共同アピール −選挙運動の手話通訳を担う皆さんへ− |
2000年5月22日 |
財団法人全日本聾唖連盟 全国手話通訳問題研究会 日本手話通訳士協会 |
今国会において、「公職選挙法」の一部が改正され、次の選挙から、各政党は、「選挙運動に従事する者のうち、専ら手話通訳のために使用する者」に「報酬を支払うことができる」こととされます。
これは、手話通訳に対する社会の評価が高まった結果のひとつの現れであり、私たちの運動の一定の前進であると評価できますが、同時に公的保障でなく利用契約であることから、営利化等の不安も含まれています。
全日本ろうあ連盟としては、現在、地域単位での拠点が必要とされるため、各都道府県加盟団体が窓口になり、各政党・立候補者等からの手話通訳者の派遣要請にこたえていく方針での検討をしているところですが、「選挙運動員としての手話通訳行為」というこれまで経験したことのない新しい課題を前にして、大きなとまどいも感じます。
平成7年(1995年)7月に、テレビの政見放送に初めて手話通訳者が公費で導入されましたが、それに先立つ同年5月、日本手話通訳士協会が「政見放送に向けての倫理」を発表し、全国の手話通訳者の参考とするとともに、そこに書かれた倫理を基調にして、政見放送に取り組んできました。この「倫理規程」を要約すると、正確な通訳を行うための「専門性」と、その「政治的中立性」のふたつになります。
「専門性」の面では、日本手話通訳士協会が、自治省からも支援を受け、「政見放送のための研修」を行ってきました。
そして、「中立性」については、私たちは平成7年当時、政見放送に手話通訳者が導入されるに際し、協議の上、次のような方針で臨んできました。つまり、各政党が個々の手話通訳士と直接交渉をすることを避けるため、日本手話通訳士協会が窓口になること。また、個々の手話通訳士の属性をもとにしての交渉には応じない条件で、手話通訳士を紹介することのふたつです。この取組み方針は、すべての政党にも認められ、支持され、現在に至っています。
今回の改正は、「選挙運動員」という立場での「手話通訳」に関わるものですが、私たちは、これまで追求してきた、手話通訳者の専門性と中立性、および公的保障の実現を、どこまでも求めていく必要があります。
そこで私たちは、今後の各種選挙における、手話通訳を担うであろう方々に、次のことを訴えます。
なお言うまでもないことですが、このアピール文は、手話通訳者が個人として行う政治活動を規制するものではありません。ご理解とご協力をお願いいたします。
- 各種選挙において、都道府県のろう協会と力を合わせ、手話通訳保障を成功させましょう。
- 個々人が個別に政党および候補者と交渉するのではなく、各地域において聴覚障害者・手話通訳者団体と連携して、組織的な対応をしましょう。
- 選挙運動の中で手話通訳を担う者とは、通訳機能面のみを担当する者であって、それ以上の行動はその任務ではないということの理解を社会に広めましょう。