2003年10月29日

NHK会長 海老沢勝二 様

財 団 法 人 全 日 本 聾 唖 連 盟
理 事 長 安 藤 豊 喜  

聴覚障害者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、当連盟は、本年6月8日に山梨県甲府市において第51回全国ろうあ者大会を開催しましたが、この全国大会決議の趣旨に基づき、聴覚障害者の福祉に関し下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。

1.テレビ放送享受の完全平等化を図るために、手話、字幕を付けた番組を拡大してください。

(説明)総務省が発表した2002年度の「字幕・解説・手話」放送状況によると、NHKの字幕放送率は前年度に比べ780時間42分増加しており、貴局による字幕導入に対する努力が確実な数字となって現れています。これは私たち聴覚障害者にとって非常に有意義であり、評価しているところです。今後も字幕放送増加に、更なる努力の継続をお願いいたします。また、手話挿入の増加につきましても、積極的に検討をお願いいたします。

2.災害時の緊急テレビ放送を聴覚障害者にもすべて分かるようにしてください。

(説明)緊急災害時において、聴覚障害者がその情報源としてテレビ画面の文字情報のみが頼りになります。最近はテレビ以外にもHPへの情報掲載など工夫をいただいておりますが、やはり刻々と変化する情報を伝える際、テレビの果たす役割は大きいものがあります。前回の回答では、緊急災害時の字幕・手話放送については考えていないという内容でしたが、宮城県や北海道十勝沖地震で見られるように大地震への備えを改めて見直すためにも、ぜひ検討ください。

3.CSによる聴覚障害者専用放送に、NHKテレビ番組の利用を認めてください。

(説明)著作権法の改正がありましたが、その法を弾力的に活用し聴覚障害者のテレビ視聴の更なる充実のためには、尚一層の情報提供や協力体制が欠かせません。手話通訳者が常駐する、という物理的に条件の整った聴覚障害者情報提供施設を活用しCS専用放送で手話と字幕の挿入が可能であるため、聴覚障害者が見やすい情報が提供できるよう、番組の利用を認めてください。

4.「手話ニュース」の放送時間を延長し、時間帯を改善してください。

(説明)手話を主なコミュニケーション手段とするろう者にとって、この「手話ニュース」は馴染みやすい番組であり、貴重な情報源です。現在の「手話ニュース845」は19時のニュースを元に作成いただいているとのことですが、働く聴覚障害者も見られるよう21時のニュースを元に作成した深夜(22時以降)の手話ニュースの放送を検討いただくと共に、5分でも放送時間が延長できるよう拡充を求めます。

5.「聴覚障害者のみなさんへ」は再放送でなく、毎週1回の本放送にしてください。

(説明)昨年の回答で「予算の問題である」という説明をいただいておりますが、この番組もろう者にとって大切な情報収集の一手段となっております。視聴者から再放送要望の声の有無に関わらず一律に再放送を行うという今の形ではなく、年間の作成本数を増やすといったような、改善をお願いいたします。

6.大相撲の放送では毎日力士の四股名の文字表示にルビを付けてください。

(説明)相撲は見て分かりやすい競技であるため、テレビ観戦を楽しんでいる聴覚障害者は少なくありません。昨年の回答では、昨年度初場所から毎場所1回、十両以上の四股名と部屋名に振り仮名をつけていただいているとのことですが、いつ大相撲を観戦しても力士の四股名が分かるよう、ぜひ一場所を通しての振り仮名表示をお願いいたします。

7.字幕挿入(リアルタイム)スポーツ中継番組の時間を拡大してください。

(説明)ワールドカップ・メジャーリーグ・オリンピック・プロ野球といったスポーツ番組は国民的な行事であり、障害の有無に関わらず関心の高い番組であると思います。聴覚障害者がリアルタイムに情報を得、その展開を楽しむためにも、スポーツ中継番組への字幕挿入を積極的に図り、番組時間の拡大をしていただけますようお願いいたします。
以上