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第12回世界ろう連盟アジア太平洋地域事務局代表者会議
2000年12月7〜11日 タイ アユタヤ

議事録


出席者:

WFD RSA/P事務局長 高田英一
バングラデシュ Mr. Feroz Ahmed Mr. K. M. Zahid Hassan
香港 Mr. Sung Ah Man Mr. Choi Wai Hung
インド Mr. Onkar N. Sharma Mr. Deepak Prasad Sahay
日本 大杉豊 小椋武夫
韓国 Mr. Se-Joon An Mr. Yoon Ho Kim
マカオ Mr. Cheong Kong Chi Ms. Lok Leng Lao
マレーシア Mr. Mohomad Sazali Shaari Ms. Sariah Ibrahim
モンゴル Mr. Lhagvajav Dashdendev Mr. T. Tsedenbal
ネパール Mr. Raghav Bir Joshi Mr. Binaya Bahador Basnet
ニュージーランド Mr. Anthony Walton
パキスタン Mr. Muneeb Mansoor Ms. Yasmeen Akhtar
フィリピン Ms. Maritess Racquel A. Estiller Mr. Julius G. Andrada
シンガポール Mr. Lim Chin Heng Ms. Low Jarn May
タイ Mr. Bonlert Khanapornworakarn Ms. Nilawan Pitipat

オブザーバー:

WFD理事長 Ms. Liisa Kauppinen
WFD副理事長 Mr. Leonard A. Mitchell
スウェーデン Ms. Kerstin Kjellberg
タイ Mr. Anucha Ratanasint
ラオス Ms. Oudalay Rangsy Ms. Vilaihong Inkhamhuang
ベトナム Mr. Le Huu Thang Mr. Pham Van Hai Ms. Ngo Thi Thanh Van

<<1日目 (12月8日) >>

1. 開会挨拶 WFD RSA/P事務局長 高田英一

高田事務局長は、参加国の数が今までで最大の14ヶ国となり、さらにオブザーバーとしてベトナムとラオスが参加したことに対する喜びを表し、「タイろう協会は小さな組織として出発したが現在は大きく育っており、これは支援を通してラオスとベトナムの参加を実現したことからもよくわかる。ミャンマーとカンボジアについては相手国の政府から承認が出ず参加できなかったが、このような協力関係がろうあ者の地位向上につながる。そして強い協力関係にはこのような会議に集まって直接交流することが不可欠である」と述べた。

2. 歓迎のことば タイろう協会会長 アヌチャ・ラタナシント

ラタナシント会長は「アユタヤ」の手話と歴史を簡単に説明し、出席者全員に感謝の気持ちを表した。また、タイろう協会が代表者会議の主催者となった経緯を説明し、「初めて主催する国際会議であるので力不足が心配であったが、3日間、情報交換を進め、親睦を深めながらいい会議ができたらうれしい」と述べた。次にタイろう協会の誕生と生い立ちを紹介するビデオが放映された。ビデオでは、タイろう協会の事務所、パソコン教室、バイクと自動車の講習会、タイ手話の本、ろう者が作った木工製品や工芸品などが紹介された。最後にタイろう協会の役員を紹介し、挨拶を終えた。

3. 挨拶: WFD理事長 リサ・カウピネン

カウピネン理事長は今回で4回目のWFD RSA/P代表者会議への参加となることを説明し、「私はタイろう協会の努力を絶えず見守ってきたが、タイの力、そして発展振りは素晴らしい。また、AP各国での積極的な運動、そして地域の発展に対する高田事務局長の熱心な活動には感心している」と述べた。次に、WFD理事会に高田氏に加えて韓国のカン氏が入り、AP地域出身者が2人となったことを説明し、AP地域の発展にたいする満足を表した。そして最後に「WFDとして、アジア太平洋地域と連携して運動できることをとても嬉しく感じている」と述べた。

スウェーデンろう協会代表 カースティン・ケルバーグ

スウェーデン代表者は9日から参加するため挨拶は明日に延期された。

4. 出欠の確認/自己紹介

参加国(14ヶ国)及びベトナム、ラオスの代表者はそれぞれ自己紹介を行った。今回の会議を欠席した国はオーストラリア、中国、インドネシア、イラン、スリランカであり、このうちインドネシア、イラン、スリランカから欠席通知がなかった。

次にWFD副理事長のミッチェル氏が自己紹介を行い、「AP会議は前回のオーストラリアに続いて2回目の参加であり、色々学んで行きたいと思う。また、2003年にカナダで世界会議を開催するので、皆様に是非来てほしい。今日参加しているカウピネン理事長は経験と知識が非常に豊富であり、私は彼女から多くを学んだ。皆様にもこの機会に多くを学んでほしい」と述べた。

高田事務局長は、「2年後の世界会議はカナダで開催されるので、参加資金の準備を進めてほしい。また、主催国のカナダにもできるだけの援助を要請する」と述べ、最後にAP会議を準備したタイろう協会のスタッフを紹介した。

<<休憩30分>>

5. 会議スケジュールの説明

高田事務局長は会議の3日間のスケジュールを簡単に説明し、問題がないことを参加者に確認した。

6. 前回代表者会議(オーストラリア)議事録の承認 (添付資料)

前回の代表者会議(オーストラリア・ブリスベン)の議事録は満場一致で承認された。

7. 議事案の採択

議事案は承認された。

8. 活動報告(1999年7月〜2000年12月)

WFD RSA/P事務局長報告の前に、WFDの活動についてカウピネン理事長から報告が行われた。

カウピネン理事長は次の5点について報告した:1)WFD事務局と出版物、2)アジア太平洋やアフリカなどのWFDの各地域、3)国連、4)世界の人口変動、5)テクノロジー

カウピネン理事長はWFD事務局について、WFDは17ヶ国が集まりイタリアで設立されたこと、そして現在は120の加盟国までに発展したと説明した。事務局はイタリアのローマに30年以上置かれ、1987年にフィンランドに移された。以前は加盟国も少なく、仕事も少量であったが、発展するにつれ人的・資金的資源の必要性も大きく拡大した。その後「国連障害者の10年」により集められた資金で建てられたフランスの国際障害センターに事務局を移したが、途中で資金が出なくなったため、スウェーデンろう協会の負担でスウェーデンろう協会内に事務局を移し、日本やフィンランドなどの国からも援助を受けて運営されていた。現在のWFD事務局は再びフィンランドに設置されている。

WFDはWFDニュースを発行しており、世界各国へ送っている。事務局のもう一つの活動として、WFDはろう者組織の運営に関するマニュアルを1993年に出版し、現在はこの改訂作業を進めている。改訂されたマニュアルは、組織の運営、国際的な結びつきの確立、通訳サービス、手話の指導、ろう教育など、さまざまな情報が含まれている。さらに、政府からの資金調達などについても効果的に利用することができる。マニュアルは近日中にWFDのウェブサイトに掲載され、2003年のWFD世界会議(カナダ)において6ヶ国語で配布される予定である。

世界中の8地域のうち、アジア太平洋地域、中央アメリカ・カリブ海地域、東・南アフリカ地域、東ヨーロッパ・中央アジア地域、南アメリカ地域、ヨーロッパ地域の6地域はWFDの活動に広く関わっている。さらにアラブ地域もWFDと提携することを望んでいるが、現在は管理者レベルがほとんど健聴者である。アラブ地域には22の国があるが、将来のろう者コミュニティのリーダーとなれるようなろう者はまだ少ない。このためWFD理事会はアラブ地域事務局を暫定的なものとして受け入れた。また、新しいWFD理事の一人はクウェート出身である。WFDの評議員会において最も参加が多いのはアジア太平洋地域とヨーロッパ地域である。カナダ、アメリカ、メキシコは地域の確立を検討している。スウェーデン、フィンランド、デンマークは、アフリカ地域に資金援助を行い、定期的な会議の開催を可能にしている。アフリカの一部の国では、ろう者組織の運営にあたるよく訓練された指導者がいるため、国の貧しさに関わらず、リーダーとして強い役割を果たしている。しかしながら全てのアフリカ諸国にこのようなリーダーが存在するわけではない。

カウピネン事務局長は高田事務局長と共に国連関係の国際障害同盟(IDA)の会議に出席しており、世界の障害者団体と会う機会を持っている。二人は国連特別報告者の専門家パネルのメンバーでもある。各国は「国連障害者の機会均等化に関する基準規則」の実施に努めているが、規則を無視している国もまだ多い。国連はこのような国をなくすよう努力しているが、障害者団体も政府が基準規則に従うよう強く働きかける必要がある。基準規則の中には、障害者に関係する全ての政策の計画立案に障害者の代表を入れること、つまり当事者を直接関わらせることが述べられている。ろう者の場合は手話の社会的地位が低いということが問題の一つであり、政府に手話の重要性を認めさせる必要がある。ろう者は手話での情報がないと会議などに効果的に参加できない。各障害者団体との協力も不可欠である。WFDは重要課題として規則の普及に努めているが、AP各国も同じく普及に取り組まなければならない。

国連の統計によると、とりわけアジアにおいて人口が増えており、ヨーロッパでは逆に減少している。水、食料、電気などの需要増加による問題が今後予想されている。全ての開発途上国は、保健や社会経済的な問題に直面している。貧困なろう者は裕福なろう者よりも機会が狭く、これが差別による被害を一層悪化させている。国連はこれらの問題を解消するための事業を進めている。

最後にテクノロジーの問題である。聴こえない人を手術により聴こえるようにする医療に関連して研究者は新しい技術の研究を進めており、2002年には結果が得られると予想されている。一例として、現在医師により実験が進められている遺伝子治療があげられる。2002年以降、ろう者のための聴覚医療に関して、医師の関心が高くなると予想されている。

新たに生まれるろう者の数は減るが、ろう者全体の人口(6千万人)は減らない。将来的に遺伝子治療が提供される可能性はあるが、人工内耳は現在我々が直面している医療問題の一つであり、WFDはこの問題に関する方針を持つ。我々は自分自身だけではなく、政府や国連と協力して活動する必要がある。

※シンガポールからの質問:人工内耳の問題はわかったが、遺伝子治療の正式な名称を教えてほしい。

※カウピネン理事長:性転換治療に似ていると思われるが、正式な名前はわからないので、わかったら報告する。また、結果が好ましいものかどうか、現時点では把握できていない。この数年間、視覚に関する技術開発のほうが進んでいるのは確かである。

※高田事務局長:テクノロジーの進歩によって、人としての問題が忘れられてしまうことが問題。医療技術の発展について、我々は広く協力する必要がある。

※フィリピンからの質問:1995年に中国で開催された女性の人権に関する会議に、ろうの女性は参加したか?

※カウピネン理事長:ヨーロッパ、アメリカ、アフリカなどからろうの女性が参加した。去年の9月、ニューヨークにおいて、ろうの女性が国連のもとでアフリカ、ラテンアメリカ、及びヨーロッパで活動するボランティアとして研修を受けた。全てのろう者組織は、ろうの女性のためのプログラムを設置し、男性との平等を実現することができる。国連の調査によると、今もなお一部の国で女性の地位と権利が抑圧されている。WFD事務局長のキャロルリー・アクイリンは人権問題を担当しているので、女性問題については彼女が熟知している。

※ネパールからの質問:2002年以降、遺伝子治療の発展によってろう者が排除されることについて、WFDはどう感じているか。遺伝子治療からろう児の権利を守るため、WFDは新しい方針書を作成するべきでないか。

※カウピネン理事長:その意見には賛成するが、ろう児は自分で治療を受けるか受けないか選択することができる。医師の利益を優先させない限り、ろう者コミュニティが全てなくなってしまうということはない。ろう者の数が少なくなったとしても、WFDはろう者のために存続する。

※高田事務局長:ろう者が将来、科学の進歩によって全員聴こえるようになったとしても問題ではない。ろう者の社会的地位が低く抑えられているというのが問題であり、これにWFDは取り組まなければならない。

※インド:インドの場合、声が出ることが大切だ、という政策があり、人工内耳はいいものとして広まっているが、聴こえなくても問題はないと我々は感じている。ろうの子どもが生まれても、ろうのままで生きていく、というのが認められるべきである。

8.1. WFD RSA/P事務局長報告 (添付資料)

高田事務局長は添付資料をもとに報告を行った。

8.2. WFD RSA/P加盟国報告(カントリー・レポート) 8.2.1. オーストラリア

欠席。報告書は当日配布された。

8.2.2. バングラデシュ

バングラデシュの報告書は配布されていなかったため、報告は後に回された。

8.2.3. 中国 (添付資料)

欠席。報告書は事前に配布された。

8.2.4. 香港 (添付資料)

香港ろう協会は添付資料をもとに報告を行った。

※インドからの質問:中国との関係はどうなったのか。まだ別の国として認められているのか。

※高田:国連でもまだ別の国として認められている。本当は中国がこれについて報告するべきだが、今回は出席していない。

※カウピネン理事長は「聴覚障害(hearing impairment)」という曖昧な表現に対する不安を示した。「世界ろう連盟は、世界難聴者連盟との合意で、全ての関係文書においてろう(Deaf)という言葉を使う。さらに、世界保健機関でも、ろうと難聴の違いが明確に規定されている。ろう者は話し言葉、手話、書き言葉で区分され、難聴者は聴力(decibel level)で区分される。」

※日本:報告書の教育と関連サポート・サービスに関する項目1.8について説明してほしい。

※香港:ろう者は減ってきている。だから教育する子供も減ってきて、一人当たりの負担が拡大し、健聴者の学校へのインテグレーションという形式、すなわち聴こえる人と同じ教育となってきている。インテグレーションは政府の方針であり、ろう者の場合は聴こえないということでこのような環境での学習は困難だが、同じレベルの教育となるように政府はいろいろ検討している。

※高田事務局長:ろう教育は我々にとって非常に重要な問題であり、今後も慎重に検討していく必要がある。

8.2.5. インド (添付資料)

インドろう協会は添付資料をもとに報告した。

※フィリピンからの質問:報告書の項目6で、盲人には航空運賃の割引があるのにろう者にはないと書いてあるが、これはなぜか。政府からのろう者への援助がない、ということか。

※インド:飛行機については、盲人や肢体不自由の人は介助者を必要とするため、50%の割引が認められている。汽車やバスでは、ろう者にも50%の割引が認められている。盲と肢体不自由の場合は、介助者も割引の対象となる。

※フィリピン:障害者に関する政府の政策があるはずなので、平等な待遇が得られるよう、政府に強く働きかける必要があると感じる。

8.2.6. インドネシア

欠席、報告書なし。

8.2.7. イラン

欠席、報告書なし。

8.2.8. 日本 (添付資料)

全日本ろうあ連盟は添付資料をもとに報告した。補足として、日本政府から外国への援助に関する資料を配布し、これを精読した上で世界各国にある日本大使館に申請するよう促し、全日本ろうあ連盟も協力するとの意志を表した。

※シンガポールからの質問:日本はAP地域の牽引国になっているが、マレーシアのような、率先的な提案をあまり出さないのはなぜか。日本からの行動は弱いように思うが、それについてはどう感じるか。

※日本:全日本ろうあ連盟には47の加盟団体があり、それらが世界会議に広く参加し、学び、知識を持ち帰り、運動を広めている。少しずつだが着実に前進している。日本も強力な提案を出せるように努力するので見守ってもらいたい。

※シンガポールからの質問:オーストラリアとマレーシアでろう青年のキャンプが開催されたが、日本からの参加はなかった。ろう青年が指導者としての能力を育てる良い機会なのに、なぜ参加しないのか。

※日本:日本のろう青年の一部は、様々な機会が拡大し十分であると感じ始めたため、ろう運動に対して関心を示さないろう青年が増えてきた。ただし差別はまだ存在するので、指導者としての研修や他のろう者との交流は必要であり、参加が拡大するように今後も招待してほしい。

※パキスタンからの質問:テレビでは、手話通訳者の映像の他に、字幕は提供されるのか。

※日本:両方ともろう者のアクセシビリティにとって重要であるので、提供範囲が拡大するよう我々は努力している。

※高田事務局長:ろう青年キャンプについて、間近に案内が届いたため、参加が困難となった。全国に広げる必要があるため、早めに情報を流してほしい。

8.2.9. 韓国 (添付資料)

韓国ろう協会は添付資料をもとに報告を行った。

<<昼食>>

午後2時再開

8.2.10. マカオ (添付資料)

マカオろう協会は添付資料をもとに報告した。

8.2.11. マレーシア (添付資料)

マレーシアろう連盟は添付資料をもとに報告した。補足として、「政府は、政府の負担で2000年以降から実施される5つの通訳サービスを承認した。マレーシアろう連盟は、地域のろう者研修ワークショップを開催し、現在も取り組みを進めている。電気通信に関しては、マレーシアろう連盟は通信リレー・サービス事業についてノキアのマレーシア支部と交渉中である。また、マレーシア政府は2001年以降の、ろう者による情報技術の利用推進の計画立案を進めている」と述べた。1999年12月にマレーシアで開催されたろう青年キャンプについても報告した。

※高田事務局長:報告にあるマレーシア手話の本をぜひ見たい。

※マレーシア:将来は各加盟国に無料で配布する予定である。

※フィリピンから質問:ノキアのマレーシア支部に、どのような機器、もしくはサービスを要請しているのか。

※マレーシア:ろう者の為の通信リレー・サービスである。携帯電話が安価になったため、ろう者はこれを購入することができるようになった。

8.2.12. モンゴル (添付資料)

モンゴルろう協会は添付資料をもとに報告した。

※フィリピンからの質問:モンゴルに通訳は何人くらいいるのか。

※モンゴル:まだかなり少ない。主に筆記でやっている。

※カウピネン理事長からの質問:アメリカ手話の本を翻訳、出版したと報告書にあるが、なぜアメリカ手話なのか。モンゴルには独自の手話があるのではないか。全ての国が自国の手話を育てることが重要である。

※モンゴル:モンゴル独自の手話はそれだけでは不十分なため、アメリカ手話を混ぜている。将来的にはモンゴル手話を発展させ確立したいが、現在は数が少ないので無理。

8.2.2. バングラデシュ(保留中) (添付資料)

バングラデシュからの報告書が配布されたため、バングラデシュろう連盟はこれをもとに報告した。

※シンガポールからの質問:報告書にろうの学生が250人とあるが、バングラデシュは大きい国であるのに、わずか250人であるのはなぜか。

※バングラデシュ:確かにろう学生の人数は少ないと感じているが、ろう教育の発展には努めている。

※カウピネン理事長:WFDでは過去にろう児について国際的なアンケート調査を実施した。バングラデシュからも回答はきたが、ろう教育は始まったばかりのようである。韓国、マレーシアなど一部の国は既にろう教育政策を広く進めているが、バングラデシュを含めた他の国ではまだ普及しておらず、レベルにかなりの格差がある。この格差をなくすには、我々全員の努力と協力が必要である。

※インド:報告書では、「ろう」の他に「聴覚障害(hearing impaired)」という言葉が使われている。団体では「ろう」と「聴覚障害」は別々に扱われているのか、または一緒なのか。

※バングラデシュ:ろう者も聴覚障害者も一緒に受け入れるため、難聴者にも声をかけている。

8.2.13. ネパール (添付資料)

ネパールろう者・難聴者連盟は添付資料をもとに報告した。補足として、ネパール政府からの支援を得たことにより、台湾で開催されたアジア太平洋ろう者スポーツ大会にサッカーチームを派遣することができたと報告した。

※高田事務局長からの質問:ネパールは組織が三つに分かれている。それをなぜ一緒にできないのか、理由を説明してほしい。

※ネパール:スウェーデンとの協議で統一された規則を作ったが、デブコダ氏が規則を破り、新しく独自の規則をつくった。そのときの問題が尾を引いて、今に至る。最初は一つだったものが分裂したということである。

※インド:とにかく三つの団体を一つに統一する必要がある。

※ネパール:我々もそう感じているため、統一に向けて最大限努めている。

8.2.14. ニュージーランド (添付資料)

ニュージーランドろう協会は添付資料をもとに報告を行った。報告は、白人種と有色人種が共に協力する連合の成立、そしてろう者の主導権について強調した。また、2002年にニュージーランドでろう青年キャンプを開催する意志を表明した。

※高田:マオリ族と一緒に活動を始めたということはとても好ましい。

8.2.15. パキスタン (添付資料)

パキスタンろう協会は添付資料をもとに報告した。

※高田事務局長からの質問:報告の中に、アメリカ手話と国際手話を教えていると書いてあるが、なぜアメリカ手話なのか。

※パキスタン:これは十分なパキスタン手話がないからであるが、できる限りパキスタン手話を集めるように努力している。

※カウピネン理事長:以前、パキスタン手話の本を見たが、アメリカ手話が混ざっている。これは問題だと感じる。

※パキスタン:パキスタンの手話を教え、少しずつ知識を積み重ねているが、国際的な会議ではアメリカ手話が必要である。パキスタン手話が不十分なため問題が多かったが、今はアメリカ手話によりこれは解消されつつあるので、アメリカ手話を教えることが問題だとは感じていない。

※タイからの質問:パキスタン手話を集めて、それを本にするのはどうか。他国の手話を取り入れたら混乱するのではないか。

※パキスタン:複数の国からではなく、一つだけなので問題はない。

※高田:WFDは、自国の手話の大切さ、そしてそれを発展させる重要性を強調している。国際手話は問題ないが、他国の手話を取り入れるのはWFDの方針に反している。

8.2.16. フィリピン (添付資料)

フィリピンろう連盟は添付資料をもとに報告した。

高田事務局長は、全日本ろうあ連盟とフィリピンろう連盟の間の連絡が円滑に進んでいないことに対する懸念を示し、フィリピンろう連盟も同様の意見を表した。両者は、全日本ろうあ連盟のアジアろう者友好基金事業について、後に個別に話し合うことに合意した。

<<休憩30分>>

8.2.17. シンガポール (添付資料)

シンガポールろう協会は添付資料をもとに報告した。

※日本からの質問:手話の指導は誰が行うのか。手話の指導方法について、ろうの教員は外国の人から訓練を受けるのか。また、手話通訳者の認定制度はあるのか。

※シンガポール:YMCAはASLを教える独自のプログラムを実施している。シンガポールろう協会はASLとSSLの両方を教えている。資金的に可能であれば、通訳を海外研修に派遣することもある。また、シンガポールろう協会は3レベルに分かれた手話講座を行っており、卒業生の多くは、手話通訳者としてのボランティア活動に積極的に参加している。

※日本:ろう者向けのコンピューター研修はどのように行われているのか。

※シンガポール:シンガポールろう協会はろう者向けにコンピューター講座を無償で開講し、政府からコンピューター機材の提供を受けている。シンガポールろう協会は中古コンピューターをインドネシアに譲るようオーストラリアの世界会議で要請されたのでこれを実施しようとしているが、今のところインドネシアとの連絡がないため実現していない。

※フィリピンからの質問:福祉とCISSのスポーツ活動は分ける必要があると感じるが、なぜ一緒にやっているのか。

※シンガポール:本当は別々にしなければならないのだが、人数が少なく、分けてしまうと活動ができなくなってしまう。CISSのロベット氏と相談し、問題ないと言われたので、このままにしている。CISSは我々の事情を理解し、これを認めた。

※香港からの質問:アメリカ手話も教えているのか?

※シンガポール:手話の指導は、アメリカ手話のプログラムとシンガポール手話のプログラムの両方で行っている。スウェーデンの指導方法など、さまざまな国を参考にしながら、これらを取り入れてプログラムを組んでいる。香港の方式も是非教えてほしい。

8.2.18. スリランカ

欠席、報告書なし。

8.2.19. タイ (添付資料)

タイろう協会は添付資料をもとに報告を行った。報告の途中で子供向けに制作したビデオを映し、読み書きだけでなく手話を通した教育を進めて行き、全国的にこのビデオを配布したいとの意志を示した。また、ラオス、ミャンマー、カンボジアのろう者にたいする支援についても報告した。

※韓国からの質問:私はタイに長い間住んでいるが、手話通訳の依頼方法がわからず、これを問題と感じている。

※タイ:手話通訳の養成プログラムはこれからである。今まで整理されていなかったが、これから取り組んで行く。

8.2.20. ベトナム及びラオスからの報告(新規項目)

高田事務局長はこの2ヶ国について、「ベトナムとラオスはWFDに加盟していない。まだろう協会として独立していないが、設立後はAP事務局に加盟するということなので、オブザーバーであるが特別に報告してほしい」と述べた。

※ベトナムの報告:ベトナムではろう者組織が設立されておらず、連絡先も一定していない。南ベトナムでろう者が集まり、皆が少しずつ学んでいる。南ベトナムからろう者が組織化されつつあり、北に情報が広がっている状況である。また、フランス人が南ベトナムで啓蒙活動などを行っている。まだ組織は設立できていないが、我々は少しずつ力をつけている。

※ラオスの報告:この会議に集まった皆様に会えてとても嬉しく感じている。ラオスの最大の問題は、ろう教育が不十分ということである。政府からの補助は一切ない。ろう者は病気などで病院に行っても、通訳がいないので話が通じなく困っている。昔はろう教育が全くなかったため、未就学のろう者がたくさんいる。タイに見習って1992年に設立された障害者のための学校が一つだけ存在する。ろう者はバイクの運転も許されない。また、ラオスで手話を勉強する機会はなく、会議等でコミュニケーションをとる方法もない。ろう者が集まりもっと話し合う必要があると思う。特に教育分野においてろう者のための政策を政府に発展させてほしいが、政府がろう者を認識しているかもわからず、会う機会もない。

※インドからの質問:タイが隣接しているので、タイろう協会に援助を要請してはどうか。

※タイ:援助は行っているが、アジア各国からの協力が必要なので、インドからの助成も要請したい。

※高田事務局長:アジア太平洋諸国の一部は非常に貧しく、ろう者の機会も非常に少ない。ベトナム、ラオスなどは特に遅れており、ろう者が必要とする通訳や手話がほとんどない。我々はベトナム、ラオスを広く支援し、今後は会議に参加できるよう情報を積極的に送る必要がある。また、ベトナムとラオスがこの会議を通して知識を拡大し、自国での活動に結びつけることを強く希望する。

※日本からの質問:教育もない、ろう者のセンターもない、手話通訳もない、何もない、ということだが、開発途上国におけるサービスの開発について、カウピネン理事長からアドバイスを要請したい。

※カウピネン理事長:これは非常に複雑かつ重要な問題である。全ての加盟国は、「国連障害者の機会均等化に関する基準規則」の採択について知らされている。WFDは国連と協力して、ろう教育と機会均等化の促進、ろう者団体の設立、そしてこれらに対する政府の責任を政府に向けて働きかけている。先進国のろう者は高いレベルの教育を受けているので、開発途上国におけるろう者コミュニティの発展に貢献することができる。日本のJICAという制度もこの一つである。スウェーデンなどの北欧の国は、アフリカ諸国に広く支援を行っている。フィンランドは、中央アジア地域を支援している。同様に、アジア太平洋地域は互いを支援することが重要である。

9. 2000〜2001年のWFD RSA/P活動方針 (添付資料)

高田事務局長は添付資料に沿って、アジア太平洋地域事務局の2000年〜2001年の活動方針について説明した。

※日本からの意見:項目4のJICA、及び項目5の標準手話に関して追加したい。JICAの事業についてWFDのAP加盟国に情報を流しているが、日本政府はJICA研修の受入国を決めており、この受入国に含まれない国は受け付けられない。従って受入国に含まれている範囲での呼び掛けにしてほしい。次に、項目5の標準手話については、一つの国に複数の手話が存在する場合があるので、ろう者コミュニティが一つの標準手話に合意する必要がある。

※高田事務局長:JICAについては、日本の政府が受入国のリストを発表する。この中から研修生が選ばれるため、リストに含まれていない国は受け入れられない。韓国やシンガポール、オーストラリア、ニュージーランドは入っていない。標準手話の整理については、強制的に統一するということではなく、少しずつ統一していくということである。

次に高田事務局長は日本政府からの補助について、日本代表に説明を要請した。

※日本:配布した資料をよく読み、それぞれの国の日本大使館に問い合わせてほしい。マレーシアはこの補助を受けて本を出版した。ただしこの補助は継続のできない短期支援であるため、短期間で事業を終わらせなければならない。事前に準備を行い、見通しをつけてから、補助を申請してほしい。また、申請した国全てが補助を受けられるということではないので、前もって申請し、通らなかった場合は重ねて申し込んでほしい。

※高田事務局長:今の説明であったように、日本大使館を待つのではなく、支援計画を全て立てた上で積極的に申し込んでほしい。マレーシアの場合は申請する前に事業計画を全てまとめた上で日本政府と交渉し、本を作る事ができた。必要であれば全日本ろうあ連盟が支援すると申し出ている。

モンゴルの代表者は、このような情報は政府にではなく、モンゴルろう協会に直接連絡してほしいと要請し、政府に連絡してもろう協会に情報が届かないことを説明した。高田事務局長は、地域事務局と全日本ろうあ連盟はモンゴルろう協会に資料を送付しており、他の所に出すということはないと述べた。

タイの代表者は、ベトナムやラオスへの支援は政府間ではできないと指摘し、これを解決する方法として、AP事務局や世界ろう連盟から支援の確立を国連に働きかけることを提案した。国連がこの支援を承認かつ支持することを述べた文書が入手できれば、効果的に支援を行うことができる。高田事務局長はこの提案に賛成し、政府がろう団体の設立を認めない国については、国連から開発途上国政府へ文書を出すよう要請すると述べた。

最後に、アジア太平洋地域事務局に加盟していない国を調べ、これらの国での組織の設立とWFD加盟の推進を活動方針に追加するよう要請が出た。高田事務局長は活動方針への追加を承諾し、未加盟国への働きかけを各加盟国に要請した。ニュージーランド代表は、以前にパプアニューギニア、フィジー、サモアの代表と会い加盟を勧めたが、現時点では加盟する意志がなかったことを説明した。その後活動方針は満場一致で採択された。

<<2日目 (12月9日) >>

初めに、2日目から参加したスウェーデンろう協会の代表が自己紹介を行い、「皆様と会えて本当に嬉しい。タイろう協会とは良い関係で協力している。最初にタイろう協会と共に仕事をした時と比べ、タイは大きな力をつけてきており、運転免許の取得を実現し、素晴らしい活動を続けている。スウェーデンはアジア太平洋地域の他の国とも協力しており、このような関係が実現できてとてもうれしく感じている」と述べた。

10. 今後のWFD RSA/P代表者会議

10.1. 第13回WFD RSA/P代表者会議、2001年、香港 (添付資料)

第13回AP会議の主催者である香港ろう協会から、AP会議の準備状況について説明が行われた。

主催における最大の問題は、開催資金の財源である。これについて香港ろう協会は政府と交渉したが、政府側は、障害者に割り当てられる補助金が少なく、その補助金もすでに他のところに割り当てられてしまったのでAP会議に対する支援は難しい、と支援に消極的であった。政府は補助金を様々な障害者団体に平等に分配しているが、繰り返し要望を出した結果、12万ドルの補助金が決定し、香港ろう協会はAP会議の主催を決定した。各国からの報告で様々な活動が積極的に進められていることを非常に嬉しく感じているので、香港でのAP会議を情報交換の場として、できる限りのことはしたい。資金的に参加が困難な国もあると思うが、集まることが重要なので、参加できるよう努力してほしい、と香港ろう協会の代表者は述べた。

ニュージーランドの代表者はワークショップ講演者の選出方法、そして飛行場への各代表の到着時間が異なる中での出迎えの方法について質問した。香港の代表者は数カ国の講演者を予定しており、後日詳細を報告すると述べた。飛行場の出迎えについては、タイろう協会の今回の取り組みを見習い、可能な限り円滑に進めるよう努力すると説明した。

マレーシアの代表は、第1回通知のプログラムでAP会議と分科会が同時進行していることについて問題があるのではないかと質問し、香港ろう協会の代表はこれに対して、このプログラムは最終決定ではないので変更を検討すると回答した。

高田事務局長は、ベトナムとラオスはタイろう協会の支援で参加しているが、香港ろう協会は同様な支援を提供できるか質問した。香港ろう協会の代表は、できるだけの支援をしたいが、これは香港ろう協会の理事会で協議する必要があるので即答はできない、と答えた。

日本の代表者は、全体の宿泊期間がかなり長く、ろう学校の視察など、別の日ではなく、会議期間に入れることはできないかと提案した。香港ろう協会の代表者は期間の短縮を検討すると答えた。

会議の登録費用に関する質問に対し、香港ろう協会の代表は、代表者は一人50米ドル、オブザーバーは一人250米ドルを予定しており、詳細は決定次第連絡すると答えた。この登録費用に学校とセンターへの訪問が含まれるかどうかは未定であり、次回の通知で知らされる。

フィリピンの代表者は、今回の会議の連絡先がAP事務局とタイろう協会の2つであったことで混乱が生じたと説明し、次回から一つに統一してほしいと要望を出した。インドの代表者もこれに賛成した。高田事務局長は、これは情報の行き違いをなくすために行われたと説明し、統一できるか検討すると答えた。

ニュージーランドの代表者は、会議の当日に配布される資料で混乱が生じないよう、報告や関連資料は期限までに送付するよう各国に要請した。

香港ろう協会の代表者は、参加費について資金的な問題を避けるため、期限までに全額支払うよう全ての国に要請した。これに対し韓国の代表者は、海外送金は非常に手数料が高く、現地での支払いを望むと述べた。香港ろう協会の代表者は、期限までに送金することを強く希望するが、出欠を前もってはっきりと伝えてもらえれば、現地での支払いでも問題ない、と答えた。

10.1.1. 会議の日程(WFD50周年とあわせて開催)

高田事務局長は、イタリアでの50周年記念と日程が重ならないように注意するよう、香港ろう協会に要請した。

会議プログラムの期間短縮について票決が行われ、8カ国が期間の変更なしに賛成したため、期間は変更されないことが決定した。

高田事務局長は2日目の会議を終わらせる前に、明日議論されるAP規約について簡単に説明を行った。オーストラリアのAP会議において、AP規約起草委員会として5人の委員が選出された。規約起草委員会はこの作業に取り組んだが、オーストラリアで日本案が承認されたのに関わらず、マレーシア案、マカオ案などが再び出され、意見の相違により規約をまとめることができなかった。このため明日の会議で採決を行う。AP規約起草委員の一人であるシンガポールのメイ・ロウ氏は起草作業の経過報告を行い、明日の採決に備えてそれぞれの案を入念に検討するよう、参加各国に要請した。

<<3日目 (12月10日) >>

10.2. 第14回WFD RSA/P代表者会議

オーストラリアで開催された前回のAP会議において、2001年以降のAP会議は隔年開催とすることが決定された。隔年開催となると、第14回AP会議は2003年にカナダで開催される世界ろう者会議との共催となる。

カウピネン理事長は、2年毎の代表者会議は情報交換に不十分と感じることを表した。ヨーロッパでは毎年開催されており、毎年集まることで気運が高まり、運動も活発になっている。AP地域は開発途上国が多いため、隔年開催への変更は発展の勢いを止めてしまう可能性がある。また、 2002年はアジア太平洋障害者の10年が終わる年であり、2002年にAP会議を開催してこれを確認するべきではないか、とカウピネン理事長は提案した。

韓国、タイ、インド、シンガポール、香港、ネパール、日本も代表者会議の毎年開催に賛成するとの意見を示した。この最大の理由は、隔年開催であると情報交換と地域発展が遅れる恐れがあることである。ニュージーランドの代表者は、隔年開催は資金的な問題を解消するために決定されたものであり、従って資金的に可能であれば毎年開催できると述べた。日本の代表者は、隔年開催は去年の決定であり、毎年開催を新たにこの会議で提案できると述べた。

パキスタンの代表者は、2002年にAP会議が開催されるならば、パキスタンは主催国として立候補する意志があると表明した。高田事務局長は、AP10年の最終年である2002年は非常に重要な年であり、さらにパキスタンが主催国として立候補を表明しているため、隔年開催の決定は変更しないが、2002年はAP10年の最終年ということで例外として開催することでどうか、と提案した。

マレーシアの代表者は、AP10年の最終年には日本で大規模な最終式典が開催されると述べ、これとは別にパキスタンで代表者会議をやるというのは資金的に困難であるため、代表者会議を日本でRNNと一緒に開催してはどうか、と提案した。

パキスタンの代表者は、パキスタンろう協会としてはパキスタンの発展を含めて、各国の発展に貢献したいと思い立候補したが、全員の協議で開催国を決定してほしいと述べた。

高田事務局長は、代表者会議の日本開催を決めても、日本は資金的な理由から主催できるか即答できないと述べ、代表者会議は決定どおり2年に1回開催とし、主催国が立候補した場合、すなわち開催が可能であれば毎年開催することを提案し、採決を行った。14カ国の内10カ国の賛成でこの提案は採択された。

その後、ニュージーランドは2005年のAP会議の主催者に立候補する意志を表明し、韓国は  2007年の世界ろう者会議に立候補する予定を伝えた。この場合、代表者会議も主催することになる。

<<休憩30分>>

高田事務局長は、休憩時間中にパキスタンの代表者と話し合った結果、新しいAP規約で選出される運営委員会に2002年AP会議のパキスタンでの開催の検討を委ねることを提案し、これは 14カ国中10カ国の賛成で承認された。また、各加盟団体のRNN会議への参加を支援するよう、AP事務局から全日本ろうあ連盟に要請を出すことが決定された。

11. 国際会議/行事

11.1. WFD50周年記念(2001年)

カウピネン理事長はWFD50周年記念の行事について説明を行った。「ろう者組織は他の障害者組織と比べても歴史が長いということで、50周年記念は盛大にやりたい。開催地はローマ。開催日は2001年9月28〜30日を予定しているが、詳しい情報は後日送付する。プログラムには、指導者研修、会議、祝典、展示会などが含まれている。会議では、遺伝子や人工内耳などの問題を講演会を含めて協議する。テーマは『WFDの昨日、今日、明日』。展示会では、WFDやAP地域の活動について広く知ってもらい、2001年にローマで開催される世界ろう者競技大会でも展示を行う。資金的に困難であると思うが、ぜひ参加してほしい。」

11.2. デフ・ウェイII、ギャローデット大学

日本代表の大杉氏から「デフ・ウェイII」に関する説明が行われた。「1989年に開催されたデフ・ウェイIは6万人の参加者を集めて盛大に行われ、大成功をおさめた。デフ・ウェイIIは2002年7月17〜21日にギャローデット大学主催で開催され、1万5千人の参加者が見込まれている。演劇や講演が予定されており、詳細はインターネットのウェブサイト(http://www.deafway.org/)に掲載されている。WFD加盟団体のアメリカろう協会もこの催しを後援している。」また、補足として、旅費は自己負担となるが、開発途上国の登録割引制度があり活用できる、と述べた。

11.3. 第14回世界ろう者会議、カナダ

カナダのモントリオールで開催される第14回世界ろう者会議について、WFD副理事長のレン・ミッチェル氏から説明が行われた。「開催日について、評議員会は2003年7月19〜20日、大会は21〜27日に決定し、WFD理事会の承認を受けた。WFD理事会と共に具体的な予定を決め、 2001年に第1回の案内を送付する予定である。政府とは、どのような形で協力してもらうか話し合いを進めている。」

ニュージーランドの代表者からAP代表者会議の開催日に関する質問が出され、ミッチェル副理事長は、これはAP地域事務局が決定することであるが、会議期間中に代表者会議を行う場合はWFD理事の業務と日程が重ならないよう注意する必要があると答えた。高田事務局長は、AP代表者会議の開催日は香港の代表者会議で協議されると述べた。

12. WFD RSA/P規約の起草について

規約起草委員会による起草作業の経過について、起草委員のメイ・ロウ氏から報告が行われた。前回のブリスベンのAP会議において、起草委員会としてマレーシアのサザリ・シャーリ氏、シンガポールのメイ・ロウ氏、オーストラリアのロバート・アダム氏、日本の高田事務局長、韓国のアン・セジュン氏が選出された。ブリスベンで日本案の採用が決定されたが、起草委員会では再びマレーシア案とマカオ案も含めて検討され、意見は結局まとまらなかった。ここで改めてこの3つの案を検討し、採決を行う。

12.1. マレーシア案(1996年) (添付資料)

マレーシアは1996年に提出した規約案について説明した。「WFDのガイドラインに沿って、地域事務局の規約案を作成した。目的はかなり遠いものだが、規約はWFDに沿った方がよいと感じ、出発点として選んだ。理事長、事務局長、そして5人の運営委員会を設置し、責任と役割の分担を行う」。最後に、起草委員会での作業に対してメイ・ロウ氏に感謝の気持ちを表した。

12.2. マカオ案(1998年) (添付資料)

マカオの代表者は、以前に出されたマカオの提案は前の執行部のものであり、詳細はわからないと述べた上で、マカオ案に関する説明を行った。「主旨はマレーシア案と似ており、事務局長だけではなく、理事長、副理事長、会計係、事務局長、執行委員を決めて、集団で運営するということである。代表者会議の毎年開催は困難ということで、これを2年に1回とし、その間は運営委員会が仕事を進める。これは貧しい国の負担を軽減することが目的である。」

12.3. 事務局長案(1998年) (添付資料)

事務局長はこの案を取り下げ、日本案に対する支持を表明した。

12.4. 日本案(1999年) (添付資料)

日本の代表者から日本案について説明が行われた。「AP地域事務局の加盟国が増えたことについては非常に嬉しく感じている。ただし、それぞれの国の組織には問題が多いときいており、組織の強化が最優先されるべきであり、これには資金が不可欠である。現状に則して規約を作り、地域の発展に合わせてこれを発展させ、将来的にはWFDの規約に近づけるのが好ましい。まず運営委員5人を選出し、この中から事務局長を選ぶ。事務局は事務局長を選出した国に置き、事務局の費用はそこが負担する。運営委員会の会議は財政的な負担を軽減するためAP会議の直前に開催する。マレーシア案は組織として理想的だが、現状の地域事務局には負担が大きすぎる。」

マレーシアの代表者は、マレーシア案、マカオ案、日本案は似たようなものであり、AP地域の発展のために出されたものであると述べ、マレーシア案の主旨は、現在の高田事務局長が1人で背負っている責任を分担するということであり、これはWFDのガイドラインに沿って分担された、と説明した。財政的なことについては、マレーシア案もマカオ案も同じだが、主催国が滞在費を負担、飛行機代は自己負担となり、事務局の負担が増えることはないと指摘した。

韓国の代表者は、地域事務局の設立以来、地域事務局を支えてきた日本への感謝を表し、「運営委員会が何回も集まるとなると、これはそれぞれの委員に大きな負担となる。WFDも資金的に困っており、AP事務局も同様である。WFDは貧しい国の会費を減額しているが、それでも会費が集まらず困窮している。WFDのガイドラインに沿って規約を作るのは問題ないが、それは将来のことで、一つの目標とするべきである。この点において、日本案のほうが現実的であり、まず日本案から初め、マレーシア案やマカオ案に近づけていくのが最良の策だと感じる。」と述べた。

ミッチェル副理事長は、WFDの規約どおりに地域事務局の規約をつくるというのには問題を感じる、と意見を述べた。

3つの案を1つに組み合わせる可能性を含めて各国は議論を重ねた結果、マカオとマレーシアはそれぞれの案をとりさげ、日本案の採用について採決が行われた。賛成12カ国で新規約は日本案に決定した。新しい規約に従い、5人の運営委員の立候補が求められた。日本の小椋氏は立候補したが、他の国は突然の立候補の要請に戸惑いを感じたため、高田事務局長は任期を1年とする暫定的な委員として立候補するよう再び各国に要請した。協議や他国からの推薦の結果、日本の他に韓国(アン氏)、タイ(カナポルンウォラカルン氏)、シンガポール(ロウ氏)、マレーシア(シャーリ氏)、ニュージーランド(ウォルトン氏)、パキスタン(マンソー氏)の立候補が決定した。

<<昼食>>

会議の再開後、運営委員会の投票は行われ、結果が発表された。

日本(小椋). . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13
シンガポール(ロウ). . . . . . . . . . . . . . 13
韓国(アン). . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11
マレーシア(シャーリ). . . . . . . . . . . . . 10
ニュージーランド(ウォルトン). . . . . . . . 10
タイ(カナポルンウォラカルン). . . . . . . .
パキスタン(マンソール). . . . . . . . . . . .

以上より、運営委員は小椋氏、シャーリ氏、アン氏、ロウ氏、ウォルトン氏に決定した。運営委員はAP事務局長を決めるため別室で協議して結果、小椋氏が新しいAP地域事務局長に選ばれた。各運営委員は自己紹介を行い、新しい任務に対する抱負を述べ、最後に、長年地域事務局長を務めてきた高田氏に感謝の気持ちを表した。

13. 加盟国からの提案

13.1. ネパールからの提案 (添付資料)

ネパールの代表者は添付資料をもとに、1)JICA研修生の選出方法、2)ライオンズクラブ国際協会への要望、3)手話の全国的な認識、4)国を代表するろう協会の設立と強化、5)ろう教育と学校の発展、6)ろう者の状況と国連基準規則に関するワークショップについて、それぞれ提案を行った。

提案1についてネパールの代表者は、ネパールろう者・難聴者連盟が日本からの連絡を受けて政府にJICAの研修生を推薦したにもかかわらず、政府から違う候補が出された経緯について説明し、これからはWFDの加盟団体からJICA研修生が出るようにしてほしい、と要請した。日本の代表者は、この問題を了解していて重要な課題として認識していると述べ、各国の政府に特定の研修生を推薦するよう強制はできないが、WFD加盟団体関係者から選出されるよう可能な限り努力する、と約束した。

提案2についてネパールの代表者は、ライオンズクラブ国際協会による肢体不自由の人への支援は活発だが、ろう者に対して支援はないと説明し、AP事務局からクラブに平等な支援を行うよう要望を出してほしいと要請した。インドの代表者は、ライオンズクラブの幹部を招いてろう者の実態を見せることを提案した。韓国の代表者は、盲人と肢体不自由の人はしゃべることができるので説得力があり、これとは反対に手話通訳だと軽視されることが多い点を指摘した。また、この問題の解決に国連基準規則が利用できる可能性を示し、地域事務局だけではなく、WFDからも国連に働きかけてほしい、と要請した。

協議の結果、高田事務局長は新しい運営員会にこれらの提案の検討を進めるよう要請した。

13.2. ニュージーランドからの提案 (添付資料)

ニュージーランドの代表者は第1回APろう青年キャンプを主催したマレーシアろう連盟に感謝の気持ちを表し、配布した資料をもとに、2002年開催予定の第2回青年キャンプの提案内容を説明した。「キャンプのテーマは『DEAFinitely Leader(確かなリーダー)』であり、DEAFinitely Youth Groupと名付けられた組織委員会が準備を進めている。キャンプの目的は次世代のリーダーの養成、そして団結、交流、学習である。開催日は2002年1月の第3〜第4週を考えている。年齢は18〜30歳まで。講師を集めて参加者は100人程度を予定している。開催地はカヌー、マウンテンバイク、ロッククライミング、ラフティング、カヤック、登山、泊りがけのハイキングなどが行えるOutdoor Pursuits Center (OPC)。参加費用を含めて、詳細は配布した資料を見てほしい。」

ニュージーランドでのAPろう青年キャンプの開催は満場一致で支持された。

14. WFD RSA/Pのロゴ

14.1. ロゴのコンペ (添付資料)

ネパールと香港はそれぞれの提出したロゴ案について説明を行った。

ネパールの代表者は、「各ロゴ案の矢印は手話の手の動きを表す。白い手と黒い手は、白人種と有色人種を表し、世界地図を使ったのは、AP地域だけでなく世界全体が一緒であるということを表現するため。」と説明した。

香港の代表者は、「アイラブユーのサインに、アジアのAを入れた。アジアの全て、ということで、黄色、黒人、白人の3色を含めた。Aの中の耳はろうを意味する。」と説明した。

高田事務局長はロゴ案を提出したネパールと香港に感謝の気持ちを表した。次に、ロゴに関する決定は新しい運営委員会に委ねることを提案し、これは満場一致で採択された。運営委員会で決定できない場合は、次回の代表者会議で決定する。

15. 閉会

高田事務局長は閉会の挨拶のなかで、カウピネン理事長、ミッチェル副理事長、タイろう協会会長、そしてタイろう協会のスタッフの尽力に心から感謝すると述べ、「今まで事務局長を勤めてこられたのは皆の協力があったからであり、幸せに感じている。今まで1人であったが、今日から5人となった。これでアジア太平洋地域はますます発展すると思う」と加えた。

カウピネン理事長はアジア太平洋地域の発展を称え、「今まで高田前事務局長が1人で背負っていた責任を5人で分けあうことで、発展がさらに進む。組織がなければ発展はない。アジア太平洋地域の国はすべて平等であり、WFDと一緒に運動を進めたいと思う。問題は山積しているが、意見交換を行いながら努力してほしい。」と述べた。最後にタイろう協会の尽力に感謝し、参加者に再び会えることを祈ると述べた。

ミッチェル副理事長は「それぞれの国は違うが、うまくかみ合い、話し合いは順調に進んでいる。この推進力、そしてこの代表者会議は素晴らしい。将来はさらに交流と話し合いを深めてほしい。タイろう協会の努力、そして高田前事務局長の功績も素晴らしい。」と述べた。

最後にタイろう協会の会長は挨拶を行い、ビデオカメラなどいくつかの問題がありながら、会議が無事に終わったことを非常に嬉しく感じていると述べた。会議の後の船上観光について簡単に説明した後、会議への参加と協力にたいし全員に感謝の気持ちを表した。

<<閉会>>


第12回世界ろう連盟アジア太平洋地域事務局代表者会議 議事録(和訳)
2000年12月8〜10日 タイ、アユタヤ、クルン・シリ・リバー・ホテル

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