手話」を取り入れられるようにしてください。            

以 上