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全日本ろうあ連盟による仮訳

世界盲人連合(WBU)による第4回IDA会議報告


WBU理事長室
クリスティナ・ウェランダー
キキ・ノードストロム

4月16〜18日,ジュネーブにて開催された
国際障害同盟(International Disability Alliance)会議報告

出席者:
ジョシュア・マリンガ、ルーシー・ウォン(DPI)
キキ・ノードストロム,ウィリアム・ローランド(WBU)
ナンシー・ブレイテンバッハ(II)
スーザン・ダニエルス(RI)+ガイド
スティッグ・オルソン、レックス・グランディア(WFDB)+通訳者3名
カール・バッハ・イエンセン(WNUSP)
リーサ・カウピネン(WFD)+通訳者2名

参加者:
エリック・スターフ、クリスティナ・ウェランダー(WBU代表)
ウテ・ミッシェル(II代表)
カリーナ・バーゲット(WFDB代表)
ヤンニス・バーダカスタニス(EDFEuropean Disability Forum)
ベングト・リンクビスト、エバ・サグストロム(国連特別報告者)

4月16日(月)

スウェーデンのアルマサで開催された前回の会議に、RI(リハビリテーション・インターナショナル)からIDAへの加盟希望が提出された。
RIをただちに会員として受け入れるか,その決定を次回の会議まで持ち越すべきか討議された。結局会員として認めることに決定。

もう一つ重要な議題は翌日(4月17日午後)に予定の国連人権高等弁務官(Mrs. Mary Robinson メアリー・ロビンソン)との話し合いの内容の決定。
リーサ・カウピネンはアルマサで話し合われたことを主な内容とし,そこで決定されたことの実践方法を話し合うべきだという提案。
キキ・ノードストロムとリーサの両氏はジュネーブで2002年に開催される次回国連人権委員会で人権問題をモニターする特別報告者を設ける決議の必要性について述べた。
ウィリアム・ローランドもメアリー・ロビンソンの人権委員会に人権監視機能を持たせることが最重要な課題であると述べた。
ナンシー・ブレイテンバッハは、社会委員会と人権委員会が相互の認識と連携を強めることの重要性を強調した。
キキ・ノードストロム:提案された障害問題の組織間協力体制は国連から支持されない。このような組織間協力は女性の人権問題を取り上げた際にも提案されたが、財政的な理由と組織の手続き上の問題から却下された。
ベングト・リンドクビスト:このことは人権委員会決議の中で触れていますので,Kofi Annan(コフィ・アナン事務総長)に再度注意します。
一年が経過したので、次のIDAの議長を担当する組織を決定する必要があり、討議の結果インクルージョン・インターナショナルが議長を勤め、ドン・ウィリス氏が責任者となることに決定した。

翌日の人権高等弁務官との会合では,ウィリアム、ルーシー,リーサがそれぞれ約3分ずつ話し,人権侵害の例を挙げていくことに決定。

4月17日(火)

IDAの第二回会議。
人権条約の長所・短所が話し合われた。
IDAの方針書を書くことに決定した。この方針書には,長期目標と短期目標を掲げ、条約は長期目標にする。短期目標としては、既存の障害者の人権活動が主流の活動の一部として組み込まれるように運動することを挙げた。この目標達成のためにも,2002年以降にも障害問題の特別報告者又はオンブズマンの任命を要望する。
方針書は全障害共同のものなので、個々の障害には触れない。

カール・バッハ・イエンセン(WNUSP精神医療の使用者・生還者世界ネットワーク)とナンシー・ブレイテンバッハ(インクルージョン・インターナショナル)がそれぞれの意見書を提出した。

4月18日にIDAメンバーは人権高等弁務官のロビンソンさんと障害者の人権問題について20分間の会合がもてることが、キキ・ノードストロムから報告された。この会合でどの課題を取り上げることが最も重要であるか討議した。
その結果,次の3名がIDAを代表して話すことになった:ジョシュア・マリンガ,キキ・ノードストロム,リーサ・カウピネン。

200年11月に開催されたアルマサ・セミナーの短い報告書に最も重要な課題と結論の概要が書かれているので,これについて話し合うことがキキ・ノードストロムによって提案された。

この日の障害問題の諮問会議で発言するメンバーが簡単に話す内容を説明した。IDAメンバー全員が討議の内容に満足して終わった。このレポートに添付する声明文を用意した。

人権と障害に関する意見

最初のスピーカーは国連特別報告者のベングト・リンクビスト氏: 次の10〜12ヶ月の間は手順と方策を記録していくことが大切であると説明した。社会開発委員会と人権委員会はそれぞれ来年度の課題として障害問題を取り上げる。ベングトは国連特別報告者の任務に就いて以来の報告をし、現在の基準規則に対する更なる行動と改正等の進展を提案する。国連のさまざまな機関を利用し、更に効率を上げ、障害分野に関して国連とNGOの間に何らかの連携体制を作ることを提案する。

国連経済社会理事会の(ECOSOC)経済的、社会的、文化的権利委員会は一般報告(1994年, No. 5)の中で障害問題が人権問題であることを認めている。会員国はこれを受けて、次々に決議事項を採択し,このことを更に明確にしている。このような決議によって各国政府は人権侵害の実体を国連人権委員会に報告するよう義務付けられた。国連の組織や各国政府からの反応はほとんど見られないが,NGOの間で動きが見え始めた。

人権と障害に関する認識について討議することが大事である。認識を広めるためのさまざまなプロジェクトや行動が取られている。例えば,スェーデンのストックホルムで2000年11月に開かれた国際セミナー,「世界に知らせよう」(Let the world know)もその一環だ。通常「アルマサ・セミナー」と呼ばれているこの会合には人権問題の専門家と障害者団体が参加し,障害者に対する人権侵害や虐待の実例を報告をした。このセミナーでは,次の結論と今後の提案が出された。

このセミナーでは,5つ観点から具体的な提案があった:
- 人権侵害や虐待に関する個々のケースを報告
- 差別に関する判例を収集
- 特定の国の障害者擁護に関する法律,政策の検討・比較
- 政府の計画,サービス,慣行などを国際基準と人権擁護の観点から再検証
- マスコミをモニターし,障害を持つ人々の取り上げ方を監視

このような計画を実践し,成功させるには資金を確保し、機器を開発し、専門スタッフを募らなければならない。一度に全部の国でスタートするのではなく、いくつかの国で実験的に始め,その報告をうけてから広めていくのが望ましい。

この計画を進めるにあたって,前提条件として: 障害者団体が関心を持ち,参加し,実践に努める意志があること。全国的な人権擁護組織が機能していて、障害問題に国民の関心が高い国を選ぶことが望ましい。このような国で実験的にスタートさせると良い。

人権委員会は既存の人権に関する公文書を検討し、国連特別報告者の支援を受けながら今後の対策を提案するために2名の人を選任することを促した。



人権を擁護するには最も効率的な方法は?
- 常にアップデートされた最新の情報を入手する
- 二つの委員会の会期が終了するまでの時間の有効利用を強調する
- 政府に対して、次年度の決議に向けて本格的な準備に取り掛かり、具体的な進展を図るよう働きかける。
- 何をすべきか。そのためにどのように資金が確保できるかを決定する必要がある。財政的な裏づけのある実際的な行動を計画する。

ベングト・リンクビスト氏の報告のあと,全体討論が繰り広げられた。

ジョシュア・マリンガ(IDA):
IDAの加盟障害者団体は国連人権高等弁務官と国連障害問題特別報告者の活動を支援する。障害問題を更に人権問題として定着させる取り組みは非常にポジティブな行動である。我々は今,障害者の人権を擁護するための国際的に法的効力をもつ公文書を求めている。

ウィリアム・ローランド(IDA):
障害者問題に関する認識を広める必要がある。障害を持つ人々は世界人口の約10%を占めており,無視できる数ではない。しかしながら全体から見ると小数であるため,しばしば差別的に扱われることがある。したがって,次の点に考慮する必要がある:
- 不平等な立場
- 隔離された環境(特殊学校,精神医療施設等)のため,社会との結びつきが持ちにくい
- 教育が受けられない
- コミュニケーション,情報が不十分であることを放置していることから生じる障害者の虐待
- (選挙権,結婚、証言・証明等)公民・政治的権利がしばしば奪われている。性的虐待,貧困,売春などの恐れには日常的にさらされている。
- 貧困に悩む障害者は工業先進国の場合は全体の10%未満でだが,開発途上国では50%以上もいる。
ローランド氏は最後に、人権高等弁務官がこれらの問題について少し考えてくれることを期待すると述べた。

ルーシー・ウォン(IDA):
障害問題に対する関心を高める必要がある。国家又は国際機関,政府,NGOなどの法律や活動にも関わらず,障害者が人権侵害の被害者になっているケースがあまりにも多く報告されている。これを解決するために一体何をすべきか?忠告だけでは不十分である。行動を起さなければならない。なぜ国連は権利条約に対してあれほど消極的なのでしょう?この課題に対する支援を期待する。

ナンシー・ブレイテンバッハ(IDA):
IDAの共同声明文の中で我々は,既存の人権条令などだけで人々の人権を守れるだろうかと問いかけている。権利条約によって人権擁護を強化できるだろうか?それとも現状に耐えなければならないのだろうか?障害を持つ人々が本当の意味でインテグレートできるようにしなければならない。自らも障害を持ち,障害施策に精通しているオンブズマンか特別報告者を強く望みます。又この人仕事に我々の意見も反映させられることを望む。

アン・アンダーソン:
アイルランド大使(アイルランド政府は1990年代の終わりまでに障害問題に関する政策をほとんど施行している。) 障害問題に関する人権委員会と特別報告者の義務と関わりを明確にする必要がある。障害者に対する差別は存在する。世界には6億人(全人口の10%)の障害者がいる。これは驚くほど大きな数字で,記録すべきである。

権利条約は障害者の保護,擁護に役立つべきである。こどもの権利条約も障害者に関する項目がある。これにより,障害を持つ子どもたちに関する意識が向上し,この問題に関する重要な報告も行われている。こどもの権利条約のモニター機関もポジティブな実践と結果を出している。

障害を持つ人々の問題を取り上げる上で、現在の国連制度の改善が望まれる。新しい人権擁護制度が必要だ。新たな条令などの施行は難しい。我々はすでに人権と障害に関する決議 200/51があり、この決議に基づく活動が展開されている。昨年度も50の支援機関がこの決議の内容を強化するように努力をしている。

先ほどから話に出ているアルマサの会議は大変重要な貢献をしてくれた。アルマサの会議の提案は重要且つ実践的である。人権条約モニター機関はこのアルマサ会議の結果に沿った障害者関連のガイドラインを策定すると良い。

人権委員会事務局は障害者関連の決議や情報に関するグローバルなデータベースを構築し、誰でもがアクセスできるようにするべきである。

我々は知的障害に関するセミナーに資金提供し、この分野の人権問題の解決に向けての進展を図る。

メアリー・ロビンソン:
優先事項でありながら、まだ人権擁護の観点からは障害者に対する溝が埋めきれていない。議事に5つの点を加えたい:
1. どのようにすれば障害者自身の口から問題点を訴えていけるだろうか?
2. 彼らは自らの人権を享受し生活に生かしていく方策をもっているのだろうか?
3. どうすれば我々が掲げる権利を障害者の実生活の向上に繋げることができるだろうか?
4. どうすれば障害をもつ人々の地位向上が実現するだろうか?
5. 人権侵害等をどのように報告すれば良いだろうか?

人権問題と障害者問題は連携して取り組まなければならない。これまでの人権運動、人権に関する法規、条令などに障害者が含まれている事を再確認しなければならない。
データベースは是非作りたいです。障害者の保護と地位向上にとって、実践的な方策です。まずしなければならない事は、既存のシステム等を点検し、活用できる資源を把握することだ。

リサ・カウピネン(IDA):
障害者に対する人権擁護の実態調査ができるのではないか。この調査、研究は次のような例を含むことが望ましい:
1. 障害を持つ人々の人権
2. 教育を受ける権利
3. 保健と社会的サービスを受ける権利

世界ろう連盟に夜と世界には7千万人のろう者がいて、そのうち80%が教育を受けられないでいる。世界の大多数の国で手話が禁じられている。自己表現の手段としての言語をもたなければ、人権侵害、虐待などを受けやすくなる。

障害をもつ人々は大きな資源です。彼らは参加し、役割を果たし、貢献したいと思っている。どの国にとっても我々障害者は大きな資源であり、貢献するための知識も能力も持っている。

レックス・グランディア(IDA):
私は(世界盲ろう者連盟と言う)非常に歴史の浅い組織を代表しています。我々は世界中に何人の盲ろう者がいるのか調べようとしています。それと同時に彼らの生活の実態もモニターしています。国が調査している場合もありますが、そこに示されている数は実際よりずいぶん少ないです。又、中には盲ろう者の存在を全く無視しているような国もあります。我々の存在を確認しようという努力は全くありません。社会から忘れられています。社会の認識を深めなければならない。そのための効率よい手段が必要です。

様々な意見が出されたが、障害者の権利条約に対して前向きな意見もいくつかあった。ある人は、それが(条約が)障害者を擁護する唯一の方法だと言った。

法律や制度を変えれば障害を持つ人々も社会に対して影響力をもつことができる。自らの力で能力を伸ばす事もできる。彼らは自立した人間として、政府や国家機関に代表されるべきである。子どもの権利条約の情報にリンクできると良いと言うてあんもあった。

アフリカからのある代表は、開発途上国では障害者に対してほとんど何も策が講じられていないとコメントした。したがって、このような会議は障害者に対する認識を深める上で大変有意義である。障害者の人権に関する法律がある国でも、障害者の権利が認められていない場合がある。

懇談会では、いくつかの国の代表者が自国における障害者の生活向上のための法律や社会改革の例を挙げた。
人権と障害者の問題を包括的に研究するため1984年に初代特別報告者として任命されたレアンドロ・デプイ氏(Mr. Leandro Despouy)は、以前国連が障害の問題を重要視していなかった事を説明。障害に対する知識もなく、偏見も多かった。ほとんどの国の政府は障害問題をうまく隠し、障害者を保護する政策や法律を作る気などなかった。それどころか、障害者のケアは多額の予算が必要だという理由から、全く障害者の権利を認めようとしなかった。

障害に関する意識向上にはNGOが大きな役割を果たした。NGO無しでは障害者に関する認識を深める事はできなかったであろう。

他にも多くの人が発言を希望したが、時間の制約からひとり3分ほどしか与えられなかった。

4月18日(水)

会議の最終日で、この日はベングト・リンクビスト氏とエヴァ・サグストロムが会議に招待された。

リーサ・カウピネン: 意識の向上というのは非常に時間がかかります。この目的達成のため、IDAがタスク・フォースを設置するのが良いのではないか。IDAは来年報告書を提出できます。既に人権と障害に関する資料があります。我々に関する情報をもっと提供しなければなりません。

スーザン・ダニエルス:我々は、与えられている機会を理解しているだろうか?メアリー・ロビンソンが受け入れられる範囲を越えて要求していないだろうか?

ベングト・リンクビスト: 来年2月に社会開発委員会に最終レポートを提出した後のモニタリング機構はどうなるのだろうか?来年3月〜4月頃に人権委員会が開催される時、我々障害者全体として次に取るべきステップは何だろうか?

ベングトは、世界行動計画のモニタリングと基準規則のモニタリングはひとつに統一されるべきであり、進展の評価は定期的に行なわれるべきだと言う意見だった。

各国政府には定期的に諮問、助言するサービスを行なう。ただし政府がその活動を財政面で支える必要があり、果たして資金を提供するかどうかが問題だ。障害をもつ人で障害分野にかかわりが深く、信用度の高い人がアドバイザーになると良いでしょう。又、この制度は国連の管理課におく事も大切だ。

国連の中に意見の交換と調整のために国連内に組織間協力体制があると良い。キキは女性問題の委員会での経験を話し、この程度の体制作りも難しいかもしれないと述べた。

障害者の人権擁護を促進するにはどうすればよいのだろう?障害者の権利条約を再度求めるには良い時期かもしれないが、同時に悪い時期かもしれない。人権委員会は障害者問題に対して、メインストリーミングの方向でやっと動き始めた。権利条約はメインストリーミングを望んでいないような印象を与えないだろうか?
誰かがモニター機関の設置に向けて説得できれば、ずいぶん進展を見るだろう。とりあえず、既存の障害運動を続けながら機会を待つ。もしやり残している事があるとすれば、やはり権利条約に向けての議論だろう。

キキ・ノードストロム:人権研修センターの提案が決議2000/51にありますが、あれはどうなっているのでしょう?我々はアルマサ会議の実践状況も検証しているわけですから、研修センターの問題もメアリー・ロビンソンにぶつけてみても良いのではないでしょうか?IDAは諮問機関としての資格を与えてもらえないだろうか?他の関連組織、特に専門家パネル、からも要望してもらうと良い。

カール・バッハ・イエンセン:精神的、知的健康の問題も障害分野に組み込むべきだ。なぜ社会開発委員会と人権委員会が別組織に分離されているのだろうか。

キキ・ノードストロムの返答:社会開発委員会は社会開発の視点からのアプローチを取り、人権委員会は人権に関する協定、条約、誓約などに基づいている。

リーサ・カウピネン:権利条約のみを要求していくと問題が生じる。多くの組織・団体にとって、条約は非常に大きな意義を持つ事は分かっている。しかし、それのみを要求していくと問題だ。人権委員会と密接に連携し、メインストリーミングの進展を監視するモニターシステムの中にオンブズマンを設けるべきだ。2名の相談役、ジェラード・クインとテレジア・デグナー、が権利条約の研究報告をまとめるまで条約を要求するのは待とう。資金面は?影響力を持つには?決定権はどこにあるのでしょう?

ベングト・リンクビストの返答:障害に関する全般的な課題は来年の社会開発委員会と人権委員会両方の議題に載るでしょう。人権問題としては、基本的な問題提起としてメアリー・ロビンソンから報告書が提出されるでしょう。

一日または半日のテーマ協議が開かれ、障害またはHIV/AIDSについて討議される予定。メアリー・ロビンソンに頼んで必ず障害問題を議題にとりあげてもらう事はできる。この方法は目的達成を容易にする。又、レアンドロ・デプイ氏の力添えも役に立つ。来年の議題は現在のこの会議で決定する。テーマ協議の二つの課題を我々も取り上げるのも良いのではないか。人権委員会のオンブズマンにしても特別報告者にしても、委員会が承諾しなければならない。しかし、財政面の裏付け抜きで承諾はしないだろう。したがって、いくつかの国の政府に財政的サポートを求めなければならない。可能性があるのはアイルランド、カナダ、デンマーク、フィンランド、スウェーデンなど。オンブズマンと言うのはいつまででも仕事を続ける事ができるが、特別報告者と言うのは短期的な、一定の期間のみの仕事だ。その意味では、特別報告者の方が資金援助を受けやすいかもしれない。メアリー・ロビンソンの特別アドバイザーのブライアン・バーディカンは強い見方だ。

ヤンニス・バーダカスタニス(EDF):我々がこれまで築いてきた事は守り、推進し、更に進めていかなければならない。具体的な行動計画を作る必要がある。それをいつ、どのような方法でするか?政府が既存の人権活動や条令などをメインストリーミングの方向で進めようとする場合と、権利条約制定の方向で動く場合がある。我々はどちらも推進していけるように準備が必要だ。

ジョシュア・マリンガ: それは既にアルマサで確認している。

このあとIDAのメンバーはその後予定されているメアリー・ロビンソンとの会合について討議した。その結果、ジョシュア・ガマリンガ、リーサ・カウピネン、キキ・ノードストロムがIDAを代表して下記の課題について話すことに決定した:
- 2段階戦略をとる。
a) 既存の障害関連の国連約款や協定のメインストリーミングを推進する
b) これが成功しない場合は、次の段階は障害者の権利条約の方向で進める。
- 人権擁護システムの中にモニター制度(オンブズマン)を設ける。
- IDAの代表者たちは社会開発委員会と人権委員会の強い関連性を強調する。
- 決議2000/51の30項にしたがって作業を進める際、IDAの意見を求めるべきである。又専門家パネルとジェラード・クインとテレジア・デーグナーの調査の重要性も強調すべきだ。
- 人権に関する専門家が障害問題に関する研修を受けるようIDAは要望すべき。
- 来年の会議のテーマ協議の議題の一つに障害問題を入れることを要求。
- もし必要であれば、IDAはテーマ協議を共同で進め、HIV/AIDSの問題を同じ日に討議することもできる。

リーサ・カウピネン: 国連と人権委員会との関わりを深めるための長期行動計画書が必要だ。

スーザン・ダニエルス: ベングトの提案どおり、とりあえずモニタリング制度を作るチャンスを逃さずに設置した上で条約の可能性を探る。モニター・システムの立ち上げを支援し、その後必要に応じて条約に関する情報を提供してく方法がい良い。

ベングト・リンクビスト: 11月か12月に会合を開いてくだされば、それまでに報告を仕上げることができる。研究は9月に出版される。皆さんが今から始められることは:
- オンブズマンか特別報告者のための予算を組む運動(資金面の支援が必要なので)
- 人権に関する専門化のトレーニングを始める。

ベングトからの質問: 開発途上国が条約を非難する理由はあるのだろうか?多くの途上国は人権擁護に関心が無く、条約も承認しないだろう。

リーサ・カウピネン: IDAは財政面を含む戦略的行動計画が必要です。どのように組織していったら良いだろう?これまではSIDAの協力が得られたが、これはいつまでも続くとは思えない。我々は9月までに方針書を書き、資金を調達しなければならない。リーサはフィンランドの外務省に相談して、スウェーデンがIDAへの資金提供を打ち切った後の支援を仰ぐ。我々のネットワークを拡大するためにも資金が必要だ。相互協力と連携の強化に関する方針書も必要だ。
キキ: リーサには是非フィンランド外務省からの資金援助を頼んで欲しい。たとえスウェーデンからの資金援助が続いたとしても、フィンランドからの援助はありがたい。キキはSIDAに人権と障害の問題で引き続き支援してくれるよう申し入れてみる。

スーザン・パーカー(ILOからのゲスト・スピーカー):ILOは開発途上国における障害者支援計画について知りたいので連絡を(parker@ilo.rog)。我々は全ての女性、男性に適正で生産性のある就労の機会を与えたいと思っている。ILOの障害者プログラムは障害者にも均等の機会と待遇が与えられるべきだという理念に基づいている。

ILOには175の会員国が加盟している。この3年間の間に障害分野では4回組織改正をした。

ILOは障害者のためにさまざまな取り組みをしている。例えば、障害を持つ女性たちに起業機会の援助をおこなったり、地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)を促進したり等。これらのプロジェクトに興味のある団体はILOに連絡してください。障害を持つ方にもアクセスしていただきたいので、電話、ウェブサイトでも情報提供をします。

ベングト・リンクビスト氏からの情報: ベングト・リンクビストの事務所はアンネリ・ジョネケンを雇い、基準規則の改正に関する意見、考察等をまとめる作業を担当してもらう。

アルマサ・セミナーの決定のその後の実践状況に関する報告をまとめるワーキング・グループガ設置された。構成メンバー:
キキ・ノードストロム
レックス・グランディア
ドン・ウィルズ
ルーシー・ウォン・ヘルナンデス。

ジョシュアが閉会を宣言した。キキがジョシュアの議長としての手腕を誉めた.

人権高等弁務官、メアリー・ロビンソンとの会合:
 ジョシュア・マリンガが現在のIDA議長として挨拶。IDAは人権高等弁務官と国連特別報告者のベングト・リンクビストの仕事に対して大変協力的であることを説明。

人権と障害者の問題を解決するには二つの道に分かれる。一つは、全ての既存の人権運動、人権宣言等を支援し、障害問題に関してはメインストリーミングに向けて推進する。その際、IDAは諮問機関として機能できる。この作業を進める上で、人権擁護体制の中に特別報告者を設置することができる。IDAは人権高等弁務官との連携を強化したい。

キキ・ノードストロム: 人権高等弁務官と障害問題特別報告者の仕事を常にフォローしてきた。最後の決議、とりわけ第30項には大きな期待が持てる。IDAは是非力を貸したい。この決議に基づき実践していく上で、我々の知識を役立て、今後の方向性や進め方について助言できる。IDAと専門家パネルの情報はご自由にお役立て下さい。決議2000/51の実践に関する第8項にも書かれています:「人権等々弁務官事務所が人権分野に於いて最も効率よく活動できるよう、NGOは技術的、専門的援助をすることを奨める。」

リーサ・カウピネン: 我々は共通の目的をもっている。障害に関する知識のある特別報告者の任期が終わろうとしている。来年の議題に是非障害問題を取り上げて欲しい。モニター・システムも組織する必要が有り、社会開発分野と同様にオンブズマンか特別報告者がいると良い。テーマ協議の議題に障害問題を取り上げて欲しい。特別報告者であるベングト・リンクビストの任期が2002年に完了すると、基準規則に関する作業が停止してしまうのではないかと恐れている。ひとりの特別報告者では不十分だ。人権分野と社会開発分野にそれぞれ特別報告者がいて、その間を調整する担当者もいた方が良い。我々もできるだけ情報提供する。国連の組織間会議の場で、このような問題に関する情報提供がもっともっと必要だ。

ジョシュア・マリンガ: 特別報告者にしてもオンブズマンにしても、障害を持つ人が担当するのが相応しい。人権に関する既存の国連条約、宣言等をメインストリーミングしていくというアプローチと障害者権利条約を批准する動きは何ら相反するものではない。

ロビンソンさんによって始められて、アイルランド政府によって進められている障害問題の研究がどの程度進展しているのか知りたい。

キキ・ノードストロム: 決議2000/51は人権教育の推進を謳っている。これには費用がかかるが、スカンジナビア各国から資金援助が受けられるかもしれない。教育の促進は重要課題だ。国連の専門家は我々の生活に関する知識が必要だし、我々は国連のシステムに関する研修が必要だ。この決議の内容がうまく実践されて国は力を合わせていく方法を見つけなければならない。

メアリー・ロビンソン: 今の意見に賛成です。良いチーム・ワークは可能です。既存の人権機構がどのように監視されているのかが曖昧のまま新しい権利条約を要求していくのは心配です。女性の権利条約は障害を持つ女性には触れていません。その欠落を埋めていく必要があります。当然障害者の参加が必要です。

貴方が提案されたメインストリーミングを推進するためには新しい条例が必要になるでしょう。そのほうが新しい条約に多くのエネルギーと時間を費やすより速い。これが最善の結果に向けての最善のアプローチでしょう。

IDAやNGOは障害者を代表する中で多くの知識を蓄積してきました。これは大切な資源で、共に活用していきたい。

我々はデータベースを構築することで障害に関する専門性を高めることができる。これに必要な専門知識を与えてくだされば我々の事務所でこのデータベース作りを担当できる。

障害問題特別報告者のベングト・リンクビスト氏とはとても良い関係を保っています。彼は社会開発委員会だけではなく、人権委員会にも報告しています。この結びつきは非常に重要です。
このような結びつきを強化したいが、戦略的に効果的な時期に行わなければならない。効果的な転換を図るには時間が短すぎる。

障害問題のメインストリーミングという課題をもっと体系的に行い、各国の人権委員会がそれぞれの国の人権擁護制度の実践に関わっていくのが望ましい。

人権委員会は次年度の決議で新たな制度を作り、特別代表者又は特別報告者を任命すると良い。人権委員会事務所はこの障害問題の人権特別報告者を任命する。

教育にも重点を置きたい。人権関連の職員が人権教育により一層熱意を持って取り組むことで関連団体や組織の協働体制を築くことができる。

障害者が国連の仕組みを知った上で、自分たちから発言することが大切だ。人権委員会では、既存のシステムを解説している。IDAと共同で仕事を進めたいと願っている。知識とエンパワーメントによりお互いの事業がきょうかされるだろう。

ジェンダー等に関するウェブサイトは決して障害問題に関して敏感ではない。しかしそれではいけない。障害分野からどなたかが人権委員会事務所に来てくだされば、一緒に障害関連の情報を提供するウェブサイトが作れるかもしれない。

テーマ協議に関してはベングト・リンクビスト氏と相談したが、今回は東ヨーロッパ・グループの担当(リトアニアが議長国)で人権委員会が介入しにくい。東ヨーロッパ諸国が最終決定をします。

ロビンソンさんは多忙な時間を割いて、我々と45分間も話してくれた。我々に礼を述べて、来年3月〜4月には結果を期待していると述べた。

クリスティーナ
キキ




添付資料1
国際障害同盟の声明
2001年4月17日ジュネーブで開催の国連人権委員会との懇談会にて提出

障害は決して取るに足らないげんしょうではない。

現在身体的、知的、感覚的機能障害、医学的状況又は精神的疾病により、軽度から重度まで障害を持つ大人や子供は約6億人いると言われているが、これは世界人口の10%を占める数だ。

障害を持つ人々は単に障害を持っているというだけの理由でさまざまな差別を受ける:
- 蔑視するような態度は障害者本人ばかりではなく、その家族にまで影響を及ぼす
- 障害を持つ人々の社会的地位は、障害を持たない同年代の人と比べると必ずといっていいほど低い。多くの「普通」の人たちから見ると、障害を持ってまで生きる価値が無いようにおもえる。
- 世界のほとんどの国で障害を持つ人々は地域社会から離れて、隔離された環境での生活を強いられている: 例えば特殊学校、障害者専用の職場、グループ・ホーム、精神医療施設等。そのような場では通常の社会との関係を築くことが出来ない。
- 障害を持つこどもたちの大多数は一般校から締め出されている。入学できたとしても、彼等のニーズに合わせた教育は望めない。高等教育を受けられるのは極少数。したがって、資格を要する職に就いたり、昇格したりする機会は奪われてしまう。
- 知的、感覚的、又は身体的障害の結果生じるコミュニケーションの困難に対する無知、無関心のために情報へのアクセス、社会や政治への参加などから疎外される。
- 基本的公民権、参政権が制限又は剥奪されている: 自分自身の考えを述べる権利、選挙権、結婚する権利、法廷で証言する権利、商売又は不動産取得の契約を交わす権利、国から国へ自由に旅する権利、移民する権利など。
- 障害者はしばしば虐待を受けることがある: 障害を持つこどもや大人は抗議する手段をもたないため、性的虐待にさらされる危険性が高い。知的障害を持つ若い女性が殺されても警察は犯罪調査をしようとしない場合がある。心理社会的障害を持つ人々は健康を害すほどの監禁生活と薬物治療を耐えなければならない。
- 障害者は貧困から脱することが出来ない場合が多い。豊で、技術的にも進んでいる国では、半数以下の障害者しか職に就けず、平均収入は障害を持たない労働者に比べて著しく少ない。

先進国ではこのような状況が更に顕著で、障害者の雇用率はしばしば10%未満である場合もある。社会保障制度が無いことも苦しい状況を更に増す結果になる。

このような状況にも関わらず、障害者は常に開発計画から外されている。


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最終更新 2002年8月3日
財団法人 全日本聾唖連盟