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※邦訳は川島聡様のご好意により掲載させて頂きました。

障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する
包括的かつ総合的な国際条約に関する特別委員会の報告

(訳:川島聡)


U.N.Doc.A/58/118 & Corr.1(2003年7月3日、8月5日)
I. 序

1. 国連総会は、その決議56/168(2001年12月19日)において、国連人権委員会及び社会開発委員会の勧告を考慮して、社会開発、人権及び非差別分野で行われた作業における全体論的アプローチに基づき、障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する諸提案を検討するため、すべての国連加盟国及びオブザーバーに参加の途が開かれた特別委員会を設置することを決定した。

2. また、国連総会は、その決議57/229において、第58回国連総会が開催される前に、特別委員会が10日間の作業を行う会合を2003年中に少なくとも1回開催することを決定した。

II.組織事項

A.  第2回特別委員会の開会と期間

3. 障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する第2回特別委員会は、2003年6月16日から27日まで国連本部において開催された。この会期中に特別委員会は、14の本会合、パネルディスカッションのために3つの会合、及び、若干の非公式会合を開催した。

4. 総会会議サービス局軍縮非植民地化課は特別委員会の事務局を務めたが、経済社会局社会政策開発部が実質的な事務局としての機能を果たした。

5. 第2回特別委員会は、国連エクアドル常駐代表ルイス・ガレゴス・チリボガ大使(特別委員会議長)により開会された。バルバドス大使ジューン・イボン・クレール(国連総会議長特別代表)が意見を表明した。

6. また、特別委員会第8回会合(6月19日)において国連事務総長が演説した。

B. 役員

7. 特別委員会は、その第1回会合(6月16日)において、口頭表決によりイワナ・グロノヴァ(チェコ共和国)を特別委員会副議長に選出した。次の役員は、特別委員会議長団を引き続き務めた。

特別委員会議長:
 ・ ルイス・ガレゴス(エクアドル)
特別委員会副議長
 ・ イワナ・グロノヴァ(チェコ共和国)
 ・ エリク・マナロ(フィリピン)
 ・ ジャネット・ヌドロフ(南アフリカ)
 ・ カリーナ・マーテンソン(スウェーデン)

C. 議題

8. 同会合(6月16日)において、特別委員会は、国連文書A/AC.265/2003/L.1に含まれている暫定議題を採択した。それは次のとおりである。
  1. 会期の開会
  2. 議長団の新役員の選出
  3. 議題の採択
  4. 作業の構成
  5. 障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約の作成に関する進捗状況の再検討
    1. 条約提案に関する、政府及び関連国連諸機関の諸見解
    2. 障害者の地位向上に関連する論点及び趨勢に関するグローバル・ポリシー・レビュー
    3. 技術的会合及びセミナーの成果
    4. 国連の地域委員会、政府間組織及び非政府組織が提出した、条約に関する諸提案に関して検討されるべき要素
  6. 優先主題に関するパネルディスカッション
  7. 本条約に関する諸提案についての討論(次のものを含む。)
    1. 性質と構造
    2. 検討されるべき要素
    3. フォローアップとモニタリング
  8. 条約の検討に関する次の段階
  9. 第2回特別委員会報告の採択
D. 文書

9. 次の文書が特別委員会に提出された。
  1. 暫定議題とその注釈(A/AC.265/2003/L.1)
  2. 作業の構成の提案(A/AC.265/2003/L.2)
  3. 欧州連合決議案(A/AC.265/2003/L.3)
  4. 障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する特別委員会の報告案(A/AC.265/2003/L.4)
  5. 障害者の地位向上に関連する論点及び現れつつある趨勢に関する国連事務総長報告(A/AC.265/2003/1)
  6. 障害者の地位向上に関連する論点及び趨勢の概観に関する国連事務総長報告(A/AC.265/2003/2)
  7. 障害者による障害者のための障害者と協働した機会均等化における進捗状況に関する国連事務総長報告(A/AC.265/2002/3)
  8. 政府、政府間組織及び国連機関により提出された、障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する諸見解を伝達する国連事務総長ノート(A/AC.265/2003/4, Corr.1, and Add.1)
  9. 利用しやすいICTと障害者に関する地域間及び地域デモンストレーション・ワークショップ(2003年3月3-7日、マニラ)の成果(A/AC.265/CRP.7)
  10. 障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する特別委員会の事務局長に宛てられたエクアドル国連常駐代表の2003年5月23日付書簡(A/AC.265/CRP.8)
  11. 障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する特別委員会の事務局長に宛てられたデンマーク人権機関理事の2003年5月26日付書簡(A/AC.265/CRP.9)
  12. 障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約の作成に関するバンコク勧告――バンコク専門家会合及びセミナー(アジア太平洋経済社会委員会本部、2003年6月2-4日)の成果(A/AC.265/CRP.10)
  13. 障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する特別委員会の事務局長に宛てられた国連南アフリカ常駐代表団の2003年6月12日付口上書(A/AC.265/CRP.11)
  14. 障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約の作成に関するベイルート宣言及び勧告――開発と障害者の権利とに関連する規範及び基準に関するアラブ地域会議(ベイルート、2003年5月27-29日)の成果(A/AC.265/CRP.12)
  15. 障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する提案集(A/AC.265/CRP.13, Add.1 & Add. 2);
  16. パネルディスカッションに関する特別委員会議長の摘要(A/AC.265/CRP.14)
  17. 障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する特別委員会の事務局長に宛てられた国連ベネズエラ常駐副代表の2003年6月18日付書簡(A/AC.265/2003/WP.1)
  18. 参加者名簿(A/AC.265/2003/INF/1).
III. 特別委員会の議事

10. 特別委員会は、その第4, 5回会合(6月17, 18日)において、議題5について検討した。次の政府代表団の代表が意見を表明した。オーストラリア、カナダ、ギリシア(欧州連合、加盟申請国(キプロス、チェコ共和国、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア共和国、スロベニア)、準加盟国(ブルガリア、ルーマニア、トルコ)、及び、欧州経済領域に参加している欧州自由貿易連合加盟国(アイスランド)の代表)、メキシコ、ニュージーランド、セネガル、タイ、ウガンダ、ベネズエラ、中国、コスタリカ、キューバ、日本、ヨルダン(アラブ諸国の代表)、レバノン、モロッコ(アフリカ諸国の代表)、ノルウェー、フィリピン、カタール、シリアアラブ共和国、南アフリカ、アメリカ合衆国、パレスティナ(オブザーバー)。また、次の代表も意見を表明した。国連労働機関、アジア太平洋経済社会委員会、インド国家人権委員会、アジア太平洋フォーラム、世界銀行。

11. 特別委員会は、その第6, 7回会合(6月18, 19日)において一般的討論を開催した。次の政府代表団の代表が意見を表明した。チリ、ベニン、カナダ、コスタリカ、ドミニカ共和国、エルサルバドル、ギリシア(欧州連合、加盟申請国(キプロス、チェコ共和国、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア共和国、スロベニア)、準加盟国(ブルガリア、ルーマニア、トルコ)、及び、欧州経済領域に参加している欧州自由貿易連合加盟国(アイスランド)の代表)、日本、メキシコ、ナミビア、ニュージーランド、ベネズエラ、オーストラリア、ブラジル、フィジー、インド、インドネシア、イスラエル、ヨルダン、クウェート、リヒテンシュタイン、ナイジェリア、ペルー、フィリピン、カタール、大韓民国、ロシア連邦、教皇庁(オブザーバー)。また、次の代表も意見を表明した。国際労働機関、国連人権高等弁務官、南アフリカ人権委員会(国内人権機関の代表)、障害者インターナショナル、国際障害コーカス、世界ろう連盟、世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワーク、ヨーロッパ・ディスアビリティ・フォーラム、ニュージーランド人権委員会、障害者オーストラリアインク、コミュニティー・リーガルセンター協会。軍縮局の代表も意見を表明した。

12. 特別委員会は、その第8-12回会合(6月19-24日)において、議題7及び8を検討した。また、特別委員会は、6月24-27日に若干の非公式会合を開催した。

13. 特別委員会の要請に基づき、経済社会局社会政策開発部は、特別委員会の第2回(6月16日)、第3回(6月17日)及び第12回(6月23日)会合において、政府代表団及び非政府組織の代表のために三つのパネルを企画した。当パネルは、特別委員会議長ルイス・ガレゴスが議長になって進められた。パネルIでは、次の専門家が、国際条約の類型及び障害者権利条約の選択肢についての要点を説明した。アンドリュー・バーンズ氏(オーストラリア)、ムナ・ンドゥロ氏(ザンビア)、ヴェリナ・トドォロバ氏(ブルガリア)、ディピカ・ウダガマ氏(スリランカ)。パネルIIは、障害の観点から見た非差別・平等原則:特別措置と障害に関する重要論点についての討議にあてられた。次の専門家が発表した。レアンドロ・デスポイ大使(アルゼンチン)、ランギタ・デ・シルバ・デ・オーウィス博士(スリランカ)、シャーロット・マックイーン氏(南アフリカ)、クリシア・ワドル氏(アメリカ合衆国)。パネルIIIは、障害の定義に関して新たに生まれつつあるアプローチ:概念的枠組み、変容する定義の事情、障害者の権利の促進への含意に関するものであった。次の専門家が発表した。スコット・ブラウン博士(アメリカ合衆国)、キャサリン・バラル博士(フランス)、コフィ・マルフォ博士(ガーナ)。〔これらのパネルディスカッションに関する特別委員会議長の摘要は、本報告付属書IIを参照。〕

IV. 決定

14. 特別委員会議長は、第14回会合(6月27日)において、決定案を提示した。この点に関して、特別委員会事務局長は次の見解を表明した。
「作業部会がニューヨークの国連本部で会期間に会合するとの決定案第4パラグラフに関して、作業部会は完全な通訳をつけて20回の会合(1日につき2会合)を開くことになると予測される。6ヶ国語で、会期前に250頁、会期中に100頁、会期後に100頁の文書が提出されることになる。

10日間の作業を行う会期にかかる総費用は562,300ドルになると予想される。

会合役務、会議室及び通訳が作業部会に提供され得るには、本作業部会は2004年中に2週間(2004年1月5-16日)開催されることになろう。しかしながら、文書とりわけ多量になることが予期される会期前の文書は、国連総会の通常会期のあいだに準備される必要があるだろう。これまでの経験から、すでにこれはきわめて膨大
な作業量となっている。

この点に関して、常設的な組織能力が臨時財源を用いてどの程度まで補充される必要があるかは、もっぱら2004年度の会議・会合の年中行事表に照らして、決定することができる。しかしながら、予算作成時に計画された会合についてのみならず、その後に許可された会合についても、会合の回数及び配分が過去の会合様式と一致することを条件として、2004年から2005年までの2年間に関して提案された予算計画の第2節(総会と会議運営)に基づいて、〔財源〕が提供されることになる。その結果、国連総会が決議案を採択すれば、追加的な〔財源〕の提供は求められないことになろう。」
15. 同会合において、特別委員会は次の決定を採択した。
「障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する特別委員会は、

1. 国家、オブザーバー、地域会合、関連国連諸機関、地域委員会、政府間組織、市民社会(非政府組織を含む。)、国内障害機関、国内人権機関及び独立専門家が作業部会の会合前に特別委員会に提出するすべての提案を考慮に入れて、国連加盟国及びオブザーバーが特別委員会で条約案を交渉するための基礎となる条文案を作成しかつ提示する目的をもつ作業部会の設置を決定する。代替的な複数のアプローチがある場合、作業部会は、それらのアプローチを反映した選択肢を提示するものとする。

2. 作業部会は、地域グループにより指名される、27人の政府代表で構成するものとする(アジア地域 7人、アフリカ地域 7人、ラテンアメリカ・カリブ地域5人、西欧地域その他5人、東欧地域3人)。また、作業部会は、障害及び非政府組織の多様性を考慮に入れて、途上国及びすべての地域の非政府組織が十分に代表されることを確保した上で、特別委員会の参加認定を得た非政府組織(特に障害者団体)の代表12人を含むものとする(この12人の代表は非政府組織により選定される)。さらに、作業部会は、国際調整委員会の参加認定を得た国内人権機関の代表1人を含む。作業部会の目的のために、国連総会決議56/510及び57/229に含まれる非政府組織の参加形態は、非政府組織と国内人権機関の双方に適用するものとする。これらの代表の選定結果は、この決定が採択されてから遅くとも45日以内に特別委員会議長団に通知されなければならない。

3. 国連総会決議57/229により設けられた任意基金は、途上国(とりわけ後発発展途上国)の非政府組織及び専門家の参加を支援するために利用することができる。

4. 作業部会は、ニューヨークの国連本部で2004年初頭に10日間の作業を行う会期を会期間に1回開催するものとし、かつ、条文案に関する作業成果を第3回特別委員会に提示する。

5. 特別委員会に提示された、条文案に関する作業成果は、すべての国連公用語に翻訳し、最大限可能な程度まで障害者に利用可能な形状をもって公表し、及び、第3回特別委員会の遅くとも3ヶ月前に国連文書として配布するものとする。

6. 特別委員会議長は、作業部会の議事を円滑に進めるため、作業部会構成員と協議した上で、政府代表の中から1人の調整者を任命するものとする。

7. 国連事務総長は、できる限り速やかに、かつ、最大限可能な程度まで障害者に利用可能な形状をもって、あらゆる関連文書(第2回特別委員会の報告を含む。)を作業部会に提供しなければならない。

8. 作業部会のマンデートは、条文案に関する作業成果を特別委員会に提示することをもって終了するものとする。

9. 上記の形態は、国連総会の他の特別委員会の先例とならない。」
16. この決定を採択した後、特別委員会議長は「すべての国連加盟国は作業部会の審議に出席することができる」と述べた。

V. 勧告

17. 特別委員会は、第3回特別委員会を2004年5/6月にニューヨークで開催すること、並びに、その開催日及び開催地を第58回国連総会で採択される関連決議に含めることを勧告する。

18. 特別委員会は、その議長団に対し、第3回特別委員会の準備及び作業構成(第3回特別委員会の遅くとも4週間前に発行される、暫定議題の準備を含む。)に関する会期間会合を開催するよう招請する。

19. アクセシビリティに関して、国連総会決定56/474及び国連総会決議57/229に従って、特別委員会は、国連の構内、技術及び文書のアクセシビリティを促進するため、国連総会に対し、その第58回会期において、障害者のための合理的配慮に関する設備を一層詳細に検討することを招請する。

20. 特別委員会は、国連総会に対し、条約が作成される(入念に仕上げられる)こと、並びに、その交渉が、障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する特別委員会で行われることを勧告する。

VI. 特別委員会報告の採択

21. 特別委員会は、その第14回会合(6月27日)において、口頭修正された、第58回国連総会への報告案(A/AC.265/2003/L.4)を採択した。

付属書I

国連総会決議56/510に従って、経済社会理事会の協議的地位を与えられたすべての非政府組織は、特別委員会の参加認定を得るものとする。その他の非政府組織は特別委員会にその参加認定を申請することができる。経済社会理事会の協議的地位を与えられていない次の非政府組織は、障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する特別委員会により、その参加認定を得た。


Disability Australia Ltd.
Jesh Foundation
Northeastern University, Center for the Study of Sport in Society
Asociaci de Impedidos Fisicos Motores
Fondation Telethon
HalfthePlanet Foundation
Charitable society for disabled people "Stimul"
People Who
World Network of Users and Survivors of Psychiatry
The Hong Kong Council of Social Services
Polio Plus - Movement Against Disability
Canadian Association for Community Living
Centre for Disability in Development
Centre for Independent Living of People with Disability of Serbia
National Forum of Organizations Working with the Disabled (NFOWD)
ABILITY Awareness
Central Council of Disabled Persons
Confederaci Mexicana de Organizaciones en Favor de la Persona con
Discapacidad Intelectual, A.C. (CONFE)
Council for Canadians with Disabilities (CDD)
European League of Stuttering Associations (ELSA)
Fondo Teleton de Apoyo a Instituciones
Public Interest Law Center of Philadelphia
World Federation of the Deafblind (WFDB)
People with Disability Australia Incorporated (PWDA)

付属書II(省略)

原文:国連ウェブサイト内


作成日 2003年10月5日
財団法人 全日本聾唖連盟

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