マーシャ・ウェッツェルって誰?

記事:ケリー・キング スポーツ・イラストレーティッド誌 2003年2月17日、24ページ

彼女はなぜ話題になっているのか
昨年の夏、ウェッツェルさん(40歳)は全米大学体育協会(NCAA)の第1部リーグ(ディヴィジョン・ワン)で、最初の女性ろう審判になりました。ウェッツェルさんはかつて、下級のディヴィジョンや高校で13年間務めた後、聴覚障害者のためのギャローデット大学のバスケットボールチームで、ガードのポジションを担当していました。そして審判員昇級試験ですばらしい実力を発揮し、ペイトリオットリーグとアトランティック10から女子競技の審判員として契約されたのです。彼女は、ろう者にも関わらず17年間サザンカンファレンスで男子競技の審判を務めた、ガイ・カークさんが切り開いた道をたどっています。
彼女は見たままを判定する
ウェッツェルさんは生まれつきのろうで、両親ともろう者です。彼女は試合前ミーティングのために通訳者を雇い、試合中は同僚たちにもはっきりと手を動かしてもらい、判定がきちんと分かるようにしています。けれども彼女が最も頼りにしているのは、彼女自身が「レーダーのような目」と表現する両目であり、「私は試合中に集中力を普段の倍のレベルにしているから、誰よりもよく周りが見えているの」と話します。最近の試合で、ウェッツェルさんだけが、ハーフタイムの寸前に起きたファウルを判定することができました。彼女にも時計が前半終了を示そうとしているのは見えていましたが、まだ彼女のバイブレーターが反応していなかったので、ハーフタイムのブザーが鳴る前だと分かったのです。「私がたった一つ心配しているのは、私が吹く笛(ホイッスル)の音が大きすぎないかどうかということだけです。」と彼女は言います。観客からのやじでも、サイドライン脇にいる両チームの叫び声でもなく、静まりかえったスタンドが彼女の心を揺さぶります。彼女は「感動や怒りを感じても、それに影響されないようにします。」と話します。バックネル大学のコーチであるキャシー・フェドリャカさんは「もしあなたが彼女に大声で抗議して、その効果が全くないことが分かったとき、初めて彼女の耳が聞こえないことに気付くでしょう。」と言います。