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※全日本聾唖連盟による仮訳

第14回WFD世界ろう者会議

決議

2003年7月18-26日、カナダ、ケベック州、モントリオール市


第14回WFD世界ろう者会議の開催を機に、世界各地のろう社会及び世界ろう連盟(WFD)が直面している数多くの問題に、世界の目が向けられるようになった。第14回WFD世界ろう者会議の参加者は、こうした課題を乗り越え、新たな機会を作り出す必要性を認め、以下の決議を採択する。

・ 世界各地で続いているろう者の言語権および人権の侵害に反対し、ろうの子供が、それぞれの地域固有の手話と書記言語によるバイリンガル教育を受ける権利を有することを再確認する。

・ WFD活動全般に対する発展途上国のろう者の貢献の認識し、今こそが変革と平等を促進する時であることを認める。

・ 人権、教育、コミュニティ関係、保健、言語、日常生活の基本的および発展的なニーズなどは技術によって補完されるものであることを認め、世界における技術開発の不均衡が、先進国と発展途上国の間のデジタル格差の拡大をもたらすことを認識する。

・ ろう者の生活に影響を及ぼす制限やリスク、懸念や問題についての情報を開示せず、またオーディズム(聞こえ優先主義)を実践したことは政府のあらゆるレベルの政策決定者の責任であることを認識する。

・ 普通学校への統合教育が、ろうの学生に与える有害な精神的・心理的影響を認知する。

・ ろうの子供、女性、高齢者が世界的に高い割合で虐待を受けている事実に言及し、それを看過し、虐待の継続を防止するための解決策が欠如していることを非難する。

・ ろう者にとって、文化的に適切な言語および形態で用意された、HIV/AIDSに関する情報およびろう者のための医学的なプログラムが欠如していることを非難する。

・ ろう者は、文化的に適切な環境のもと、母語である手話で、アクセシブルな保健および精神保健サービスを受ける権利を有することを再確認する。

・ 人権および人としての尊厳を侵害し、人類の多様性を損なわせる生命工学および遺伝子科学の開発およびその使用の可能性を強く非難する。

 ろう社会は、これまで以上に、「世界規模の小さな村」となりつつあるが、優勢な手話が「弱い」手話を押しつぶしてしまってはならない。同様に、WFDの活動、政策、決定のあらゆる場面において、「裕福な」ろうコミュニティが、さほど裕福ではないろうコミュニティに対して優位に立つようなことがあってはならない。その上で、ろう社会は、より大きな世界的団結を目指すべきである。

 ろう社会の中にも多様性があり、ろう社会全体として、それぞれの異なったグループのニーズに応えていく必要がある。これからは、多様性を認めるだけでなく、本当の意味で多様性とジェンダーバランスを尊重していくべきである。このことは、WFDの理事の構成やWFDの活動にかかわるあらゆる決定において、考慮されなければならない。

 世界規模の技術活用計画を開発し、デジタル格差を効果的に解消する必要がある。ろう社会の未来に重要な影響を及ぼす生命工学に関する情報を提供し、この課題に関する討議の場を設けるべきである。

 さまざまな種類の教育サービスの模範例を開発し、各国および各教育機関の間で情報をわかちあえるようにすべきである。普通学校への統合教育や手話の抑圧、ろう文化の軽視などがろうの子供たちに与える心理的な影響と、その心理的影響が成人した後にまで及ぼす影響などのの研究を奨励しなければならない。またこのような心理的ニーズに応える精神保健サービスの開発を奨励すべきである。

 WFDは、21世紀におけるさまざまな課題を解決し、より多くの機会を作り出すために、世界のろう者と共に活動する責任を果たすことを約束する。WFDは、途上国のろう者を支援し、共に活動していく責務を負うことを再確認する。途上国におけるろう者の生活の質、教育、人権に関する報告のデータベース化を進め、発展的な変革を実現するために、こうした報告を活用するべきである。

 WFDは、WFDの活動に、より多くのろう青年が参加するようになったことに感謝し、ろう者が互いを支援し、ろう社会を強化するために世界各地で行っているさまざまな積極的な取り組みを称賛する。

第14回WFD世界ろう者会議 決議

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