2001年11月10日

総務省 御中

財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 安 藤 豊 喜

論点整理に対する意見

1、非営利事業体としてのNHKの役割とその使命

(1)  非営利の放送事業体としてのNHKの役割と使命は、第1章に整理されているとおりと思います。

(2)  特に第1章の1、(2)のAで整理されているとおり、
ア、   採算性に乏しい地域も含めた、全国津々浦々までの普及、
イ、   放送番組の質的水準の確保・向上
ウ、   採算性に乏しいが、公共の福祉のための提供が求められる放送番組の提供、
の3点が重要と考えます。

(3)  また第1章の1、(2)で整理されているとおり、
@    ITの発展や多彩な文化の創造、発展への貢献、
A    情報格差の解消への寄与、
B    多角的な情報の入手環境の提供、
C    緊急災害時などの迅速、的確な報道の確保、
の4点も、NHKに期待される大きな役割であり、使命であると思います。

2、聴覚障害者の立場からするNHKの期待される役割と使命

(1)  以上の役割と使命は、しかし、聴覚に障害を持つ国民に対しては、「手話及び字幕付加」がない限り、全く果たされないまま放置されることになります。

(2)  非営利事業体としてのNHKの役割と使命が聴覚に障害を持つ国民のために正しく実現されるためには、すべての番組に「手話及び字幕付加」が不可欠の前提となります。

3、聴覚障害者の立場からの現状

(1)  しかし、現状では、NHKは聴覚障害を持つ国民に対する役割と使命を、極めて不十分にしか果たしていません。「手話及び字幕付加」という不可欠の前提について、積極的に応えようとしていません。少なくとも対応が弱いと考えます。

(2)  結果として、ごく少数の手話番組と字幕放送番組以外は、聴覚に障害を持つ国民は、放送内容を理解することができないままになっています。

(3)  この点で私たちは、「NHKは国民のうちから聴覚に障害を持つ国民を除外している、差別している」と考えざるを得ません。

4、現状における問題

(1)  手話及び字幕の付加された番組が、極めて少数にとどまっているのは、制作費用の節約と著作権法による制約の2点が、上記の差別を合理化する理由にされていることにあります。

(2)  当連盟からのNHKに対する要望「テレビ番組への手話及び字幕の付加」に対する回答においても、NHKはこの2点を実施困難な理由に挙げています。

(3)  しかし、手話及び字幕の付加は、現在の技術水準では、十分可能であることが確認されています。制作費用と著作権法による制約の問題は、前述したNHKの役割と使命を真摯に実現しようとする立場にたてば、おのずから克服可能な問題です。

5、要望(1)

(1)  そこで、私たちはテレビ放送全番組に対して、「手話及び字幕付加」を改めて強く要望します。
(2)  特に非営利事業体であるNHKの場合、「手話及び字幕付加」は、その基本的役割と使命であると考えます。

6、要望(2)

(1)  もしも、「手話及び字幕付加」が困難とされる番組がある場合は、これを可能とするCS通信放送に委託する方法(手話及び字幕付加のための費用を含めた二次提供)で実施し、聴覚に障害を持つ国民のために「情報格差の解消」を図ってください。

(2)  特に、「災害情報及びテロ活動等の危機管理に関する情報や選挙情報、国際情報発信(外国語放送によるもの)といった、国民の生命・財産の安全確保」、「あらゆるメディアを通じて国民にできる限り迅速・的確に提供されることが社会的に当然のこととして求められる分野」については、速やかに実現を図って頂くよう要望します。

(3)  委託先としては、「NPO法人・CS障害者放送統一機構」の実施するCS通信放送「目で聴くテレビ」が実施可能です。「NPO法人・CS障害者放送統一機構」は提供された番組について、「手話及び字幕付加」の十分な技術と実績を有しています。

(4)  「NPO法人・CS障害者放送統一機構」は災害情報について、手話及び字幕を付加した災害放送の提供について、実験放送を重ね、その実用化を目指しています。

7、要望(3)

(1)  インターネットの「独立情報」の二次提供は「ニュース及び教育や福祉の分野」を検討されていますが、これも、その提供と共に「手話及び字幕付加」のための費用を含めて「NPO法人・CS障害者放送統一機構」に委託して下さい。

8、要望(4)

(1)  また、NHKの字幕制作及び手話付加は現在は、NHKの子会社的な「字幕制作共同機構」等によって行われています。このような事業を「NPO法人・CS障害者放送統一機構」に委託して下さい。

9、要望(5)

(1)  第2章の2、(2)、イでは、業務委託について論点を整理しています。これについては、単に委託の透明さ、公平さを追求するだけでなく、委託先の専門性と福祉事業としての育成を図るという観点も重要であると考えます。

(2)  この点から、上記の委託先には、障害者のための専門放送である、「NPO法人・CS障害者放送統一機構」を選定し、その育成を図ることが、公共の福祉に添うものであり、国民のための事業体であるNHKの使命と役割に添うものであると考えます。
(3)  「NPO法人・CS障害者放送統一機構」の育成・発展は、「情報格差の解消」のために、そして、「障害者が幅広い視野と平衡感覚を維持しながら合理的な判断を行っていく上で必要な多角的な情報の入手環境の提供」、「緊急・災害時などの際の迅速、的確な報道の確保」のために有益な環境をもたらすと確信しております。
以上、要望する次第です。