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(注)以下は全日本聾唖連盟が会議資料として仮訳したものです。

声明文
障害に関する特別報告者 ベングト・リンドクビスト
社会開発委員会第40回会議


代表者の皆様、

障害を持ちながら生活する我々の仲間は、世界中に6億人もいます。我々の生活状況は異なりますが、一つの共通な経験で固く結ばれています:我々が全員、様々な形の排斥にさらされていることです。

排斥という現象の根源は、無知、無期待、そして偏見にあります。多くの場合、これははっきりとした形で見ることができますが、複雑でわかりにくい形で態度に隠されている場合もあります。

障害を持つ何百万人もの男児、女児、女性、男性は、家族により隠されるか、大規模な施設に閉じこめられて社会から隔離されます。他にも、地域社会から取り残された大集団があります。障害者のニーズは多くの場合、貧困撲滅や教育機会拡大の一般的なプログラムの中で無視されます。雇用、環境の設計や建築、近代的なサービスシステムの開発に関する一般的な施策において、同様の軽視のパターンが多くの場合見受けられます。

我々は繰り返し、自分に問う必要があります:我々は、どのような方法でこのような差別に終止符を打つことができるか。国家政府と社会の他の関係者の役割は何であるか。国連はどのように、障害者の完全参加と均等な機会に向けた発展を支援ならびに奨励することはできるか。1982年の障害者に関する世界行動計画と1993年の障害者の機会均等化に関する基準規則の採択は良い出発点となりました。多くの国で、これらの国連ガイドラインをもとにして新しい政策が開発されました。我々が今問うべき質問は次の通りです:我々はここからどのように続けていくべきか。開発の次の論理的なステップは何であるか。

2002年は、国連の中で障害問題を前進させる大きな機会を持つ年です。国連総会第57回会議の前に、3つの重要な行事が行われます。社会開発委員会第40回会議はこの1つ目です。私の報告に基づいて、国連基準規則の将来とその関連事項に関する提案の検討が、この委員会に求められます。国連人権委員会は4月に、障害者の人権擁護強化に関する研究結果を検討します。最後に、障害者の人権条約の案を検討するために総会が設置を決定した特別検討会は、今年の総会の前に会議を一回開催する予定です。

これらの重要な行事の全ては、過去20年間の間に行われてきた、権利を基盤とした障害分野における取り組みの結果であります。これらの3つの大きな行事から生まれた決定事項と勧告が、協調ならびに充分に調整されることが非常に重要であります。

私の報告書は残念ながら非常に遅れて委員へ配布されましたが、ここで報告書の内容に関して簡単にご説明します。報告書には、私の任期が更新されて以来の2年間の活動について書かれています。私は人権と障害の問題に関するいくつかの国際会議と2つの重要な諮問会議に参加しました。基準規則は、全国的な政策開発と新しい法律のイニシアチブの基盤として、重要な役割を担い続けていると思います。基準規則が人権侵害をモニターする基準として最近認識されたことにより、規則の地位は強化されました。同時に、これらの協議において、特定の分野において規則を補完する必要性についてもはっきりと感じられました。委員会はその第38回会議において、特定の問題に関する私の見解を拡大するよう指示しました。私は4つの問題を確認し、報告書の中には以下の4つの分野に関する分析と勧告が含まれています:

* 規則の補完方法の検討作業については、基準規則の補足書として採択できる追加文書作成しました。この文書は前回の報告で不十分な点や欠点として確認された分野に基づいて作成されています。専門家パネルとの密接な協議の中で起草されました。また、世界中のいくつかのNGOや専門家が、アイデアや提案を送ってくださいました。

補足文には、満足な生活水準、住居、緊急・災害時の障害者、暴力と虐待、ジェンダーの問題、障害を持つ子どもや高齢者などの分野に関する勧告が含まれています。現状の基準規則文書への変更は提案されていません。

補足文が最も強調する点に関連して、補足文の題名を「もっとも弱い立場の人々を含めるために」としました。国連がこの文書を基準規則の補足文として採択することを勧告します。

*第2の分野は人権と障害に関連します。報告のこのセクションには、行動の2つの主な選択肢に関する歴史的背景の説明と分析が含まれています。2つの選択肢とは、現状の人権モニタリング・システムの中に障害の側面を発展させること、そしてもう一つは特別な条約の制定であります。総会が条約に関する提案の検討プロセスを開始することを最近決定した件も考慮されました。

現状のモニタリング・システムに障害の側面を発展させるのは、短い期間で開始可能であり、比較的早く結果を出せるプロジェクトとなります。条約の作成は非常に重要な作業であり、このため時間をかけて行う必要があります。私はこれらの2つの取り組みが補足的であるという見解を持ち、両方の行動をとる「並行的な取り組み」を遂行することを勧告します。

*第3の分野は、障害問題に関わる様々な国連機関の間の情報と経験の交換の問題を取り上げています。この分野におけるより効果的なコミュニケーションは長い間必要とされてきました。近代的な情報技術を利用することにより、この問題を現実的で費用効果的に解決できます。私は「バーチャルな機関間機構」を設置し、DESA内の障害プログラムがこの機構の設置と調整の役割を担うことを勧告します。

*第4で最後の分野は、基準規則の今後のモニタリングに関連します。私は、基準規則で説明される通り、モニタリング機構の様々な機能を簡単に分析しました。このモニタリング活動が基準規則の実施促進においてもたらした世界的な影響に着目します。私はこの積極的なモニタリング・システムが継続されるべきだと考えます。新しい特別報告者が任命され、国際障害者組織が設立した専門家パネルのシステムは保持されるべきであります。また、障害政策アドバイザーとしてのポストが、開発途上国に設置されるべきだと思います。

代表者の皆様、

1990年代初頭より始まった進展の結果、我々は以下の3つの開発路線を検討する立場にあります:

a)国連基準規則の実施を引き続き積極的に促進する。
b)国連の人権機構が、障害の観点においてより効果的に機能させるための対策をとる。
c)障害者の権利に関する特別な条約の制定に力を集中させる。

我々はこの3つのうち、どの開発路線を選ぶべきでしょうか。私は全く選ばないことを勧告します。3つの路線には、それぞれ追求する重要な理由があります。この3つは互いに補足的なものとして考えられるべきです。

第1に、我々は障害関連問題を社会開発と人権の両側面から取り組む必要があります。これは人間開発において一般的になされているものであり、障害分野を例外とする理由は全くありません。さらに、基準規則は多くの国で今もなお大きな勢いを持っており、規則が補足文の発行により強化されるのでしたら、規則はより良い状況に向けた戦いにおいて今後も強力な武器となります。

第2に、国連人権モニタリング・システムにおける開発の可能性は間違いなく大きいです。これは、3・4月の国連人権委員会の会議の前に発行される、人権高等弁務官が委任した人権と障害に関する研究の結論の一つであります。研究結果では、一般のモニタリング・システムの中に障害の側面を発展させる具体的な方策がいくつか提示されます。

第3に、障害分野における特別な条約を設ける良い理由は当然ながらいくつもあります。既に述べました通り、国連総会は新しい法律文書に向けた第一歩を踏み出しました。基準規則が引き続き積極的な役割を果たすこと、そして人権におけるメインストリーム化の選択肢も追求されるべきことに基づいて、条約の作成も進められるべきだと私は考えます。

数ヶ月の間に3つの重要な会議があるこの状況で、この委員会にはとりわけ重要な役割があります。皆様の決定が、障害者を隔離から引き出し、平等なパートナーとして社会に戻す将来の国連戦略の基盤を築きます。

代表者の皆様、

障害に関する特別報告者として活動を開始してから8年間近くが過ぎました。今回は3回目で最後の報告をお届けしていますので、この場を借りて、長期の皆様への信頼と良い協力関係に対し、お礼を申し上げたいと思います。皆様のために務めることは名誉なことでありました。今後の社会開発委員会の協議でも、引き続き障害が重要な問題として扱われることを心より願っています。

ご拝聴ありがとうございました。


国連社会開発委員会第40回会議
特別報告者の声明文

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