2001年9月20日

厚生労働大臣
坂口力 様

162-0801新宿区山吹町130SKビル8階
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財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 安藤豊喜

「支援費制度」実施に向けての要望

時下、ますますご清栄のこととお慶び申しあげます。
日頃は私ども聴覚障害者の福祉向上にご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、標記の件、当連盟として下記のように要望いたしますので、早期実現に向けて何卒よろしくお願い申しあげます。

A 申請及び契約手続きにあたって:
(1) ろう重複障害者が申請や契約等の判断・決定をする際に、現存する社会資源(ろうあ者相談員・手話通訳者・聴覚障害者施設職員・聾学校教師等)を確認し、その助言を受ける体制を市町村の責任でつくること。また研修を通じて力量の向上を図って下さい。

(2) 市町村の職員が「ろう重複障害」についての基本的な知識を習得するために研修会を開いてください。その際、聴覚障害者専門施設での研修を義務付けて下さい。

(3) 障害程度区分の判定・支給量決定の聴き取り調査の際は、その重複障害者のコミュニケーション手段に配慮した方法で行ってください。(1)に記した相談員等と連携し相談員等の立会いのもとで行ってください。
「勘案事項整理票」その他の判定用資料と判断基準は「障害者ケアマネージャー養成テキスト」及び、「障害者ケアマネジメント実施マニュアル(身障編)」に基づきおこなってください。
なお、障害区分の判定に専門的知見が必要な場合は「更生相談所」を活用するとありますが、「更生相談所」がろう重複障害者に対して充分機能するよう、聴覚障害者専門施設、ろう重複専門家の意見を聞くなどの方策を講じてください。
 
(4) 相談・申請・審査・サービスを受ける際等、あらゆる場面でろう重複障害者に対するコミュニケーションの問題が生じます。そのろう重複障害者にあったコミュニケーション方法がとられるよう方策を講じてください。また、専門的知識・経験のある手話通訳者を確保・養成してください。

(5) 障害者の自己決定を尊重する制度において、負担額を親族に負わせることは、障害者自身による決定に何らかの影響を与えかねません。負担額は「本人および扶養義務者の負担能力に応じて定める」とされていますが、成人障害者の場合はあくまでも本人の収入を基準としてください。

(6) 後見人制度の普及が不十分な時点で、後見人に代わる親族がいないろう重複障害者の制度利用は、措置によって処遇してください。

B 社会資源の整備について:
(1)  ろう重複障害者が入所できる施設、選択できる社会資源があまりにも少ないのが実状です。ろう重複障害者が利用できる社会資源の整備を、国は早急に行ってください。

(2)  支援費制度のなかで、市町村は「情報提供・相談に応じることができる体制を整備する必要」とあります。情報障害・コミュニケーション障害を併せ持つ聴覚障害者への情報提供・相談の方途は、制度としては「聴覚障害者情報提供施設」があります。しかし現状では26箇所にとどまり、設置されていない都道府県も多くあります。「聴覚障害者情報提供施設」の設置とその機能拡充をして下さい。

その他:
(1) 重複障害者施設には職員加算を行う等、支援費制度の中での受け入れ体制を整備してください。
(2) 苦情処理については第三者の評価を受けるとありますが、施設内(事業者内)での第三者が加わった苦情解決でなく、オンブズマン制度のように利用者・事業者両者にとって公平な解決策が講じられるにしてください。