2002年9月26日

厚生労働大臣
坂口力 様

財団法人全日本聾唖連盟
理事長 安藤豊喜

聴覚障害者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、当連盟は、本年6月9日に沖縄県宜野湾市において第50回全国ろうあ者大会を開催しましたが、この全国大会決議の趣旨に基づき、聴覚障害者の福祉に関し下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。

1.「手話通訳事業」の拡充を図ってください。

(1)聴覚障害者が自立した生活を営み地域住民と共生していくためには、いつでも、どこでも公平に手話通訳の保障が受けられるよう、手話通訳設置及び手話通訳者派遣事業による都道府県及び各市または各圏域内の手話通訳ネットワーク機能の整備が必要です。
@手話通訳者派遣事業と手話通訳設置事業はセットで実施・充実を図って下さい。
A正規職員の専任通訳者(複数)とコーディネート担当職員を中心とする「手話通訳派遣センター」の設置を制度として創設してください。当面は、コーディネート担当職員を置くことと、専任手話通訳者がコーディネートを兼務している場合は過重な負担にならないよう複数の配置とすること等について指導して下さい。
B特別事業における手話通訳ネットワーク事業は、「手話通訳事業」の一つとして依頼者の自己負担を求めない形で充実、拡充を図って下さい。
(2)手話奉仕員養成事業と手話通訳者養成事業において、講師養成・登録試験にかかる経費を確保してください。
(3)緊急時における手話通訳の派遣が全ての都道府県・市町村で実施できるようにしてください。
(4)手話通訳者派遣事業の派遣範囲に公的資格取得講習会等も含めてください。

2.手話通訳士はその職務から職業的な地位を保障していかなければならないと考えます。他の国家資格と同等の専門性を必要とする職業として手話通訳士試験を国家資格に格上げしてください。

3.都道府県及び市町村福祉担当部局、また公立病院、介護保険のサービス提供機関、来年度から実施の支援費制度に関わる機関等、手話通訳者を常時必要とする公的機関に、正規職員として手話通訳者を複数採用するようにして下さい。

4.病院職員を対象にした手話講習会を厚生労働省の主管で実施して下さい。

5.聴覚障害者に対して専門的な支援を行っている「ろうあ者相談員」を、国の制度として組みいれてください。

6.ろう重複障害者が安心して生活できるよう、施策の充実を求めます。

(1) 重度・重複聴覚障害者への居宅支援および施設支援を、各都道府県で実施してください。
(2) ろう盲者へのコミュニケーション支援・移動介助制度を充実してください。
(3) ろう重複障害者の生活と職業の実態を全国的に明らかにしてください。

7.「聴覚障害者情報提供施設」を全国に設置するとともに、その機能の拡充にともなう職員の増員と身分保障、および設備の充実を図ってください。

8.聴覚障害者の補装具である「補聴器」にデジタル補聴器を認めてください。

また、補装具の支給制限を撤廃してください。

9.日常生活用具の機種を現状に合ったものに見直してください。

(1)「CS障害者放送」は聴覚障害者が手話や字幕を通して各種の情報を獲得する上で大切な役割を果たしています。この「CS障害者放送」を受信する専用のチューナーは、CS放送だけでなく字幕アダプターや緊急災害通報等の装置も含まれており、受信アンテナも含めて日常生活用具としての指定してください。
また、「パソコン」「テレビ電話」を日常生活用具に指定してください
(2)日常生活用具の負担金は、世帯単位でなく障害者本人の所得によってください。

10.著作権法を改正し、盲人のための点字による複製権規定と同様に、聴覚障害者のための手話付き・字幕付き放送及びビデオの複製権規定を新設して下さい。

また、著作権が改正されるまでの間、聴覚障害者の必要性を特別に認め、全国の「聴覚障害者情報提供施設」及び「特定非営利活動法人・CS障害者放送統一機構」が、他社の製作した番組やビデオに自由に手話及び字幕を挿入することを認めてください。

以   上