2006年3月23日

岐阜県中津川市かやの木町2番1号
中津川市役所内
 中津川市議会
     議長 平岩正光 様

岐阜県中津川市かやの木町2番1号
中津川市役所内
 中津川市議会運営委員会
     委員長 楯公夫 様


東京都新宿区山吹町130SKビル8階
財団法人全日本聾唖連盟 
理事長 安藤豊喜  


質  問  書



 当連盟は、47都道府県の加盟組織を通じて2万4千名のろうあ者会員が結集し、ろうあ者の福祉向上のために活動している全国団体です。
 本年3月11、12日両日、東京都中野区において、北海道から沖縄県まで全国各地から選出された25名の理事が出席して理事会を開催しました。
 この理事会における全員一致の決議に基づき、下記の通り申し上げると共に、ご質問します。
 新聞報道(中日新聞2006年3月6日夕刊、同新聞同年同月7日朝刊、読売新聞同年同月同日朝刊、朝日新聞同月同日朝刊等)、岐阜県弁護士会の平成17年11月16日付き勧告書、中津川市議会ウェブサイト上の運営委員会による経過報告等を総合しますと、中津川市議会におかれては、音声機能障害者となった議員の議会発言(本会議一般質問)につき、パソコンによる音声変換の利用が必要とされ、同議員の希望する代読方式は認めない由です。また、食道発声の方法も認めず、一般質問の通告書の受取りを拒否された由です。
 そして、岐阜県弁護士会の勧告書によりますと、代読方式を否定される理由としては、公選人以外の人の演説となること、公選人以外の人が自分の意思で発言してしまうこと、本人の意図と違った発言になる可能性があること、誤読による代読者の責任問題が生じること、代読者のパフォーマンスが入り込むこと、代読者がその機会を利用して次の選挙に立候補することに悪用する危険があることの6点を挙げられ、音声変換装置に限定される理由として、読み違いがなく、本人の意思がきちんと伝わり、第三者の感情が入らない、ということを挙げられている由です。さらに、音声変換装置については、これを利用できるよう自助努力すべきである、とされるようです。
 しかし、かかる理由で代読方式による議会での一般質問を否定されることは、音声機能障害者に対する無理解と差別意識に基づくものと考える他はなく、音声機能の面で共通の障害を持つろうあ者として、到底看過できません。
 念のために申し上げますと、「政見放送及び経歴放送実施規程」は、国会議員選挙の政見放送に際して一定の要件の下に手話通訳士による手話通訳を付して録画できるとし、また、音声機能等に障害のある候補者等については、放送関係者が原稿を代読録音したものを使用できるとしています。前者は、聴覚障害者にとっては候補者以外の人が音声を手話に代えて通訳しているわけですし、後者は候補者以外の人が原稿を代読しているわけですから、形式的には前記の代読否定理由がそのまま該当することになりますが、しかし、それが問題にされた例を知りません。なお、2001年には、聴覚障害者が長野県白馬村議会議員となりましたが、白馬村議会は議会内の手話通訳を保障し、予算化しています。
 また、これも念のために申し上げますと、完全参加と平等を掲げた国際障害者年以来、障害者問題の解決に必要な最も基本的かつ重要な課題は、自己決定権の保障とその前提となる選択権保障にあることが確認されています。改正後の民法第969条2、同法第972条でも、通訳人による申述と自書との選択を保障しているところです。
 この点、新聞報道等が事実でしたら、中津川市議会もしくは議会運営委員会の本件への対応は、時代を逆行させるものと申し上げる他はありませんし、特に、障害者本人の自主的・自発的行動を意味する「自助努力」の言葉を、第三者が決定する措置の意味で使用されるのでしたら、自己決定権の否定に直結するものとして、到底容認できません。
 よって、私どもは、全国のろうあ者を代表して、以下の点をご質問致しますのでご回答下さい。なお、ご回答は本書到達後2週間以内に文書を以てお願いします。



  1. 中津川市議会では、議員が音声機能に障害を持つに至った場合、その一般質問については、音声変換パソコン利用を要件とし、代読による方法を認めないとされ、その理由については前記の通り(岐阜県弁護士会勧告書記載の通り)とされる、との事実に間違いないでしょうか。
  2. ここに挙げられた理由は、障害者の権利保障に優先する、現実的かつ解決方法のない問題であると、お考えでしょうか。
  3. 障害者問題を考えるにあたっては、自己決定権の保障とその前提となる選択権保障が最も基本的かつ重要な課題であり、他方、障害者の「自助努力」とは、本人の自主的・自発的な行動を意味するものであって、第三者が決定することではないし、決定してはならないことであると考えますが、如何でしょうか。
  4. 音声機能障害者の議会における発言についても、発言に代わる方法を可能な限り広げて、本人が自ら選択し、自ら決定できるようにすることが最重要な課題であると考えますが、如何でしょうか。
  5. 以上を総合し、音声機能に障害を持つ議員の発言につき、本人の選択権と自己決定権を尊重することを基本として、選択肢に原稿代読の方式を加える方向で再検討されるお考えはないでしょうか。

以 上