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パネル会議 ニューヨーク 2001年9月4〜6日
会議資料5 議事7b


ケネス・エクリンド(Kenneth Eklindh) PM

UNESCOとインクルーシブ教育(包括教育)

観点

世界人権宣言では以下が述べられている:

1994年6月に「特別ニーズ教育における原則、政策および実践に関するサラマンカ宣言」と行動の枠組がスペインの国際会議にて採択された。これらの文書では、インクルージョンの原則、そして「万人のための学校(schools for all)」の必要性に対する認識が考慮されている。「万人のための学校」とは、全員を受け入れ、多様性を歓迎し、学習を支援し、個人的なニーズに対応する学校のことである。従ってこれらの文書は、「万人のための教育(Education for All)」に向けた取り組み、そして学校教育の効率化に大きく貢献する。(UNESCO、1994年)

ダカール教育フォーラム(2000年)はUNESCOへ、「万人のための教育」運動の先導機関としての役割を果たし、ダカールでの決定事項を達成するために国際コミュニティの団結を推進するよう要請した。また、組織内の活動の合理化、そして「万人のための教育」への対応を改善するために知識的なリーダーシップをとることも、UNESCOに要請された。

「ダカール行動枠組に関する覚え書き」には、目標を達成するために必要とされる、「万人のための教育」の広範なビジョンが書かれている。ここでは疎外や排斥の被害を最も受けやすい学習者に特別な配慮が置かれている:

「包括的な概念として「万人のための教育」の広範なビジョンを、政府や資金提供機関の全国的な政策に反映させるのが、重要な課題である。「万人のための教育」は、児童労働者、農村居住者や遊牧民、民族的・言語的マイノリティ、児童、紛争・HIV/AIDS・飢餓・健康問題の被害を受けた青年や成人、及び特別な教育ニーズを持つ人を含めた、貧困または不利な立場に置かれた人々のニーズを考慮する必要がある。」

「幼少期のケアと教育プログラムは、特別なニーズを持つ児童の発見を支援し、彼らのケアと教育を充実させる。」

「不利な立場にある民族的マイノリティや移民、地方の孤立した社会や都市の貧困地区、及び教育から排除された他の集団の出身で特別なニーズを持つ児童のインクルージョンは、2015年までにUPE(全ての国民への初等教育機会の保証 - Universal Primary Education)を実現する戦略では不可欠な要素の一つである。」

「疎外および排斥された集団の児童を呼び寄せ、引き留めるには、柔軟に対応する教育制度が必要である。学校に登録されていない児童を積極的に集め、全ての学習者の状況やニーズに柔軟に対応する、インクルーシブ教育システムが必要である。」
(「万人のための教育:集合的責務の遂行」
ダカール行動枠組に関する覚え書き、節19、30、32、33)

サラマンカとダカールの枠組は、疎外と排斥の問題を解消する主要戦略の一つであるインクルーシブ教育を通した、「万人のための教育」に関するUNESCOの取り組みの重要なカギとなる。

現在の戦略では不十分

疎外や排斥の被害を受けている児童と青年のニーズに関して、現在の戦略やプログラムの大部分が不十分もしくは不適切であることが認識されている。疎外または排斥された様々な集団を対象としたプログラムが存在する場合、それらはメインストリームの外で行われてきたものであった(特別なプログラム、特別な施設、特別な教員など)。意図は良いとしても、結果的に排斥に至ることがほとんどであった:学習の継続を保証しない「二流」の教育機会や、分化が差別の形に至ることがあり、これが様々なニーズを持つ児童を学校生活のメインストリームから締め出し、後に成人として、地域社会や文化生活の全般から締め出すことになる。(UNESCO、1999a)

「21世紀における教育の国際委員会」(1996年 - The International Commission on Education for the Twenty-first Century)は、教育制度から締め出されていた人々、または自分の特定のニーズに適さなかったため、教育に背を向けてきた人々を引き付けることで、教育を社会の中核として復帰させる必要性を指摘した。敏感に対応する教育機会を通して、疎外や排斥の被害を受けやすい学習者のニーズに至急対処する必要性は、2000年4月のダカール世界教育フォーラムでも指摘された:

「包括的な概念として「万人のための教育」の広範なビジョンを、政府や資金提供機関の全国的な政策に反映させるのが、重要な課題である。「万人のための教育」は、児童労働者、農村居住者や遊牧民、民族的・言語的マイノリティ、児童、紛争・HIV/AIDS・飢餓・健康問題の被害を受けた青年や成人、及び特別な教育ニーズを持つ人を含めた、貧困または不利な立場に置かれた人々のニーズを考慮する必要がある。」(ダカール行動枠組に関する覚え書き、段落19)

インクルーシブ教育に関するUNESCOの対応

UNESCOの事務局長は第160回理事会でのスピーチにおいて、UNESCOによるより効果的な貢献を実現するために、疎外および排斥された集団の特別で緊急なニーズを、全てのUNESCO事業に不可欠な要素として含める必要性を強調した。

インクルーシブ教育の取り組みを促進するUNESCOの活動は、以下の目的を持つ:

  1. 全ての教育活動に、疎外および排斥された集団の関心事が組み込まれた全体観的な教育への取り組みを築き、無駄な繰り返しや断片化を防止するために協力する。
  2. インクルーシブ教育に向けた多様な戦略を支援するため、政策開発とシステム管理の能力を育成する。
  3. 現在、疎外または排斥されている集団の関心事を表立てる。

以上を踏まえ、取り組みは以下に焦点をあわせる:


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