2001年4月17日、全日本ろうあ連盟は毎日新聞と大阪府耳鼻咽喉科医会会長 酒井國男氏宛に以下のような質問状を内容証明郵便で送付しました。



(実際には内容証明郵便形式です。)

質  問  状


 当連盟は、全国都道府県の四七加盟組織を通じて二万七千名のろうあ者会員が結集し、ろうあ者の福祉向上のために活動している団体です。
 先般、二〇〇一年三月二四日の毎日新聞朝刊二三面に「耳の健康を考える」との見出しによる企画特集が掲載されました。
 右企画特集では、三月四日に毎日新聞オーバルホールで開催された「第5回耳の日セミナー・耳の健康を考える」の講演の要旨を掲載しています。
そして、酒井國男・大阪府耳鼻咽喉科医会会長の講演要旨「乳幼児の難聴」には、冒頭に「情報を蓄積し、伝えることで人間は発展してきた。この根本となるのが言語で、耳はいわば、人間生活の根源にかかわる器官だ。」としたうえ、「想像力や考える力は耳が優位であることを忘れないでほしい。豊かな感性を持つためには、聴覚が重要な感覚であることを認識してもらいたい。」と記載されています。
 加えて「5歳までに難聴が治らないと、言語がしゃべれなくなる。そうなると、一般的に字も読めなくなる。つまり、もとはすべて聴覚と言うことだ。」との驚くべき記載もなされています。
 よって、私どもは貴新聞社と酒井國男殿に対し、左記の点を質問します。

(質問事項)
第一点、「想像力や考える力は耳が優位である」のですか。そう断定される科学的根拠は何でしょうか。
第二点、「5歳までに難聴が治らないと、言語がしゃべれなくなる。そうなると、一般的に字も読めなくなる」のですか。そう断言される根拠は何でしょうか。また言葉がしゃべれない限り字を読む力は育たないとお考えでしょうか。
第三点、そして、「ろう学校」という存在を無意味であるとお考えでしょうか。
第四点、私どもは、手話という視覚言語に誇りを持ち、みずからを「ろうあ者」と言い、団体名を全日本聾唖連盟としています。前記の講演要旨の論理的帰結としては、この私どもの団体は「『人間生活の根源にかかわる器官』を持たないために言語力、想像力、考える力に乏しい者の集団」となります。そう考えておられるのでしょうか。
第五点、右記載から判断する限り、酒井國男殿の講演は、ろうあ者の現実の生活に対する全面的な無知と偏見に基づくものと言う他はなく、またろうあ者に対する社会的差別と偏見を大きく助長し、ろうあ者とその団体である当連盟に多大の損害を与えたと私どもは考えますが、如何でしょうか。
そうでないと否定される場合は、その根拠となるお考えをお知らせください。
そうであると肯定される場合は、貴新聞社と酒井國男殿は、これを回復するために如何なる処置をお取りになる予定か、お知らせください。
以上、本書到達後一週間以内に文書をもってご回答いただければ幸いです。

二〇〇一年四月十七日


東京都新宿区山吹町一三〇SKビル八階
財団法人全日本ろうあ連盟
代表者 理事長  安 藤 豊 喜

大阪府大阪市北区梅田三―四―五
毎日新聞大阪本社
社長 斎 藤  明 殿

大阪府大阪市天王寺区上本町三―一―二
ハイム水谷三〇一号
大阪府耳鼻咽喉科医会
会長 酒 井 國 男  殿